中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

規模はローソンの6倍。中国のメガコンビニはなぜ大きくなれるのか?

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今回は、コンビニについてご紹介します。

 

日本人が中国に行くと、街中に「ローソン」「ファミリーマート」「セブンイレブン」といった日系コンビニをよく見かけます。店内の雰囲気や販売されている商品も日本のコンビニと近く、安心をして買い物ができます。お世話になっている方も多いのではないでしょうか。

しかし、日系コンビニは中国の中ではマイナーまでは行きませんが、メジャーな存在ではありません。最も店舗数の多い「易捷」(イージエ)は2万8249店舗で、日系コンビニトップのローソン4466店舗の6倍近くなります。また、営業収入も3倍以上あり、中国コンビニ界の巨人です。

日系コンビニの出店先はそのほとんどが大都市に限られています。日本人が行く場所というのは大都市が基本になるため、日本人の目には「日系コンビニがずいぶんとたくさんあるんだな」と思えてしまいますが、地方都市にはほとんど出店をしていないため、店舗数ランキングでは上位にランクインできないのです。

 

日系コンビニが大都市にしか出店をしない理由は明らかです。大都市ではライフスタイルが国際化をして、もはや日本と大きな違いはなくなっています。特に職場近辺での消費行動にはもはや大きな違いはありません。そのため、大都市であれば国際的な感覚で、あるいは日本の感覚で経営をしてもうまくいくからです。

ところが地方都市ではそうはいきません。「vol.162:中国の津々浦々に出店するケンタッキー・フライド・チキン。地方市場進出に必要なこととは?」でご紹介しましたが、地方市場=下沈市場にまで浸透をしているKFCは、そのために「本土化」(地元化)と呼ばれるさまざまな工夫をしています。メインメニューはフライドチキンとハンバーガーですが、お粥や麺、点心といった中華メニューも提供をしています。米国生まれのファストフードチェーンなのに、お箸で食事ができるのです。

日系コンビニも、もし地方市場に進出をして、これ以上の成長を求めようとすると、このような本土化に対応をしていかなければなりません。

しかも、本土化の内容は地方によって異なります。よく言われることですが、北方は小麦粉の粉物文化であり、南方はお米のご飯文化です。さらに地方ごとに細かな違いがあり、このような違いにも対応していかなければなりません。それは統一的な経営をしたい日系コンビニにとっては、業態のコンセプトを根本から変えていかなければならない事態になります。

 

「vol.154:中国に本気を出すスターバックス。3000店の新規出店。地方都市の下沈市場で、スタバは受け入れられるのか」で、スターバックスが今後3年間で、この地方市場への進出に挑戦をしていることをご紹介しました。

今後、中国でビジネスをする企業は、KFCやスターバックスのように中国の地方市場に浸透をしていくということをせざるを得なくなっていきます。すでに大都市は飽和状態で、家賃が高くなりすぎて、実体店舗のチェーンで利益をあげていくことは生半可なことではなくなっています。

しかし、スターバックスも「本土化」という大きな壁に突き当たって苦しむことになるでしょう。それをやらないと、スターバックスと言えども生き残っていくことはできず、大都市だけでは「中国市場でビジネスをしている」とは言えないのです。

 

これは中国企業も同じです。一部の地域で市場を確保しても、他地域への進出では中国企業もその地域に合わせた「本土化」が大きなテーマになります。そのため、コンビニの場合は特定の地域で強い地元チェーンが存在をしています。全国制覇をしようとするチェーンは、このような地元勢とも戦わなければなりません。

このメルマガでも「わずか3年で150都市2000店舗に展開」などと簡単に書いてしまいますが、その裏では現場の方々が日々悩み、日々学び、たいへんな努力をされていることは間違いありません。

中国市場を制すというのは、まったく三国志やキングダムのような壮大な物語です。一部の地域で根拠地を確保したら、他地域に進出をして天下統一を目指しますが、その場所その場所に地元の強豪がいて、それを懐柔するか撃破をして併合していかなければなりません。併合をすれば、その土地を治めて税収を上げる必要がありますが、往々にしてその地域の特性に無知であるために地域経営に失敗をし、反乱を起こされます。

コンビニなどのチェーンもまったく同じです。本気の成長をしようと思えば天下統一が避けて通れません。これはコンビニだけでなく、実体店舗を中心にする小売業ではすべて同じです。そこで、今回はコンビニの精力地図をご紹介し、中国という市場がいかに大きいのか、そして複雑で、ライバルが多いのかということをご紹介します。他の業種の方にも、じゅうぶんに参考になる話だと思います。

 

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今月発行したのは、以下のメルマガです。

vol.162:中国の津々浦々に出店するケンタッキー・フライド・チキン。地方市場進出に必要なこととは?

vol.163:止まらない少子化により不安視される中国経済の行末。少子化をくいとめることは可能なのか

vol.164:お客さんは集めるのではなく育てる。米中で起きている私域流量とそのコミュニティーの育て方

 

 

