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アリババに対抗することで成長する美団。ジャック・マーとの確執

アリババのスマホ決済「アリペイ」アプリと美団が似通ってきていることが話題になっている。提供されている生活系サービスが似通っているのだ。美団の創業者、王興は、以前からアリババの創業者ジャック・マーを公然と批判し、アリババに対抗意識を燃やしてきた。その確執が美団を成長させていると程序員小樊が報じた。

 

アリババに対抗意識を持つ「美団」

アリババのスマホ決済「アリペイ」と、美団(メイトワン)のサービスが似通ってきていることが話題になっている。いうずれもフードデリバリー、タクシー、シェアリング自転車、列車予約、ホテル予約、映画館予約などほぼ同じサービスを提供している。美団は決済方法からアリペイを外すなど、対抗意識をあらわにしている。

それだけでなく、美団の創業者、王興(ワン・シン)は、SNSなどで露骨にアリババとジャック・マーを批判する。かつて、アリババは1.5億ドル(約158億円)もの投資を美団に対して行っていたのにだ。多くの人が、ジャック・マーに対する王興の怒りがどこにあるのか訝しがっているが、美団がアリババを仮想敵にして成長してきたことは間違いなく、さらに生活サービスの領域ではアリババを脅かす存在になってきたことも確かだ。

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▲美団アプリ(上)とアリペイアプリ(下)の比較。提供されているサービスが似通っている。

 

グルーポンに刺激を受けて誕生した「美団」

2011年、米国のグルーポンに刺激を受けて、同様のサービスが中国でも流行した。同じ商品を買う人が規定の人数集まると、格安価格で購入できるという仕組みのグループ購入ECだ。当時、中国では5000社を超える業者が登場したと言われ、美団もその中のひとつだった。

生き残りの決め手となったのは、クーポン合戦だった。各社がクーポンを発行し、商品がタダ同然で購入できることから、グループ購入EC全体が盛り上がった。しかし、大量のクーポンを発行するには資金がいる。美団が生き残ることができたのは、アリババがBラウンド投資として、セコイアキャピタルと共に5000万ドルの投資をしてくれたことが大きい。2014年にはアリババはCラウンド投資を行い、最終的に美団の株式の10%から15%程度を取得したと見られている。

 

アリペイはジャック・マーの個人会社?

しかし、その頃から、王興はジャック・マーをSNSなどで厳しく批判をする。それも不満を言うというレベルではなく、内外ともに優れた経営者、リーダーとして知られているジャック・マーの闇の部分を指摘するような内容だった。

2011年には、ジャック・マーは「アリペイ」を私物化していると厳しく批判した。確かにこの当時、アリババとアリペイは不思議な関係にあった。アリペイは元々アリババのプロダクトなのだから、子会社として独立するというのが自然なやり方だ。しかし、当時、アリババとアリペイは独立した会社の体裁になっていた。アリペイの大株主は、ジャック・マー個人が収支をする投資会社数社だったのだ。アリババに対しては、利潤の37.5%をアリペイ関連の知的財産使用料、技術使用料などを支払うという契約になっていた。経済面では、アリババの子会社同然だったが、統治面ではジャック・マーの個人会社同然になっていた。

その後、2014年にアントフィナンシャルが設立され、紆余曲折を経て、アリペイはアントの子会社となり、アントの株式の1/3をアリババが所有するという健全な形になった。

それまでは、「アリババが運営するアリペイ」「アリババの子会社アリペイ」と言い方は、実質的にはその通りだが、会社登記上は誤りという不思議な状態になっていた。

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▲以前のアリペイをめぐる複雑な資本関係。下方、黄色い会社がアントフィナンシャルで、アリペイはその子会社になる。非常に複雑な図だが、要はジャック・マー(馬雲)個人が投資会社を経由して、アントフィアンシャルの株式のほとんどを所有していた。現在は、アリババが株式の1/3を保有する形に改められている。

 

美団を傘下に取り込もうとしたアリババ

その後も、王興はアリババの批判をことあるごとに行っている。アリババは投資をしただけで、アリババのサービスとのシナジー効果を狙った提案をしてもまったく乗ってこない。ビジネス的にもテクノロジー的にもまったく手助けをしてくれないというのだ。もちろん、これは王興の言い分であって、アリババにはアリババの見方があるのだろう。

一方で、美団社内にアリババ文化を浸透させることには熱心だった。つまり、アリババは美団をすでにアリババのパーツのひとつと見做していたのだと王興は主張する。特に2015年に美団が上場の準備を始めると、この矛盾が大きくなっていったという。

・アリババとの決裂。アリババはライバルのウーラマを傘下に

例えば、ジャック・マーは、美団の決済方式(アリペイ、WeChatペイ、ApplePayに対応していた)をアリペイだけに絞るように要求してきたという。もし、美団がアリペイでしか決済できなくなった場合、万が一、アリババと衝突をして、アリペイの提供を停止させられたら、美団のサービスは立ち行かなくなってしまう。

王興は、SNSで「どのような決済方式を使うかは、消費者が選ぶことで、美団が決めることではない」と発言して、この提案を断った。

これはジャック・マーを激怒させた。アリババは保有している美団の株式を、(王興の見方によると)意図的に低価格で売却したため、美団の株価が下落をした。

王興は、「ジャック・マーは不誠実な人だ」と発言して、美団からアリペイの新規登録を停止し、独自の「美団支付」を始めてしまった。そして、テンセントの投資を仰ぐようになる。これにより、アリババは保有している美団の株式すべてを売却した。

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▲美団では、独自の「美団支付」、WeChatペイの決済が基本になっていて、アリペイの新規紐付けは停止されている。

 

アリババに対抗することで成長をしている美団

アリババの投資としては成功だったが、ジャック・マーの美団をアリババグループに取り込もうという戦略は失敗に終わったことになる。

こうして、アリババは美団のライバルであった「ウーラマ」に投資をしていくことになり、結局、2018年4月、アリババはウーラマを完全買収する。創業者であり、外売(フードデリバリー)という新しいサービスを発明した張旭豪(ジャン・シューハオ)は辞任をして、ウーラマを離れることになった。

王興はこれを恐れていたのだろう。自分が作ってきたサービスを資本の力で買収されてしまい、自分は辞任をせざるを得なくなる。アリババの視点からは「サービスをグループ化して、消費者にさらに大きな価値を提供する」ことだが、王興の目から「乗っ取り」に見える。

すでに中国の英雄にも讃えられるカリスマ経営者ジャック・マーを批判する人は、中国にもいないわけではない。しかし、事業面でもアリババに対抗し、挑んでいるというのは王興ただ一人だ。王興は、巨大なアリババに一人で挑んでいる。そして、アリババも無視できないところまで、美団は成長をしてきている。

 

増加するテック企業の理不尽な解雇理由。12人のリアル(下)

コロナ禍もあり、テック企業を理不尽な理由で解雇される事態が社会から関心を集めている。特にテンセントが「勤務時間が1日平均8時間に足りない」という理由で解雇された件が話題になっている。燃財経では、理不尽な理由で解雇された12人に取材した。

 

