中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

無人コンビニは、家族経営の小規模コンビニから広がっていく

中国のテック好きの人々に衝撃をもたらしたアリババの無人スーパー。あるいは無人コンビニBingoboxと、中国では今、無人スーパー、無人コンビニのスタートアップが続々と生まれている。アリババの無人スーパーにTakeGo技術を提供した深蘭科技も、独自に無人コンビニを展開し始めた。しかし、狙いは大規模店舗ではなく、60平米程度の小規模で、家族経営をしている小規模コンビニだと鉛筆道が報じた。

 

消費期限の短い生鮮食料品が扱えない無人コンビニ

無人スーパー、無人コンビニには、ひとつ大きな弱点がある。それは生鮮食料品が扱えないということだ。無人コンビニといっても、レジが無人化できるだけで、商品の配送、陳列は人がやらなければならない。また、いちばん問題になるのが、消費期限の迫った商品の廃棄だ。アリババ無人販売所では、配送、陳列は1人で10店舗を担当できるが、これも生菓子やおにぎり、サンドイッチといった消費期限の短い商品を扱わないからできることで、このような生鮮食料品を扱ったとすると、1人で担当できる店舗数は一気に3店舗から5店舗程度になってしまう。

そこで、アリババ無人販売所にTakeGo技術を提供した深蘭科技では、無人コンビニ技術の販売先を、60平米程度の小規模店(平均は100平米前後)で、家族経営をしている店舗に狙いを定めている。

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 深蘭科技の基幹技術は人工知能

深蘭科技の母体となっているのは、オーストラリアのディープブルー研究院。人工知能の研究者が10人ほど集まって作った研究グループだ。10年ほど、シドニー工科大学と共同研究をし、スウェーデン西大学などとも共同研究をしてきた。

現在のCEOである陳海波(ちん・かいは)氏が、この研究院の研究内容に感銘を受け、中国で人工知能を利用した無人コンビニのシステムを開発するために、ディープブルー研究院から2人の研究員をスカウトして起業したのが深蘭科技だ。

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▲小型コンビニというよりも、大型の自動販売機といった方が適切なTakeGo店舗。ショッピングモールなどの屋内に設置することを想定している。

 

手のひらタッチで入店、そのまま商品を持って、外へGO

深蘭科技の主要テクノロジーは2つある。ひとつは、無人コンビニを運営するシステムquiXmart(中国では音をとって快猫と呼ばれている)だ。

入店は、手のひらの静脈パターン認証で行う。初回は、店舗入り口付近のパネルに手を置き、スマートフォンアプリからアリペイの口座番号などを入力して、ユーザー登録をする必要があるが、次回からはタッチするだけで入り口の自動ドアが開き、入店できるようになる。

入店後は、来店客の行動が人工知能によってモニタリングされる。買い物カゴは不要で、買うものは自分のバッグに入れて構わないし、帽子や服のようなものであれば身につけてしまっても構わない。もちろん、いったん手にとってから、購入をやめたい場合は、商品棚に戻せばいい。すべての商品には無線タグがつけられていて、このような来店客の行動から、どの商品が購入されたかを把握する。手にとっただけでは、カートに入れた状態になるだけで、そのまま移動すると購入と判断される。

もうひとつのテクノロジーが、アリババ無人販売所でも採用されたTakeGoだ。購入した商品の合計金額を提示し、来店客のアリペイ口座から自動決済をする。

このように説明をすると、非常に複雑に感じるが、要は、入り口付近のパネルをタッチ、中に入り、欲しいものを手にして外に出るだけ。その後、スマートフォンに決済の通知が届くという実にスムースな購入体験になる。

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▲入店は、手のひらの静脈認証で行う。登録後は、手のひらをタッチするだけで入店できるようになる。

 

無人コンビニ技術は、家族経営の小規模コンビニでこそ活きる

このTakeGoの技術は、アリババ無人販売所などにも採用され、飲料大手の娃哈哈(ワハハ)を通じて、無人スーパーを普及させていく計画だが、深蘭科技独自でもquiXmart店舗を広げていく計画だ。しかも、その狙いが店舗面積60平米程度で、家族経営をしている小型コンビニなのだという。

なぜ、中型コンビニ、大型コンビニではなく、小型コンビなのだろうか。答えは、無人コンビニは、小型コンビニでこそ、多くのメリットが生まれるからだ。

先ほども触れたように、コンビニの仕事は、発注、陳列、商品管理、精算という業務があるが、quiXmartとTakeGoを導入しても、省力化できるのは精算業務だけで、発注、陳列、商品管理は人手でやらなければならない。中型以上の3人体制のコンビニの場合、精算業務が不要になれば、3人のスタッフを2人か1人に減らすことはできるかもしれないが、それだけだ。結局、発注、陳列、商品管理の業務をするために、1人は常駐に近い状態で対応しなければならない。つまり、無人コンビニ技術を導入するよりも、セルフレジを導入した方が、導入コストを抑えつつ、ユーザー体験を向上させることができる。

 

コンビニ経営者を重労働から解放してくれる無人コンビニ技術

ところが、夫婦で経営する小型コンビニの場合、quiXmart導入の効果は大きい。店舗は1人体制で運営できるが、夫婦2人が12時間交代で対応しなければならない。365日24時間営業が基本なので、夫婦は休暇を取ることができず、労働環境としてはかなり厳しいものになっている。

当然、交代スタッフを雇用せざるを得ないが、その教育は夫婦経営の経営者にとってはなかなかハードルが高い。極端な話、売上金をくすねられないか、商品を横流しされないかなどの心配もしなければならない。そのため、多くの夫婦経営の小型コンビニでは、夫婦のいずれかが常駐をし、補充スタッフに店をまかせ、その間にバックヤードで発注作業をするなどということになっている。

