台湾台北市で、無人運転バスの走行試験が始まっている。公道を利用し、抽選で選ばれた一般乗客を乗せるという実戦的なもので、トラブルはなく、試験は成功だった。さらなる試験運行を重ね、年内にはすべての試験を完了し、早ければ来年にも営業運行する計画だと長江日報が報じた。
一般乗客を乗せて公道を走った台湾の無人運転バス
台湾台北市で、無人運転バスの走行試験が行われている。閉鎖空間内の試験道路での試験を終え、7月8日から1週間、8月1日からの5日間の公道での試験運行が行われた。最後の2日間は、抽選で選ばれた一般乗客を乗せるという実戦的なものだった。使われた公道は信義路。台北市を東西に貫き、小籠包で有名な鼎泰豊本店もあるなど、かなり交通量が多い幹線道路だ。
台湾では、主要道路にバス専用レーンが設けられ、路上駐車の取り締まりも厳しい。無人運転バスの運行にはうってつけの道路環境がすでにできあがっていた。
この公開試験は、トラブルが起きた場合の一般バスへの影響を考え、7月の試験、8月の試験の前半3日間は、乗客を乗せず、バス運行がない深夜1時から4時の間に行われた。最後の2日間は、バス運行のない午前4時から、抽選で選ばれた乗客を乗せての試験となった。明け方の試験であるのに、徹夜組の見物客も多く、台北市民の間でも大きな話題となっている。
▲一般乗客を乗せた公開試験。評判は上々で、トラブルもなく試験を終えることができた。
夏が暑く、雨の多い台湾に向いている12人乗り無人運転バス
車両は、フランスのイージーマイル社が開発をしたEZ10。12人乗りで、6人分の座席が用意されている。時速は40kmまで出せる設計だが、試験では時速10kmで走行し、約10分間の走行を行った。
6台のレーダーを搭載し、前方を走行する車両や障害物を感知して、速度を落とす、停止するなどを判断を自動的に行う。
ある乗客は新華社台北の取材に応えた。「台湾は夏暑く、雨も多いので、こういう乗り物があるととても助かります。乗る前は少し怖かったですが、乗ってみたらとても静かで安心しました」。
今回の試験走行は、台湾喜門史塔雷克(7StarLake社)と台湾大学の共同で行われた。今後は、学校内などの閉鎖空間で、障害物や走行車両など複雑な状況下での走行試験を行い、公道では実際に多くの車両が走行している昼間の状況での走行試験を計画している。すべての試験を年内にも完了し、早ければ来年にも営業運行を開始したいとしている。
もし、順調に行けば、無人運転バスとしては世界初の営業運転となるかもしれない。私有地内でのシャトル便、閉鎖軌道内の無人運転バスの営業運転はすでにあるが、開放された公道での営業運行はまだ行われていない。
▲私有地内での走行試験はかなり進んでいる。今後は、障害物や走行車両がある状況を意図的に作り、検証を行う。
▲台湾市で公開されたEZ10の車両には多くの見物客が訪れた。フランスのイージーマイル社が開発したものだが、なぜか台湾の風景とよく合っている。
▲車両には6つのセンサーがつけられていて、障害物を感知すると自動停止する仕組みになっている。
▲内部には6人分のシートが用意され、定員は12人。定員が少ないように思えるが、その分、増発をして、運転間隔を短くした方が利用者の利便性は高くなる。
無人運転バスが変えていく台北の風景
このEZ10は、台湾だけでなく、日本、フィンランド、フランス、イタリア、スペイン、スイス、中国など10の国と地域で試験運行、私有地内での営業運行が行われている。日本では、DeNAが、イオンモール幕張新都心の来店客用のシャトルに利用する目的で、隣接する公園内での乗客を乗せた試験走行を昨年から始めているほか、大学内、観光地などでの実証実験が進んでいる。
EZ10全体では、すでに8万人の乗客を乗せ、累計8万kmを走行しているが、事故は1件も起きていない。
多くの国が、無人運転バスを閉鎖私有地内での走行や、閉鎖軌道内での走行を想定していることが多い中で、台湾はいち早く開放された公道での走行を想定した試験運行を行った。米国やスイスでも、空港や大型施設のシャトル便として、公道を走行するための実験、法整備が始まっている。台北市の試みは、無人運転バスを公道走行させる流れを加速するもので、営業運行が始まれば、台北市の風景は一気に近未来的なものになるだろう。
▲順調に進めば、台北市が、公道を無人運転バスが最初に走る都市になるかもしれない。都市の風景は、様変わりしていく。