テック企業に蔓延する理不尽な解雇理由

テンセントに勤めていた閻さん(仮名)が、「1日の勤務時間が8時間に満たない」という理由で解雇されたことが注目を浴びている。閻さんは、それは記録上のことで、実際は8時間以上働いているとして、深圳市の労働仲裁委員会に仲裁を申し立て、同時に深圳市南山区法廷と深圳市中級人民法廷に、労働契約の履行を求めて裁判を起こした。テンセント側では、解雇理由は労働規律上、重大な違反があったことで、勤務時間が8時間に満たないという理由ではないとコメントしている。

この事件が世間の関心を集めたのは、近年、テック企業で解雇される理由の中に常識を外れたものが増えていると感じている人が多いからだ。

実際に、燃財経が取材をした中でも、あくまでも解雇された社員の主張ではあるが、「名前を取り違えて解雇された」「痩せすぎているため、制服が似合わないから」「女性の数が多すぎるから」という理由で、降格、解雇されている例がある。燃財経では、納得のいかない理由で解雇された12人の話を掲載している。

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▲テンセントが提出した閻さんの勤務記録。しかし、閻さんとは実態が反映されていないとして、争いになっている。

 

服装を注意されて解雇。テック企業人事。勤続3年

私が勤務していた企業は、元々テレビショッピング事業を行っていましたが、ECにも進出しようとし、私はそのEC部門の人事部に入社しました。

私は少しの疲労で、目に目立った大きなクマができる性質で、そのことをいつも気にしていました。周りは冗談でからかうだけなのですが、私にとっては深刻なことだったのです。そこで、ある日、美容整形を受けることにしました。その回復期には、サングラスをかけて出社をすることになります。同僚には正直に理由を説明しました。

ある時、買ったばかりの新しいスカートを履いていきました。それは背後の腰の部分にスリットがあり、少しだけ肌が露出しているというものです。しかし、上司がそれを咎めたのです。仕事をする上でふさわしくない服装なので、着替えるように言われました。

結局、私はサングラスと服装の件で、解雇を通知されました。しかし、私は人事を専門としていて、労働法を学んでいます。解雇理由としては不合理だと主張し、賠償金を会社に対して請求しました。

結局、その会社のEC部門はサービスの立ち上げがうまくいかず、何か理由をつけてはリストラをしようとしていたのです。その後も、おかしな理由で解雇される社員が相次ぎ、多くの人が私のところに対抗するためのアドバイスをもらいにやってきています。

 

制服が似合わないから解雇。オンライン教育企業。勤続1年

私はオンライン教育の企業で、会議のアテンダントをしていました。会議の準備をし、会議中はお茶を出したりする簡単な仕事です。アテンダントは3人で、その3人は仲良く仕事をしていました。

ところが、1ヶ月後、アテンダントの制服が変更になりました。すると、チーフに呼ばれて、私は痩せすぎているので、新しい制服が似合わない。だから解雇すると突然言われたのです。確かに私は背も低く、体重も38kgと痩せていて、よく未成年に間違えられます。しかし、そんな理由で解雇されるとは耳を疑いました。

結局、ばかばかしくなって解雇に応じました。同じチームだった2人も結局、1人は3ヶ月後、1人は半年後に辞めています。

私はもととも保育士の資格を持っていたので、現在は保育士として働いています。今では解雇をしてくれたチーフに感謝をしています。なぜなら、仕事は簡単だけど退屈で、何も学ぶことができない仕事を辞める決断の後押しをしてくれたからです。

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▲労働仲裁委員会に対する仲裁、調停の申し立ては、ミニプログラムからできるようになっているケースが多い。テック企業を中心に労働仲裁、調停事件が増えている。

 

シャワー室で喫煙したら即解雇。自動車部品製造企業。勤続5年

コロナ禍により、自宅待機が続いていましたが、3月の頭から職場復帰が始まりました。すると、製造ラインのある工員が、シャワー室で喫煙をしたという理由で解雇されるという事件が起こりました。

シャワー室での喫煙は確かに問題ですが、コロナ以前はそれが解雇理由になるようなことはありませんでした。米国工場でも似たような解雇事件が起こり、解雇された社員の親戚が問題視し、ツイッター上でトランプ大統領に直訴するツイートをする事態にまでになりました。

昨2019年6月には、会社の人事チームが江蘇大学でリクルート活動を行い、研究部門に多くの学生をスカウトしました。ところが、11月に会社はそのうちの2/3を解雇してしまったのです。2018年、2019年で研究部門にリクルートした学生は、今年になって全員いなくなりました。とても、真っ当な状態とは言えません。

今年になって、私もリストラ対象になりました。私は上司に訴えて、米国本社に戻してもらえるようにお願いしましたが、話が進展しないまま2ヶ月後、突然、降格されました。理由は、私の職階には女性が多すぎて、男女比の均衡を保つため、私を降格したのだと言います。結局、私はそのまま自発的に退職することにしました。

その企業に残っている契約社員の同僚に聞いたところ、最近、会社から、業務委託契約から派遣契約に切り替えることを打診されたそうです。会社は何も変わらないと説明しているそうですが、会社の拘束、管理は厳しくなり、しかも彼女の2年間の実績は考慮に入れられずに報酬が決められることになります。結局、彼女は辞職することにしました。しかし、規定の退職金+1.5ヶ月の支払いが必要なところ、いまだに支払いがされず、彼女はとても困っています。

 

長期休暇に入ったらそのまま放置。テック企業。勤続10年

私は、ある化粧品製造販売の企業で、直販EC部門の責任者をしていました。2年契約で、双方の同意で契約を継続することになっていました。ところが、最後の2年間は、契約更改の話がなかなかきません。2年4ヶ月になったところで、会社から契約を更新しないと告げられました。

そして、チーム全員に休暇が与えられました。休暇といっても、有給ではありません。単なる自宅待機でした。というより、多くの社員がリストラされたと感じました。会社側がいう休暇期間が終わっても、何の音沙汰もありません。私たちは、仲裁委員会に申し立てをしました。しかし、EC部門は独立した子会社となっていたため、書面上は単なる会社の解散扱いとなってしまうため、仲裁は難航をしています。

私は、社長と話をしたいと思いましたが、なぜかいつも不在になっていて連絡がつきません。そこで、弁護士を探して、法廷に訴えました。しかし、会社側はあくまでも自発的な退職だと主張をして、双方の主張が平行線のまま膠着状態になってしまいます。

結局、さまざまな証拠を集めて法廷に提出して、20ヶ月の闘争を経て、ようやく7.5ヶ月分の賠償金を獲得しました。しかし、弁護士への支払いが1万5000元(約23万円)にもなります。まったく割にあいません。私の元部下たちの法廷闘争の手伝いもしていますが、彼らは給与も低く、勤続年数も少ないため、消耗する労力の方が大きくなってしまうのではないかと心配しています。

 

解雇されたら給料支払われず。テック企業。試用期間

2019年9月、私は広州市のあるメディア企業で、ショートムービーの配信主の育成事業に就きました。最初の3ヶ月は試用期間で、月給は7000元です。正式採用となると8000元になります。

12月になって、あと4日で試用期間が明けるという時、人事担当者から、正式採用しないという通知をもらいました。具体的な理由は教えてもらえませんでしたが、致し方ありません。

しかし、11月分の給料がまだ未払いでした。契約では翌月15日に支払われることになっていましたが、人事担当者の説明によると、11月と12月の給料は1月15日にまとめて支払うということでした。

