中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

外売アプリが会話を盗聴して、飲食店をオススメ?記者が実験してみた

出前を注文できる外売サービス。このアプリが、利用者の会話を盗聴して、お薦めの飲食店をリコメンドしているのではないかという疑いが起きている。IT時報の記者が3ヶ月に渡り実験をしてみた。

 

会話に出た料理がおすすめされる外売アプリ

外売は、スマホから注文できる出前サービス。このアプリを開くと、トップにお薦めの飲食店が表示される。利用履歴、利用者のプロフィールなどから算出したリコメンドだ。しかし、このリコメンドに異変が起きている。

2018年11月中旬、上海の女性、孫さんが同僚と「COCOのミルクティーが飲みたいね」という話をして、ウーラマのアプリを開いたところ、おすすめの飲食店のトップにCOCOミルクティーが表示された。孫さんは、かつてCOCOミルクティーを注文したこともなかったし、ネットで検索したこともなかった。

このような経験をしたのは、孫さんだけではない。北京の燃玉さんは、2018年11月14日夜8時頃、友人と「うな丼が食べたいね」という話をした1分後、アリペイのミニプログラムでウーラマを開いた。すると、おすすめの飲食店のトップにうな丼の店が表示された。以前注文してから23日も経っているのにだ。

翌日、燃玉さんは実験をしてみた。スマートフォンをロックしたまま、「ピザが食べたい」と声に出して、それからアリペイのウーラマミニプログラムを開いてみた。すると、またピザの店が薦められたのだ。その店は以前利用したことがあるが、半月以上前のことだという。

12月になって、燃玉さんはこのことをウェイボーでつぶやいてみた。すると、すぐに154通の反応があり、そのうちの1/6ほどの人が似たような経験をしたと反応してきた。

f:id:tamakino:20190507105844j:plain

▲燃玉さんがウェイボーにアップしたスナップショット。「うな丼が食べたい」という会話をした後、ウーラマを開くと、うな丼の店がおすすめの上位に表示された。

 

80%の確率で、会話に出た料理がおすすめされる

この話を受けて、IT時報の記者は、2台のiPhoneを使って実験をしてみた。まず、美団とウーラマのアプリを起動して、お薦めの飲食店上位3つをメモしておく。それからアプリを閉じて、2人の記者が話をするように「日本料理が食べたい」と言い、2分後に両方のアプリを開いてみた。

するとウーラマでは、第2位に日本料理の店が表示された。アプリを閉じて、2分後に再び開くと、日本料理の店は消えていた。1度目と2度目で1位と3位の店は同じだった。

さらにアプリを閉じ、再び2人の記者が「日本料理が食べたい」と話をして、6分後に開くと、今度は日本料理の店が第7位に登場した。閉じて、2分後、再び開くと、日本料理の店は消えていた。

その他、香港料理などいろいろな料理で試してみても同じことが起きる。だいたい80%程度の確率で同じことが起きた。

これはマイクで盗み聞きをして、料理関連のキーワードを拾うと、その店を推薦しているのだとしか思えなかった。試しに、アプリに対して、マイクの使用を許可しない設定に変えてみると、このような状況は起こらなかった。

記者は、iPhoneだけでなく、AndroidiPadなどでも、3ヶ月に渡って数十回の実験をしてみた。すると、だいたい70%の確率でこのような現象が起きる。

もちろん、美団、ウーラマともにマイクを使ったリコメンド機能は実装をしていないと回答した。であるなら、これはどういうことなのだろうか。

f:id:tamakino:20190507105847j:plain

▲燃玉さんがウェイボーにアップしたスナップショット。「ピザが食べたい」という会話の後、ウーラマを開くと、ピザの店がおすすめに表示される。約80%の確率でこのような現象が起きるという。

 

周りで会話をすると、送信データが増加する

スマホの通信をモニタリングできるCharlesなどの開発支援ツールを使って、美団のアプリを監視すると、実験をしている時には400程度のデータを送信しており、話をやめて静かにすると送信するデータの数が少なくなっていく。あたかも音声データをどこかに送信しているかのような動き方をする。

しかし、専門家によると、このようなデータはアプリの状態や操作状況などを送信するもので、ここに音声データのような巨大なデータを忍び込ませて送信することは難しいという。

また、音声データをアプリ内で分析して、料理に関連する言葉だけを抽出して送信するというのも、かなり計算量を必要とする作業で、アプリを起動中であればともかく、アプリを起動していないうちにバックグラウンドでこのような計算を行うというも考えづらいという。

f:id:tamakino:20190507105852p:plain

▲ウーラマ、美団などの外売アプリでは、開くと同時に、過去の利用履歴などからおすすめの店が表示される。検索SEOと同じように、上位にくる店が利用される傾向が出る。ウーラマ、美団などでは、このおすすめランキングをいかに利用者にフィットしたものにするか、さまざまなデータ分析を行っている。

 

米国で問題になったアプリ盗聴問題

しかし、昨年初めのニューヨークタイムズの報道によると、米国で、ゲームアプリが盗聴をしていることが発覚している。アルフォンソが開発技術を搭載した250以上もゲームアプリは、アプリを閉じ後もマイクを使い、周囲の会話や環境を収集して、マーケティングデータに活用していた。

