中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

独身の日セールの返品率は25%?限界にきている11月11日

11月11日独身の日セールは、今年も数々の記録を更新して大成功に終わった。しかし、一方で、大幅値引きにより利益は圧縮され、返品率が高まり、販売業者、宅配業者の間には根を上げるところも増え始めている。セール期間の返品率は25%に達するのではないかと開淘が報じた。

 

10年で70倍に成長した独身の日セール

11月11日の独身の日セールは、今年も多くの記録を更新して終わった。国家郵政局の発表によると、11月11日だけで全国の宅配便受付は13.52億件に達し、昨年よりも25.12%増加した。宅配企業が期間中処理した宅配便件数も1日平均4.16億件となり、これも昨年よりも25.68%増加した。

独身の日セールは今年で10年目にあたる。2009年の初回のセールでは宅配便件数が584万件だったので、10年でなんと70倍に増加したことになる。日本の年間宅配便件数は40.18億件。つまり、日本の4ヶ月分程度の宅配便が1日で発生していることになる。

f:id:tamakino:20181206200809j:plain

▲独身の日は、アリババだけが得をする日になりつつある。

 

すでにカラクリが透けて見え始めている

この独身の日セールは「爆買い」「中国人の旺盛な消費欲」と語られることが多いが、10年目に入って様相はかなり違ってきている。

なぜこの日に多くの中国人がECサイトで買い物をするかというと、お得だからだった。セール以前には大量のクーポンが配布され、当日は多くの商品が大幅値引きされる。つまり、普段から欲しいものがあっても、セールまで我慢をして買っているようなところがある。

ところが、近年は、独身の日セール以前にいったん値上げをして、そこからセール直前に値引きをし、値引率が大きいように偽装する手法が横行している。クーポンも「500元購入で、200元割引」というものが多く、割引特典を得るために、不要なものまで買って、合計金額を割引が得られる金額にするケースも多い。結局、無駄なものまで買ってしまっているのだ。

すでに多くの消費者がそれに気がついていて、セール当日を冷ややかな目で迎えている人も増えてきている。

 

ここ数年、返品率が急激に上昇をしている

その中で、上昇しているのが返品率だ。クーポンなどがどんどんもらえるので、ついつい買ってしまうが、届いてみたら、安くもないし、欲しいものでもない。それで返品をする人が増えているという。

昨年の独身の日セールでは、アリババのタオバオが912億元の売上を上げたが、そのうちの574億元分の商品が返品されたというデマが流れた。このようなデマがまことしやかに信じられるほど、多くの人が返品をしたいという気持ちが強くなっている。

f:id:tamakino:20181206200802j:plain

▲独身の日セール期間中の仕分けセンター。日本人の感覚では、「ひどいありさま」にしか見えないが、処理能力をはるかに超えた荷物を扱うため、仕方のない状況でもある。

消費者保護政策が整備され、返品率は25%とも

独身の日セールに参加して3年目になる服飾品販売業の営業責任者が新金融観察の取材に応えた。「通常の返品率は10%程度ですが、独身の日では30%に達する可能性もあります。ですが、この数字は業界内では低い方だと思います。返品率50%という数字を見たことがありますから。服飾品は返品率の高い商品なので、返品率を織り込んで価格設定をしています。化粧品や玩具などは返品率が比較的小さいですね」。

服飾品関連では「理由を問わず7日以内は無料返品」をうたっている業者が多い。ECサイトで購入するときはサイズ感がよくわからず、色合いや素材感も実物を見ないとはっきりしない。そこで同じものを複数サイズ、複数色を購入して、不要なものを返品するという買い方をする人が増えている。新金融観察記者の業界人に対する取材の感触では、独身の日セール全体の返品率は25%前後になっているのではないかという。

ECサイトが始まった頃、消費者は粗悪品をつかまされても泣き寝入りするしかない状況だった。そのため、弱い立場である消費者を保護するため、政府は「ネット交易管理法」「工商行政管理部門消費者クレーム処理法」などの法律を整備して、消費者保護政策を進めてきた。そのため、現在では消費者は気軽に返品をすることができるようになった。しかし、業者の間からは「立場は逆転している。業者の方こそ保護してほしい」という声が上がっているという。

 

セールでしか買わない消費者、セールでしか売れない業者

さらに問題なのが、セール終了以後の期間だ。独身の日セールに参加した業者はほぼ1ヶ月、まったく売れない状況が続くという。さらに、今では12月12日のセールや京東の6月18日のセールも行われている。この度に、価格を下げることを強要され、その他の期間は商品が売れなくなる。そのため、商品が動かない平常時には、あえて高めの価格設定にしておき、セール直前になって適正価格に戻し、大幅値引きをしたように見せて、セール期間にすべてを売り切ってしまうような業者が増えてきている。消費者も、業者のこのような思惑をわかっているので、ますますセールにしか物を買わない人が増えていく。

f:id:tamakino:20181206200812j:plain

▲宅配配達員は、通常時は1日100個程度の荷物を戸別配送するが、独身の日直後は毎日300個を配送しても処理が追いつかないという。さらに、25%の商品が返品をされ、逆方向の配送が発生するため、宅配物流は大混乱に陥る。当然、破損、紛失のトラブルも続出する。

サバイバルできるのは資本力のある大手のみ

大手ブランドは、価格を下げ、利益が圧縮されても、そのブランドの認知度が広がるためセールでの値引きは意味がある。しかし、中小のブランドや業者にとって、独身の日セールは頭の痛い問題になってきている。

であれば、ECサイトから離脱すればいいじゃないかと思うが、もうそうはいかない。中小業者にとって、ECサイトから離脱するということは販路を失うということで生きていけない。利益がいくら少なくなろうとも、ECサイトに出店をして、セールに参加せざるを得ないのだ。

独身の日セールが始まって10年。毎年、販売額を更新し続けて成長をしてきたが、もはやアリババしか得をしない日になっている。従来型のセールは、もはや限界にきている。

V-BOT リラックマ だららんロボットクリーナー VBRK01 VBRK01

V-BOT リラックマ だららんロボットクリーナー VBRK01 VBRK01