中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

中国テック企業は、新型コロナとどう戦っているか

まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。
明日、vol. 010が発行になります。

 

中国で起きている新型コロナウイルスアウトブレイク。状況は日本のメディアも報道されているので、みなさんよくご存知のことかと思います。
このメルマガでは、各テック企業が、この新型コロナに対して、どのような動きをしているかをご紹介したいと思います。

 

最も敏感に反応したのは、アリババでした。なぜなら、アリババは2003年のSARSアウトブレイクにも大きな関係があったからです。この頃のアリババは、ECサイト「淘宝(タオバオ)」を始めたばかりのスタートアップ企業にすぎませんでした。多くの中国人がアリババという名前をまだ知らなかった頃です。
SARSは2002年11月中旬に中国広東省で発生しました。最終的には、8098名の患者と774名の死亡が確認されています。日本では感染可能性のある患者が68例報告されただけで、結果として患者は発生しませんでした。


アリババの本拠地、杭州市でも感染が広がりましたが、最初に確認されたのは3名でした。そのうちの1人がアリババの社員だったのです。広州市のビジネスイベントに出席して感染したものと考えられています。この当時のアリババは全社員が400名程度でしたが、全員を1週間在宅勤務にしました。
この400名の「隔離措置」は、人民日報を始めとする各メディアから猛烈に批判されます。「騒ぎすぎだ」というのです。「経済を止めてしまう代償の方が大きい」「人々に心理的な不安を与える」というのです。しかし、今振り返れば、ジャック・マーの素早い判断は正しかったことがわかります。


アリババは必要な物資の確保に走ります。今の新型コロナと同じように、マスクが不足し、食糧が不足していました。人々は外出を控え、人混みを避けるようになったため、小売店の店舗からは人がいなくなります。そこで、多くの人がECを使うようになり、アリババのタオバオが急速に知られるようになったのです。これはアリババの成長の大きなきっかけになりました。

 

もちろん、ジャック・マーは、この時にビジネスも忘れていません。経済活動が停滞気味の中で、タオバオのテレビ広告を全国に流しました。この時は、多くの人が外出を控え、しかもイラク戦争が起きている最中だったので、多くの人がテレビを見てすごしていました。アリババとタオバオの名前が全国で一気に知られるようになりました。
つまり、アリババは、SARSにより直接的な被害を受け、なおかつ、SARSにより会社が成長することになりました。アリババがこの新型コロナに無関心であるわけがありません。


新型コロナが武漢市で感染拡大をしているという一報が入ってすぐ、アリババがやったことは、自分たちにもすぐできることーータオバオでのマスクの高値販売禁止でした。


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倒産したスタートアップ起業家のリアル。それぞれの苦しみ(1/4)

中国のスタートアップ倒産件数が減少をしている。しかし、起業数も減っているため、これは中国経済停滞のシグナルだ。倒産する理由はさまざまで、燃財経では、倒産をした16人のスタートアップ創業者に話を聞いた。分量が多いため、隔日で4回に渡ってご紹介する。

 

起業家のリアル。苦しみはそれぞれに

「幸福な家庭は同じように幸福だが、不幸な家庭はそれぞれに不幸だ」とトルストイは言った。スタートアップも成功する企業は同じように成功するが、失敗するスタートアップにはそれぞれに失敗要因があるのかもしれない。

テック企業調査ポータル「IT橘子」によると、2019年のスタートアップ倒産件数は336件。近年のピークだった2017年の2145件から比べると大きく減少した。しかし、スタートアップ倒産件数が少ないことはいいシグナルではない。もともとが95%のスタートアップは4年以内に倒産をするもので、倒産件数が少ないということはそれだけ起業する母数自体が減っているということだ。

倒産件数が少ないのは、起業を目指す人が減っているという、経済の倦怠感の現れでもある。

失敗をするスタートアップはどのような原因で失敗をしているのか。燃財経は16人の失敗した起業家を取材した。

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▲中国はどこにでも起業のチャンスが転がっている。しかし、成功する人はごくわずかでしかない。

 

王辰昊、35歳。フィンテック

2017年に創業し、2019年10月に会社を閉じました。支出を抑えるために、1年に5回もオフィスを引っ越すようなありさまでした。引っ越すたびにオフィスは狭くなっていき、最後には120平米のオフィスを友人とシェアする状態でした。

私は猫が苦手なのですが、オフィスをシェアしている友人がオフィスで猫を飼っています。その猫はいつも私のデスクに飛び乗ってきて、私の椅子で爪とぎをします。いつの間にか慣れてしまって、猫が苦手でなくなっていました。

それも家賃の分担で折り合うことができず、それぞれにオフィスを探して引っ越すことになりました。私が引っ越す前、友人は猫を連れていくことを私に勧めました。

引っ越す時に、シュレッダーやプリンターといった道具を持っていくことはできないので、700元で売却しました。しかし、引越し費用にもなりません。どれも購入したばかりのものですが、購入価格の3割か4割程度の価格でしか売れませんでした。

最後の数ヶ月はスタッフに給料を支払うこともできなくなりました。事業が失敗したことよりも、給料が支払えないことの方がつらかったです。給料を支払うために、友人や親戚を訪ねお金を借りて、自宅を抵当に入れて銀行でお金を借りる。思いつくことはなんでもやりました。兄弟姉妹に、お金を借りてもらい、返す時にはお金がないものだから、別の兄弟にお金を借りてもらいということを繰り返し、最後にはどうにもならなくなりました。