このアルフォンソの技術は、周囲で聞こえる音楽の曲名などを教えてくれるShazamにも搭載され問題になった。Shazamではマイクをオンにしなければ利用する意味がないことから、マイクを使って、アプリ起動中以外にも周囲の環境音の収集、分析を行い、どのようなテレビ番組を見ているかのデータを収集していた。

Shazamは、現在アップルが買収し、音声アシスタントSiriの機能に組み込まれているが、このアルフォンソの技術がどう扱われているのか、アップルはコメントしていない。

 

なぜか問題の現象が消える

IT時報の3ヶ月間に渡る実験で奇妙なのは、美団についてはそのままだったが、ウーラマについては2019年1月以降、このような現象が消えたことだ。先も触れたように、美団、ウーラマともこのような盗聴機能は実装していないし、実行していないと否定するが、ウーラマのように突然挙動が変わるというのも奇妙な話だ。

検索履歴や位置情報を収集して精度の高いターゲティング広告を表示するというのは現在では当たり前のことになっている。であれば、環境音を収集して、精度の高いリコメンドをすることになんの問題があるの?という考え方もあるかもしれない。一方で、会話や環境音は意図せずに収集されてしまうため問題が多いという考え方もある。

特に、断りなく収集している場合は、飲食店のリコメンド以外にも勝手に使われてしまう可能性も否定できない。

いずれにしても、プライバシーの設定を見直して、マイク、カメラなどは、必要のないアプリからのアクセスを禁止した方がよさそうだ。

 

外売が乱発する割引クーポンの設定ロジックはこうなっている

中国の外売(出前サービス)では、割引クーポンを発行するのが当たり前になっている。その多くは満◯減◯(◯元以上買うと、◯元割引)というものだ。この設定戦略はどのようにすべきか。外売咖が解説した。

 

割引クーポンのお得感が外売人気を支えている

日本の飲食店のクーポンは、特定の商品を割引するものをアプリで配信するパターンが多い。狙いは各社さまざまだが、多くの場合、来店頻度をあげ客数を増やし、もう1品サイドオーダーしてもらうことで客単価を上げようという狙いを持っている。

一方で、中国の外売では満減活動と呼ばれるクーポンが主流だ。満30減15のクーポンであれば、「30元以上購入すると15元割引する」というものだ。現在の外売に対応している飲食店では、このようなクーポンを「満25減15」「満40減20」「満60減25」など3種類以上発行しているのが一般的だ。このお得感が、外売(出前)を利用する動機になっている。

f:id:tamakino:20190506124911p:plain

▲美団の注文画面。各店舗の下に「80減30」などの割引クーポンの情報が表示されている。これは80元以上の注文で30元割引というものだ。クーポン設定をしていない飲食店はほとんどないと言ってもいいほどだ。

 

客数か客単価か。異なるクーポンの狙い

しかし、こんなにクーポンを乱発して、飲食店は利益が出るのだろうか。適切にクーポンを設計すれば、当然利益は出る。低価格、中価格、高価格の3種類のクーポンは、それぞれ狙いが異なっている。

低価格クーポンは、利用頻度を上げてもらうため。中価格クーポンはサイドオーダーを注文してもらうため。高価格クーポンは複数人分を注文してもらうためだ。言い換えれば、低は客数を増やし、中は客単価を増やし、高はユニーク客数を増やすことが狙いになっている。

外売咖は、次のような飲食店について、クーポン戦略が適切であるかどうかを解説している。28元から34.8元までの定食が複数種類あり、春巻きや小籠包、飲料などのサイドオーダーが10元と12元になっている飲食店が、「満25減15」「満40減20」「満60減25」の低中高の3種類のクーポンを発行しているとする。この設計は果たして適切だろうか。

f:id:tamakino:20190506124903p:plain

ケーススタディになっている店舗の価格帯と低中高の3種類のクーポン。このクーポン設計は正しいだろうか。

 

低額クーポンは赤字になる

低クーポン「満25減15」は、顧客の利用頻度を上げて客数を増やすことが目的だ。32元の定食をこのクーポンを使って購入した場合、25元以上なので15元割引されて、(32-15)=7元で購入できることになり、利用者からはものすごく得をした感覚になる。

ところが、一般的な飲食店の粗利は30%から40%程度であるので、仮に35%とすると、32元の定食の原価は20.8元。そこに7元しか売上がないので、13.8元の赤字となる。しかし、外売なので、座席、店内スタッフなどの店内リソースは使わない。一般的な飲食店の利益は10%程度であるので、店舗経費が25%程度かかる計算になる。調理スタッフの人件費は使うので、20%の経費が節約できると考えると6.4元。都合、赤字は7.4元となる。

 

低額クーポンは「客数を買う」ことが目的

つまり、低クーポンは7元程度の出費で、客数を1つ買うということなのだ。外売アプリに表示されるクーポンは、全員同じではない。利用者のプロファイルによって変えることができる。そのため、「1ヶ月以上利用していないリピーター」「一度も利用したことがない新規顧客」などを対象に低クーポンを配信することで、出費をしても客数を買う価値はある。