人ごみを避けたい若い世代に広がる「逆張り旅行」と「ホテル旅行」。非観光地の高級ホテルが人気

新型コロナに対する不安が解消され、再び観光地の「人ごみ」が戻ってきている。それにともない、若い世代の間で、人が少なく静かな場所を観光する「逆張り旅行」、非観光地の高級ホテルを楽しむ「ホテル旅行」が広がっていると上游新聞が報じた。

 

若い世代に広がる「逆張り旅行」

移動制限が解けた中国では、リベンジ旅行をする人が増え、黄山風景区や故宮博物館という有名な観光地には多くの人が押し寄せ、中国名物の「観光地の人ごみ」が戻っている。しかし、この光景も、将来は見られなくなるかもしれない。なぜなら、若者たちは「逆張り旅行」を好むようになってきているからだ。

▲昨2022年の国慶節には、有名観光地の人ごみが戻ってきている。若い世代はもはやうんざりしている。

 

人気のない観光地にあえて行く

重慶市に住む呂さん(仮名)は、昨2022年の国慶節の10月1日から10月7日までの7連休では逆張り旅行を楽しんだ。10月1日から3日間は、自宅でのんびりと過ごし、10月4日になってから、観光地としては人気のない重慶市の塘河古鎮に一泊旅行をした。

「塘河古鎮は観光客に知られていない古鎮ですが、古い街並みや劇場、茶館、宿泊施設などはそろっています。小さな古鎮なので、1時間ほどで回ることができます。それから宿泊場所を探して、そこでのんびりと静かな時間を楽しみました」。

呂さんが観光客に知られていない場所に旅行をするのは初めてではない。「以前は人気のある磁器口古鎮や豊盛古鎮に行ったこともありますが、人ごみがすごかったという印象しかありません。中には鳳凰古鎮のように入場料を支払わなければならないところもあります。だったら、観光客に知られていない古鎮に行き、のんびりと静かな散策を楽しみたいのです」。

SNS「小紅書」で話題になった投稿。観光地ではない黒竜江省鶴崗市の高級ホテルに止まった経験を投稿しているが、一泊300元という安さであったことが話題になっている。

 

非観光地の高級ホテルが脚光をあびる

同じく重慶市に住む尤さん(仮名)は、重慶から、亢谷、紅池壩、三峡李院という観光客に知られていない場所を巡る旅行を楽しんだ。10月5日には自宅に戻り、3日間は自宅でのんびりとした。

SNSでは呂さんや尤さんのように、人ごみを避けた場所に行く「反向旅行」(逆張り旅行)という言葉が注目されるようになっている。若い世代の新しい旅行スタイルで、有名な観光地を避け、静けさを楽しむというものだ。

実際、従来は観光地として有名でなかった場所にある4つ星、5つ星ホテルの宿泊状況が好調だ。SNS「小紅書」(シャオホンシュー)では、ある人が黒竜江省鶴崗市の高級ホテルに泊まった経験を投稿し、大きく注目された。高級感のあるホテルで、無料のサウナがついて、美味しい朝食を楽しみ、それで宿泊料金はわずか300元(約5700円)だったというものだ。

旅行予約サイト「去哪児」でも、これまで観光としては人気のなかった小都市の5つ星ホテルの予約量が上昇をしていて、福建省三明市では前年の20倍、広東省の掲陽市では2.5倍、湖南省益陽市では2.2倍、河南省許昌市では2倍になっている。いずれも高級ホテルに格安で泊まれることが人気の理由になっている。

▲旅行予約サービス「去哪児」でも、無名の小都市の5つ星ホテルを紹介し、人気となっている。いずれも価格は一泊200元から350元程度という安さ。観光ではなく、ホテルを楽しみに出かける。

 

ホテルを楽しむ「ホテル旅行」

さらに「ホテル旅行」という言葉も生まれている。快適なホテルに宿泊し、午前中は室内、館内ですごし、午後から近所に出かけ、夕食をレストランで楽しむというものだ。人によっては、「わざわざお金を払って、寝る場所を変えているだけ」という人もいるが、都会でのストレスを忘れてのんびりすごせることに若い世代は価値を見出しているようだ。

大手の旅行社でも、この若い世代の新しいスタイルの旅行は、まだまだ少数の人たちの間での流行だが、注目はしているという。しかし、にわかに人気となった黒竜江省鶴崗市は、すでにSNSの中では人気観光地となり、地元ではこの機会をとらえて観光開発を促進する動きが起き始めている。逆張り旅行、ホテル旅行のポイントは「まだ商業化されていない場所」が大きなポイントであるのだから、このような観光開発が進めば、若者たちは別の場所を探し求めることになってしまう。

そういうジレンマがある中で、旅行業界は、この新しい潮流をどのようにビジネスに結びつけていくか悩んでいる。

▲ホテル旅行の典型。ひたすら寝る。「お金を払ってベッドを変えているだけ」と揶揄をする人もいるが、都市で忙しく働いている若い世代にとっては最高の休日になるようだ。

 

 