 

石冶、39歳。テック

3年で3回起業しました。それぞれが異なる原因で、いずれも失敗しました。

理系の大学を卒業後、普通の企業で10年近く働きました。しかし、成績を上げることができず、転職を考えましたが、それもうまくいかない。自分で起業するしかなくなりました。

私の会社は、昨年の9月に運転資金がショートして以来、おかしくなりました。収入は減り続け、状況は一月ごとに悪くなっていきます。スタッフを解雇せざるを得なくなりました。

最も困ったのは、創業したばかりのいちばん難しい時期に、妻が妊娠したことです。あの時の気持ちは誰にもわかってもらえないと思います。貯蓄はすべて起業に使っていましたし、自宅の家賃を毎月払わなければなりません。会社の収入は不安定なのに、家庭の方の支出は2万元以上になります。しかも、その頃は私の給料などなかったのです。

仕事が終わっても、家に帰りたくありませんでした。妻の顔を見られなかったのです。かと言って、オフィスにいるのも苦痛でした。オフィスにいると、どうやればお金が手に入るかということばかり考えてしまうからです。

ある晩、友人とお酒を飲んで、帰る時には地下鉄もバスも終わっていて、歩いて家に帰りました。陸橋の上に差し掛かると、突然、私は泣き出してしまいました。起業して以来、初めて泣きました。子どもはいらないのではないかとすら考えてしまったのです。

今でも起業の失敗したつらさから抜け出すことができず、心臓はいつも動悸を打っています。

 

傳奕銘、24歳。飲食

2019年2月に倒産をしました。倒産を回避するために、友人や親戚からお金を借りましたが、資金は少なく、支出は多く、スタッフを一人また一人とと解雇していきました。私も厨房に入って料理を作っていました。

会社のお金がいちばん苦しかった時には、私も10数元しか持ってなく、携帯電話は止められている状態でした。銀行に運転資金の借入の相談をしにいっても、相手にしてくれず、午後6時まで放っておかれ、最後には負債が多すぎるので融資はできないと言われるだけでした。その時は冬で、私は冷たい風が吹く中、ひたすら街を歩き、飛び降り自殺ができる場所を探していました。

会社の倒産が決まった時、店の中の調理用具や食材は、周りの人に無料であげました。すると、大きな石を肩から下ろしたような気分になりました。もう一日中会社のことを考えなくて済むと思ったからです。

それからは、毎日、誰か相手を探して、一緒に酒を飲み、酔っては泣いています。起業した頃はみな私に愛想のいいことばかり言って私に取り入ろうとしましたが、今は会う人みなが諸葛亮のようなことを言います。失敗すると以前からわかっていた、君は人の忠告を聞かない、意見をすればするほど反論してくるので、成功しない人だと思っていた。今さら言われてもどうしようもありません。

会社を整理しても、私の生活はあまり変わりありません。倒産前は、毎日どうやって会社を救おうかとそればかり考えていますが、今は、借金をどうやって返そうかとそればかり考えています。

以前は、起業というのは簡単で、人生を切り開く転換点だと考えていました。しかし、今は200万元近い借金があり、それを返さなければなりません。返し終わったところで、人生が開けるとも思えません。起業とは簡単なことではありません。

 

エドワード、27歳。即時配送

創業して4年になりますが、今年、会社をやむなく売却することになりました。起業したばかりの頃は順調でした。私はまだ大学生で、数ヶ月で400万元の投資資金を獲得したのです。

浮かれていたのかもしれません。その年の終わりには、投資資金だけでは足らないことがわかり、次の投資資金の目処も立ちません。

会社は各地区ごとに分社化し、それぞれの分社で採算をとることを考えることにしました。私個人も50万元の借金を背負うことになりました。

いちばんひどい時は、取引先から中華包丁を振りかざして追いかけられたこともあります。従業員に軟禁されて、未払い給料分の借用書を書かされたこともあります。会社のすべての責任を私個人が取らなければならなかったのです。

まだ調子がよかった頃、私は経営パートナーと出会いました。最初は、協業先だったのですが、いつの間にか共同経営者になり、私の会社の経営を見るようになっていました。彼が経営陣に入って、しばらくは会社も成長していました。他都市の市場も開拓してきて、いろいろな課題に直面しましたが、私一人ではなく、彼という仲間がいたために、どんなことも乗り越えていけると思っていたのです。

しかし、会社が成長していくとともに、彼は外から別のパートナーを連れてきて、私を追い出そうとし始めました。

結局、私は私の会社を彼らに売却するしかありませんでした。私たちのビジネスは、外売企業「ウーラマ」や「美団」の委託先で、利益を出すのは簡単ではなく、しかも「ウーラマ」「美団」のプラットフォームは私たちの利益を圧縮させる圧力をかけ続けます。彼らは私たちの利益をよく知っていて、利益が出れば出るほど、手数料を上げてくるのです。

ビジネスに展望が見えない、そしてパートナーによる追い出しを受けて、私は会社を彼らに売却しました。それでも、ごくわずかな株は手元に残しました。彼らが頑張って会社を成長せさてくれれば、そのわずかな株により、私も会社の成長の恩恵に預かれるからです。それが精一杯の抵抗でした。

(3月10日配信に続く)

 

 

