旅行比較サイト「スカイスキャナー」と旅行予約サイト「携程」は、共同で、「2018年度出入国ビッグデータ報告」を公開した。団体旅行は全体のわずか3%まで激減し、若者がSNSの情報を使って個人旅行をしていることがより鮮明になった。
人気渡航先は安定、欧州も伸びている
2018年、中国人旅行者が最も訪れた海外の都市ランキングは、東京、バンコク、大阪、香港、ロンドン、台北、クアラルンプール、シンガポール、プーケット、パリとなった。
この数年、この傾向は変わっていないが、伸び率ではセルビア、トルコ、ポルトガルがそれぞれ前年比、67.7%、16.5%、13.0%伸びており、ヨーロッパ志向が進み始めている。
出国者は二級都市の伸び率が高い
出国者数の多い中国都市も、北京、上海、広州、成都、深圳の順で、経済が進んで人口の多い大都市になっていて、傾向は変わっていない。しかし、こちらも、伸び率で見ると、西安、重慶、昆明、杭州などの二級都市が倍増以上の伸びとなっている。
海外旅行する中国人は40歳未満が84%
中国の海外旅行の近年の傾向は、若い世代が中心になっているということだ。18歳から29歳までで53%と半分以上を占め、40歳以下で84%を占める。中高年はそもそも旅行に行かない、行くとしても国内旅行ということが多い。
ちなみに日本の出国者数の法務省の統計によると、40歳以下は37%でしかなく、海外旅行の中心は40代と50代になっている。この数字は出国者数なので、海外出張なども含まれているが、それでも日本と中国の海外旅行のイメージは大きく違う。
▲海外旅行者の世代別割合。30歳未満が半数以上、40歳未満で84%にもなる。海外旅行は圧倒的に若い世代のレジャーになっている。
▲法務省の統計による2017年の日本人海外渡航者の年代別割合。日本の海外旅行は40代と50代が中心になっていて、中国とは対照的だ。
団体旅行はもはや3%
もうひとつ大きな変化が団体旅行の縮小だ。少し前まで、中国人の訪日旅行というと、観光バスで百貨店や量販店に乗り付け、大量の商品を買っていく爆買いツアーのイメージを持たれている方も多いと思う。しかし、それはもはや全体の3%でしかない。多くが、家族、恋人、友人、ひとり旅になっている。
もちろんこのような個人主体の旅行者が、飛行機、ホテルを団体予約するパッケージツアーに参加しているケースもあるので、形態としての団体ツアーはまだあるとは言うものの、いわゆる会社や組織で主催する団体ツアーは激減した。
一方、JTBの旅行統計によると、日本はまだ「会社がらみの団体旅行」が7%、「組織が募集する団体旅行」が8%もある。
中国側の統計は、あくまでもスカイスキャナー、携程のネットサービス利用者のもので、会社や組織が旅行代理店を通じて団体旅行を実施するケースもあるので単純比較はできないが、中国の団体旅行の割合は、ほぼほぼ日本と同程度になったと考えていいのではないだろうか。
▲中国人海外旅行者の旅行形態。個人旅行が圧倒的で、団体旅行はわずか3%まで激減している(統計の母集団が、ネットサービス利用者であることに注意)。ひとり旅も20%に到達している。
▲JTBの旅行統計による日本人の海外旅行形態。団体旅行がまだ15%もいる。いわゆる個人旅行は半数程度でしかない。
SNSや友人から旅行先を決める中国の若者
旅行先を決めるのに影響した要因を訪ねてみると、SNSと友人の比率が高い。オンラインとリアルの交友の中で、旅行先を選んでいることがわかる。テレビなどの娯楽番組の影響はまだ22%と高いが、広告はもはや5%でしかない。既存のチャネルが大きく後退している。
また、面白いのはインフルエンサーの影響力が9%とまだ小さいことだ。ショッピングなどではインフルエンサーの影響は無視できないどころか、それにより消費動向が動くところまできているが、旅行に関してはまだインフルエンサーの影響力はさほど大きくはない。今後、どうなっていくか、注目しておく必要がありそうだ。
▲旅行先を決めるのに影響をしたメディア。SNSが強く、娯楽番組、友人と続く。インフルエンサーの影響力がまださほど強くないところが興味深い。今後、海外旅行インフルエンサーも登場してくるかもしれない。