「TikTok爆速成長の秘密」資料

2月9日にオンラインセミナーを開催しました。

TikTok/抖音の成長の理由を、テクノロジーとクリエイティブの観点からご紹介しました。

たくさんの方に視聴いただき、誠にありがとうございました。

 

当日使用した資料を共有いたします。

Dropboxから自由にダウンロードしていただけます。

www.dropbox.com

MacKeynoteファイルとPDFファイルがありますが、内容は同じものです。keynoteでは動画も再生可能です。

 

 

 

深圳という大都市でドローン配送を可能にした美団の7つのテクノロジー

美団が深圳市でのドローンによるフードデリバリーを本格化させている。なぜ、美団体は深圳という大都市でドローン配送ができるのか。落下をした場合に被害は生じないのか。大都市でのドローン配送を可能にしたのは、7つのテクノロジー開発が必要だったとInfoQが報じた。

 

測位衛星信号を乱反射させる高層ビル

美団(メイトワン)の深圳市でのドローンによるフードデリバリーが本格化をしている。11の路線が設定され、11のオフィスビルやマンション、4つのモールを結び、2万人の需要に応えている。

現在は法整備が完了していないため、「常態化した試験営業」という建て付けだが、法整備が済み次第、正式営業に移行する予定だ。

しかし、深圳という大都市で、ドローン配送を確立するのは簡単なことではなかった。特に中国の都市部は、オフィスビルやマンションなど高層建築物が多く、ドローンの飛行区域としては理想的とは言い難く、難易度が高い。

例えば、都市中心部ではスマートフォンGPSなどの位置情報が乱れることはよくあるが、これは建築物のガラス面によって、衛星からの信号が乱反射をするためだ。その中で、ドローンが自分の位置を正確に知り、安全な飛行をするのは簡単なことではない。

美団が、ドローン配送を実現するには、7つのテクノロジー開発が必要だったという。

▲高層ビルのガラス窓は測位衛星の信号を乱反射させる。そのため、GPSや北斗の位置情報だけに頼っているのでは、都市部でドローンを安全に飛行させることはできない。

 

1:6ローターによる安全確保

美団がドローン配送を確立するにあたって、最大の課題となったのが安全だ。ドローンは機械であるがゆえに不具合が起きて、地上に墜落をする可能性が排除できない。建築物を損傷する程度ならまだしも、人や走行中の自動車に墜落をすれば、人命を失わせる事故も起こりかねない。この墜落による被害をいかにゼロに近づけるか、それが最大の課題となった。

そのため、美団は通常使われている4つのローター(プロペラ)ではなく、6つのローターを持つドローンを独自開発をした。ドローンのローターは、モーターが独立をして動作しているため、万が一、モーターが故障をしても、残りの5つのローターを使って、安全に不時着をすることができる。

▲一般的な4ローター方式のドローンでは、ローターが故障した場合に姿勢制御ができなくなり、安定した不時着ができない。美団では、6ローターのドローンを自社開発した。

 

2:三段構えのバッテリーシステム

美団のドローンには、主バッテリーの他に予備バッテリーが搭載されている。主バッテリーに問題が生じた場合は予備バッテリーで不時着を行う。また、予備バッテリーにも問題が生じた場合は緊急バッテリーを使ってパラシュートを開き、最悪の事態に備える。

 

3:人間の可聴域を避ける回転数を使う

また、6つのローターを採用したことで、1つのローターの負担が減り、ローターの回転数を下げることができるようになった。これにより、回転数を人間の可聴域から外れた回転数にすることにより、騒音を大きく軽減することができた。また、プロペラの材質、形状も新たに開発することで、騒音を大きく減らしている。

 

4:AI画像解析による不時着戦略

ドローンにはカメラが付いていて、地上の状況を常に撮影し、画像解析を行なっている。AIによる画像解析で、自動車と人を認識している。そして、自動車と人がいない平面を抽出する。これは建物の屋上や広い平地になる。つまり、不時着に適した場所ということになる。

ドローンは、常に、今、不具合が起きたらどこに不時着すべきかという不時着ルートを計算しながら飛行をしている。

▲ドローンは飛行中に人と車を認識し、そのような対象がいない平地部分(紫色部分)を不時着エリアとして常に認識している。万が一の場合は、不時着エリアへの誘導を試みる。

 

5:仮想空間の中でドローンの飛行実験

飛行ルートの計算、不時着戦略などをドローンに搭載したチップで計算をさせるのは荷が重い。そこで、美団はHIL(Hardware in the Loop)システムを開発した。これは簡単に言えば、デジタルツインで、仮想空間の中に飛行ルート周辺の建築物を再現し、その中に仮想のドローンを飛行させるというものだ。実際に飛行しているドローンからのデータを取得し、仮想空間内でさまざまな実験を行うことができる。

このHILの仮想空間の中で、ドローンが取るべき飛行戦略を確立し、実際のドローンに搭載する。これにより、横風や突風といったものに対する姿勢制御などの自律復帰戦略もドローンに搭載できるようになった。

▲ドローンは専用のステーションに着陸し、荷物は自動的にステーション内に収納される。

 