この低クーポンは、主要料理(この場合は定食)の最低価格よりも低くすることがポイントだ。定食を頼むときに、このクーポンが使えるということが消費を刺激するのだ。この料理店の場合、定食の最低価格が28元なので、28元以下に設定する。こうすると、どの単品料理を頼んでもクーポンが利用できるため、客の利用を刺激することができる。

ただし、外売咖は満減係数に気を配るべきだとしている。満減係数とは、クーポンの割引率だ。「満25減15」の場合、15÷25=0.6となる。この満減係数をお得度の指標にしている消費者は多いので、さらに価格を下げて「満20減15」にすべきだという。こうすると、満減係数は15÷20=0.75となって、消費者から見てお得に見えるようになる。

しかも、収益も改善する。32元の定食を注文した消費者は、12元を支払うことになるので、赤字幅は7.4元から2.4元まで縮小される。2.4元で客数を1つ増やすことができるのだ。

 

中額クーポンはサイドオーダーを注文させて利益率を上げるため

中クーポン「満40減20」は、サイドオーダーの注文に誘導するためのものだ。サイドオーダー品は、粗利が50%以上あるものが多く、客単価を上げると同時に利益率を上昇させる。

この中クーポンは、最高価格の定食(34.8元)より高く、最も低価格の定食と定格のサイド品の合計価格(28+10=38元)よりも低くする必要がある。この店の設定では、最低価格の定食+一品を買おうと考える人は、中クーポンが利用できなくなってしまうので、サイドオーダーをあきらめてしまう可能性がある。そのため、「満35減20」に設定すべきなのだ。

このクーポンを使って、28+10元を購入した場合、サイド品の粗利が50%だとして計算すると、客は23元を支払い、店側の原価は15.6元となるので、7.4元の黒字となる。クーポンなしで外売をした場合の利益は14.8元、店内利用の利益は3.8元なので、クーポンを使って外売を利用してもらった方が、店内利用されるよりも儲かるということになる。

 

高額クーポンは、複数人分の注文を狙う

高クーポン「満60減25」は、複数人の注文をして、客数を増やすことを狙っている。そのため、最高価格の定食(34.8元)+最高価格のサイド品(12元)の合計よりも高く、最低価格の定食2人分(28×2=56元)よりも安くすべきだ。この店のように「満60減25」にしてしまうと、最低価格の定食2人分でクーポンを利用することができず、不満が生まれてしまう。そのため、「満50減25」にするのが正しい。

このクーポンを使って(28元+10元)を2人分注文した場合、客は51元を支払い、店側の原価は31.2元となるので、19.8元の黒字となる。クーポンなしで外売りをした場合の利益は29.6元、店内利用の利益は7.6元なので、これも店内利用されるよりは儲かることになる。

f:id:tamakino:20190506124907p:plain

▲正しいロジックに基づいたクーポン設計。低中高の3種類のクーポンは、それぞれの狙いを持っている。狙っている価格帯の少し下に割引金額を設定することで、店内利用よりも多くの利益を上げることができる。

 

クーポン設計により営業数字は上下する

これはあくまでも基本的な考え方で、この他に、初回割引クーポンや期間限定クーポン、さらには価格そのものの割引も併用をするので、クーポンの設計はこう単純にはいかない。

そのため、複数のクーポン設計を用意し、顧客をグループに分け、異なる設計のクーポンを配信して、結果を比較検討するなどということも行われている。

美団(メイトワン)や餓了么(ウーラマ)といった外売企業は、単にアプリで注文をとって配達しているだけでなく、このようなクーポン戦略などを中心とした飲食店のコンサルティングも行なっている。外売は、飲食店経営のプラットフォームになっている。

Amazonギフト券- Eメールタイプ - Amazonベーシック

Amazonギフト券- Eメールタイプ - Amazonベーシック

 

 

深夜営業を取りやめる韓国コンビニ業界が、無人コンビニ技術に注目

韓国のコンビニが、政府の労働政策により深夜営業を取りやめている。その中で、中国の雲拿科技が開発した無人コンビニ技術CloudPick++に注目が集まっていると商訊前沿が報じた。

 

深夜営業を取りやめる韓国のコンビニチェーン

韓国聯合ニュースの報道によると、韓国のコンビニ最大手CUが、1万3000店舗のうち約20%で、深夜営業を取りやめる。他のコンビニチェーンも同様で、GS25は13.6%の店舗で深夜営業を取りやめ、セブイレブンでも17.6%、emart24でも26%が深夜営業を取りやめている。

各コンビニが深夜営業を取りやめる理由は、韓国の最低賃金政策が影響している。2017年の最低賃金は時給6470ウォン(約620円)だったが、現在は時給8350ウォン(約807円)まで上昇している。

さらに2018年7月から、1週間の労働時間も68時間から52時間に短縮され、各コンビニは人件費が嵩み、経営状況が悪化していた。深夜営業を取りやめることで、コストを低減しようというものだ。