これでは、新たな店舗を出店する計画など実行に移しようがない。これが、quiXmartを導入するとどうなるか。スタッフを雇用する必要がなくなるのだ。売上金を盗まれることも、商品の横流しについての不安もなくなる。販売データは、スマートフォンでどこからでも見られるようになるので、どこにいても発注作業をすることができる。陳列、商品管理は、配送の時間に合わせて店舗に出向き、そこでこなしてしまえばいい。

小型店舗の場合、生鮮食料品を扱わないのであれば配送は1日1回、生鮮食料品を扱ったとしても1日3回が標準だ。配送に合わせて陳列、商品管理の作業は1時間程度で済むから、夫婦の労働時間は一気に減少することになる。また、陳列、商品管理だけであれば、スタッフを雇っても、教育もしやすい。経営者が休暇を取れるようになるし、新たな店舗展開を考える時間の余裕も生まれてくる。

 

小型コンビニは、大型の自動販売機になっていく

深蘭科技では、60平米の店舗にquiXmart、TakeGoを導入するのに必要な費用は、約10万元(約160万円)であるとしている。

すでに今年の6月には、上海市宝山区に6平米のキャラクターグッズのミニ店舗を開設している。ぬいぐるみという消費期限のない商品のみなので、陳列、商品管理という業務ではなく、補充という感覚で店舗運営ができる。経営者は、新規店舗の展開計画や、商品ラインナップを考えることに集中できることになる。

quiXmartはこのようなミニ店舗、小型コンビニに狙いを定めて、拡大をする戦略をとっている。すでに現在、スペイン、イタリア、フランス、ドイツ、北欧、日本、米国、オーストラリア、シンガポールなどから問い合わせがきているという。

既存の中型、大型コンビニ、スーパーは無人というよりも「レジなし」を志向し、購入体験を向上させることを狙っている。「無人」にするよりも、「人」が丁寧な接客をすることで、さらにユーザー体験を向上させようとしている。一方で、小型コンビニは完全無人化をしていくことになる。要は、日本人の感覚で言えば、大型の自動販売機になっていくのだ。

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上海市宝山区に開店したquiXmart店舗。TakeGo店とは異なり、既存のミニコンビニを改装したもの。今後、夫婦経営の小型コンビニに、quiXmartとTakeGoの技術を活かした無人コンビニを展開していく予定だ。

コンビニ店長の残酷日記 (小学館新書)

コンビニ店長の残酷日記 (小学館新書)

 

 

地震予知に挑むベンチャー。九寨溝地震で71秒前の警報発令に成功

2017年8月8日午後9時18分。マグニチュード7.0の九寨溝地震が発生し、25人の死者と525人の負傷者がでた。ところが、この九寨溝地震を71秒に予知をし、各市に警報を発していたベンチャーがあった。この成都高新減災研究所は、過去38回の地震で、事前警報を発することに成功していて、この研究所の技術が注目を浴びていると鉛筆道が報じた。

 

71秒前に警報を発令することに成功した民間ベンチャー

成都高新減災研究所は、公的機関ではなく、民間研究所だ。現在、エンジェルラウンドの投資資金を得て、地震警報を販売するビジネスを確立しようとしている。

大きな成果が、今回の九寨溝地震だった。71秒前に成都市のテレビ局、成都市政府関連部門に警報を発することに成功し、その他、四川省6市の11の学校に対して、5秒前から38秒前に警報を発した。また、契約をしている軍事関連工場、民間企業などにも警報を発した。

成都高新減災研究所では、事前警報には大きな意味があるとしている。成都高新減災研究所の研究によると、3秒前の警告でも負傷者を14%減らすことができ、10秒前であれば39%、20秒前であれば63%減らすことができるという。

 

日本の地震警告システムを導入した四川省

成都高新減災研究所の王暾(おう・とん)所長は、浙江大学工学部で地震予知の研究をしていた。しかし、2001年当時、中国の地震研究は初歩的なもので、とても事前警報システムを構築できるレベルになかった。そこで、王暾所長は、地震研究が進んでいる日本とメキシコに視察に行き、最先端の地震研究技術を学びとった。成都高新減災研究所の事前警報システムも、ベースになっているのは日本の地震計測システムであるという。

学ぶこと7年、王暾所長は中国に帰国し、四川省政府の支援を受けて、地震警報四川省重点実験室を設立し、中国に地震警報システムの構築を始めた。しかし、日本の地震警告システムをそのまま輸入することはできなかった。日本のシステムは、精密ではあるものの、価格が高い。とても、実験室の予算ではまかないきれなかった。

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成都高新減災研究所で、警報システムの説明をする王暾所長。公的機関ではなく、投資資金の獲得を目指している民間スタートアップであるという点がユニークだ。

 

予算の壁を分散処理で乗り越える

王暾所長の決断は、日本のシステムの機器を、精度では劣る中国製などに置き換えていくことだった。「精度は悪くなり、マグニチュード3.0以下の地震には反応しなくなりました。しかし、それでいいと思ったのです。3.0以下では、大きな損害はありません。私たちは3.0以上の大地震のみに対応することにしたのです」。

さらに、日本のシステムでは、計測器を専用の小屋をつくってその中に設置していたが、これもコストの面からやめた。地面に穴を掘ってその中に設置をしたり、普通のオフィス、民家の中に置かせてもらった。「最初の頃は、掃除のじゃまになると言って、迷惑がられたものです」と、王暾所長は当時を振り返る。