6:映像情報に基づいて正確な位置を判断

都市部でドローンを安全に飛行させるためには、GPSや北斗などの衛星位置情報サービスによる測位だけでは不十分だ。建築物により、衛星信号が妨げられたり、乱反射をさせられるため、測位精度が著しく落ちることがあるからだ。

そのため、美団のドローンではSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術を採用している。これは、お掃除ロボットなどでも採用されている技術で、映像情報に基づいて、自分で環境地図を作成していく技術だ。これにより、正確な位置をドローンが把握をし、衛星測位による情報を補正している。

▲ステーションはそのまま宅配ボックスになっているため、利用者はスマホを使って自分の荷物を取り出す。

 

7:4次元セルで複数ドローンの航路を管理

1台のドローンだけを飛ばすのであれば問題はないが、美団のドローンのように配送に使う場合、同じ路線に複数のドローンが飛行をすることになる。このドローン自体が接触をしないようにしなければならない。一般的なやり方は、航路の行きと帰りで高度を変えるという手法だ。

しかし、ドローンの場合は、風などの天候の影響や鳥などの動物の影響で、より弾力的に航路を取る必要がある。そこで、美団は、4次元セル方式を採用した。3次元空間と時間の4つの軸で航路付近をセルに分割をし、航路はこのセルを接続することで表現される。すでに他のドローンにより占有されている4次元セルには入ることができないため、理論上はニアミスや接触が起きなくなる。

あるドローンに突発自体が起きて、他のドローンにより占有されているセルに入らざるを得ない場合は、他のドローンが空いているセルを探して、回避をする。このような仕組みを構築したことで、ドローン配送が密になっても対応ができることになる。

 

都市でのドローン配送に必須の安全テクノロジー

ドローン配送は、離島や山間部といった人口密度の低い場所での応用はしやすい。万が一墜落をしても、人的被害が起きる確率は低く、積載物をロストするだけで済むからだ。

しかし、配送の需要が高いのは都市部だ。その都市部では、人的被害の確率をゼロに近づけるさまざまな工夫が必要になる。美団のドローン開発が本格化をしたのは2017年だが、その時から、既存のドローンを購入して配送に使うという考えは放棄をされた。都市部での配送に活用をするためには、さまざまな技術開発が必要になることがわかっていたため、ゼロからオリジナルのドローンを開発することになったという。

すでに深圳市では、ドローン配送を都市低空輸送体系として位置づけ、法整備を急いでいる。年内にはドローン配送が正式営業を始めると見られている。

 

 

メタバース空間の中で猫と遊ぶ。毛ざわりや舌のざらざら感まで再現する触覚フィードバックシステム

メタバース空間の中で猫と遊び、その手触り感を再現する触覚フィードバックシステムをテンセントRobotics Xラボと香港城市大学が共同で開発した。メタバースの中で猫と遊び、その毛ざわりや舌のざらざら感まで感じられるようになると量子位が報じた。

 

メタバースの中で猫に触れることができるテクノロジー

VRメタバースの中で何がしたいか。多くの人が猫と戯れたいと思っている。騰訊(タンシュン、テンセント)のRobotics Xラボと香港城市大学が共同で、仮想の触覚を再現するシステムを開発した。このシステムを使うと、猫をなでることで毛ざわりを感じることができ、猫に指をなめてもらうと、舌のザラザラ感まで感じることができるという。

▲研究チームはメタバース空間の中で猫と遊ぶことを目標に定めた。頭をなでると毛ざわりが、舐めてもらうと舌のざらざら感が感じされるようにすることが目標だ。

 

触覚フィードバックシステムの2つの考え方

このような触覚フィードバックシステムは、さまざまな研究機関、企業が研究開発を行っている。その研究は、2つの方向性にまとめることができる。ひとつは機械刺激で、もうひとつは電気刺激だ。

機械刺激は単純で、皮膚に接触させた無数のピンをアクチュエーターにより動かすことで触覚を再現するもの。シンプルな仕組みで触覚を再現しやすいが、アクチュエーターの体積が大きくなるため、ピンの密度を高めることができず、どうしても触覚再現が粗くなりがちだという課題がある。

電気刺激は精度の高い触覚再現が可能になるが、電圧の制御をうまく行わないと、利用者が痛みを感じたり、場合によっては健康被害を与える可能性がある。

Robotics Xラボと香港城市大学は、電気刺激の手法を採用し、これを改善する道を選んだ。

▲触覚フィードバックのシステム。触覚ドットは少ないが、複数のドットを同時に刺激することで、ドット数以上の解像度を得ることができる。

 

周波数を下げると、刺激は強く感じる

研究チームが改善をしたのは次の2つだ。

多くの電気刺激による触覚再現が直流電流を用いるのに対して、研究チームは交流電流を採用した。交流電流は一定のリズムで電流の流れる方向が反転をする。10Hzの交流電流は1秒間に10回反転をし、皮膚に対して刺激を与え続ける。研究チームは、周波数を下げる(刺激頻度が少なくなる)ほど、刺激の大きさが強く感じられるようになることを発見した。刺激の頻度が少なくなると、ひとつひとつの刺激は、実際よりも強く感じる。この周波数を変化させることで、刺激の強さを変えることができるという観察が突破口となった。