京東新小売スーパー「七鮮」が新業態を展開。新小売コンビニを目指す

オンライン、オフラインの購入体験を融合した新小売スーパー。この分野では、アリババのフーマフレッシュが圧倒的な強さを見せているが、ライバルたちも追従している。その中で、京東は「七鮮」を、地域住民、オフィスワーカーに的を絞った2業態を新たに展開した。スーパーというよりは、コンビニに近い業態で、今後、コンビニ領域の競争が激化することが予想されると零售老板参考が報じた。

 

独走するフーマの追走を始めた京東のセブンフレッシュ

オフライン購入体験とオンライン購入体験を融合する「新小売スーパー」。消費者はTPOに合わせて、「店頭購入/スマホEC購入」「持ち帰り/宅配」を自由に組み合わせて利用することができる。

1)スマホ注文、宅配

2)店頭で購入、持ち帰り

という従来の購入体験だけでなく、

3)店頭で購入、宅配(重い荷物を持って帰らなくていい)

4)スマホ注文、持ち帰り(レジに並ばなくていい)

などの購入方法が可能になる。

この新小売スーパーでは、アリババの「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)が圧倒的に強いが、アリババと同じくECサービスの京東(ジンドン)が「七鮮」(セブンフレッシュ)、蘇寧易購が「スーフレッシュ」を展開。また、チェーンスーパーの永輝(ヨンホイ)が「超級物種」を展開して、フーマと競っていた。

しかし、フーマを追いかける3社の成績は芳しくなく、フーマの一人勝ちと見られていた。

しかし、京東は「七鮮生活」(セブンフレッシュライフ)、「七范児」(セブンファン)の2業態を新たに展開、さらに2025年には、雑貨のMUJIとコラボした業態の展開も計画している。

このままフーマの独走は許さないという京東の挑戦が始まっている。

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▲京東の新しい業態「セブンフレッシュライフ」。面積は標準的な地域スーパーと同じで、宅配もする。スーパーというより、大型コンビニ感覚だ。

 

新小売スーパーのキモは宅配EC比率

フーマが頭抜けているのは、宅配EC率の高さだ。多くの店舗で60%以上を達成していて、70%を目標に掲げている。宅配率が高ければ、単位面積あたりの売上はいくらでも上げていくことができ、すでに同規模スーパーの4倍近くになっている。2018年には、スーパー、コンビニチェーンストア売上ランキングで、店舗数が200店舗規模と少ないのに、18位まで上がってきている。

フーマは現在26都市200店舗+を展開し、売上高は200億元(約3000億円)を超えている。これは中国ウォルマートの1/4、ドラッグストアのワトソンズとほぼ同じだ。

追従する「セブンフレッシュ」「スーフレッシュ」「超級物種」が苦戦をしているのは、宅配EC比率をあげられないことだ。宅配ECを伸ばすには、配送スタッフを抱えなければならない。しかし、配送スタッフは固定費となり、外部委託をすればコストがかかる。配送部門に思い切った投資ができないため、積極的に宅配EC率を伸ばしていくことができない。「宅配もやっているスーパー」になってしまい、既存のスーパーと明確な違いが打ち出せていない。各チェーンは宅配EC率を公表していないが、各メディアによると20%から30%の間であるようだ。

 

規模の小ささが遅れをとっている要因

もうひとつ、フーマの強味が、その規模だ。SKU(商品種別)は6000程度と一般の地域スーパー並みだが、店舗面積は1万平米が標準になっている。フードコートが用意され、販売されている食品を使った料理が安価で提供されている。

一方、他社の新小売スーパーは、5000平米以下が多く、SKUは3000程度。つまり、新小売スーパーというより、新小売コンビニに近い感覚なのだ。

これが利用者の使いづらさを生んでいる。例えば、夕飯の食材を買いに出かけても、必要なものすべては揃わない。そのため、結局、普通のスーパーにもいかなければならなくなる。だったら、最初からウォルマートカルフール、永輝といった既存スーパーに行った方がいいと誰しもが考える。

フーマとその他の新小売スーパーの違いは、一言で言えば、投資の本気度の違いだ。

 

地域住民をターゲットにした北京店「ライフ」

セブンフレッシュは、このような問題を解決するために、立地に合わせて「ライフ」と「ファン」の2業態へ分割する試みを始めた。ライフは住宅地のファミリー層を狙い、ファンは商業地区のオフィスワーカーや単身者を狙う。SKUはいずれも3000程度だが、対象とする顧客を明確にすることで、それに合わせた品揃えにする。

セブンフレッシュライフの1号店は、北京市回龍観に開店した。面積は500平米と小さいが、その地区で必要とされる3000SKUに絞り込んでいる。また、宅配エリアは半径1.5kmと小さく絞り、なおかつ78元以上の購入で無料、それ以下の場合は配送費6元となる。

さらに住宅地ならではのサービスとして、宅配便やクリーニング、光熱費の支払い、宝くじなどの扱いもする。

また、10%は直営店になるが、90%はフランチャイズを募集するのだという。

感覚的には、新小売スーパーというよりは、日本のコンビニに近い。実際、営業時間は24時間が基本に設定されている。日本のコンビニに、生鮮食料品が置かれ、宅配もするといった業態だ。

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▲コンビニではお馴染みになっている「おでん」も販売している。

 

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▲お惣菜なども充実させ、地域の人を取り込もうとしている。

 

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▲SKUは3000程度とコンビニ並みだが、対象顧客を絞り込むことで、それに合わせた品揃えにしている。

 