日本のシステムでは、こうして設置した計測機からの信号を、一箇所のサーバーに集めて計算処理を行う。しかし、それもできなかった。中国のインターネット回線は速度が遅く、日本と同じことをやっていたら、地震が発生してから、“事前警報”が出るような事態になってしまう。

そこで、王暾所長は分散処理をさせることにした。近い場所にある計測機の信号はそこだけでまとめて処理をして、このような分散処理した信号を中央サーバーに集めて、警告システムに連結をする。このような手法をとることで、平均通信量は1/10になり、すべての計算処理が終わり警告を出せるまでの時間は、日本方式をそのまま使うよりも、5秒ほど早くできるようになった。

 

過去38回の地震で事前警報を出すことに成功

日本のシステムと比べて、精度も悪い、回線も細い。計測器の設置場所の条件もバラついている。それでなぜ、実績を残せたのか。王暾所長がこだわったのは、計測器を設置する密度だ。日本のシステムでは20km間隔で設置されている。これを18km間隔で設置した。計測器の仕様としては半径21kmの土地の歪み、振動を感知できる。あえて短い間隔で設置することで、重複する部分を多くしたのだ。これで、ある地点で起きた異常は、複数の計測器で測定することができる。

このように、密に観測できる体制を整え、地震を観測するたびに、理想の観測値と実際の観測値のズレを計算。正確に警報が出せるシステムに育てていった。

こうして、2013年1月19日の雲南省で発生したマグニチュード4.9の地震警報を皮切りに、合計38回の地震で、事前警報を出すことに成功している。

現在のシステムは、31の省、直轄市自治区の220万平方km、人口にして6.6億人をカバーする世界でも最大の地震警報網となった。

九寨溝地震では、警報を発した後、データ分析を後回しにし、王暾所長以下、成都高新減災研究所のメンバーは救援をするために現地入りをした。目下、成都高新減災研究所は3000万元(約5億円)のAラウンド投資資金の獲得を目指している。

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九寨溝地震の警告に関する記者発表会。地震直後であるため、さほど注目されない記者発表会となったが、時間が経ってから成都高新減災研究所が注目され始めている。

日本人は知らない「地震予知」の正体

日本人は知らない「地震予知」の正体

 

 

中国のエンジニアが選ぶ、美しすぎる女性エンジニアランキング

どの国の男性でも大好きなのが「美しすぎる◯◯ランキング」。雑誌を見ても「美しすぎる女性アスリート」「美しすぎる女性秘書」「美しすぎる女性広報」などの特集記事が毎月のようにある。それは中国でも同じ。ある中国人エンジニアが投稿した「美しすぎる女性エンジニアトップ5」という投稿が話題になっている。

 

第5位:阿里雲・シニア研究開発エンジニア。清宵(チン・シャオ)

阿里雲は、アリババが運営するクラウドサービス。企業のクラウドバックボーンを支える事業が主体で、アマゾンのAWSとほぼ同じ事業ドメイン。清宵は、シニアエンジニアで、データ分析を主とする研究職を務めている。読書と旅行が趣味の静かな学究肌の女性だが、2016年の阿里雲の忘年会で、「シルクの天使」の扮装で登場した写真が拡散し、ネット民から「女神」と呼ばれるようになった。

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▲長身でスタイルがよくて、知的で高学歴。男性だけでなく女性からも人気がある。

 

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阿里雲での忘年会でのこの写真が拡散し、女神と呼ばれることに。

 

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▲仕事中の知的な姿にもファンが多い。

 

第4位:360・プログラマー。三娘(サンニャン)

360はセキュリティ企業。そのプログラマーの三娘が自分でSNSにあげた写真が、猛烈にエンジニアの間で拡散した。本名は非公開だが、3つの姿を持つ「360三娘」と呼ばれるようになった。

仕事中は「最低辺の女プログラマー猿です」というスッピン写真を公開し、その後「忘年会のためにウィッグをつけました。逆転してやる!」と大人の女性の姿。そして、忘年会ではアイドル並みの可愛い姿と、3つのギャップのある姿で、自称「IT最底辺」たちから絶大な支持を受けている。

あまり表に出るのが好きではないらしく、これ以外の写真はネットに出回っていないため、逆にミステリアスでネット民の人気を集めている。

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▲「仕事中は最底辺の女プログラマー猿です」

 

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▲「忘年会のためにウィッグをつけました。逆転してやる!」

 

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▲そして、この忘年会でのアイドル姿。オタク系エンジニアから絶大な人気がある。

 

第3位:人人網・ウェブデザイナー。趙潔瓊(ジャオ・ジエチョン)

人人網は、FacebookのようなSNS。学生など若い世代が使っていて、アプリのデザインが明るく爽やかで人気がある。それを作っているのが彼女で、アプリからイメージされる通り、黒髪ロングの清純派。「コードの女神」と呼ばれ、ネット民の一定層から強い人気がある。

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▲JKにも通じる可愛さがある「コードの女神」。草食系エンジニアから絶大な人気。

 

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▲リリカルな人人網アプリのデザインは、彼女が生み出している。

 

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▲女性が強い中国で、純真さを失わない彼女の姿は、エンジニア以外にもファンを獲得している。

 

第2位:百度・エンジニア。語希范(ユ・シーファン)

百度は、検索、地図、広告などを提供するIT企業。グーグルと同じ事業ドメイン。2015年の忘年会で、うさぎのコスプレをした写真が拡散し、一気に人気になり、「新度娘」と呼ばれるようになった。度娘は、百度の萌えキャラマスコット。「新しい度娘の誕生だ!」とオタク系エンジニアから絶賛されている。

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▲「新度娘」と呼ばれ、百度の新しいマスコットキャラクターに推す声が高い。

 