これにより、180度の位相を持った(反転した)2つの交流電流を組み合わせることで、さまざまな触覚を再現できるようになった。周波数の低い交流電流刺激は岩石や紙なのどのザラザラした質感を再現することができ、周波数の高い交流電流刺激はガラス面などのつるつるした質感を再現できる。

最終的に、最低13ボルト、最高28ボルトの刺激装置を開発し、15ボルトから25ボルトの間で、2つの交流電流を組み合わせることで、さまざまな触感を再現できるようになった。

 

刺激点の解像度をあげる

もうひとつの改善が、触覚の解像度を高めたことだ。ドット状に配置した刺激点のうち、複数の刺激点を同時に駆動させることで、人はドットの中間にある点が刺激をされたと感じることができる。

これにより、物理的な刺激点以上の超解像度が得られることになり、最終的に76ドット/平方cmの解像度を得ることができ、これは人間の皮膚の触覚の解像度にきわめて近い。

この2つのブレイクスルーにより、従来の手法では再現できなかったリアルな触覚を再現することに成功している。

▲スーパー解像度の仕組み。複数のドットを刺激することで、あたかもその中間のドットが刺激されたように感じる。これで76ドット/平方cmの刺激解像度を再現することに成功した。

 

触覚フィードバックによる情報伝達が可能に

解像度が高まったことにより、情報伝達デバイスとしての活用にも可能性が生まれている。次の実験は、左指に触覚再現デバイスを装着した被験者に、触覚の移動により文字を伝えるという実験で、87%の正解率を得ることができた。

また、触覚が奪われてしまう消防士用の厚手の手袋をしていても触覚を得ることができる。触覚再現デバイスを装着して、その上から手袋をして、ターゲットの直径1mm、高さ0.44mmの突起を指で探り当てるという実験では、被験者は触覚再現センサーのガイドにより、正確に突起を探り当てることができた。

▲触覚フィードバックを通じて、文字の画を伝えることで、どの文字が指示されたがわかる。実験では87%の正解率を得た。

 

リモートや手袋必須の作業に用途

この技術の用途は無限にある。リモートで製造や操作などをするときは、VRゴーグル立体視をし、触覚をフィードバックすることで、精密な操作が可能になる。また、宇宙服、防護服、手袋などをつけて作業をしなけれならない場面で、外面につけたセンサーで触覚情報を読み取り、それを人間の皮膚に伝えることで、触覚に頼った作業が可能になる。

また、わかりやすいところでは、ECで買い物をするときに、衣類などの質感を再現できる可能性もある。メタバースのリアリティーを大きく前進させるテクノロジーとして注目をされている。

▲用途のひとつは、メタバース空間でのEC。実際の洋服の手触りを試すことができる。

 

描いたのは人なのかAIなのか?生成AIが火をつけてしまった信頼への導火線

騰訊(タンシュン、テンセント)から配信されたモバイル、PCゲーム「白夜極光」のプロモーション用に作成された画像が、人ではなくAIが描いたのではないかと絵師とネット民の間で論争になっていると17171遊戯網が報じた。

 

ゲーム用プロモ画像が大炎上

「白夜極光」は、騰訊(タンシュン、テンセント)傘下の「巡回犬工作室」(TourDog Studio)が開発したスマートフォン向けモバイルゲーム。テンセントから配信をされ、中国だけでなく、日本でも好評を得ている。

しかし、そのプロモーション用に外部の絵師「卜爾Q」に依頼をした画像が大きな問題になっている。ネット民は、これが人間の絵師ではなく、AIが描いたのではないかと指摘をしたのだ。

▲問題が指摘された最初のバージョンのプロモーション画像。4つの不自然な点が存在する。

 

4つの不自然な生成AIっぽい間違い

確かにこの絵にはおかしなところが多い。

1)クロスした脚で、上になっているのは右足のはずだが、指のつき方が左足のそれになっている。親指が内側にこないとおかしい。

2)右鎖骨の部分で、水着のストラップが折れ曲がっている。

3)あごの下に置いている左手の指が骨折をしているかのように不自然になっている。

4)左のバストのところで、ストラップが肌に密着をするように、不自然に折れ曲がっている。

このようなミスは、人間が描いていたら起こらないもので、AIに生成させ、それを修正して完成させたのではないかと炎上をしたのだ。

▲問題が指摘をされた4つの不自然な箇所。これにより、多くのネット民が画像はAIにより生成されたのではないかと疑った。

 

生成AIは進化をしても苦手な部分を残している

AIの進化が急速に進み、AIGC(AI Generated Content=AI生成コンテンツ)のレベルが急速にあがっている。画像の分野では、言語で画像の内容を指定すれば完成度の高い画像を出力してくれるサービスが複数登場している。

