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モバイル広告の主戦場は、テキストからショートムービーへ。都市から地方へ

モバイル広告市場のプレイヤーに変化が起きている。3強と呼ばれたBATの一角、百度が第2グループに後退し、Tik Tokのバイトダンスが第1グループに入ってきた。モバイル広告のメディアはテキストからショートムービーに、都市から地方に変化することで成長を続けていくとiiMedia Researchが報じた。

 

モバイル広告市場で、百度が後退、バイトダンスが浮上

2019年の中国モバイル広告市場の規模は、iiMedia Researchの推計によると4158.7億元(約6.6兆円)。年々増加しているが、その増加率は緩やかになってきている。

従来、この分野でも3強はBAT(百度、アリババ、テンセント)だったが、上位グループに異変が起きた。百度が後退し、その代わりにバイトダンスが入ってきた。

iiMediaの分類によると、第1グループは100億元級の市場を確保しているプレイヤーで、アリババ、テンセント、バイトダンスの3社。第2グループは10億元級の市場を確保しているウェイボー、百度、網易、捜狐、陌陌、小紅書など。検索広告大手と呼ばれた百度が、モバイル広告の世界では第2グループになってしまった。

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モバイル広告メディアはテキストからショートムービーに移行した。そのため、百度が第2グループに後退。第1グループはアリババ(阿里)、テンセント(騰訊)、バイトダンス(字節跳動)の3社となった。

 

モバイル広告の台風の目はTik Tok

この変化が起きたのはなんといってもTik Tokに代表されるショートムービーの成長だ。バイトダンスは、ニュースキュレーションサービス「今日頭条」を皮切りに、Tik Tokだけでなく、火山小視頻、西瓜視頻などの動画共有サービスも保有している。

Tik Tokの成功に、他企業もこの分野に参入している。アリババ、テンセントも例外ではない。

アリババはモバイルウェブブラウザー「UC」内にショートムービーのコーナーを設置し、またECサービス「淘宝」(タオバオ)などにもショートムービーコーナーを設置している。

テンセントは、微視、看点小視頻などのショートムービーサービスをリリースしている他、QQ、テンセント視頻などの中にショートムービーコーナーを設置している。

百度も全民小視頻などのショートムービーサービスをリリースしているが、苦戦を強いられているのが現状だ。

 

モバイル広告はテキストからムービーへ

アリババとテンセントは、6億人級と呼ばれるモンスターアプリを複数持っている。アリババは「アリペイ」「タオバオ」「UCブラウザー」「優酷」の4つ、テンセントは「WeChat」「テンセント視頻」「QQ」「QQブラウザー」の4つ。このようなモンスターアプリの中にショートムービーコーナーを増設することで、ショートムービーの広告市場に参入をしている。

一方の百度は、モバイルへの転換が遅れたこともあり、「百度検索」、「百度貼吧」の2つが3億人級アプリであり、ショートムービーにはまだうまく対応できていない。また、バイトダンスの「Tik Tok」「今日頭条」も同じ3億人級だ。

百度は同じ規模の検索、テキスト系メディアを持ち、バイトダンスは同じ規模のムービーよりのメディアを持っている。しかし、百度の広告規模は第2グループに後退をし、バイトダンスは第1グループに浮上をした。実に対照的な関係になっている。

 

長時間化、若年化、地方化の3つの傾向

モバイル広告には、3つのトレンドが進行中だ。「長時間化」「若年化」「地方化」の3つだ。

2018年、モバイル広告を15秒以上見た人は40.5%だったが、2019年には46.5%と増加している。言うまでもなく、モバイル広告が表示されるコンテンツが、ウェブページからニュース、ショートムービーへと移ってきたのが要因だ。

また、モバイル広告を見た人の81.0%は35歳以下。若年化が進んでいる。さらに、都市規模別に見ると、1級都市は19.7%、2級都市が48.3%、3級以下都市が32.0%と、大都市よりも地方都市が主体になっている。

これもショートムービーの流行と関連していると考えられている。大都市では、ウェブページ、ニュースアプリなど、情報の摂取効率がいいテキスト情報が好まれる傾向があるが、地方都市の若者たちは娯楽性の高いショートムービーが好まれる。1級都市から2級都市までの都市人口は約3.9億人。しかし、3級都市以下の地方人口は約10億人もいる。

地方都市住人が娯楽性の高いショートムービーを好むため、モバイル広告の主戦場はテキストからショートムービーになり、都市から地方へと変化している。

しかも、意識調査では、モバイル広告をタップして購入ページを開く人が20.9%、内容によってタップをするという人が43.2%いる。さらに、広告されている製品やサービスを、よく買うという人が12.2%、時々買うという人が23.7%、物によってという人が20.5%と、コンバージョンも極めて高くなっている。

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iiMediaによるモバイル広告市場規模の推移。成長率は下がってきたものの、ショートムービーに主戦場が移行することで、モバイル広告市場はまだ成長すると予測されている。

 

ショートムービーによりモバイル広告市場はまだ成長する

iiMediaは2020年のモバイル広告市場を4844.9億元、16.5%の伸びと予測している。成長率は年々鈍化しているものの、まだまだ成長期にあると見られている。その原動力はショートムービーであり、今後ウェブのメディアもさらにショートムービーを活用したものが増えていくと見られている。