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百度の忘年会で扮装したウサギのコスプレ写真が拡散。萌え系エンジニアの心を鷲掴みにした。

 

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▲本職はエンジニアだが、あまりの人気に雑誌のグラビアに登場することも。

 

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▲新しい百度のキャラクターとしての活動も増えてきた。

 

第1位:小米・ウェブデザイナー。張功(ジャン・ゴン)

小米は、中国のアップルと呼ばれた携帯電話メーカー。最近ではおしゃれ家電なども開発している。その企業ブログに登場するうちに、「清純女神」と呼ばれて人気者になってしまった。その美しさは、彼女が1位であることに誰もが納得するほど。最近では、ネットで番組を持ったり、雑誌のグラビアに登場したりと、もはやスターになってしまっている。

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▲誰もが納得の1位。小米のウェブデザイナーという職業だけでも憧れの対象なのに、この可愛さ。

 

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▲小米の公式ブログに登場するうちに、「清純女神」と呼ばれ大人気に。

 

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▲現在では、自分の個人番組までネットに持っている。

 

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▲ファッション誌のグラビアにも登場する機会が増え、すでにスターとなっている。

負け犬エンジニアのつぶやき~女性SE奮戦記~

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買い物カートをレジにしちゃえば?大胆な発想で、レジなしスーパーを実現

現在「レジなし」を実現できているのは、Amazon Go(ただし本社内の試験営業)とアリババ無人販売所(杭州市で開業)、深蘭科技のTakeGo(上海市で開業)などだ。いずれもそれなりの規模のITシステムが必要となる。ところが、普通のスーパーでもすぐに「レジなし」が実現できる買い物カートを開発をして、注目を浴びているスタートアップがいると鉛筆道が報じた。

 

「レジに並ぶ」は最悪のユーザー体験

コンビニ、スーパーにとって「レジなし」は、必ず超えなければならない大きな課題だ。なぜなら、「レジに並ぶ」というユーザー体験が悪すぎるのだ。飲料を買うのに90円で売っているスーパーに行かずに、110円で売っているコンビニに行く人が多いのは、「レジに並ぶ」という悪いユーザー体験をしたくないからだ。

しかし、AmazonGo、アリババ無人販売所ともに、まだ技術的課題を抱えている。

アリババ無人販売所の場合、商品のすべてにRFID無線タグをつけなければならないことだ。これは現在のところ人手でやるしかない。流通では、今のところ印刷バーコードで間に合ってしまっているので、製造段階で無線タグをつけるようになるまでにはまだ時間がかかる。

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外部の撹乱要因に影響される無線タグの処理時間

もうひとつは、無線タグの認識は簡単ではないことだ。タグが発信している電波をアンテナで受信して、IDを読み取るという仕組みの無線タグは、周囲のノイズ電波の影響を容易に受けてしまう。さらに、電波発信源(無線タグのついた商品)が移動している場合や、一度に読み取る無線タグの数が多いというのも苦手だ。現状のスーパーなどで想定される20個程度の商品を歩く速度で移動しながら読み取るという状況だと、数秒はかかってしまうという。

そのため、アリババ無人販売所では、ユニークな工夫をしている。精算専用の長めの通路を用意し、精算する来店客にここを歩かせる。歩いている時間で処理時間を確保し、しかも出口は自動ドアなので、精算処理が終わるまで開かない。こうして確実にすべての商品が読み取れるようにしている。

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トレース問題でつまづくAmazonGo

3つ目の問題は、商品と顧客の識別だ。AmazonGoでは、画像解析を基本として、顧客と商品を識別している。基本的には顔認識で顧客を識別する。しかし、認識率には限界があるから、店内に複数のカメラを設置し、顧客と商品をトレースしなければならない。AmazonGoは、このトレースにシステム上の問題が出ていて、営業公開ができない状態にいる。

つまり、コンセプトは未来的だが、現実には技術的な課題をクリアする必要があり、しかも設備は大掛かりにならざるを得ない。新規に開業するスーパー、コンビニならともかく、既存のスーパー、コンビニが無人技術を後付けで導入することは難しく、大掛かりな改装が必要となってくる。

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だったら「カートにレジを付けちゃえばいいんじゃね?」

ところが、「だったら、買い物カートにレジ機能を持たせればいいんじゃね?」という別角度の発想から起業したのが、スタートアップの超(チャオヘイ。「超なるほど」のような意味)だ。

が開発したのは、商品を認識する買い物カート。商品認識に時間がかかっても、来店客が店内で買い物のために歩き回っている時間はたっぷりある。この間にゆっくりと商品を認識すればいいのだ。

すべての商品認識が終わったら、来店客はカートのモニターに表示されるQRコードスマートフォンでスキャンして、スマホ決済をする。決済をすると、未決済ランプが消えるので、そのまま外に出て、バッグに詰め替えればいい。

また、来店客はカートに対してスマホ決済をするので、顔認識などで顧客を識別する必要もない(マーケティングデータを取るために、使う前にスマホで本人確認はさせている)。AmazonGoやアリババ無人販売所の技術的課題を見事にすり抜けているのだ。

このレジ機能つきカートの素晴らしい点は、どのスーパーであっても、改装することなく、導入するだけで、レジなしが実現できる点だ。レジスペースを撤去するだけでよく、その空きスペースを有効活用できる。

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▲超が開発したレジカード。基本は、カート内の映像を撮影し、画像解析で商品を識別していく。

 

レジ待ち問題をピンポイントで解決できる

このレジカートは、陝西省西安市の大型スーパーが、現在20台を導入して、試験運用中だ。カートは1台1万2800元(約21万円)と安くはないが、そのスーパーは一括購入をし、試験の結果がよければ、ほとんどすべてのカートをレジカートに置き換える計画だ。