 

ルフレジの導入も進み始めている

また、セルフレジの導入も進み始めている。emart24は2店舗でセルフレジ店舗の試験運用を開始し、セブイレブンも「セブイレブンエクスプレス」を4店舗展開している。スーパーでもセルフレジを置く店舗が増えてきている。

ルフレジには、何パターンかがある。来店客が商品を自分でレジに通してキャッシュレス決済するフルセルフタイプ。しかし、万引きや支払いミスなどがあるため、1商品ずつ決済をするタイプのフルセルフタイプもある。また、スタッフが商品をレジに通し、決済だけをセルフにするセミルフレジもある。

f:id:tamakino:20190425120034j:plain

▲韓国ソウル市で開催された国際フランチャイズ展に出店された雲拿科技の模擬店。韓国コンビニ関係者から大きな注目を浴びた。

 

韓国コンビニ業界が注目する無人コンビニ技術

この状況の中で、韓国のコンビニ業界が注目しているのが、中国の雲拿科技の無人コンビニ技術だ。雲拿科技の無人コンビニ技術CloudPick++は、画像解析を中心にしたもので、従来の無人コンビニとは一線を画している。

専用アプリのQRコードをかざしてゲートを通って入場したら、後は自由に商品をピックアップ。この時に、画像解析でどの商品を手にしたかがチェックされる。一度手にした商品を棚に戻しても構わない。そして、退場する時はそのまま退場するだけで、自動的に決済される。

f:id:tamakino:20190425120037j:plain

▲入場する時は、ゲートにQRコードをかざす必要があるが、あとは商品を手にして、そのままゲートから外に出るだけ。画像解析でどの商品を手にしたかを把握している。

 

アカウントのない同行者も入場できる

ユニークなのは、専用アプリを持っていない友人、家族も一緒に入場して買い物できる点だ。家族と一緒に入りたければ、入場時にアカウントを持っている人がQRコードをかざしてやればいい。そして、自分も再度QRコードをかざして入場する。これで、家族が購入した分もアカウントを持っている人に請求される。

2018年10月末に上海虹橋空港に1号店を開店した。24時間化を目指す上海虹橋空港で、24時間営業の無人コンビニが開店した。雲拿科技では、ショッピングモール、オフィスビル、大規模マンション、大学、ホテル、新幹線駅、空港の8つを目標に、2019年内に10店舗の開業を目指している。

また、この技術をコンビニチェーンに販売するBtoBビジネスにも力を入れており、米国、日本、韓国で300店舗の導入を目指している。

特に韓国では、今年3月にソウル市で開催された国際フランチャイズ展で模擬店が出品され、大きな注目を浴びた。

f:id:tamakino:20190425120040j:plain

▲上海虹橋空港にオープンした1号店。空港が24時間化をしていく中で、24時間営業が可能な無人コンビニに再び注目が集まっている。2019年内に10店舗の開業を目指している。

 


云拿科技

▲雲拿科技のデモ映像。Amazon Goと同じように画像解析でどの商品を買ったかを把握する。ひとつのアカウントで、複数の同行者が入場することもできる。


韓国のコンビニは深夜は無人コンビニなるかもしれない

韓国のコンビニ業界がCloudPick++技術に注目するのは、やはり人件費の抑制だ。最低賃金が時給8350ウォンと定められているだけでなく、夜10時から翌朝6時までの深夜勤務は1.5倍を支払わなければならない。この無人コンビニであれば、24時間営業をスタッフ1人から2人(商品管理などに必要)で回すことができ、人件費は有人コンビニの1/4程度で24時間営業が可能になる。

また、商品の補充、期限切れの商品撤去などの商品管理業務は、スタッフの勤務時間の10%程度であり、残りの90%を使って宅配などの新しいサービスも可能になってくる。

キャッシュレス決済比率が90%を超える韓国で、無人コンビニが普及する可能性が出てきた。

コールマン コンビニハンガー 170-9439

コールマン コンビニハンガー 170-9439

 

 

重慶市がサイバーパンクの街として人気の旅行先に

中国で「ブレードランナー2049」などのサイバーパンク系映画が人気になっている。その影響で、重慶市への観光旅行客が増えているという。重慶市がまるでサイバーパンク映画に出てくるような街だからという理由だと曹操自游行が報じた。

 

SFの映画のモデルは重慶市

中国でこの数年、サイバーパンクSFドラマ、映画がヒットをしている。「ウェストワールド」「ブレードランナー2049」「アリータ:バトルエンジェル」などが人気で、ちょっとしたサイバーパンクブームになっている。

このようなSF映画には、アジアの都市をモデルにした都市景観が出てくる。無秩序に発展した都市とサイバーパンクの未来像が合致するからだ。以前は、新宿歌舞伎町や香港をイメージしたものが多かったが、最近、中国人の間でささやかれているのが、重慶市をモデルにしているのではないかということだ。

実際、重慶市にはユニークな都市景観が多く、重慶市を訪ねて、サイバーパンク映えするスポットを巡ることが人気になっている。

f:id:tamakino:20190424130642j:plain

▲夜の重慶市。このような写真を撮影して、SNSに投稿するのことがちょっとしたブームになっている。

 