しかし、AIの画像生成にはまだまだ弱点もある。AIは人間の指の数が何本であるかを理解できず、手や足の指がおかしくなる。人間の骨格構造を理解できず、歪んだ立ち姿になってしまう。光と影の扱い方が統一されない、髪の毛の細かい描写が苦手など、細かいところを見ればまだまだ問題がある。

しかし、AIに画像を生成させ、それに手を入れて修正をし、完成させるということは、多くのプロの絵師が試し、チャレンジしていることだろう。プロの絵師にとって、AIGCはすでに描画ツールのひとつになろうとしている。

 

今後は制作過程を録画して公開する

この問題について、TourDog Studioは、微博(ウェイボー)でコメントを発表した。それによると、問題の画像は海外プロモーション用に、外部の絵師に依頼をして作成したもので、ゲーム内に使用する予定はないという。また、TourDog Studioのクリエイティブチームは制作にAIを使用していないとした。

問題の絵師の卜爾Qも、ウェイボーで、制作過程の図を示して弁明をした。構図の調整などをし、制作には数十時間はかかっているという。しかし、最終的な処理に問題があり、多くの人に迷惑をかけることになったとして謝罪をしている。また、今後は、このような論争を起こさないために、制作過程をライブ配信するか、録画をしておき、適切なタイミングで公開することを表明した。

▲卜爾Qは騒動に対して、釈明のメッセージを公開したが、AIを使っていないとは断言をしなかったため、火に油を注ぐ結果となった。

▲卜爾Qが公開した制作過程の図。暗に「AIは使っていない」と証明しようとしたものだが、言葉では「AIを使っていない」とは断言をしなかった。

 

修正画像にも不自然な点が

しかし、これが火に油を注ぐことになってしまった。なぜなら、卜爾QはAIを使ったとも、使っていないとも断言をしていないからだ。そして、修正された画像が公開され、左手の指の不自然さ、右側鎖骨付近のストラップの不自然さは修正されたが、左胸のストラップの不自然さ、右足の指のつき方についてはそのまま修正されていない。

▲修正された最新の画像。しかし、2つの不自然な点が放置されたままになっている。

 

信頼の導火線に火がついてしまった

この騒動に、卜爾Qのファンたちから失望の声が上がっている。多くのファンが、「AIは新しい時代の筆や絵の具」と考え、絵師がAIを使うことを許容をしている。今回の件は、仕上げに問題があったが、さまざまな時間的な制約があったのだろうと労っている。

しかし、一方で、もはや絵師は信用できないと言う人もいる。問題の絵が最初から人が描いのであれば起こらないはずの不自然さが残っており、AIで描いたのは明白であり、しかも絵師はその制作過程の図まで出してきているが、これは後からあわてて描いたのではないかとまで疑っている。

絵というのはその絵師の創作性を楽しむためのもので、AIに描かせるのであれば鑑賞する価値はなく、絵師という職業は不要になる。AIGCは信頼の導火線に火をつけてしまったという人までいる。

卜爾Qが表明したように、今後は、制作過程を録画し、それを公開しなければならないのかもしれない。それはちょうど、食品工場や飲食店が調理過程をすべて顧客に公開するのと同じだ。それは透明性が高い素晴らしい社会なのか、それともエビデンスなしには何も信用しない殺伐とした社会なのか、いずれになるのかは今は誰にもわからない。

 

 

お客さんは集めるのではなく育てる。米中で起きている私域流量とそのコミュニティーの育て方

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今回は、私域コミュティーの育て方についてご紹介します。

 

今、米国と中国で「私域流量」の概念が、偶然にも異なる理由から注目をされています。私域流量については、「vol. 127:WeChatマーケティング。私域流量の獲得と拡散が効率的に行えるWeChatの仕組み」でご紹介しましたが、簡単に言えば、企業やブランドが、自社の顧客コミュニティーを自分で構築をし、そこに対して商品や販売を販売していくことを指しています。もっとわかりやすく言えば会員制販売サービスです。会員になって初めて商品を買うことができ、購入すればするほど特典が与えられ、お得に買えるようになるというものです。一気に販売をして一時的な売り上げを上げるよりも、長期にわたって購入してもらい、LTV(LifeTimeValue=生涯価値)を最大化することをねらっています。日本でも化粧品や健康食品でこのような小売手法を採用している例が増えています。

 

米国ではアップルの施策が、デジタル広告業界に大きな影響を与えています。アップルは2017年からITP(Intelligent Tracking Prevention=インテリジェントトラッキング防止機能)をiOSiPhone)のSafariブラウザー)に導入をしました。これはクッキー規制とも呼ばれます。

クッキーとのいうのはSafariやEdge、Chromeなどのブラウザーに備わっている小さな保存用ファイルのことです。アマゾンのようなサイトにログインをして、しばらく経ってから再びアクセスをしてみると、ログインした状態で表示されます。いちいちアカウントやパスワードを入力しなくていいので非常に便利です。これはログイン情報がクッキーに保存をされているからできることです。