さらに、地元密着型のスーパーでは、無人スーパー化することは求めてはいない。むしろ、積極的に販売スタッフを増やして、人と人のコミュニケーションを活かした販売手法=実演販売、試食販売などを強化したいと考えている。

レジ待ちのユーザー体験が悪すぎることが課題になっていて、ここをピンポイントで解決してれるのがレジカートなのだ。

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西安のスーパーに試験導入されたレジカート。無人スーパーは必要としていないが、レジ待ちの悪いユーザー体験をピンポイントで解消したいスーパーにとっては、最高のソリューションになる。

 

無線タグも不要。商品の映像から識別

このカートは、無線タグも必要としていない。基本は、カメラでカート内を監視し、商品の映像と重量で商品を識別する。画像解析が必要なため、商品を識別するために必要な時間は無線タグよりもさらに長くなるが、来店客が買い物中に処理をすればいいので、処理時間が長いことはまったく問題にならない。

また、来店客が店内のどの場所でどの商品をカートに入れ、どの商品をカートから棚に戻したかを記録するようになっていて、ここから重要なマーケティングデータを得ることができる。

また、赤外線や圧力センサーなども搭載され、商品識別の補助データとして使われる。バッテリー駆動で5時間の充電で17時間の連続使用が可能だ。

 

店内のどこでも、清算ができる

現在、西安の導入スーパーでは、出口前に20平米の精算スペースを設け、来店客にはそこでスマホ精算をしてもらう運用をしている。これは、来店客がまだレジカートに慣れてなく、スマホ決済そのものにもまだ不慣れな人がいることから、スタッフが常駐して、来店客のサポートをするためだ。

慣れてくれば、店内のどこでも、自分で買い物が終わったと思った時に、スマホ精算をしてもらえばよくなる。精算後に商品を追加した場合は、未精算の表示に戻り、ランプが点灯するので、再度追加分を精算すればいい。

現在、このレジカートは、西安成都鄭州の3カ所のスーパーで合計100台が試験導入中で、年内には本運用が始まり、1000台規模になると超は見込んでいる。

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▲精算スペースでスマホ決済をする夫婦。カートモニターのQRコードスマホで読み込んで、アリペイやWeChatペイなどのスマホ決済をするだけだ。現在は、精算スペースが定められているが、将来は店内のどこでも精算が可能になる。

 

 

台湾で、無人運転バスが公道を走った。来年早々には営業運行も

台湾台北市で、無人運転バスの走行試験が始まっている。公道を利用し、抽選で選ばれた一般乗客を乗せるという実戦的なもので、トラブルはなく、試験は成功だった。さらなる試験運行を重ね、年内にはすべての試験を完了し、早ければ来年にも営業運行する計画だと長江日報が報じた。

 

一般乗客を乗せて公道を走った台湾の無人運転バス

台湾台北市で、無人運転バスの走行試験が行われている。閉鎖空間内の試験道路での試験を終え、7月8日から1週間、8月1日からの5日間の公道での試験運行が行われた。最後の2日間は、抽選で選ばれた一般乗客を乗せるという実戦的なものだった。使われた公道は信義路。台北市を東西に貫き、小籠包で有名な鼎泰豊本店もあるなど、かなり交通量が多い幹線道路だ。

台湾では、主要道路にバス専用レーンが設けられ、路上駐車の取り締まりも厳しい。無人運転バスの運行にはうってつけの道路環境がすでにできあがっていた。

この公開試験は、トラブルが起きた場合の一般バスへの影響を考え、7月の試験、8月の試験の前半3日間は、乗客を乗せず、バス運行がない深夜1時から4時の間に行われた。最後の2日間は、バス運行のない午前4時から、抽選で選ばれた乗客を乗せての試験となった。明け方の試験であるのに、徹夜組の見物客も多く、台北市民の間でも大きな話題となっている。

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▲一般乗客を乗せた公開試験。評判は上々で、トラブルもなく試験を終えることができた。

 

夏が暑く、雨の多い台湾に向いている12人乗り無人運転バス

車両は、フランスのイージーマイル社が開発をしたEZ10。12人乗りで、6人分の座席が用意されている。時速は40kmまで出せる設計だが、試験では時速10kmで走行し、約10分間の走行を行った。

6台のレーダーを搭載し、前方を走行する車両や障害物を感知して、速度を落とす、停止するなどを判断を自動的に行う。

ある乗客は新華社台北の取材に応えた。「台湾は夏暑く、雨も多いので、こういう乗り物があるととても助かります。乗る前は少し怖かったですが、乗ってみたらとても静かで安心しました」。

今回の試験走行は、台湾喜門史塔雷克(7StarLake社)と台湾大学の共同で行われた。今後は、学校内などの閉鎖空間で、障害物や走行車両など複雑な状況下での走行試験を行い、公道では実際に多くの車両が走行している昼間の状況での走行試験を計画している。すべての試験を年内にも完了し、早ければ来年にも営業運行を開始したいとしている。

もし、順調に行けば、無人運転バスとしては世界初の営業運転となるかもしれない。私有地内でのシャトル便、閉鎖軌道内の無人運転バスの営業運転はすでにあるが、開放された公道での営業運行はまだ行われていない。

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▲私有地内での走行試験はかなり進んでいる。今後は、障害物や走行車両がある状況を意図的に作り、検証を行う。

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▲台湾市で公開されたEZ10の車両には多くの見物客が訪れた。フランスのイージーマイル社が開発したものだが、なぜか台湾の風景とよく合っている。

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▲車両には6つのセンサーがつけられていて、障害物を感知すると自動停止する仕組みになっている。