ビルの中に吸い込まれるモノレール

重慶市は人口3000万人を超える巨大都市。四川盆地の東にあり、市の中心部で嘉陵江と烏江の2つの河が合流するため、坂が多い。立体的な都市構造を取らざるを得ず、サイバーパンク的な構造になっていくのだ。

最も人気なスポットは、重慶軌道交通2号線の李子壩駅だ。なんと李子壩正街の6階、7階、8階がモノレールの駅設備になっている。1階から5階までは商業店舗、9階から19階までが住居になっている。うるさくて生活できないように思えるが、騒音は60デシベル程度で生活には大きな影響はないという。

2号線の建設時に、ちょうどこのビルの建築が重なった。モノレールを優先すればビルが建築できない。ビルを優先すればモノレールが迂回しなければならないということで、このビルの中の駅というユニークな構造が生まれた。ほぼ毎日、写真を撮る観光客が訪れる。

f:id:tamakino:20190424130645j:plain

▲観光客にいちばん人気なのが李子壩駅。ビルの中に駅ホームが設置されているため、モノレールがビルに吸い込まれていく。

 

f:id:tamakino:20190424130627j:plain

▲李子壩駅は下部が商業施設になっていて、上部が居住区になっている。そのため、想像するよりも騒音はなく暮らしやすいという。

 

f:id:tamakino:20190424130635g:plain

▲李子壩駅にモノレールが進入する様子。駅周辺は絶好の撮影スポットになっている。

 

重慶一の観光名所「洪崖洞」

中国人の間で「千と千尋の神隠し」のモデルになったのではないかと言われているのが洪崖洞だ(日本では台湾の九份と言う人が多い)。河沿いにせりだした吊脚楼と呼ばれる伝統建築で、現在は多くが建て直されて、土産物屋などの商業地区となっているが、夜間はライトアップされ、人気の観光スポットになっている。

f:id:tamakino:20190424131530j:plain

▲中国では「千と千尋の神隠し」のモデルになったのではないかと言われている洪崖洞。重慶の伝統建築様式を再現している。

 

坂の町重慶では歩道もバラエティ豊か

解放碑左営街と鑫龍ビルの間には、地上40mの高さに30mの長さの歩道橋がかかっている。しかも、マンションの窓のすぐそばを通っている。

重慶は坂が多いため、歩道に有料エスカレーターがかず多く設置されている。その中でも最長なのが、皇冠エスカレーターだ。全長112m、高低差53m、傾斜角30度で、2分30秒かかる。ここも多くの観光客が訪れ、ビデオ撮影をしている。

高速道路も立体的だ。黄桷湾立体交差は、4本の高速道路が交差するジャンクションであるため、中国でも複雑な立体交差になっている。

f:id:tamakino:20190424130623j:plain

▲解放碑左営街の歩道。地上40mの高さに設置されている。マンションの窓のすぐ横を通っている。

 

f:id:tamakino:20190424130648j:plain

▲皇冠エスカレーター。全長112mのエスカレーターで、2分30秒かかる。

 

f:id:tamakino:20190424130651j:plain

重慶は高速道路も複雑であるため、インターチェンジ好きにもたまらない街になっている。

 


视频: 重庆 两路口 皇冠大扶梯 坐到最后蛮吓人腿发软不敢朝下看了2元

重慶で有名な皇冠エスカレーター。観光客の多くが、スマホを取り出して写真を撮るか、ビデオを撮る。

 

新たに生まれた3D都市という観光資源

重慶は政策的に行政地域を拡大し、現在では面積が8.24万平方キロと北海道よりも広い。それでも都市圏人口は2000万人近い。長江三峡、大足石刻などの観光資源も豊富だが、最近は街の3D構造という新たな観光資源が生まれている。

重慶市在住のネット民の間では、市内のサイバーパンク的な風景をSNSにアップするのがちょっとしたブームになっている。

 

シャオミーのらくらくホンは音声認識のキーボードいらず

小米(シャオミー)傘下の多親(ドゥオチン)のらくらくホン多親AI電話」がさまざまなメディア、ブロガーから高い評価を受けている。299元(約5000円)という価格もあるが、キーボード入力が苦手な高齢者向けに音声入力の機能を充実させたことが高評価の要因だ。

 

文字入力が苦手な中国人

中国人はキーボード入力が苦手だ。入力方法は、QWERTYキーボードからローマ字によるピンイン(読み)を入力して変換する方法、五筆と呼ばれる漢字の部品を組み合わせて入力する方法、手書き入力などがあるが、いずれも一長一短がある。

ピンイン入力ではまずQWERTYキーボードの配置がわからない。五筆入力では慣れが必要。手書き入力では時間がかかると、いずれの方法も問題がある。

そのため、中国では早くから音声入力が好まれてきた。SNS「WeChat」でも、若い世代はテキストに絵文字などをつけてメッセージをやり取りするが、中高年以上では音声でやり取りをする。一言喋って音声を送信、向こうがそれを聞いたら、音声で返すという声の電報的な使い方をしている。