オフィスワーカーをターゲットにした北京店「ファン」

セブンファンの1号店は、北京市のオフィス街「北京銀河SOHO」内に開店した。こちらは950平米と広目で、しかも500平米がフードコートになっているのが特徴だ。SKUは3500程度だが、酒類、つまみ類が揃えられ、店内にバーも設置されている。朝はオフィスワーカーの朝食店として、昼はカフェとして、夜はバーとして使われることを想定している。

宅配エリアは半径3km。オフィスビルが多い地区なので、配送の効率はよく、注文単価も高くなることから、ライフよりも広く設定されている。

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▲「セブンフレッシュファン」は、オフィス街に出店し、軽食が食べられるコーナーも設けている。

 

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▲「セブンフレッシュファン」は、オフィスワーカーをターゲットにすぐに食べられる食品、飲料を充実させている。

 

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▲軽食コーナーでは、韓国料理やお酒も提供される。朝昼は軽食、午後はお茶、夜はお酒と時間によって提供する商品を変えていく。

 

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▲夜にはライブも行われ、バーとしても機能する。

 

京東は新小売コンビニを目指すのか

さらに、第4の業態として、無印良品とコラボをする大型店も計画中だという。

京東のこのような展開がうまくいくのかどうかは、もちろん誰にもわからない。しかし、メディアや専門家は好意的だ。なぜなら、「新小売スーパー」というジャンルでは、フーマフレッシュがすでに圧倒的な地域を築いてしまったため、これから正面対決をしていくというのは相当に難しい。消耗戦になるのは明らかで、体力のあるアリババに勝つことは極めて難しい。

セブンフレッシュの今度の業態転換は、敵をフーマフレッシュからコンビニ変えたということだ。対コンビニということであれば、京東が持つ強力な物流と、「宅配もする」という新小売機能を活かすことで、既存コンビニに対して優位に立てる。京東は、すでに無人運転カートやドローンを使い、部分的な無人配送を始めている。住宅地では難しくても、オフィス街ではこのようなテクノロジーをいち早く投入することも可能になる。

セブンフレッシュが業態転換をしたことで、新小売スーパーよりも、既存店も巻き込んだコンビニの競争が次のステージに進みそうだ。

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▲京東は独自の物流網を持っていて、それが京東の強みになっている。その強みを生かして、小規模店を多数展開していく戦略ではないかと見られる。テクノロジー開発にも積極的で、自動運転カートによる配送は、すでに北京市の一部などで実施している。

 

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▲京東は、ドローン配送も地方ですでに始めている。都市部でも、ドローン配送と自動運転カートを組み合わせた無人配送の仕組みを開発中だ。

 

 

実店舗小売チェーンにも広がる「新小売」。SNSと絡めることで潜在顧客を掘り起こす百果園

実店舗を展開する小売チェーンの間にも、新小売が広がっている。オフライン購入体験とオンライン購入体験を融合するというものだ。全国の4000店舗を展開する果物小売チェーン「百果園」では、SNSと絡めた地域ソーシャルECのような仕組みを導入することで、地域の潜在顧客の掘り起こしに成功していると美通社が報じた。

 

ライバル関係になってしまう店舗と直販EC

中国の小売業で起きている大きな潮流が「新小売」だ。この新小売の概念は、日本には存在しないため理解しづらいが、簡単に言えば「店舗での購入体験とECでの購入体験を融合する」ことで、オフライン購入とオンライン購入のいいとこ取りを狙ったもの。

日本でよくある「店舗をチェーン展開し、直販ECサイトでも販売をする」という形式とは異なっている。これは「オフラインとオンラインの並列」であり、購入体験の融合はできていない。そのため、ECに力を入れすぎると、店舗売上が下がってしまい、店舗のショールーム化が進んでしまう。

既存店舗売上を業績の目安としている小売業は多く、店舗責任者は自分の店舗の売上に強い関心があるため、本音では直販ECを歓迎していない。同一企業内で、店舗とECがライバル関係になってしまい、互いに牽制し合うために、互いの成長を阻害してしまうところがある。

 

新小売は、店舗在庫を起点にした地域EC

一方で、新小売は、「店舗の在庫を近隣に短距離配送する」が基本になっている。店舗在庫を宅配するので、当然店舗の売上となる。店舗責任者は、店舗の売上だけでなく、宅配ECの売上もあげようと工夫をするようになる。

極論すれば、宅配ECが伸びて、店舗はショールームになってもかまわない。新小売を導入しているチェーンの多くは、店舗はショールームと体験の提供の場であり、宅配ECで売上を上げるという考え方をとり、店舗の強みとECの強みをうまく組み合わせようと工夫をしている。

さらに、宅配ECではSNSと組み合わせることで、ソーシャルEC化をして、地域の潜在顧客を掘り起こすことが可能になる。現在、新小売化を進める小売チェーンが最も注目しているのが、この地域ソーシャルECだ。

 

アプリ利用を阻む3つの離脱ポイント

この地域ソーシャルECによる潜在顧客掘り起こしに最も寄与しているのが、WeChatのミニプログラムだ。

ミニプログラムというのは、アプリ内アプリのこと。WeChatを開いて、名称で検索すると、さまざま小売業のミニプログラムが見つかる。中身はウェブページやアプリと同じ感覚で、そこから商品を注文したりすることができる。