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▲内部には6人分のシートが用意され、定員は12人。定員が少ないように思えるが、その分、増発をして、運転間隔を短くした方が利用者の利便性は高くなる。

 

無人運転バスが変えていく台北の風景

このEZ10は、台湾だけでなく、日本、フィンランド、フランス、イタリア、スペイン、スイス、中国など10の国と地域で試験運行、私有地内での営業運行が行われている。日本では、DeNAが、イオンモール幕張新都心の来店客用のシャトルに利用する目的で、隣接する公園内での乗客を乗せた試験走行を昨年から始めているほか、大学内、観光地などでの実証実験が進んでいる。

EZ10全体では、すでに8万人の乗客を乗せ、累計8万kmを走行しているが、事故は1件も起きていない。

多くの国が、無人運転バスを閉鎖私有地内での走行や、閉鎖軌道内での走行を想定していることが多い中で、台湾はいち早く開放された公道での走行を想定した試験運行を行った。米国やスイスでも、空港や大型施設のシャトル便として、公道を走行するための実験、法整備が始まっている。台北市の試みは、無人運転バスを公道走行させる流れを加速するもので、営業運行が始まれば、台北市の風景は一気に近未来的なものになるだろう。

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▲順調に進めば、台北市が、公道を無人運転バスが最初に走る都市になるかもしれない。都市の風景は、様変わりしていく。

台北お手軽バス旅ガイド

台北お手軽バス旅ガイド

 

 

凋落するアップルブランド。中国人の「iPhone離れ」の原因は

昨年から中国でのアップルブランドの凋落が激しい。売上も、北米では復調し、世界全体でも堅調に推移しているのに、中国地域の落ち込みだけが目立つ。なぜ、中国ではアップル製品が売れなくなっているのか。新浪科技を始めとした各メディアがその理由を分析している。

 

中国だけで落ち込むアップルのセールス

中国地域でのアップルの凋落ぶりが目立っている。昨年第1四半期からの世界地域別売上を地区別比率にしてみると、米国大陸が増加、その他の地域が堅調という中で、中国地域だけが唯一下落をしている。2017第1四半期にやや増加傾向は見られたものの、これはiPhone7の発売時期にあたっており、世界的に売上が伸びた時期だ。これを除けば、2016年第2四半期以降、中国地域での売上が減少傾向にあることははっきりとしている。

また、中国でのスマートフォンランキングを見ても、その傾向がはっきりとわかる。2015年までは、サムスンとアップルがランキングの1位争いをしていたが、アップルは現在では5位に甘んじている。しかも、上位中国系4ブランドがシェアを伸ばす中で、アップルとサムスンがシェアを落としている。

2016年に、中国のスマホ市場は明らかに潮目が変わった。

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▲アップルの地区別売上比率を見ると、2016年初めは1/4の売上が中国のものであったのに、現在は17.6%まで落ち込んでいる。中国人のiPhone離れが始まっている。

 

「高いけど高性能」から「高いのに普通」に

その最大の理由は実にシンプルなもので、「iPhoneは高い」ということだ。中国系スマホの売れ筋価格帯は4000元(約6万6000円)前後。一方で、iPhoneは最低でも5388元、売れ筋は6188元。最も高価なものでは7988元(約13万1000円)と、一般のスマホの2倍ほどの価格がする。本体を一括購入することが一般的な中国では、この価格差は大きい。

iPhoneが高価であることは、今に始まった話ではないが、2015年までは、国産スマホの性能が低く、「iPhoneは高いけど、高性能」というブランド価値を感じることができた。しかし、ファーウェイやシャオミー、さらに新興のOPPO、vivoなどが低価格でも高性能の機種を投入し、iPhoneと遜色がないところまできている。アップルブランドは、「高級だから高い」から「普通なのに高い」にイメージが変わってしまった。

特に急速充電の機能で、国産スマホは性能を競い合いあっているが、iPhoneだけが取り残され、唯一低評価になってしまっている。スマホ決済、地図などをヘビーに使う中国では、バッテリー切れを起こすことが日常茶飯事になっている。その時、5分ほどの短い時間で、ある程度の急速充電ができる国産スマホが好まれるようになった。

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▲中国でiPhoneがランキング1位だったのはもう昔の話。今では5位に転落し、しかもシェアを減らし続けている。

 

中国市場にアジャストできていないiPhone

もうひとつの理由は、iPhoneは中国市場に最適化されていないということだ。中国では、ほぼ全員が使うアプリが定まり始めている。スマホ決済のアリペイ、メッセージのWeChat、地図の百度地図、SNSのQQ、ツイートのウェイボー。この辺りは、ほぼ必須アプリになっている。iPhoneの場合、購入後にこのようなアプリを自分でインストールしなければならない。国産スマホの場合、事前にプリインストールされ、ユーザー登録もまとめてできるようになっているものが多い。

しかも、定番アプリとコンフリクトするアップルの公式アプリがインストールされていて、中国人にとってはそれは邪魔でしかなく、自分で消さなけれならないし、中には設定を変えないと消去できないアプリもある。地図、Wallet、メッセージ、FaceTime、ミュージック、この辺りのアプリを必要としている中国人は少なく、むしろ邪魔になっている。

 

モバイルファースト革命からペイメント革命に

2015年頃までは、iPhoneが世界のモバイルファースト革命をリードしてきて、それは中国においてもそうだった。しかし、中国はスマホ決済を一気に普及させたことにより、中国単独でペイメント革命を起こし始めている。iPhoneは未だにモバイルファースト革命のスマホであり、国産スマホはすでにペイメント革命のスマホにシフトしているのだ。アップルは、このミスマッチが解消できていない。というよりグローバル戦略を貫くアップルは、中国市場だけに最適化することはできない。

