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人ごみを避けたい若い世代に広がる「逆張り旅行」と「ホテル旅行」。非観光地の高級ホテルが人気

新型コロナに対する不安が解消され、再び観光地の「人ごみ」が戻ってきている。それにともない、若い世代の間で、人が少なく静かな場所を観光する「逆張り旅行」、非観光地の高級ホテルを楽しむ「ホテル旅行」が広がっていると上游新聞が報じた。

 

若い世代に広がる「逆張り旅行」

移動制限が解けた中国では、リベンジ旅行をする人が増え、黄山風景区や故宮博物館という有名な観光地には多くの人が押し寄せ、中国名物の「観光地の人ごみ」が戻っている。しかし、この光景も、将来は見られなくなるかもしれない。なぜなら、若者たちは「逆張り旅行」を好むようになってきているからだ。

▲昨2022年の国慶節には、有名観光地の人ごみが戻ってきている。若い世代はもはやうんざりしている。

 

人気のない観光地にあえて行く

重慶市に住む呂さん(仮名)は、昨2022年の国慶節の10月1日から10月7日までの7連休では逆張り旅行を楽しんだ。10月1日から3日間は、自宅でのんびりと過ごし、10月4日になってから、観光地としては人気のない重慶市の塘河古鎮に一泊旅行をした。

「塘河古鎮は観光客に知られていない古鎮ですが、古い街並みや劇場、茶館、宿泊施設などはそろっています。小さな古鎮なので、1時間ほどで回ることができます。それから宿泊場所を探して、そこでのんびりと静かな時間を楽しみました」。

呂さんが観光客に知られていない場所に旅行をするのは初めてではない。「以前は人気のある磁器口古鎮や豊盛古鎮に行ったこともありますが、人ごみがすごかったという印象しかありません。中には鳳凰古鎮のように入場料を支払わなければならないところもあります。だったら、観光客に知られていない古鎮に行き、のんびりと静かな散策を楽しみたいのです」。

SNS「小紅書」で話題になった投稿。観光地ではない黒竜江省鶴崗市の高級ホテルに止まった経験を投稿しているが、一泊300元という安さであったことが話題になっている。

 

非観光地の高級ホテルが脚光をあびる

同じく重慶市に住む尤さん(仮名)は、重慶から、亢谷、紅池壩、三峡李院という観光客に知られていない場所を巡る旅行を楽しんだ。10月5日には自宅に戻り、3日間は自宅でのんびりとした。

SNSでは呂さんや尤さんのように、人ごみを避けた場所に行く「反向旅行」(逆張り旅行)という言葉が注目されるようになっている。若い世代の新しい旅行スタイルで、有名な観光地を避け、静けさを楽しむというものだ。

実際、従来は観光地として有名でなかった場所にある4つ星、5つ星ホテルの宿泊状況が好調だ。SNS「小紅書」(シャオホンシュー)では、ある人が黒竜江省鶴崗市の高級ホテルに泊まった経験を投稿し、大きく注目された。高級感のあるホテルで、無料のサウナがついて、美味しい朝食を楽しみ、それで宿泊料金はわずか300元(約5700円)だったというものだ。

旅行予約サイト「去哪児」でも、これまで観光としては人気のなかった小都市の5つ星ホテルの予約量が上昇をしていて、福建省三明市では前年の20倍、広東省の掲陽市では2.5倍、湖南省益陽市では2.2倍、河南省許昌市では2倍になっている。いずれも高級ホテルに格安で泊まれることが人気の理由になっている。

▲旅行予約サービス「去哪児」でも、無名の小都市の5つ星ホテルを紹介し、人気となっている。いずれも価格は一泊200元から350元程度という安さ。観光ではなく、ホテルを楽しみに出かける。

 

ホテルを楽しむ「ホテル旅行」

さらに「ホテル旅行」という言葉も生まれている。快適なホテルに宿泊し、午前中は室内、館内ですごし、午後から近所に出かけ、夕食をレストランで楽しむというものだ。人によっては、「わざわざお金を払って、寝る場所を変えているだけ」という人もいるが、都会でのストレスを忘れてのんびりすごせることに若い世代は価値を見出しているようだ。

大手の旅行社でも、この若い世代の新しいスタイルの旅行は、まだまだ少数の人たちの間での流行だが、注目はしているという。しかし、にわかに人気となった黒竜江省鶴崗市は、すでにSNSの中では人気観光地となり、地元ではこの機会をとらえて観光開発を促進する動きが起き始めている。逆張り旅行、ホテル旅行のポイントは「まだ商業化されていない場所」が大きなポイントであるのだから、このような観光開発が進めば、若者たちは別の場所を探し求めることになってしまう。

そういうジレンマがある中で、旅行業界は、この新しい潮流をどのようにビジネスに結びつけていくか悩んでいる。

▲ホテル旅行の典型。ひたすら寝る。「お金を払ってベッドを変えているだけ」と揶揄をする人もいるが、都市で忙しく働いている若い世代にとっては最高の休日になるようだ。