しかし、1月15日になっても支払いがありません。元上司にWeChatで尋ねると、会社は今とても資金が厳しい状態になっていて、まず2000元を支払い、2月に1500元を支払う。その後については追って連絡をするという返事でした。

その後、職探しに奔走していると、元同僚から、その会社が10人を解雇して、残った社員の12月から2月までの給料が未払い状態になっているということを知りました。ところが、その会社はその時になっても、人材募集広告を出し、相当数の人材を採用していることも知りました。

別の元同僚に話を聞くと、彼は給料の遅配はまるでなく、業務も普通通り行っていると言います。つまり、リストラしたい部門には解雇をしたり、給料を意図的に支払わず、利益が出る部門だけで正常営業をしているようなのです。

現在、広州市の労働紛争仲裁センターに仲裁の申し込みをしている最中です。

 

警備員に引率されて即日解雇。テック企業。勤続3年

私はオンライン旅行予約サイト「Ctrip」に入社し、その後2017年に「去哪児」に転職をしました。

2019年になって、私のチームのリーダーが辞職をし、新しいリーダーが配属されてきました。すると、その新しいリーダーはいきなりリストラを始めたのです。すぐに3人が解雇され、その内の1人は創業期からいる社員でした。私たちがしていたウェイボーによるプロモーション業務は外部委託をするということのようでした。

私たちは、解雇に抗っても仕方のないことだと考え、補償金の交渉を始めました。もう11月になっていたので、年末のボーナス支給と退職金+2ヶ月分を要求しました。しかし、回答は退職金の1/2だけを支払うというものでした。あと数日で、まる2年になりますが、勤続2年未満であれば違法とは言えません。しかし、有給休暇も残っているので、それを勘案すれば、すでに勤続2年に達してたのです。

まるまる勤続2年になる日の前日、警備員が私のデスクにやってきて、荷物をまとめるように告げられました。そのまま、私は警備員に付き添われて、会社の外に出されてしまったのです。

私はCEOに事情を説明するメールを送りましたが、弊社の人事部は優秀で信頼しているので、人事部の判断を尊重するという紋切り型の返事がきただけでした。

それで、仲裁委員会に申し立てをし、弁護士を通じて会社に和解の呼びかけをしました。担当をした仲裁委員は、過去にも去哪児の仲裁をした経験があるという方でした。しかし、その担当者は、暗に「告訴はしない方がいい。告訴すると、今後の職探しに影響が生じる」という脅しともアドバイスとも言えないことを口にします。

和解の交渉の場では、会社側は私の勤務記録を提出してきました。それによると、1ヶ月の間に、3日間は欠勤をし、20日間は遅刻、早退をし、1日の拘束時間が平均して9時間に満たないという主張をしました。それが決定的となり、会社側の主張が全面的に採用されたのです。

しかし、欠勤の3日間は、会社の業務としてイベントやセミナーに出席をしていたもので、そのことは社内の書類や業務グループでのSNS履歴を見れば簡単に証明できます。遅刻、早退も会社の規定では、10時までに出社、6時以降退社、昼食休憩1時間で労働時間8時間と定められています。しかし、現実には出社時間、早退時間は守られなくなっていました。11時頃出社するのは普通のことで、徹夜をすることも多く、徹夜の翌日は午後になると退社します。週に40時間(1日8時間)以上になっていれば、出勤時間、退社時間は個人に任されていたのです。

現在、上告をして争うつもりですが、私の主張は社内書類がないと立証できないため、元同僚の協力者を探していますが、応じてくれる人は見つかりません。私の主張は正しいという自信を持っていますが、一方で、愚かであったとも思います。労働契約を結んで働いているのですから、会社の規則をよく読み、それに反した行動が行われている場合は、自分を守るために、さまざまな証拠を保全しておく必要があったのです。

私は司法の正義というものを信じているので、最終的には私の主張が受け入れられると思っていますが、それでも法廷闘争は心理的なストレスが大きすぎます。毎日、私はどうしたらいいのだろうと不安になり、不眠症になってしまいました。

 

 

増加するテック企業の理不尽な解雇理由。12人のリアル(上)

コロナ禍もあり、テック企業を理不尽な理由で解雇される事態が社会から関心を集めている。特にテンセントが「勤務時間が1日平均8時間に足りない」という理由で解雇された件が話題になっている。燃財経では、理不尽な理由で解雇された12人に取材した。

 

テック企業に蔓延する理不尽な解雇理由

テンセントに勤めていた閻さん(仮名)が、「1日の勤務時間が8時間に満たない」という理由で解雇されたことが注目を浴びている。閻さんは、それは記録上のことで、実際は8時間以上働いているとして、深圳市の労働仲裁委員会に仲裁を申し立て、同時に深圳市南山区法廷と深圳市中級人民法廷に、労働契約の履行を求めて裁判を起こした。テンセント側では、解雇理由は労働規律上、重大な違反があったことで、勤務時間が8時間に満たないという理由ではないとコメントしている。

この事件が世間の関心を集めたのは、近年、テック企業で解雇される理由の中に常識を外れたものが増えていると感じている人が多いからだ。

実際に、燃財経が取材をした中でも、あくまでも解雇された社員の主張ではあるが、「名前を取り違えて解雇された」「痩せすぎているため、制服が似合わないから」「女性の数が多すぎるから」という理由で、降格、解雇されている例がある。燃財経では、納得のいかない理由で解雇された12人の話を掲載している。

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▲テンセントが閻さんに発行した離職証明書。解雇理由をめぐって意見の対立があり、社会関心事となっている。

 

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▲テンセントが提出した閻さんの勤務記録。しかし、閻さんとは実態が反映されていないとして、争いになっている。

 

一年の間に同じ会社から2回も解雇される:テック企業、勤続5年

私は、同じ企業から1年の間に2回解雇されました。規定では退職金が4ヶ月分で、30日前の事前解雇予告がない場合は、さらに1ヶ月の補償金もあり、これが2回ありましたので、退職金だけで10万元(約155万円)ほどになりました。

最初の解雇は、経営者の判断ミスにより、売上が60%にまで落ち込んだことによるリストラです。この解雇は突然でした。午前中に人事部から話があって、午後には解雇されていました。業務の引き継ぎもできないほどでしたが、退職金も速やかに支払われました。

私がこの会社に入社したときには600人ほどの社員がいたのに、解雇されたときは200人ほどになっていました。私がいた部署も30人だったのが、10人ほどしか残っていません。この時は、さほど落ち込むこともなく、退職金ももらって、気持ちよく離職できました。

次の職探しをしている時、元の会社の人事部が私に連絡をとってきて、戻ってきてほしいと言います。新しい事業を始めるのだが時間がなく、適切な人を採用している余裕がないというのです。私としても、よく知らない会社にいくよりは、知っている会社で働いた方がいいと思い、再び同じ会社に入社することになりました。

ところが、半年後に、新型コロナの感染拡大が起こり、報酬の20%カットが発表されました。CEOは、投資家と株主を安心させるための一時的な措置だと説明していましたが、社員は全員ほんとうのことを知っていました。会社にはまだお金があるのに、社員を犠牲にして、投資家の利益を守ったのです。