 

中国人ユーザーとすれ違うアップルの施策

さらに、アップルのブランドイメージの凋落も激しい。アップルが戦略を間違えているというよりも、ちょっとした誤解が尾を引き、アップルがやることなすこと裏目にでるという事態が続いている。

例えば、今年3月下旬に発売になったiPhone7のレッドスペシャルエディションだ。本来は、世界的なエイズ撲滅運動を支援するためのスペシャル版だったが、なぜ3月下旬発売なのか、世界中が首をひねった。本当にエイズ撲滅運動を支援するためのものであるなら、12月1日の世界エイズ撲滅デーに発売する方が自然だ。

アップルにどのような事情があったのかは不明だが、中国のメディアは、「これは中国向け特別版ではないか」と推測した。売上が下がり続ける中国市場へのテコ入れとして、中国人が大好きな「赤」の機種を、長期休暇であり、新しい1年の始まりである春節のセール時期に投入してきたと推測したのだ。

しかし、完全な不発に終わった。中国人は確かに伝統色である「赤」=中国紅が大好きだ。しかし、若者の間には「赤はもう古臭く、赤いスマホを持つのはダサい」という意識もある。

さらに、価格設定も誤解された。レッド版は最小容量の32GBが発売されず、128GBモデルと256GBモデルの2モデルになった。価格設定は通常機種と同じなのだが、通常版は32GBモデルがあるために「5388元から」という価格表示になるのに対して、レッド版は「6188元から」という価格表示になる。

これを悪くとって、「iPhoneの売上が落ち込む中国市場を刺激するために、安直に赤いiPhoneを出してきた。しかも値段を上げている。中国人のセンスは以前よりずっと進んできているのに、アップルは中国を見下しているのではないか」と、考える中国人もいたようだ。

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iPhoneレッドスペシャルエディションも大きな誤解を受けた。しかし、エイズ撲滅運動を支援する特別版であるはずなのに、世界エイズ撲滅デーの12月1日ではなく、なぜ春節セール期である3月下旬に発売されたのか、疑問が残る。

 

大反発を招いたアップル税。キャンペーンも不発

また、アップル税問題もアップルのイメージを下落させた。中国のアプリには、ユーザー同士で簡単に投げ銭ができる機能を持ったものが多く、動画配信者の中には、この投げ銭で高収入を得てスターになる人が出てきている。アップルは、この投げ銭も、アップルのアプリ内課金の仕組みを使うべきだとして、アプリのガイドラインを変更しようとした。アプリ内課金の仕組みを使うと、投げ銭の30%はアップルの収入となり、「これはアップル税ではないか」と、アプリ開発企業とユーザーからの激しい反発を招いた。

結局、アップル側がガイドラインを再考をし、アップル税は徴収されないことになったが、「中国での投げ銭の売上を、米国に吸い上げようとしている」と、アップルに反感を持つ人が増えていった。

さらには、7月のApplePay夏の大キャンペーンも不発に終わった。アップルが何かを中国で行っても、ことごとく誤解をされるか、無視をされることが続いている。

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シリコンバレーの住人はシリコンバレーのことしか目に映らない

このような問題に、アップルになにか悪意があったとは思えない。中国人ユーザーとの間の小さな誤解で、アップルの施策が裏目に出ているということなのだろう。

しかし、シリコンバレーで働くエンジニアの間には「シリコンバレーの田舎者」という自虐的な言葉がある。それはシリコンバレーの住人は、シリコンバレーのことしか興味を持たないという意味だ。テック方面に関することなら、それでかまわなかった。なぜなら、世界中の優秀な人材がシリコンバレーに集まり、世界中のイノベーションシリコンバレーで起こり、世界中のスタートアップがシリコンバレーで起業するからだ。

しかし、海外に製品を販売する場合は、シリコンバレー感覚だけでは通用しない。各国の事情を研究し、理解し、その市場にあった施策を実行していく必要がある。シリコンバレー企業は、この「現地にアジャストする」という感覚が薄い。

グローバル標準をそのまま中国に持ち込もうとするアップルに対して、中国人は「中国を見てくれていない」と感じ、時には「見下されている」「傲慢だ」という印象を持ち始めている。

さらに、中国ではモバイルファーストからペイメントファーストへのパラダイムシフトが進行中だ。この変化に対して、アップルは適応していかなければならない。現在は、それができていないので、シェアを落とし続けているのだ。

中国人の「iPhone離れ」は、止まる兆しが見えてこない。

 

防犯カメラがない無人コンビニ。万引き0件のその理由は

中国では無人コンビニ、無人スーパーの開設が相次いでいる。無人店舗の場合、いかに万引きなどの悪意を排除するかが運営の鍵になる。しかし、重慶に開設された一七閃店は、出店を半公共空間に限定することで、防犯コストをかけずに、無人店舗ビジネスを軌道に乗せたと猟雲網が報じた。

 

無人コンビニでもスタッフ0人ではない

無人スーパー、無人コンビニなどの無人店舗の場合、問題になるのは万引き防止とトラブル対応だ。

そのため、アリババ無人販売店では、カフェを併設して、そこには人間のスタッフが常駐をしている。人がいることで、悪意のある行為に対する抑止効果になっている。また、精算通路付近には、顧客センターと通話ができるインターフォンが用意されていて、精算などのトラブルが発生した場合、やり方がわからないという場合は、担当の人間と会話を交わして解決することができる。

無人コンビニBingoboxでは、将来は人工知能に移行する予定だが、現在のところは、監視カメラによる有人監視をしている。そのことは、店舗にも掲示があり、これが抑止効果となっている。また、トラブルなどに対しても、監視スタッフがインターフォンを通じて対応する。