中国で、高齢者向けの携帯電話をデザインする場合、この文字入力をどうするかは大きなテーマになる。

f:id:tamakino:20190422111246j:plain

▲余計なアプリはほとんど入っていないので、ホーム画面はすっきりしている。ほとんどの機能は音声アシスタント経由で使う。例えば、天気を調べるのに、天気予報アプリを立ち上げて操作するよりも、「明日の天気を教えて」と声で尋ねた方が簡単だという考え方だ。

 

声だけで使いこなせるAI電話

多親AI電話では、音声アシスタント「小愛同学」を搭載し、キーボードはテンキーのみにした(ガラケー方式で文字入力は可能)。小愛同学は小米のスマートスピーカーに搭載されているもので、SiriやGoogleアシスタントと同じように、声で命令する。タイマーを設定したり、カレンダーに予定を入力したり、電話をかけることができる。 さらに、音楽をかけたり、漫才を再生することもできる。

文字入力はテンキーからもできるが、ほとんど使われない。WeChatのメッセージなども音声そのままで送るか、音声でテキスト入力をして送る。

どうしてもテキスト入力が必要なのは、電話帳ぐらいだが、これにも多親助手というアプリが用意されている。電話帳データはクラウド保存されていて、これを他のスマートフォンなどから追加、編集できる機能だ。一般的には、息子などがこの多親助手を使って、親の電話帳を編集する。親は、声で「息子に電話して」「◯◯さんに電話して」「病院に電話して」などという言うだけで電話ができる。SIMカードに保存した電話帳にも対応している。

高齢者一人で設定から利用までさせるのではなく、若い世代のサポートがあること前提に設計されている。

f:id:tamakino:20190422111243j:plain

▲シャオミーの「多親AI電話」。音声アシスタントを使って、声で操作することを基本にしているため、高齢者向けのスマートフォンとして人気になっている。「天気」と聞くと、音声とテキストで答えてくれる。

 

カメラはないが、Bluetoothと赤外線対応で家電リモコンになる

一般的なスマホと比べると、カメラが搭載されてなく、画面が小さいので地図が表示できない、写真は表示できるが、動画の再生は厳しいなどの問題はある。

しかし、その他の機能は充実している。バッテリー待受は15日間、連続通話420分と、週末にでも充電をすればじゅうぶんな設計。

さらにありがたいのが赤外線に対応していて、家電の赤外線リモコンとしても使えることだ。設定の難易度はやや高いが、声でエアコンやテレビを操作することができるようになる。

 

出張族も2台目の電話として使っている

このAI電話は、高齢者向けとして販売されているが、ビジネスマンの出張用にも使われているようだ。なぜなら、SIMカードが2枚装着でき、同時に利用できるからだ。香港や海外に出張するときに、自分のSIMカードの他に現地のSIMカードを入れれば、本国からの電話を受けることもでき、現地でも電話をかけることができるようになる。

バッテリーの持ちもよく、価格も安いため、出張の時に2台目の電話として持っていく人が増えているという。

また、Androidではなく、独自のプラットフォームなので、アプリのダウンロードはできないが、WeChatが利用できるアプリが入っており、WeChatペイのスマホ決済も可能になっている。

f:id:tamakino:20190422111249j:plain

▲意外に好評なのが、ダブルSIMカード対応、ダブル待受対応だ。出張の多いビジネスマンから、仕事用スマホとしても人気があるという。

 

数万大規模で売れていると推測される

販売台数は公開されていないが、小米の直販サイト「小米有品」では、すでに売上が1600万元(約2.6億円)を突破したとアナウンスしている。2G版が199元、4G版が299元なので、購入されているのがすべて4G版だとしても、販売台数は5万台を突破していることになる。1機種で、しかも市場が限定されている製品としては、ヒット商品と呼んでいいだろう。発売は2018年の9月なので、まだ半年でしかない。最近になって話題に上ることが多くなっているため、さらに販売台数は伸びていくと見られている。

 

小型端末発売で、弾みがつく顔認証決済の普及

2018年、アリババ関連で最もよく使われた言葉は「新小売」と「顔認証決済」だった。半径3km以内に30分宅配する新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)の急成長と、顔認証決済が普及をした1年になった。2019年は、フーマフレッシュがさらなる拡大期に入り、顔認証決済が地方都市にまで普及する年になると見られている。

 

2015年から始まっている顔認証決済

アリババのQRコード方式スマホ決済「アリペイ」が普及をし始めたのは2012年。QRコード決済であるため、店舗は、リーダーのような特殊な装置がなくても、スマートフォンだけでも対応できる。この手軽さから多くの商店に広がり、どこでも利用できる利便性から利用者が増え、都市部を中心にあっという間に現金よりも使われる主要な決済手段になった。

しかし、アリババはすでに2015年に顔認証決済のサービスを始め、2017年9月には、ケンタッキーと共同して、顔認証決済ができるファストフード店「KPRO」を杭州市に開業している。

f:id:tamakino:20190421103753j:plain

▲ケンタッキーが運営するKPRO。入り口付近のパネルでメニューから注文をし、顔認証決済をする。レジカウンターがないというのもKPROの大きな特徴だ。

 