一見、スマホのネイティブアプリと同じに見えるが、このミニプログラムが小売業に与えた影響は大きかった。スマホアプリの抱えていた課題を見事に解決をしたからだ。

小売業が直販EC用のアプリを公開するというのは、どの国でも行われている。しかし、消費者がそれを使いこなすまでにはいくつもの高いハードルを超えなければならない。

1)アプリストアでアプリを見つけてダウンロードしなければならない

2)アカウントを作成して会員登録をしなければならない。

3)決済方法を登録設定しなければならない。

アプリが使えるようになるまでに、大きく3のハードルがあり、その度に離脱が起きてしまい、潜在顧客のごく一部しかアプリに誘導できない。そのため、クーポンなどの優待施策をするのが一般的だが、結局、元々忠誠度が高かった顧客ばかりが利用することになり、潜在顧客を掘り起こすことは難しかった。

 

利用ハードルが低いミニプログラム

ミニプログラムは、このようなハードルがほとんどない。

1)WeChatアプリの中から、検索するだけで、目的のミニプログラムが表示される。「付近のミニプログラム」といった探し方や、ブックマークしておく、SNSで共有するなど、さまざまな入り口が用意されている。

2)アカウントはWeChatアカウントがそのまま流用されるので、会員登録をする必要なく使える。

3)決済方法は、自動的にWeChatペイが登録されるので、設定の必要はない。

ECアプリをインストールする時、誰もが考えるのが「そのECをよく使うか」ということだ。使う頻度が低いアプリをスマホに入れたくないし、一度の購入のために会員登録をするのも面倒、そのまま放置するのもセキュリティ的に不安などいろいろ考えてしまう。しかし、ミニプログラムであれば、1回だけ試しに使ってみるということが簡単にできる。気に入らなかったら、ブックマークせず、放置すればいいだけだ。

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▲百果園のミニプログラム。見た目はアプリとほぼ同じだが、インストール、アカウント登録、決済方法設定が不要で、WeChatの中から簡単に呼び出すことができる。

 

百果園の売上はすでに40%がミニプログラム経由

中国で4000店舗を展開する果物店「百果園」は、このミニプログラムを活用して、新小売化に成功している。WeChatミニプログラムをリリースして18カ月、利用者数は2100万人を超え、月間アクティブユーザー数は350万人になる。2019年の12月12日には、店舗とミニプログラムで大規模なセールを行い、1日で1.2億元(約18.6億円)の売上をあげた。現在、売上の40%程度がミニプログラム経由のものとなっている。

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▲ミニプログラムからの注文では、3km圏内59分配送も行なっている。大量に購入する人には、重い果物を持って帰る必要がなく、歓迎されている。

 

店舗受取で、ついで買いによる客単価上昇を狙う

百果園の新小売の特徴は、全国4000店のチェーンネットワークを活かし、地域店舗を起点にしていることだ。ミニプログラムで購入した場合、3km圏内59分配送を選ぶこともできるが、店舗受取も選べる。

店舗受取の場合は、割引、優待クーポンの発行、ポイント増額などの優待があるため、店舗受取を選ぶ人も多い。店舗に受け取りにきた客は、陳列されている商品を見て、ついでに他のものを買っていくことが多く、客単価をあげることにつながっている。

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▲百果園の店舗。珍しい果物なども陳列されている。宅配ECを利用した場合でも、店舗受取にすると優待が受けらられる。店舗にきてもらうことで、ついで買いによる客単価上昇を狙っている。

 

共同購入まとめ買いとSNSで潜在顧客を掘り起こす

さらに、百果園独特の試みが「まとめ買い」だ。店舗ごとにまとめ買い商品をミニプログラムに掲示し、大幅な割引をしている。ただし、そのセール品を買うには、2つ条件がある。ひとつは、申込人数の条件をクリアすること。同じ商品を2人から5人程度、買う人が集まらないとまとめ買いが成立しない。もうひとつの条件がまとめ買い商品は宅配ではなく、店舗受取のみということだ。

この「まとめ買い」施策をWeChatのミニプログラムで展開していることに意味がある。まとめ買いをしたい人は、そのままSNS「WeChat」を通じて、知り合いや友人などに共有をする。共同購入者になってほしいからだ。

共有された人は、WeChatで送られたまとめ買い情報をタップをするだけで、百果園のミニプログラムが立ち上がり、そのまま購入することができる。つまり、お客さんがお客さんを紹介してくれるようなものだ。

まとめ買いをすることで、店舗では一気に在庫が捌けるので、店舗責任者は在庫を見ながら、どの商品をまとめ買いにするかを立案していく。うまく使うと、商品のロスが少なくなり、店舗の利益率を高めていくことができる。

さらに、まとめ買いは店舗受取なので、店舗でのついで買いによる客単価アップも期待できる。

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▲百果園の「まとめ買い」情報。左上のものでは、A級のタネなしブドウ500gが9.9元で購入できる。ただし、2人団なので、もう一人共同購入者を探さなければならない。SNS「WeChat」を使って、知り合いやご近所さんに、この情報を転送して誘う。それが潜在顧客の掘り起こしにつながっている。

 

ご近所さんに情報が拡散される。15%が新規顧客

しかし、このまとめ買いが最も貢献しているのが、新規顧客の獲得だ。まとめ買い情報は、SNSを通じて拡散していく。まとめ買いは店舗が実施するものなので、多くの場合、ご近所さんで作っているグループや近隣の知り合いに拡散をする。その中には、百果園のことを知っていても、利用したことがないという人がたくさんいる。このような潜在顧客が、まとめ買いセールをきっかけに百果園を利用することになる。まとめ買い購入者の約15%は新規顧客になっているという。