これが本来のクッキーの使い方ですが、デジタル広告配信業者はこのクッキーを巧妙に利用をして、自分たちのビジネスを拡大しようと考えました。

そのひとつがリターゲティング広告です。何度でも対象にできる広告という意味です。例えば、ある自転車のサイトを見に行ったとします。そのことがクッキーに記録されます。その後、その人はチョコレートのサイトを見に行きますが、広告配信業者はクッキーをのぞいて、自転車に興味がある人だと考え、自転車のバナー広告を表示します。一度、デジタル広告配信業者に「この人にはこの広告が有効」と認められてしまうと、どこのサイトを見ても、その広告が表示されるようになります。

もはや笑い話ですが、ある人が「××のサイトはけしからん。バナー広告にアダルトサイトの広告ばかり表示される!」と怒ったという話があります。これはその人がアダルトサイトばかり見ているために、アダルト広告が有効だと考え、デジタル広告配信業者がアダルト広告を配信したのです。もちろん、多くのサイトはアダルト広告など表示されないような制限をかけて弾かれるようになっています。しかし、制限を受けない一般商品の広告であれば、同じ広告、同じジャンルの広告がいつまでも追いかけてくることから、不快感を感じる人も少なくありません。誰かに行動をのぞかれていたり、監視をされているような不安を感じるのです。

 

アップルは以前からこのようなリターゲティング広告を問題視していました。アップルはプライバシー特設サイト(https://www.apple.com/jp/privacy/)で、日本語でもこの問題を解説しています。特に、「あなたのデータの一日」(https://www.apple.com/jp/privacy/docs/A_Day_in_the_Life_of_Your_Data_J.pdf)は、日本語情報も用意され、わかりやすく、現在デジタル広告業界で何が行われているかを赤裸々に、正確に解説しています。一読されることをお勧めします。

アップルのメッセージは次の一言に集約できます。「こんなことをする必要はありません。広告主は、ユーザーを追跡しなくても、グループに対する広告キャンペーンの効果を測定できるのです。Appleは、ユーザーのプライバシーを守りながら広告キャンペーンの効果を測るツールの開発に取り組んできました」。

つまり、ユーザーを不安がらせたり、プライバシーを侵害しなくても、デジタル広告を運用する方法は存在するのに、なぜそのような手間を惜しんで、ユーザーのプライバシーを侵害し続けるのかということです。

 

ITPはこのような背景から生まれてきました。仕組みについては、アップルの特設サイトを読んでいただく方がいいかと思いますが、簡単に言うとクッキーの利用を制限し、ユーザーに利便性の高い使い方(ログイン状態の維持など)には問題が起こらず、リターゲッティング広告を目的とする使い方に対しては、一定時間でクッキーを削除してしまうものです。

これにより、広告配信業者にとっては次のような問題が生じます。

1)リタゲーティング広告が機能しなくなる

2)広告の精度が低下をする

3)コンバージョンの測定が正確でなくなる

クッキーにはさまざまな情報を保存できるため、その個人がどのサイトを閲覧したのかを知ることも可能になります。それにより、例えば、その個人が「ダイエットをしたいと思っているが、ポテトチップの大量消費がやめられない人」というようなことがわかります。それに基づいてダイエット商品の広告、特に「ポテトチップを食べても痩せられる奇跡のダイエットサプリメント」だったりすれば、広告の効果は非常に高くなるでしょう。しかし、ITPの機能により、このような個人の行動履歴を広告配信業者が知ることができなくなります。

また、コンバージョンとは、デジタル広告をクリックして、ランディンページに移動した後、購入や資料請求をした人の割合のことですが、このコンバージョンを正確に計算するためには、あるサイトに表示されたデジタル広告をクリックしたという事実と、同じ人がランディングページで行動をしたという事実のふたつが必要になります。しかし、クッキーが利用できないと、その人がどのサイトを訪問したかがわからないためにコンバージョンが測定しづらくなります。

 

これはデジタル広告配信業者にとって大きな痛手となります。そこで、現在、多くのサイトが初めての訪問者に対し「クッキー機能をオンにしてください」というお願いをする事態になっています。アップルはクッキー機能の拡大使用がプライバシー上問題だと考えていますが、それを問題だと考えるかどうかは消費者個人の判断が優先されます。そのため、訪問するサイトが訪問者に「クッキーを許容してください」とお願いをして、オンにしてもらえれば、以前と変わらずリターゲティング広告や広告効果の測定ができるようになるからです。

しかし、その効果は限定的なようです。「ITPがアクセス解析に与える影響‐新規ユーザー率は85%までに上昇-」(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000282.000018628.html)という面白い記事があります。ウェブサイトの新規ユーザー率が急上昇をしているという記事です。

従来は、一度訪問すれば、訪問したことがクッキーに保存をされたので、次に訪問した時は、ウェブサイトはその人が「リピーター」であるということがわかります。しかし、利用者がクッキーの受け入れを拒否した場合は、次に再び訪問した時も過去の履歴がわからないので、「新規ユーザー」だと記録をしてしまうのです。つまり、新規ユーザー率が上昇をしているということは、クッキーの受け入れ拒否をしている人が増えていると推測できるのです。

