ファーウェイが東莞市にお城を建設したと話題になっている。ファーウェイの研究施設なのだが、その規模が半端ではなく、中国に突然ヨーロッパの古都が出現し、すでに観光スポットになろうとしているとテンセント科技が報じた。
まるでヨーロッパの古都。ファーウェイの松山湖基地
深圳市近くの東莞市松山湖にファーウェイがお城を建設したと話題になっている。ヨーロッパの古城風の街で、高山列車のような電車まで走っている。
これはファーウェイが2014年9月から建設を進めていた松山湖基地。約130ヘクタール(東京ドーム約28個分)の敷地に、建築面積は126.7万平米。投資額は100億元(約1700億円)に達している。
この松山湖基地には、最終的に3万人の研究者が働き、さらにはファーウェイ大学、研究センターなども建設される。さらに、ここに勤務する人のために、低価格の住宅の提供も計画されている。
▲松山湖基地はまるでヨーロッパのお城。敷地内を移動するための高山鉄道風の路面電車も走っている。
▲松山湖基地の空撮映像。建物ひとつがヨーロッパ風というのではなく、ヨーロッパ風の街を建設してしまっている。
深圳市北部からであれば通勤圏内
場所は松山湖周辺の環境保護地区に隣接した地域。風光明媚な場所だ。大都市深圳の中心地からは、車で1時間半、列車で1時間ほどかかるが、東莞市は深圳市の北側に位置をしていて、深圳市北部に住んでいる人にとっては、深圳の中心地に通勤するのも、松山湖に通勤するのにも時間は変わらない。むしろ、松山湖の方が通勤ラッシュや渋滞がない分、早く、ストレスも少ない。
すでに2700人が働いているが、駐車場には1500台の車(うち70台は専用バス)が駐車されている。
また、ファーウェイでは8トントラックを40台購入。これを深圳市との間に1日60往復させて、業務に必要な物資などを運搬する。
▲風光明媚な松山湖の環境保護地区に隣接した場所にファーウェイの松山湖基地がある。緑色部分が環境保護地区。図下部の赤い部分が松山湖基地。
▲敷地内を走る路面電車。飾りではなく、移動のために使われる。
研究部門を深圳から松山湖に移転
ファーウェイによると、この松山湖基地は、手狭になった深圳本社を拡張するもので、顧客や協力会社と面会する必要のある職種のみを深圳に残し、研究職など面会の必要が少ない職種を松山湖基地に移すという。部門によっては、協力会社とどもども松山湖基地に移るケースも出てきている。
また、深圳の家賃が高騰していることも影響しているという。深圳市内で新しいオフィスを賃貸したり、建設したりするよりは、郊外にお金をかけて作った方が安上がりにすらなる。松山湖基地ができたことで、「ファーウェイが深圳本社を松山湖に移転するのではないか」という憶測が生まれ、深圳市政府周辺ではファーウェイの引き止めに必死になっているとも言う。
▲風光明媚な松山湖で、将来は住宅の建設も予定されている。
▲背後の東莞市のビル群を無視すれば、ヨーロッパの古都にしか見えない。
▲遠くに見える高層ビルが東莞市中心部。松山湖を挟んでいるので、松山湖付近はとても静かな環境だ。
税収を巡った深圳市と東莞市の綱引き
一方で、東莞市では、ファーウェイの誘致に積極的だ。すでにファーウェイは、東莞市に最も多くの納税をする企業になっているからだ。すでに松山湖基地の建設にファーウェイは100億元を投入しているが、東莞市との間でさらに300億元規模の開発に合意をしている。
東莞市にはすでに高速道路と中国版新幹線が開通している。しかし、全国規模の企業がなく、大きな産業拠点がない。東莞市としては、ファーウェイの松山湖基地を起爆剤に、深圳の衛星都市になることを目論んでいる。
ファーウェイはファーウェイで、全国的な話題になり、「こんなところでじっくりと研究をしたい」と優秀な人材が集まってくることを狙っている。
写真を見ると、突拍子もなく、「本気なのか」と首を傾げたくなるが、例えば日本の企業がディズニーリゾートやハウステンボスに近接した研究オフィスを作ったとしたら、それが理由で応募をする人材というのはけっこういるのではないかと思う。意外に賢い施策かもしれない。
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