レジ決済に必要な時間がほぼ半分に

顔認証決済はチェーン店から導入が始まっている。アリババのフーマフレッシュ、KPROを筆頭に、フランス系のスーパー「カルフール」、ファストフード「ケンタッキーフライドチキン」などがすでに導入済みだ。

今年、顔認証決済を導入したタイ系のスーパー「ロータス」では、顧客体験の向上と人件費の節約を同時に達成している。ロータスの袁林化市場部副総裁は南方日報の取材に応えた。「以前は、10件の商品のお客様の決済をするのに平均で56秒かかっていました。これが顔認証決済にすると28秒になりました。広州市の平均月賃金7366元で計算をすると、顧客1人あたり0.46元の人件費節約になります。ロータスでは年間に6000万人のお客様をお迎えしますので、年間2760万元(約4.6億円)の節約ができる計算になります」。

f:id:tamakino:20190421103757j:plain

▲大型スーパー「カルフール」でも、セルフレジにWeChat系の顔認証端末を導入している。パスコード、パスワードを入力する面倒がない。

 

最終的には決済ステップそのものが消える

小売業が顔認証決済に期待するのはここで終わらない。現在は、消費者がまだ顔認証決済に慣れていないため、精算をしてから顔認証決済をしてもらう、ファストフードなどではパネルで注文をしてから顔認証決済をしてもらうというように、精算や注文とは別ステップで決済を行なっている。

しかし、消費者が顔認証決済に慣れてくれば、精算や注文をしている間に顔認証をしてしまうというステルス化が可能になる。つまり、店舗オペレーションから「決済」というステップそのものがなくなるのだ。

レジオペレーションがさらに短縮化できるだけなく、無人レジ化も簡単になる。

一方で、消費者からも、いちいちスマホを取り出して、支払い用のQRコードを表示させる必要がなく、スマートフォンを持っていなくても決済ができることから、便利だと歓迎されている。顔認証決済は、「スマホ不要、パスコード不要、行列不要」として注目されている。

f:id:tamakino:20190421103804j:plain

▲アリペイが発売する低価格顔認証端末「トンボ」。既存のレジに接続できる点が大きく、この端末が顔認証決済の普及の起爆剤になると期待されている。

 

低価格小型の決済端末が普及のカギになる

ただし、唯一の問題は、大型の顔認証決済機能搭載液晶パネルは、1台1万元以上もする高価な端末だということだ。

そこで、アリペイでは1台2688元(約4万4000円)の小型端末を発売した。従来の端末と比べて80%も価格が安くなった。しかも、通常のレジに接続できるので、後付けが可能だ。これで3D顔認証に対応しているので、化粧をしている女性などでも問題なく認証ができる。

この小型顔認証決済端末は「トンボ」という愛称で呼ばれている。2019年は、このトンボが普及をし、顔認証決済があたりまえになる年になると期待されている。

f:id:tamakino:20190421103800j:plain

▲「トンボ」は省スペース、低価格である点が、商店から見た場合の魅力になる。客数の多いコンビニ、スーパー、ファストフードなどから導入が始まっていくことになる。 

 

アマゾンはなぜ中国で失敗をしたのか。5つの要因

アマゾンが中国市場から撤退することを公表した。調査会社Televisoryはアマゾン中国の失敗の理由を分析している。このレポートは、中国撤退が公表される前に公開されていることに注意していただきたい。

 

中国での存在感が薄いアマゾン

アマゾンはもはや誰もが知っているEC企業だ。米国、英国、ドイツ、日本といった先進国でECのトップシェアを握っている。しかし、EC市場規模が米国とほぼ同じである中国では、存在感が薄い。調査会社iResearchの調べによると、中国BtoCECサイトの2017年第3四半期の取引総額は9620.8億元(約16兆円)。その中でトップシェアはTmall(アリババ)であり、第2位が京東(ジンドン)。アマゾンはわずか0.7%しかない。これは一体なぜなのか。

f:id:tamakino:20190419125121p:plain

▲iResearchが公開している2017年Q3のBtoC型ECサイトの販売シェア。アマゾン中国のシェアは1%以下になっていて存在感がほとんどない。

 

失敗の理由その1:先行者として戦えなかった

アマゾンは、現在トップシェアを握っている米国などの国では、先行プレイヤーとして競争をしていた。市場参入が最初であったかどうかはともかく、黎明期に参入し、その国のEC市場の成長とともにアマゾンも成長をしてきた。

しかし、アマゾンが2004年に中国市場に参入しようとしたとき、すでにビッグプレイヤーが存在していた。アリババの「タオバオ」(BtoC部分がTmallとして分離)、また今日ではシェアを落としている当当網の2社が1999年に事業を始め、すでに激しい競争をしていた。黎明期にライバルを蹴落とし、優位に立ってはからその優位さを最大限に利用して成長するというアマゾンのスタイルを取ることができず、挑戦者として市場参入しなければならなかった。

f:id:tamakino:20190419125127p:plain

▲アマゾン中国の総収入はアリババ、京東(JD)にも負けている。アリババは手数料収入のみであるため、EC販売額で見れば図抜けて多い。アマゾンは販売額シェアの割には収入が多く、健闘をしている。