結局、無人店舗といっても、完全に人の手から離れるということはできていないのだ。

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出店場所を選ぶことで、防犯コストをかけずに済む

重慶市のスタートアップが開設したミニコンビニ「一七閃店」は、少し変わったコンセプトで、この「最後の人の手」の役割をさらに減らした。店内に、360度カメラが1台あるが、これは来店客の監視目的ではなく、映像を監視するスタッフもいない。来店客の行動を記録し、マーケティングデータを取得するのが目的だ。

トラブル対応のためのインターフォンのようなものもない。万が一、なにかあった場合は、来店客は自分のスマホで顧客センターに電話をする。精算のためにスマホを使うのだから、電話すればいいという考え方だ。

さらに、商品にRFID(無線タグ)をつけるということもしていない。商品に最初からつけられている流通用のバーコードを利用している。来店客は、購入する商品のバーコードを自分のスマホの専用アプリで読み込んで精算する。

一七閃店は、入店する時に改札にWeChatペイのQRコードで本人確認し、店内でバーコードを読み込み、退店する時に改札にQRコードをもう一度読み込ませると、精算が行われる。つまり、意図的にバーコードを読み込ませなければ、商品を外に持ち出してしまうこともできる。

これでどうして万引きされないのだろうか。その理由は、一七閃店の出店場所にある。一般の路面に出店するのではなく、オフィスビルや小区(居住関係者以外は出入りできない高級マンション)に出店を進めているのだ。要は、公共空間ではなく、半公共空間への出店を狙っている。質の高い顧客しかいない場所だから、顧客を信用できるというわけだ。

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▲入店するには、改札にQRコードをかざす。商品は、自分でバーコードを読み取り、退店する時にQRコードをかざすと自動精算される。オフィスであるため、多くの人が購入する商品点数は1点か2点。このやり方でもユーザー体験は悪くはならない。

 

 

シェア冷蔵庫として利用される一七閃店

一七閃店の1号店が出店したのは、重慶市の両江新区にあるテンセントコワーキングスペース。大手IT企業であるテンセントが、低価格で提供するコワーキングスペースで、いわば「意識の高い人」が集まる場所。つまり、不特定多数の人に利用してもらおうと考えるから、防犯コストをかける必要が出てくるわけで、特定の、それも質の高い消費者だけに限定して利用してもらう前提であれば、防犯コストをかける必要性は薄れてくる。

一七閃店の前面はガラス張りになっており、店内の様子が外からもわかる。また、販売されている商品は、仕事中に必要となる飲料と軽食といった低価格のものが中心。これを万引きして喜ぶような人は、このコワーキングスペースにはいない。

自分で商品のバーコードを読み込まなければならないのが面倒にも思えるが、利用のほとんどは仕事中に飲む飲料で、購入商品点数は1点または2点がほとんどだ。レジ袋のようなものもなく、商品はそのまま手に持って外に出る。

つまり、コンビニというよりも、シェアリング冷蔵庫といった感覚で使われている。

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重慶市コワーキングスペースに開店した一七閃店の1号店。コンビニというよりもシェア冷蔵庫といった感覚だ。

 

売上数字は、コンビニとしては平均的なもの

猟雲網は、一七閃店のCMO(最高マーケティング責任者)エバ氏に取材した。開店1ヶ月の営業数字は、登録者数1244人、来店人数6804人、総売上2万871元(約34万4000円)、販売点数5886点となった。粗利率は27%程度で、これは通常のコンビニとほぼ同じだという。また、中国のコンビニの平均売上額は1月11万1000元(約180万円)前後で、店舗規模を考えると、売上もほぼ平均的なものになるという。

登録者は一月に平均5.5回来店し、0.86個の商品を購入し、平均単価3.5元の買い物をしている計算になる。この数字からも、ごく限られた顧客がリピートして複数回利用し、1点または2点という少数の商品を購入していることがわかる。実際、販売数が多いのは圧倒的に飲料だという。利用する側の感覚としては、日本の自動販売機に近いのだろう。

 

無人コンビニは、PB商品を展開するための拠点

無人にして人件費を省いているのに、コンビニとしては平均的な売上、平均的な粗利率で、無人コンビニにする意味はあるのか。猟雲網の問いにエバCMOは応えた。「今は試験運用の段階で、商品は既存ブランドのものだけを並べています。私たちが目標としているのはプライベートブランドの飲料、軽食を一七閃店を通じて販売することです。そうなれば、売上も粗利率も上がってくるでしょう。現在の段階で、平均的なコンビニと同等の成果をあげられたということは、今後に向けて、いいシグナルだと受け止めています」。

 

アンテナショップとしての無人コンビニ

現在、一七閃店の社員数は50人で、半数以上がエンジニアだという。直営の一七閃店を増やしていくが、一般のコンビニチェーンにも、一七閃店で使用したシステムの販売をしていく。

一七閃店は、今年600万元(約9800万円)のエンジェルラウンド投資資金を調達することに成功した。今後、2000万元(約3億2700万円)の資金調達を目指し、事業を展開したいとしている。

エバCMOは、プライベートブランドがどのようなものであるかには触れなかったが、おそらくは、高価格帯の機能性飲料、機能性食品なのだろう。一般流通よりも、一七閃店の方が安い価格設定ができるのであれば、十分に採算が取れるビジネスになる可能性がある。

日本でも、飲料流通業者が、オフィスに冷蔵庫を設置し、代金は箱の中に各自入れるという仕組みがある。あれをミニコンビニサイズに拡大したと考えると理解しやすい。コンビニは、実にさまざまな営業形態が考案できる。