会社は、さらに減給に同意する書面への署名を求めてきました。しかし、これにサインをしてしまうと、一時的なカットではなく、本来の報酬が20%減給されることになってしまいます。しかも、コロナ禍でも、私の仕事はまったく減っていなかったのです。

私は、署名を拒否しました。すると、あっさりと解雇されました。コロナ禍に解雇されるのは不安もありましたが、幸いにも専門スキルを持っていたため、離職後1ヶ月で3社からオファーがあり、その中の一つの企業に入社し、報酬も30%増えました。前の会社のことは忘れて、今の会社で頑張っています。

 

名前を取り違えて解雇:ECカスタマーセンター、ゲーム開発。勤続3年

社会に出て2年の間に、2回も私の身の上にありえないことが起こりました。二度とこのような目に遭う人が出ないようにお話しします。

最初は、ECのカスタマーセンターに勤務していた時のことです。仕事が終わり、社員寮に戻り、シャワー室で足を洗いたいと思いましたが、サンダルを用意するのを忘れていました。見ると、誰のものともわからないサンダルが一足放置してあります。周りの人に聞くと、みな自分のものではないと言います。それで、誰かが忘れたものだと思い、借りてしまったのです。そのサンダルを履いていると、ある同僚が「それは自分のだ」と言うので、謝罪をして返しました。それだけのことです。

ところが、翌日、その同僚が所長に、サンダルを盗まれて、しかも罵倒されたと訴えたのです。罵倒などしていません。しかし、所長に説明すればするほど「言い訳をしている」ととられ、解雇されました。その日までの報酬は、来月15日に手渡しするというので、15日にいくと、人事担当者は「あなたは解雇されたので、給料は支払われない」と言います。働いた分の給料はもらえず、法律に規定されている退職金も支払われませんでした。

その後、ゲーム開発企業に就職し、ゲームデザインの仕事に就きました。報酬は基本給+成果給という契約です。この企業では、毎月成績を発表して、下位の社員は解雇される仕組みです。私の感触では、上位20%か30%程度に入っていると思っていたので安心をしていたのですが、なぜか下位に入っていて、その場で解雇されました。驚きましたが仕方ありません。しかし、数日後、会社から連絡があって、解雇はミスだったというのです。

私の名前は「周子濤」ですが、その会社には同級生の「劉子濤」と一緒に入社したのです。彼は、入社しても仕事をせず、毎日会社でゲームで遊んでいました。私が解雇された時、なぜ私が解雇されて、彼が解雇されないのだろうと不思議に思いました。会社はミスの内容を説明してくれませんでしたが、私と彼の名前を取り違えたのだと思います。

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▲労働仲裁委員会に対する仲裁、調停の申し立ては、ミニプログラムからできるようになっているケースが多い。テック企業を中心に労働仲裁、調停事件が増えている。

 

会社が別の会社の入社面接をセッティング:ウェブデザイナー。勤続3年

私はテック企業でウェブデザイナーをしていましたが、その会社は大きくないため、さまざまな仕事をこなさなければなりません。さらに、大きな顧客を失ったため、ウェブデザインの仕事が減りました。そこで、社長が私に競合製品の分析をしてほしいと言います。それを1日かけて報告書を完成させましたが、なぜそんなに時間がかかるのかと叱責されました。普通なら2時間でできる仕事だと言うのです。

その後、人事担当者がやってきて、会社のウェブデザインの仕事が減少をしている。他の業務もできるようにしないと、この会社で生き残っていくのは難しいというような話をします。それで理解しました。ウェブデザイナーのリストラが始まろうとしていたのです。

しばらくすると、人事担当者から、ある企業の入社面接を受けないかという電話がきました。腹が立ちました。会社の状況が悪化をしてリストラをしなければならなくなるのは仕方のないことです。でも、だったら、直接私にそう告げればいい。それを、私の知らないところで、私の入社面接を勝手に設定しているのです。

結局、私はその申し出を受けました。これ以上、この会社で仕事をする気になれなかったからです。法律の規定により2ヶ月分の退職金を要求しました。会社は承諾をしましたが、私が5日間の有給休暇をとっていたことを発見して、休暇分の4000元を減額してきたのです。人事担当者の主張によると、有給休暇は会社の福利厚生として用意されているもので、退職する人には適用されず、自己都合の欠勤扱いとなるというのです。

それはおかしいと反論すると、人事担当者は「もう次の就職先が決まっている段階で、トラブルを起こすと、私たちは次の会社への紹介状が書けなくなる」と脅すようなことを言います。

会社でリストラが始まったら、会社に身を委ねてはいけないということを学びました。会社の状況が悪くなったら、自分が率先して動いて、次の就職先を見つけ、離職した方がずっといいということを学びました。

 

退職補償金を支払わずに済む2つの方法:テック企業CEO。創業6年

私は1週間で100人以上をリストラしなければならない状況に追い込まれました。しかし、リストラをするにも資金が必要です。規定の退職金+補償金1ヶ月分を支払わなければならないからです。私は人事部に何かうまい方法を考えるように命じました。今は反省していますが、さらに、「さもないと、君たちをリストラすることになる」とまで言ってしまったのです。

一般的なリストラの方法は2つあります。ひとつは配置転換をすることです。社員にしてみれば、自分の希望とはまったく違った仕事をしなければならなくなるので、多くの社員が自発的に辞職していきます。規定の退職金は支払う必要がありますが、解雇補償の+1ヶ月分は支払わなくて済みます。

もうひとつは、部門の責任者にリストラを命じる方法です。責任者は採用の決裁権を持っているので、解雇もできます。そして、責任者に部門の社員全員を解雇させ、最後に残った責任者を解雇するというやり方が一般的です。しかし、責任者もそういう会社のやり方をわかっているので、部門のほぼ全員を引き連れて、他企業に移籍をしたり、起業することがあります。こうなると、自発的な退職なので、やはり補償金は支払わなくて済むことになります。

そういうことを考えなけれならないほど、私は追い込まれていたのです。会社のお金はほとんどなくなっているのに、新たな投資が決まらない。必死でした。

幸いにも社員から訴えられることはありませんでしたが、いつ訴えられてもおかしくありません。企業の経営は面白い仕事ですが、リストラだけは二度とやりたくありません。

 

昼食は歩きながら食べるほど忙しい。オンライン教育サイト講師。勤続1年

私は、ある教育企業で、クラス講師を務めていましたが、会社から突然、講師の編成からは外れるという通知があり、同時にオンライン授業のアシスタント講師にならないかと言われました。

しばらく考えて同意しました。アシスタント講師と言っても、実績を積めば、正式なオンライン講師に昇格できます。そうすると、クラス講師よりも報酬は高くなるからです。しかし、異動してみてわかりました。アシスタント講師と正式なオンライン講師はまったく別の仕事で、アシスタントは授業に関わることなく、多くの事務処理をこなさなければなりません。この仕事を続けていても、授業スキルは身につかず、正式な講師に昇格する可能性はほとんどないのです。

それでも1年は仕事を頑張りましたが、2年目になってもう無理だと感じました。新設されたばかりのオンライン授業に配属され、新しく参加する生徒も多かったのですが、やめる生徒も多く、保護者は要求が多く、不満をぶつけてきます。ほとほと疲れてしまったのです。

