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地下鉄改札で起きているQRコード渋滞。ようやくNFCに向かい始める中国

地下鉄のラッシュ時に改札で渋滞が起きる現象が起きているという。改札前まできてから、スマホを取り出し、アプリを起動し、QRコードを表示するという人が多いからだ。普及し始めたNFCスマホ決済に移行する人が増えていると科技小解が報じた。

 

チャージが面倒なNFC交通カード

中国の地下鉄に乗るには4種類の決済方法がある。

ひとつはNFCの交通カードを使う。事前にチャージをしておき、料金はそこから引き落とされる。タッチするだけいいので最も便利で、外国人も購入できる。ただし、面倒なのは、チャージをしなければいけないことだ。最近では現金やスマホ決済でチャージができる自販機も設置されるようになっているが、多くの場合、有人の窓口に行かなければならない。

もうひとつ不便なのは、交通カードは市単位で発行されるもので、北京市の交通カードで西安市の公共交通を利用することが基本的にできない。本来は、統合を進めていき、全国で統一される予定だったが、利害関係が絡み、都市ごとの連携は進んでいるものの全国統一にはほど遠い状況だ。旅行者や出張族には不便だ。

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QRコードはNFCと比べて反応速度が遅い。一度立ち止まってからかざす感覚だ。しかし、それよりも改札前になってQRコード表示の操作をする人が渋滞の原因になっている。

 

QRNFCどちらがいいのか?

2つ目が現金またはスマホ決済で自販機を使って切符を買う方法。面倒であるために使う人は少なくなっているが、出張族、旅行者などがその都市で1回だけ乗るときなどには使われる。紙の切符ではなく、磁気カード、1回だけ利用できる交通カードの形式になっているところが多い。

3つ目は、スマホ決済「アリペイ」「WeChatペイ」などのQRコードをかざして乗車する方法。チャージをする必要がなく、対応している都市であれば、どこでも利用することができる。その利便性から、出張族だけでなく、多くの人に使われている。

4つ目がNFCスマホ決済。スマホ決済され、スマホをタッチするだけでいいので利便性は高いが、NFC対応のスマホの普及率がまださほど高くないために、一部の人に使われるにとどまっている。

 

改札前渋滞の原因となっているQRコード

どの決済方法を使う人が多いかは、都市によって大きく異なるが、交通カードとQRコード決済の人が主流になっている。

しかし、最近、QRコードをやめて、交通カードに戻ったり、NFCスマホ決済を利用する人が増えているという。QRコード決済のどこに問題があるのだろうか。

QRコード決済の人が増えると、ラッシュ時に改札で渋滞が起きてしまうのだ。QRコード決済の反応速度は遅い。NFC交通カードであれば、歩きながらタッチをすれば改札を通れるが、QRコードの場合はいったん立ち止まって、かざす必要がある。

といっても、この時間差はわずか。最も大きな問題は、改札の前に来てから、スマホを取り出し、アプリを立ち上げ、QRコードを表示する人が多いというのが渋滞の最大の原因だ。つまり、事前にQRコードを表示しておかなければならないのを忘れて、改札の前でやるために渋滞が起きてしまう。スマホの機種によっては、QRコード表示のショートカット機能があるが、それを設定している人は多くはない。駅によっては、駅員がラッシュ時にはQRコードの使用を控えるように呼びかけることもあるという。

また、QRコード決済は、各スマホが認証のための通信を行うため、多くの人がスマホを利用するラッシュ時の駅では、この認証のための通信の遅延が起きることもあり、これも渋滞に拍車をかけているという。

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ラッシュ時に地下鉄改札前で渋滞する様子。改札の前でスマホを取り出す人が多く、さらには、QRコード決済時にはスマホが通信をするため、回線容量を超え、認証の遅延による改札前渋滞が起きている。

 

分離改札では、ラッシュ時に交通カードに戻る人も

多くの都市で、QRコード乗車と交通カード乗車の改札は分離されていることが多い。このような改札では、QRコード改札と交通カード改札の流れがまったく違い、これを見て、通勤時には交通カードを再び使い出す人が増えている。

ただし、大勢がQRコードから交通カードに戻り始めているとまでは言えないようだ。なぜなら、各決済方法は、さまざまなキャンペーンをやっているからだ。多いのは「1分銭乗車」と呼ばれるものだ。1分とは1/100元のことで、約0.16円。実質タダで乗車できるというもので、新しい決済方法を定着させるためによく行われている。

また、バスなどの場合、30分以内に乗り換えると、乗り換えた先のバス代が無料になるなどの仕組みもあるが、都市によって、交通カードのみ、QRコード乗車のみなどさまざまに異なっている。

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銀聯がキャンペーンをしている「1分乗車」。0.01元で乗車できるというもの。銀聯はシェアを落としていたが、アップルペイなどのNFCスマホ決済に対応をして、シェアをじわじわと伸ばしつつある。

 

最終的にはタッチするだけのNFC方式が本命か?

このような割引キャンペーンがあると、多少の不便さに目をつぶっっても、安い方の決済方法を利用する。そのため、現在はQRコード乗車をする人が多く、今日も改札の前まで来てからスマホを操作する人がたくさんいて、改札は渋滞をしている。

科技小解は、この問題をみんなで議論してほしいと訴え、記事には多くのコメントが寄せられている。利便性だけを考えたら、QRコードよりも、交通カード、NFCスマホ決済だが、さまざまな割引キャンペーンがあるのでQRコードを使うという意見が多い。また、最終的にはロック解除せずにスマホをタッチするだけで改札を通ることができる方式に集約されるという人が多く、「アリペイ」「WeChatペイ」に押されてシェアを落としていた銀聯が「銀聯スマホペイ」でNFC乗車を始めて、好評を得ている。また、アップルペイやサムスンペイ、ミーペイ(シャオミー)などのNFCスマホ決済に対応する都市も増えつつある。

現在は、混沌としている乗車の決済方法だが、NFC対応機種が増えるとともに、NFCスマホ決済に移行をしていくとコメントしている人が多い。切符、交通カード、QRコードとさまざまな方式を試してきて、ようやくNFCスマホ乗車に向かおうとしている。