▲ウェブの新規ユーザー率が異常な上昇を示している。これはクッキーの受け入れ拒否をしている人が多数いることが原因だと推測される。

 

ITPを搭載しているのはアップルのSafariだけですが、グーグルのChromeも2022年中に同様の機能を搭載すると宣言していました(諸事情により2023年中に延期をされています)。そのようなITP非搭載のブラウザーであっても、新規ユーザー割合が上昇をしています。「クッキーを受け入れてください」という表示が出るため、多くの人が拒否をしていることがうかがわれます。

この記事からはデジタル広告業界の悲鳴が聞こえてきます。

「ITP対応などのcookie規制が進むことで、既存の計測における新規・既存といったユーザー分類が使い物にならない状態に近づいていると考えられる」

「既にITPの影響で新規/既存などについてはウェブサイトの分析ができているとは言えない状況であり、結果として適切なプロモーション計画立案の難易度が高まっている」

「GA移行がまだ10%程度であり、導入を早期に済まさないと、昨対の数字もわからず数値や機能の違いも分からないという混乱した状態で未来のプロモーション施策を考えなければならなくなる」

「GA移行」とは、広告効果測定ツール「グーグルアナリティクス4」のことで、ウェブ側にGA4対応のタグを設定することで、従来と変わらない広告効果の測定が可能になります。しかし、そうなると、おそらくアップルのITPはさらなる対策を行い、デジタル広告業界はそれに対する対抗策を考えというサイクルが繰り返されていくことになります。

 

その結果、米国で何が起きているかというと、広告出稿先の変化です。まともな広告効果が測定できなくなっているのですから、ウェブ広告を出すことに意味がなくなっています。そこで、ウェッブ広告からアマゾンのようなプラットフォーム広告へのシフトが始まっています。

アマゾンもウェブに対してアフィリエイト広告を行っていますが、そのようなものを除いて、アマゾン内の広告であれば、利用者の同意が取れていることもあり、アマゾン内のでの行動履歴が把握でき、正確な広告効果が測定できます。利用者もオープンなウェブでどのようなデータが収集されているのかよくわからないというのは不安に感じますが、アマゾンの中でどの商品のページを見たかという情報が把握をされるのであれば許容ができます。しかも、そのデータに基づいて「あなたにおすすめの商品」などを表示してくれますから、利用者にとってもメリットがあります。

次のグラフは、ネットメディア「AXIOS」の「Slow fade for Google and Meta's ad dominance」(https://www.axios.com/2022/12/20/google-meta-duopoly-online-advertising)という記事から引用したグラフです。2022年での実データと以降の予測値から、グーグルとメタのシェアがゆっくりと下がっていくことが論じられています。

▲アップルのクッキー規制の取り組みにより、メタとグーグルの影響力が低下をしている。

 

面白いのは、今後伸びていく広告は「E-commerce」です。つまり、アマゾンのようなプラットフォーム広告です。

デジタル広告は、オープンなものからクローズなものへと場を移していくことになります。

 

そこで今、米国で(そして日本でも)注目されている言葉が「ファーストパーティーデータ」です。ファーストパーティーとは消費者、セカンドパーティーが広告配信業者、サードパーティーが調査会社や公的機関と考え、従来はセカンドパーティーからマーケティングデータを入手していました。これができなくなるため、消費者から直接データを収集しようという考え方です。

基本になるのは、小売企業が自社で会員制サイトを運営し、そこに消費者を集めることです。そして、アマゾンと同じように行動履歴を収集したり、あるいは特典を与えることで消費者自身にアンケートに答えてもらうことでデータを収集していきます。

消費者の同意は取れているため安心をしてデータ収集ができるだけでなく、消費者と直接結びつくことができ、LTVを最大化する施策が打てるようになります。つまり、D2C(Direct to Consumer)への志向が強くなっているのです。

 

このメルマガをお読みの方は、この米国でのデジタル広告からD2Cへの流れは、中国で起きている「公域流量から私域流量へ」と偶然にも付合することにお気づきでしょう。中国企業が私域流量を志向する理由は、米国とはまた違っています。ご興味のある方は「vol.127:WeChatマーケティング。私域流量の獲得と拡散が効率的に行えるWeChatの仕組み」をお読みください。

理由は違っているのに、同じ場所に着地をするというのは非常に面白い現象です。いずれにせよ、中国でも米国でも、「広告をばらまいてモノを売る」時代は終わり、「お客さんのコミュニティーを育てて、末長く商品を買っていただく」時代に入っています。集客ではなく、育客が重視される時代に移り始めています。これはいずれ日本でも同じようになると考えておいた方がいいでしょう。

そこで、今回は、このお客さんコミュニティーを育てるためにどのような工夫がされているかをご紹介します。背景となる文化が異なるため、そのまま真似をしてもうまくはいきませんが、コミュニティー育成の施策を考える時のヒントにはなるはずです。

 

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vol.162:中国の津々浦々に出店するケンタッキー・フライド・チキン。地方市場進出に必要なこととは?

vol.163:止まらない少子化により不安視される中国経済の行末。少子化をくいとめることは可能なのか