新規の顧客でも、ミニプログラムは、会員登録は不要、決済方法は自動設定なので、途中で離脱されることは少ない。ミニプログラムで行っているまとめ買い施策が、新規顧客の獲得につながっている。

 

店舗起点のECが新小売の要になっている

ミニプログラムは、見た目はネイティブアプリと何も変わらないように見える。しかし、決済アプリの中のアプリ内アプリであるため、アカウント情報、決済方式は決済アプリのものがそのまま流用されるため、利用者はインストール、アカウント登録、決済方法の設定という煩わしさがない。

ECサービスがスマホの機能を使いこなして、さまざまな施策を打つのは当たり前のことだが、実店舗をベースにした小売チェーンがスマホをうまく活用して、収益力を高めることは簡単ではなかった。それがミニプログラムを活用することで、実店舗ベースの小売業もオンラインとオフラインの購入体験を融合させる新小売化が可能になっている。

百果園は、実店舗を起点とする新小売をデザインすることで、来店客数、客単価、新規顧客の獲得を大きく改善することに成功をしている。

 

 

テック起業の創業者の成功の鍵は「弱い絆」。拼多多、アリババの成功に寄与した弱い絆

弱い絆とは、接触時間、濃度が大きくない緩い結びつきのこと。異なる考え方、行動様式を持っているため、ものごとを多角的な視点で考えることができ、新しいアイディアに結びつきやすい。拼多多、アリババなどの成功には、この「弱い絆」がきわめて重要な働きをしたとテンセント網が報じた。

 

強い絆と弱い絆の両方が必要

弱い絆」とは、米国の社会学者マーク・グラノベッターの提唱した「弱い絆の強み」という説。家族、親友、同僚という強い絆が重要であることは言うまでもないが、知り合い、SNS上の繋がりと言う弱い絆も重要であるというもの。

強い絆は、長時間接触し、互いに影響し合うために、考え方や行動が次第に似通ってくる。そのため、新しい情報探索をする場合、冗長性が高くなる。似たような情報ばかり探してしまうのだ。

一方で、会う機会が多くない知り合い、SNS上の知り合いは、互いに影響される度合いが少ないため、それぞれに異なる考え方や行動を持っている。そのため、新しい情報探索をする場合、冗長性が低く、効率がいい。つまり、異なる情報が集まってきやすい。

簡単に言えば、新しいアイディアを考えなければならない時、いつものメンバーが会議室に集まって、うんうん唸っても何も新しいことは見つからない。むしろ、外に出て、弱い絆の人と会い刺激を受けた方が見つかる可能性が高いというものだ。人が生きていくためには、強い絆と弱い絆の両方が必要だというもの。

 

拼多多創業者の成功の鍵は「弱い絆

2019年7月、ソーシャルEC「拼多多」(ピンドードー)が、創業2年4ヶ月で米ナスダック市場に上場した。拼多多は利用者数、月間アクティブユーザー数で、京東を抜き、中国第2位のECに成長をし、アリババの背中が見え始めている。

創業者の黄(ホアン・ジェン)は、拼多多の株式の50.7%を所有しているため、わずか28カ月で、800億元(1.25兆円)の資産を持つことになった。黄杭州市のごく普通の家庭に生まれ、親のコネクションなど何もなかった。そこから、米国留学、グーグル入社、帰国後創業と自分で自分の道を切り開いてきた。

その成功の秘密が、「弱い絆」にあると話題になっている。

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ウォーレン・バフェット氏と食事をともにする拼多多の創業者、黄。当時はグーグルのエンジニアだったが、SNSで知り合いになった歩歩高の創業者、段永平が連れて行ってくれた。これがきっかけとなり、段永平は黄のメンターとなり、そこから拼多多の創業アイディアも生まれてきた。

 

SNSで網易の創業者と知り合う

2002年、浙江大学の4年生だった黄は、ベッドに寝そべりながら、PCからマイクロソフトSNS「MSN」にアクセスすると、見知らぬ人が友人の申請をしてきた。黄はコンピューター科学を専攻し、日頃からMSNでテクノロジーに関する文章を公開していて、その人は、黄にある技術的な問題を尋ねてきた。黄にとっては難しい質問ではなかったので、親切に答えた。すると、その人はとても感謝をしてきた。この人は、丁磊(ディン・レイ、ウィリアム・ディン)。エンタメポータル「網易」の創業者で、この時にはすでに網易をナスダック市場に上場させていた。

2人の関係は、あくまでもSNS上の知り合いでしかなかった。黄にとって丁磊は創業して上場させたすごい人であり、丁磊にとって黄は優秀な大学生という関係だった。

 

さらに歩歩高創業者に広がる

丁磊は自分の友人である段永平(ドアン・ヨンピン)を黄に紹介した。段永平は、ファミコンの互換機「小覇王学習機」をヒットさせ、「歩歩高」(ブーブーガオ)を創業した人物だ。この歩歩高から、スマホメーカー「OPPO」「vivo」が生まれてくる。

は米国留学が決まった時、初めて段永平と会うことになった。しかし、それだけで、黄にとって段永平は歩歩高を創業したすごい人であり、段永平にとって黄は米国に留学をする優秀な大学生という関係にすぎなかった。

 