保護者への対応で、昼食を取る時間もなく、毎日コンビニに軽食を買いに行って、帰り道を歩きながら食べるという具合でした。

授業が始まる前に、生徒からの質問に答える業務もしていましたが、さほど重要な質問は多くないため、生徒に授業が終わってからにしてくれないかと告げました。すると、これが大きな問題になってしまったのです。2人の保護者が、話が違うとクレームをつけてきたのです。その生徒は、授業が終わった後は、別の補習授業に出なければならず、授業前でないと質問ができないのだと言うのです。

主管は、過去にも同様のクレームがあったことを挙げ、夏休みの補習授業が終わったら辞職してほしいと言ってきました。直接、校長に事情を訴えましたが、まったく無駄でした。

現在、退職補償金をどうするか、会社の返答を待っているところですが、補償金に納得がいかなければ、法廷で争おうと考えています。その会社は、今でも人材募集を行っていて、誰かが私と同じ目にあっていると思うと、切ない気持ちになります。

 

妊娠したら解雇:テック企業人事。勤続8年

私が入社した頃、女性である社長は息子をほしがっていました。でも、3人子どもを産んで、いずれも女の子だったのです。その後、ある女性社員が、男の子の双子を出産すると、社長はとても悔しがって、その社員が男の子を産む運気を奪っていったと言います。最初は冗談だと思っていましたが、その社員を解雇してしまったのです。これはとんでもない会社に就職してしまったと思いました。

それからも、妊娠をしたから、夫が人民解放軍にいるからなどという理解に苦しむ理由で、解雇するように人事部に命じてきます。それに逆らうこともできず、私は解雇される社員にこっそりとどのような法的措置が取れるかをアドバイスすることしかできませんでした。

2018年に私自身が妊娠をし、その月の10日に会社に妊娠を報告すると、14日に解雇通知を受け取りました。私の同期でも、2人が妊娠を理由に解雇されています。私はそれでも健康な子どもを出産することができましたが、私の同期は出産と解雇が重なって苦労をして流産をしてしまいました。

私は仲裁委員会に申し立てをし、仲裁案が提示されましたが、会社はそれを不服としたため、現在法廷で争っています。時間の浪費だとしか思えません。妊娠が原因で解雇されたことを立証する証拠集めに膨大な時間がかかるのです。

テック企業は、先進的に見えて、社長の個人的な嗜好が社内でまかり通ってしまうところがあります。特に、女性社員の妊娠については、男性CEOの無理解、女性CEOの嫉妬により、つらくあたられる場合があります。女性の方は、妊娠をしたら、すべての電子メールを保存し、社内での会話は録音をしておくことをお勧めします。

 

明日に続きます。

 

 

プラットフォーム化するショートムービー。そのビジネス構造

まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 038が発行になります。

 

ショートムービー共有サービス「Tik Tok」の米国事業の売却問題が大きな話題になっています。なぜ、このようなことが起きたのか、その理由を説明することは私には荷が重いので、このメルマガでは触れません。しかし、開発元の字節跳動(バイトダンス)にしてみれば、理不尽だと感じていることでしょう。

少し意外だったのが、中国のネット民やメディアの反応が意外に冷静なことです。最初にこのニュースを耳にした時は、ネット民の中の愛国者たちがかなり激怒するのではないかと思ったのですが、掲示板などを見ても意外に冷静です。中国人から見れば、これはドナルド・トランプ大統領による、Tik Tok米国事業の「強奪」に見えると思うのですが、強奪という強い言葉を使う人はごくわずかで、多くのメディアが「Tik Tok剥離事件」と呼んでいます。米国事業をバイトダンスから引き剥がすという意味です。それに従い、多くのネット民も「剥離事件」という言葉遣いをしています。

 

その冷静さの最大の理由は、中国本家のTik Tokは「抖音」(ドウイン、音に合わせて揺れるといった意味)と呼ばれますが、抖音と海外版Tik Tokは、かなり違ったものになってきていることがあります。元々は同じものだったのですが、抖音とTik Tokは、投稿されるコンテンツの内容もビジネス構造も大きく変わってきてしまい、別物と言っても過言ではなくなっています。

日本でも、Tik Tokは「女子高生がダンス映像をアップするもの」という認識をされている方が多く、そのような映像が多いのも事実ですが、本家の抖音は完全に国民的なプラットフォームになっています。抖音ともうひとつメジャーなのが「快手」(クワイショウ)で、この2つのいずれかを利用している人は、7.92億人になります。これは中国ネット民の91.2%がいずれのかのショートムービーアプリを使っていることになります。

 

その広がりは、ショートムービーサービスの年齢構成比を見てもわかります。特に昨年あたりから、50歳以上の利用者の伸びが著しいのです。実際、抖音や快手を見ると、若い女性のダンス映像ももちろんありますが、ニュース映像があり、ペット映像、おもしろ映像、料理などの実用映像、講義などの学習映像などさまざまな映像にあふれています。わかりやすく言うと、YouTubeのショートムービー版のようになっているのです。

もはや国民的プラットフォームになっていると言って差し支えないでしょう。

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▲ショートムービーの利用は全世代に広がっている。特に50歳以上の世代の利用者が増えている。「2020ショートムービーユーザー価値研究報告」(CSM)より作成。

 

これだけの人数が利用するとなると、ビジネス展開も海外版Tik Tokとは別物になっています。ショートムービーの収益源は主にインライン広告です。この広告だけでも、従来の検索広告やバナー広告とは仕組みがまったく違い、高い収益力を生み出す構造になっています。この広告収入を基本にしているという点では、中国のショートムービーも海外版Tik Tokも同じです。

しかし、中国内のショートムービーでは、広告以外のビジネスが育ってきて、収益源が多角化をしているのです。

 

抖音も快手もライブ配信の仕組みを導入していて、ライブコマースができるようになっています。ECサービスと提携をして、ライブコマース画面をタップするだけで、購入と支払いができるようになっています。これも手数料収入が期待できます。

また、有料コンテンツを配信できる仕組み、配信者に投げ銭ができる仕組みも用意されています。特にオンライン学習をしたい人向けの学習映像が好調です。

そもそも広告だけでも、高い収益力を持っているのに、本家ではさらに多角的に収益を上げる仕組みができ上がっているのです。

今回は、中国のショートムービーサービスが、どのようなビジネスを展開しているのかをご紹介します。

 

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コロナ禍により上海オフィスビルに異変。スタバは満席でも長期課題が山積

上海の観光スポット「外灘」から見える対岸の高層ビル群「陸家嘴地区」。285棟ものオフィスビルが建ち並び、コロナ禍による退居も少なく、日常の風景が戻ってきている。しかし、長期ではさまざまな課題があり、陸家嘴地区も転換点に差し掛かっていると上観新聞が報じた。

 

コロナ禍でも、上海に大規模オフィス地区開発

アリババ傘下の新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)が本部を、上海市に建設中の陸家嘴浜江センターに移転すると発表した。陸家嘴浜江センターは面積20.4万平米(東京ドーム5個分)、8棟のビルが建設予定で、この陸家嘴浜江地区で最大のオフィスビル群となる。1/3がオフィス用途になるが、すでにテック企業、金融企業などを中心に埋まっている。