 

失敗の理由その2:パートナー企業の失策

当時のアマゾンは、まだオンライン書店の色彩が強く、そこから取扱商品を広げて、総合ECサイトに転換するという戦略をとっていた最中だった。そのため、2004年に中国のオンライン書店卓越網を7500万ドル(約84億円)で買収し、アマゾンに衣替えすることで、中国市場に参入した。

しかし、この卓越網が問題を抱えていた。いわゆる海賊版の販売が発覚をし、アマゾンはその再発防止に追われることになる。

 

失敗の理由その3:中国市場の理解不足

アマゾンのグローバルなアクティブ会員数は約3億人。一方で、中国が中心のアリババ(Tmall+タオバオ)は5億人もいる。これは同じ消費者が頻繁にアマゾンを利用する習慣化をしていることを表している。しかし、中国人は同じECサイトでたびたび買うとは限らない。セールやクーポンなどを利用して、そのときそのときで価格の安いサイトで買おうとするため、顧客の流動性が高い。

アマゾン中国は、この中国市場特有の状況に対応せず、価格戦略、クーポン戦略に甘さがあり、プライム会員戦略など既存会員にプロモーションするというグローバルスタイルを通してしまった。

f:id:tamakino:20190419125130p:plain

▲各ECサイトの年間利用者数(グローバル)。アリババはほとんどが中国向けであるのに利用者数がアマゾンよりも多い。つまり、アマゾンは既存会員の単価、購入回数が多い。アマゾンはリピーターによって支えられているビジネスであることがわかる。

 

失敗の理由その4:物流コストの負担

アマゾンは、物流システムでもグローバル方式を貫いてしまった。中国国内に17の物流センターを作り、メーカーから納入された商品在庫を持ち、そこから注文に応じて全国に発送するというスタイルだ。この運営コストは、営業収入の8%にあたるという。

一方、市場リーダーのアリババのTmall、タオバオは在庫を持たない。あくまでも、メーカー、商店と消費者を仲介するだけなのだ。商品は商店が自ら消費者に発送する。このため、物流システムを拡大するための費用が不要となり、物流システムを改革するための研究投資ができるようになっている。

また、アマゾンと同じように自社物流網を構築している京東は、130カ所近い物流センターを構築している。運営コストは莫大だが、消費者の側に小規模の物流センターを設置することで、きめ細かい配送を実現している。アマゾンは、アリババのように物流を委託するわけでもなく、京東のように密度の高い物流網を築くわけでもなく、中途半端になってしまっていた。

f:id:tamakino:20190419125133p:plain

▲中国内の物流センターの数。京東(JD)はきめ細かく物流センターを配置している。アリババは在庫を持たない。アマゾン中国はそのどちらでもない中途半端な形になってしまっている。

 

失敗の理由その5:サプライヤーの拡大戦略

アマゾンには全世界で200万社が商品を供給している。しかし、アリババのサプライヤーは850万社もある。これにより、価格を軸にした激しい競争が起きている。同じ商品を複数業者が販売することは当たり前であるため、多くの消費者が価格順に並べて最安値のところで買う。

f:id:tamakino:20190419125136p:plain

▲在庫回転日数の比較。何日間で、在庫が総入れ替えになるかを示したもの。短いほど回転が速い。アマゾン中国は京東(JD)よりも在庫を長く持ち、運営に課題があることがわかる。

 

コンテンツサービスは成長可能

つまり、アリババもアマゾンもEC企業であるとはいっても、アリババは商店と消費者のマッチングサービスなのだ。ここにアリババの強さの秘密がある。

一方、アマゾンはオンライン大規模商店だ。中国で第2位の京東もこのタイプであり、アマゾンはアリババではなく、京東をモデルとして追いつき、追い抜く戦略をとることもできる。

そのため、アマゾンはライバルであるTmallに旗艦店を出店するという面白いことをやっている。Tmall経由で、アマゾンの商品を購入した場合、アマゾンはアリババに手数料を支払う必要がある。それを支払ってでも利用者数を伸ばし、従来リーチできなかった顧客を取り込もうとしている。

2014年には、中国でゲーム実況プラットフォームTwitchを9億7000万ドル(約1085億円)で買収している。また、アマゾンは、プライムビデオ、アマゾンミュージック、Kindleといったコンテンツサービスを持っている。Televisoryの筆者は、アマゾンがECの分野で成長できなくても、このようなコンテンツビジネスで中国市場での成功を勝ち取る可能性は残されていると結んでいる。

 

追記:4月18日にアマゾン中国は7月18日を持って、販売を停止することを発表した。しかし、海外製品の販売(越境EC)とKindleなどのコンテンツサービスは継続するとのことだ。Televisoryの見通し通り、コンテンツビジネスで再起を図ることになる。

Amazonギフト券- Eメールタイプ - Amazonベーシック

Amazonギフト券- Eメールタイプ - Amazonベーシック