歩歩高創業者が一生のメンターとなる

は、ウィスコンシン大学マジソン校に留学をし、修士号を取得すると、そのままグーグルに入社をした。2006年に、グーグルが中国オフィスを設立することになり、黄は中国オフィスの立ち上げスタッフとして中国に帰国をした。

段永平にとって、黄はもはやただの優秀な学生ではなくなっていた。グーグルの優秀なエンジニアであり、ひょっとするとグーグル中国の中核メンバーになるかもしれない重要人物になっていた。

段永平は、その頃、米国の投資家ウォーレン・バフェットと食事をする機会を得た。その食事会に誰を連れていくかを考えたとき、段永平の頭に思い浮かんだのが、中国に帰国したばかりの黄だった。なぜ、段永平が黄を思い出したのかはわからないが、英語が話せて、グーグル中国のスタッフということで、バフェットに対する受けがいいと考えたのかもしれない。

は、その食事会で、バレットと段永平の2人を魅了した。ただのエンジニアではなく、ビジネスセンスも優れているという印象を与えたのだ。それ以来、段永平は黄のメンターとなり、定期的に会い、ビジネスアイディアを検討する間柄になった。そこから「拼多多」のソーシャルECというアイディアが生まれてきた。

すべては、大学生の時、MSNの友達申請を了承したことから始まっている。

 

学生だったジャック・マーを支援したオーストラリア人

アリババの創業者、ジャック・マーにもこの「弱い絆」が人生を変えた経験がある。小学生の時、地理の女性教師に恋心を抱いたジャック・マーは、彼女が英語で外国人と話す姿を見て、英語に憧れ、短波ラジオで英語放送を聞くことで、英語の勉強を始めた。

高校生になると、世界的な観光地である西湖を自転車で走り回り、外国人を見かけると積極的に話しかけて、英会話の練習をしていた。

1980年、オーストラリアの訪中団に加わっていたエンジニアのケン・モーリーとその息子のデビッド・モーリーを見つけ、英語で話しかけた。息子のデビッドはジャック・マーと同年代であり、すぐに親しくなった。

モーリー親子は帰国をしたが、モーリー親子との文通が始まり、一生の付き合いとなった。特に、ケン・モーリーは、中国の希望に満ちた少年を一生にわたって支援をすることになる。ケン・モーリーは自分の小遣いから毎月わずかな額の積み立てを始め、ジャック・マーが杭州師範大学に入学した時に、そのお金を送っている。ケン・モーリーにとって大金とは言えなかったが、当時の中国の物価から考えると大金だった。おかげで、ジャック・マーは大学時代、学業だけに集中することができた。

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▲ジャック・マーが高校生の頃、杭州市西湖で出会ったデビッド・モーリーとの写真。デビッドの父親のケン・モーリーは、ジャック・マー少年をことあるごとに支援し、ジャック・マーの成功に大きな貢献をしている。

 

初めての海外体験を支援をしたケン・モーリー

さらに、ジャック・マーがオーストラリアに行って、広い世界を自分の目で見てみたいと考えた時、励ましてくれたのもケン・モーリーだった。当時の中国では、普通の人間が海外にいくことは不可能に近い。ジャック・マーは7回申請をして、7回拒絶されていた。それでも、ケン・モーリーは手紙で励まし、それだけでなく、駐中オーストラリア大使館にビザを発給するように運動までしていた。

このおかげで、8回目の申請でビザが取得でき、ジャック・マーは初めて海外に出ることができた。

ジャック・マーは2017年にオーストラリアに行き、モーリー親子の恩に報いた。デビッド・モーリーの出身校であるニューカッスル大学に2000万ドル(約21.5億円)を寄付して、「マー・モーリー奨学金」を設立した。中国留学をするオーストラリア人学生に与えられる奨学金だ。

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▲大学生の時、初めての海外旅行で、オーストラリアに行き、モーリー親子と再開したジャック・マー。当時の中国で、大学生が出国をするのは難しいことで、そこでもケン・モーリー氏の運動があった。

 

強い絆社会だった中国に、弱い絆をもたらしたテクノロジー

中国社会は、元来、強い絆を極端に重視をしていた。誰かが事業を始める時、資金を出すのは「親戚の中のお金持ち」だった。見知らぬ人と知り合いになるには、共通の友人の紹介をしてもらわなければならなかった。見知らぬ人はよそ者として排除する傾向が強かった。

しかし、それでは一部の人が貴族化し、楽をしていい思いをする一方で、大半の強い絆を持たない人々は一方的に搾取されるばかりだった。

その社会のあり方をテクノロジーが変えた。SNSを使って、弱い絆を築くことができるようになり、そこからチャンスが生まれるようになっている。

 

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目覚める上海。上海からテックジャイアントが生まれてこない理由

上海は、中国有数の大都市であり、時代の先端を行っている都市だ。しかし、不思議なことに上海からはテックジャイアントと呼ばれる巨大IT企業が生まれてこない。あまりに発展しすぎたため、ハングリーさが失われているとも言われる。しかし、上海からソーシャルEC「拼多多」が生まれてきた。これにより上海の起業状況が変わるかもしれないと淘数碼が報じた。

 

上海にはBATがない

中国では「上海にはBATがない」「上海にはジャック・マーがいない」とよく言われる。中国の4大都市といえば、北京、上海、深圳、広州。しかし、BATの百度は北京、アリババは広州、テンセントは深圳。また、広州には網易がある。しかし、上海には旅行予約サービスの携程(ctrip)ぐらいしか知名度の高いテック企業がない。