しかし、新型コロナの感染拡大で、リモートワークが定着する中、上海のオフィスビルの入居率、家賃ともに低下をしているという話もよく耳にするようになっている。実態はどうなっているのだろうか。上観新聞の記者が、上海を取材した。

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▲建設中の陸家嘴浜江センター。陸家嘴地区最大のオフィスパークとなる。しかし、これが最後の大規模開発になるかもしれない。

 

上海陸家嘴地区のスタバは3月から盛況

平日の午前10時、通称「栓抜きビル」とも呼ばれるワールドフィナンシャルセンターの1階にあるスターバックスにはほとんど空席が見当たらない。陸家嘴地区には285棟ものビルが建ち並び、スターバックスが40店舗以上もある。この地区の繁栄ぶりが、中国経済を観測する窓になっていると言っても過言ではない。

この地区の企業に勤める女性によると、3月頭に職場復帰が始まると、この辺りのスターバックスはすぐに以前と同じように空席を探すのがたいへんな状況に戻ったという。また、コロナ禍が原因で、移転したという企業は聞いたことがないとも言う。

国金センターのスターバックスにも行ってみて、同じことを尋ねたが、答えはほぼ同じだった。企業活動もすっかり以前と同じに戻っていると言う。

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上海市内にあるスターバックスの高級業態「リザーブ・ロースタリー」。シアトルに次ぐ2号店。常に満席であるほどの人気で、上海人のスタバ好きが実感できる場所。

 

コロナ禍でも、入居需要は旺盛、家賃相場は上昇

米国に本社を置く不動産サービス「CBRE」の中国地区研究部の謝晨主管が、上観新聞の取材に応えた。「新型コロナの感染拡大期だった年初は明らかに入居を希望する企業数が減少しました。しかし、3月から職場復帰が始まると、需要が増え、家賃相場も回復しています。2020年Q2の陸家嘴地区の入居率は85%以上を維持しています。医療関連、テック関連、オンラインワーク関連、オンライン教育関連、新小売関連の企業が以前と変わらず増えています。私たちの予測では、2020年下半期の家賃相場は、昨年を上回ると見ています」。

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▲陸家嘴地区には、この狭い地域にスターバックスが40店舗以上もある。小さなピンクのタグもスタバのスタンド店。現在は、いずれも席を探すのが難しいほど来店客があるという。

 

全体では需要低下、著名ビルでは需要増加

陸家嘴ビル発展サービス室の陳晨主任補佐が上観新聞の取材に応えた。「陸家嘴全体を見れば、感染拡大以降、家賃と入居率の両方が下落していることは否定できません」。

今年6月の段階で、入居率が90%を超えているのは92棟、95%を超えているのは52棟にすぎないと言う。「ランドマークになっている著名なビルでは高い入居率が維持できています。例えば国金センターは99%で、ワールドフィナンシャルセンターは97%になっています。また、瑞明ビルのように、この機会に家賃を調整する施策を行い、入居率を90%にまで高めたビルもあります」。

 

退去したのは外資系投資企業

陸家嘴の世紀匯広場には2棟のオフィスビルがある。このビルを管理する上海晟際物業管理の都好総経理によると、この数年のこの地区の入居率は91%前後で安定をしていると言う。「コロナ禍による入居率の低下は1%程度です。退居したのは多くが海外の投資企業や移民手続き関連企業です。一方で、保険、証券、テック関連の企業はあまりコロナ禍の影響を受けていないようです」。世紀匯広場では、家賃相場の下落は起きてなく、むしろ会社が成長をしたため追加で賃貸する申し出があるほどだと言う。

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▲1998年の陸家嘴地区。東方明珠塔が最も高い建築物だった。わずか20年で、その姿は大きく変わった。

 

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▲上海、外灘から眺める陸家嘴地区のビル群。観光客にとっては、行くたびに景色が変わる観光名所だったが、陸家嘴地区も曲がり角を迎え、新しいビルの建設は少なくなるかもしれない。

 

小売業は大きな打撃

一方で、店舗を中心にした小売業は大きな打撃を受けている。ある仲介業者によると、上海の一部の地区ではショッピンモールの店舗退居率が50%を超えたところもあると言う。上海市全体の小売業の売上は2020年第1四半期に30%下落し、あるショッピンモールの責任者によると、モールの閉店率が15%を超えたと言う。

世紀匯広場のショッピングモールでは、コロナ禍による下落幅は小さく、以前95%だった入居率は、現在でも91%を維持できていると言う。「しかし、状況は楽観できません。最上階のシネコンが営業を続けるのか、撤退するのかが大きな鍵になります」と関係者は言う。

また、海外ブランドは保守的で、新規出店の速度が明らかに鈍っている。コロナ禍は、モールの入居率、家賃相場に確実に悪い影響を与えている。モール運営会社は、家賃補助とリフォームを進めることでこの難局を乗り越えようとしている。現在、モールの多くの店舗が正常営業をし、人手は例年の9割、売上は例年の8割ぐらいまでは復活している。

都好総経理は、モールの復活にも希望が見えてきていると言う。「コロナ禍の影響は短期的なものだったと感じています。4月からは、著名ブランド、高級品、スポーツ用品の店舗では、売上が昨年よりも伸びています。上海全体のショッピングモールの空き室率は10%以下で、健康的な状態を保っています」。

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▲世紀匯広場。背後の2棟のオフィスビルは入居率の低下は1%程度とわずかだったが、手間のショッピングモールは大きな打撃を受けている。

 

オフィスビルの長期展望は課題が山積

コロナ禍という短期の影響を見れば、陸家嘴地区は地力の強さで、健康状態を維持しているように見えるが、長期を展望すると、盤石とは言えない。入居率、家賃相場を長期で下落させていく要因が存在するからだ。

ひとつは金融市場が乱高下をしたため、海外の金融、投資関連の企業が、中国進出計画を停止していること。中国のコロナ禍は終息をしたが、本国が終息をしていない国も多いため、進出計画がいつ再開されかは不透明だ。

もうひとつは、中国のテック企業、金融企業が、自社ビルを続々と建設していることだ。自社ビルが完成をすれば、それまでの賃貸オフィスを退居していくことになる。

また、早くから発展してきた陸家嘴では、すでに再開発が必要になっている地域もある。華潤時代広場は、開発されてからすでに20年が経ち、オフィスビルの施設も現代の企業の要求に応えることができなくなっている。そのため、設備の入れ替え工事を行なっているが、空き室率は30%以上となり、大きな決断が必要な時期に差し掛かっている。

また、それ以外のオフィスビルでも、人と人の接触機会を減らすために通路を一方通行化できる設計、殺菌機能のある空気清浄機、無接触で操作できるエレベーターなど感染症対策を施した設備を入れ替える必要が出てきている。

 

曲がり角にきている上海陸家嘴地区の高層ビル群の風景

これから数年、上海市オフィスビル面積は、毎年80万平米から100万平米ずつ増えていくことが確実になっている。現在上海のオフィスビルの総面積は1500万平米で、中国の都市では最も大きいが、それでもニューヨークの1/4、東京の1/3、ロンドンの2/5にすぎない。