上海は、金融と商業の都市であり、中国建国以前から国際都市で、中国最大の都市でもあった。なぜ、大きな経済力を持つ上海からテック企業が生まれてこないのだろうか。

 

ジャック・マーもあきらめた上海での起業

アリババの創業者、ジャック・マーは、以前、上海のことを語っている。ジャック・マーはアリババの創業以前に、北京で政府の仕事をしていたことがある。しかし、その仕事に満足できず、1999年に生まれ故郷の杭州に戻って自分の会社を起業する道を選んだ。その時、杭州から遠くない大都市、上海で起業することも考えたという。しかし、すぐにその考えは捨てた。

ジャック・マーは2つの理由を挙げている。ひとつはオフィス家賃などの運営コストが高すぎるということだ。ジャック・マーは当時上海で最もおしゃれな街である淮海路にいくと、英文字の看板が並んでいて驚いた。家賃を調べてみると、当時の杭州人から見れば、ありえない高額だった。

もうひとつの理由が人材だ。上海は大都市であり、上海交通大学など質の高い教育機関もあり、人材は豊富だ。しかし、ほとんどの人が、外資系企業か国営企業の安定した仕事を求めていた。当時の中国では考えられないほどの高給が約束される。そこにジャック・マーという杭州師範大学を卒業しただけの元英語教師が起業をすると言っても、誰も集まらないだろうと考えたという。

ジャック・マーはそう考えて、杭州に戻り、英語教師時代の教え子たちに声をかけ、自宅マンションをオフィスにしてアリババを創業した。

 

登場しても競争に負けてしまう上海スタートアップ

しかし、上海人が挑戦をしない人々なわけではない。むしろ、インターネットの黎明期には上海から新しいサービスが生まれている。

1999年、アリババよりも早く、上海に易趣網(イーチネット)が生まれている。これは中国で最初のCtoC型ECサービスのひとつだった。後に、米国eBayが中国上陸をする時には、まずイーチネットを買収して進出をしたほどだ。

しかし、後から生まれたアリババの「淘宝」(タオバオ)との競争に負けてしまった。アリババは、出店者に対し、3年間は出店料、手数料を取らないという無料ランチ戦略で徹底して対抗した。多くの出店者がタオバオに移り、イーチネットは惨敗をし、eBayも中国進出を断念した。

BtoC型のECでも、上海から易迅網が誕生しているが、やはりテンセントと京東連合軍との競争に敗れて敗退をしている。上海にはこのようなスタートアップが多い。外売サービスを始めた上海の「餓了麽」(ウーラマ)も、現在ではアリババに買収され、創業者の張旭豪は会社を離れている。

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▲上海の著名テック企業を時代別にまとめたもの。下に行くほど古い。上海からはテックジャイアントは誕生してこないものの、スタートアップ企業は昔から多い。

 

ハングリーさに欠ける先端都市「上海」

他都市よりも早く起業アイディアを発見して創業するものの、ライバルとの競争が始まると、バイアウトして創業者はすぐにイグジットしてしまう。

起業のチャンスは豊富にあるものの、ある程度の成果が出たところで売却をして、お金持ちの仲間入りをする。しかし、アリババのジャック・マーなどのように「アリババを続けるか、死を選ぶか」といった気迫は上海人にはあまりない。都市が早くから発展をしているため、生きていく方法がたくさんあることがハングリーさを失わせているという人もいる。

強力なライバルがなかなか登場してこない小紅書(女性に特化したEC)、ビリビリ(弾幕つき動画共有サービス)などは独自の地位を確保しているが、競争がないために成長が止まってしまう。上海にはBATのようなテックジャイアントが生まれない。

 

テック企業は多いものの、上位に食い込めない

中国工信部は、2013年から、テック企業をスコア化して、毎年「中国ネット起業100強」のリストを公開している。

上位3社はBATが常連で、これに京東や網易が続く。しかし、2013年からトップ20に入り続けている上海企業は、携程(ctrip)のみだ。しかも、最高位は8位で、BATに迫る企業が生まれてこない。

しかし、トップ100を都市別に見ると、上海は19社もランクインされて、北京に次いで100強テック企業の多い都市だ。これは2013年から変わらず、20社弱が常に上海からランクインされている。

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▲中国工信部が公開しているネット企業100強のうちの上位20社。青が上海を本拠地とする企業。100強には毎年20社ほどがランクインしているものの、上位に食い込める企業が出てこない。急成長している拼多多が上位に食い込めるのではないかと期待されている。

http://www.miit.gov.cn/n1146290/n1146402/n1146445/c7260802/content.html

 

上海から生まれた「拼多多」で、上海は変わるか

しかし、上海発の「拼多多」(ピンドードー)の出現により、上海の状況が変わるかもしれない。共同購入型EC、ソーシャルECとも呼ばれる拼多多は、会員数、月間アクティブユーザー数で、京東を抜き、アリババに次ぐ第2位のECに急成長をした。この拼多多の出現により、100強企業の都市別売上高では、上海は23.3%を占め、しかも昨年から37.1%の増加をしている。

ようやく中国テックジャイアントと正面から競争をする上海企業が生まれてきた。2020年は、拼多多が刺激になって、上海のスタートアップ事情に変化が起きる年になるかもしれない。

 

 

メルマガvol.009を明日発行いたします

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