今後は、成長する企業の本社の入居をいかに促せるかにかかっているという。本社が上海に居を構えると、その関連企業も上海にやってくるからだ。今年2020年上半期には、9社の本社が陸家嘴に入居した。これにより関連する金融機関が12社、国際資産管理会社が5社、融資関連会社が2社、陸家嘴に入居した。

上海随一の観光スポットである外灘(ワイタン)から臨める陸家嘴地区の高層ビル群。1年見ないと、必ず新しいビルが増えているほど、急速な発展をしてきた。その姿は今後は変わらなくなるのか、あるいは今後も変わり続けるのか。陸家嘴は転換の時期を迎えている。

 

万物を配達する。日用品に本格参入して、首位に挑むフードデリバリー「ウーラマ」

外売(フードデリバリー)業界は、美団がトップシェア、ウーラマが2位の「631局面」になっていた。しかし、ウーラマは、飲食以外の日用品に本格参入する。蜂鳥即配という新しいブランドも設立し、万物を配達することで、首位の美団に挑むことになると虎嗅が報じた。

 

631局面になっていた外売サービス業界

中国の外売(フードデリバリー)は、餓了麼(ウーラマ)と美団(メイトワン)がシェアを競い合っている。しかし、この数年、美団のシェアが急増し、2020年Q1の売上高シェアでは、美団67.3%、ウーラマ26.9%にまで差をつけられていた。

これは、中国で俗に言われる631局面になっている。シェアが6:3:その他1の状態になると、シェアが固定化してしまうという見方だ。理論的な根拠があるわけではないが、競い合う2社がダブルスコアになると、心理的に競争意欲が失われる。しかも、2位はそれでも大きな市場を確保しているので、無理に競争をしなくても事業を継続していける。そのような心理的な側面から、631局面になるとシェアが固定化すると言われ、フードデリバリー業界はまさにその状態になっていた。

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▲数年前の外売(フードデリバリー)。左の黄色が美団、青がウーラマ、赤が百度百度はウーラマに買収をされた。現在は、黄色の美団と青のウーラマが競い合っている。

 

ウーラマが631局面を打破。店舗ECへの本格進出

しかし、ウーラマはこの見方が間違いであることを証明するかもしれない。新型コロナの感染拡大により、フードデリバリーの需要が急増し、また、仕事を失った人が外売騎手(配達員)になることで、ウーラマ、美団ともに大きく成長した。

その後、新型コロナが終息をし、営業再開、職場復帰が始まると、コロナ特需は落ち着きを見せ始めた。大量の外売騎手を抱えた2社は、消失した特需を補う道を探さなければならない。

そこで、ウーラマが採ったのが、飲食品以外への本格参入だ。以前から、ウーラマではコンビニなどのデリバリーを行っていたが、これを全面展開することで、再び美団に挑もうとしている。

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▲すでにウーラマは書籍に対応している。2時間ほどで配達してくれる。

 

屋内スポーツ用品、文具、雑貨などもデリバリー

今年2020年4月、ウーラマはスポーツ用品の「デカトロン」北京店と瀋陽店のデリバリーに対応をした。コロナ禍で外出しづらい状況が続いていたため、室内で扱えるダンベル、ヨガ用品、また、小さなスペースで楽しめるバドミントン用品など200品目を、スマホからの注文後最短30分で配達する。

さらに、晨光文具、良品舗子、大悦城、中石油昆侖好客などの文具店、雑貨店、ショッピングモール、コンビニなどがウーラマと契約をし、デリバリーに対応をした。

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▲デカトロンの即時配送を始めたウーラマ。室内で利用できるダンベル、ヨガマットなどが好調だという。

 

即時配送の店舗ECなら、店舗も活用ができる

ウーラマによると、飲食店以外の対応が4月から大幅に進み、ペット用品店では以前の6倍、ベビー用品店では以前の3倍以上になっているという。

この提携は、ウーラマにとっても、小売チェーンにとっても合理的なものだ。新型コロナが終息をしたといっても、客足の戻りは鈍い。むしろ、外出しないことが新日常の生活スタイルとして定着する可能性もある。

小売チェーンにとっては、店舗からECに軸足を移す必要があるが、翌日配送のECよりも、店舗在庫を配達して即時配送するデリバリーであれば、店舗とオンラインをうまく組み合わせていくことが可能になる。店舗は、体験をする場にし、販売はデリバリーでというスタイルになっていく。

一方で、ウーラマは膨らんだ外売騎手を活用することができる。デリバリーは、1回に1つの商品を配達するのではなく、複数の配達をいかに効率よく組み合わせて、配達コストを下げるかが鍵になる。この点でも、扱う商品点数、提携店舗数は多ければ多いほどいい。ピックアップ箇所が分散をすればするほど、効率的な配送ルートが算出しやすくなるからだ。

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▲市場の生鮮食料品も配達してくれる。ウーラマは配達というよりも、買い物代行サービスになってきている。

 

万物を配達する即時配送生活プラットフォーム「ウーラマ」

ウーラマは、この方向性に感触を得たのか、7月になると、フードデリバリープラットフォームから即時配送生活プラットフォームに転換することを宣言し、「万物を配達する」として、ウーラマアプリを大幅アップデートした。従来の、飲食品中心ではなく、さまざまな日用品が注文できるようになっている。また、飲食品以外を専門に配達する「蜂鳥即配」というブランドも作った。

 

配達のウーラマ、生活サービスの美団

フードデリバリーというビジネス自体、ウーラマが先鞭をつけたものだ。上海交通大学の学生だった張旭豪(ジャン・シューハオ)が、2008年に、学生たちが集まると、誰かが代表して、全員分のテイクアウト飲食品を買いに行く姿を見て、フードデリバリーのアイディアを得た。そこから、プラットフォームの開発、飲食店との契約を進め、今日のウーラマを築いてきた。

しかし、後発の美団の方がビジネスに長けていた。美団の創業者、王興(ワン・シン)は、利用者のサービス利用の流れが「デリバリーアプリ」→「注文」ではなく、「レストランガイドアプリ」→「来店/デリバリー」→「注文」であることに目をつけ、レストランガイドアプリ「大衆点評」の中からデリバリー注文ができるようにした。

つまり、ウーラマは「配達」が主軸だが、美団は都市で受けられるサービスのひとつとして考えている。そのため、現在の美団アプリでは、フードデリバリー以外にもシェアリング自転車、タクシー配車、映画館チケット、ホテル予約など、さまざまな生活サービスが利用できるようになっている。

これにより、美団の利用者数が伸び、デリバリーしかしないウーラマは631局面に追いやられることになっていた。

 

後の先でトップシェアを維持できていた美団

ウーラマはただ黙って2位の座に甘んじていたわけではなく、美団に何度も挑戦をしている。2018年7月から9月には、30億元の予算を投入し、大規模なクーポン配布を行った。これにより、いくつかの都市ではシェア50%以上を確保することに成功した。しかし、すぐに美団も大規模なクーポン配布を行い、631局面に戻されてしまった。

2019年には、大都市ではなく、地方都市を狙う戦略にでた。これは成功し、フードデリバリーを地方都市に広げることになった。しかし、利益が出るとわかった地方都市には、後から必ず美団が参入してくる。再び、ウーラマは631局面に戻されてしまうのだ。

美団は、もはや先手を打つ必要はなく、「後の先」を取ればいい状態になっていた。

ウーラマの出方を待ち、圧倒的な資金力、知名度で後から参入すれば、ウーラマが開拓した市場の半分以上を獲得できるようになっていた。

 

配達手数料は26%、それでも利益が薄いフードデリバリー

しかし、それが美団の隙を産んだのかもしれない。今年2020年4月、美団と広東省飲食サービス業界協会の間で問題が発生した。美団が飲食店に求める手数料は、新規契約の場合、商品価格の26%にも達していて、これでは飲食店の経営が成り立たないとして、手数料の引き下げ交渉が行われた。

しかし、美団側の主張によると、それでも2019年Q4の平均利益は1件あたり0.2元に満たず、値下げをすることは難しいというものだった。

一方で、ウーラマはコロナ禍期間、社会貢献として4回にわたって手数料の引き下げをおこなった。これにより、ウーラマと契約をする飲食店が30%以上増加し、特に火鍋店は4倍に増加した。

 

利益のでないデリバリー。活路は無人化かシナジーのいずれか

フードデリバリーをこのサービス単体で考えると、とても利益が出るビジネスではない。人が運ばなければならず、以前は農村から安い労働力を調達できたが、現在では、賃金相場も急上昇しており、外売騎手の賃金も、都市で生活をし、結婚し、子育てができるぐらいのレベルには達している。

つまり、フードデリバリーは利益のでないビジネスなのだ。道は2つしかなく、無人配送カートやドローンを導入して無人化をしていく。もうひとつは、他のサービスを展開し、フードデリバリーとのシナジー効果で利益を模索していく道だ。

美団の場合は、都市生活関連のサービスを手広く展開することで利益を生み出そうとしている。ウーラマの場合は、あくまでも配達に軸足を置いて、飲食品以外の幅広い商品を扱うことで利益を生み出そうとしている。

 

万物の配達に進出するウーラマの挑戦

ウーラマでは、すでに牛乳、ベビー用品、書籍、文具、スポーツ用品などの扱いを始めた。また、牛乳などの生鮮品では、配達後、7日、15日、30日などの周期で、注文しなくても配達をする仕組みを導入する。

ウーラマはすでにアリババに買収をされ、アリババグループメンバーとして、アリババの新小売の要の役割も担っている。アリババ新小売の核になっているのは、新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)だが、ここを起点に、アリババも生鮮食料品以外の商品を即時配送するサービスを展開していくことになる。ウーラマの「万物を配達する」戦略とアリババの新小売戦略は当然ながら協調をしているはずだ。

このウーラマの戦略がどこまで美団を揺さぶることができるか。3度目の挑戦が始まろうとしている。

 

ベトナムでも生鮮ECへの参入続々。コロナ禍で広がる新小売

コロナ禍により、東南アジアでも生鮮ECが広がり始めている。しかし、流通、配送などが未発達であるため、それぞれに工夫をしている。特に、VinMartでは、駅、バス停などにスキャン&ゴーを設置することで、これから帰るという時に注文させることで、配送時間の長さという欠点を打ち消していると弥図出海が報じた。

 

コロナ禍で大きく伸びた生鮮食料品のEC

新型コロナ感染拡大により、中国では、EC、生鮮EC、新小売スーパーの売上が大きく伸びた。特に、外出制限が行われる中で、野菜や肉、魚といった生鮮食料品を短時間配送してくれる生鮮EC、新小売スーパーは、どこも需要が前年同時期の3倍から10倍に増加をした。アリババが運営する新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)では、通常時は注文から30分で配送していたが、需要が増えすぎ、一部の店舗で前日までの予約配送制を一時実施するまでになった。

現在では、その需要は落ち着きを見せているが、終息後も生鮮EC、新小売スーパーを利用する習慣がつき、この領域にとっては大きな追い風となった。2002年末から中国で流行したSARSにより、「淘宝網」(タオバオ)などのECが定着をすることになった。それと同じように、新型コロナによって生鮮ECと新小売スーパーが定着する環境が生まれている。

 

Grab、Lazadaが生鮮ECに参入

ベトナムの新型コロナの感染拡大状況は、感染者数が1000名+という穏やかな状況だが、それでも続々と生鮮ECに参入する企業が登場している。

Grabは東南アジア各国で、タクシー配車、ライドシェアを展開しているが、その機動力を生かして、フードデリバリー、生鮮ECなどを展開している。そこにシンガポールを拠点に東南アジア6カ国でECを展開するLazadaが生鮮食料品の扱いを始めた。2時間で配送する。

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▲ライドシェアのGrabも生鮮EC「GrabGroceries」を始めている。

 

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▲EC「Lazada」も生鮮食料品の扱いを始めている。

 

温度管理、配送時間など課題は多い

しかし、生鮮ECを展開するのは簡単ではない。温度管理をした流通網の構築が必要で、産地から顧客に配送するすべての流通で、野菜、魚、肉、冷凍食品などそれぞれに適した温度管理が必要となる。

中国の生鮮EC、新小売スーパーは「配送エリアの近くに倉庫、店舗を配置する」という前置倉、店倉合一の発想で、この問題を解決した。末端の配送距離、配送時間を短くすることで、温度管理をしやすくし、同時に30分配送という短時間配送ができるようになり、顧客の利便性を高めている。さらに、30分は、顧客が「注文してから待っていられる時間」であり、配送の際の不在率が大きく下がり、再配達などのトラブルを避けることができる。

 

苦戦するベトナムの生鮮EC

ベトナムの既存スーパーも、GrabやLazadaの動きを見て、生鮮ECに参入をしようとしているが、苦労をしているのが実情だ。

チェーンスーパー「Bach Hoa Xanh」は、生鮮食料品以外の加工食品、日用品などのECを始めているが、1日の注文量は5000件程度にとどまっている。伸び悩んでいる理由は欠品だ。配送網と在庫管理が整っていないため、欠品が多く、利用者の評判は決してよくない。Bach Hoa Xanhでは、現在3つの配送センターを建設中で、これにより生鮮食料品のECにも進出をしようと計画している。


Một ngày làm việc tại Bách Hóa Xanh 2020

▲生鮮ECに本格参入を始めたスーパー「Bach Hoa Xanh」

 

配送時間の長さをうまく解消しているVinMart

VinMartは、現在スーパー店舗数100店舗+、コンビニ店舗数2500店舗前後だが、2025年までにスーパーを300店舗、コンビニを1万店舗に増やす計画を進めている勢いのある小売チェーンだ。

このVinMartが一部の店舗で「スキャン&ゴー」という仕組みを導入している。これは店内で商品をピックアップする時に、自分でアプリから商品バーコードをスキャンするというもの。レジでは、合算された決済用のコードが表示すれば精算がすぐに終わるというもの。

アプリから購入をするEC機能もあるが、ユニークなのはVinMart 4.0と呼ばれる仕組みだ。これはバス停、駅構内など、人が滞留する場所に掲示された大型ポスター。商品棚のような内容で、各商品にはバーコードがつけられている。このバーコードを読み込むと、その商品が購入でき、2時間から4時間で宅配されるというものだ。帰り道にバス停などで買い物を楽しんでもらい、帰宅後に商品を受け取るというコンセプトだ。

配送時間は長めだが、これからバスや電車に乗って帰宅する前に注文をしておけば、自宅に着いた時にちょうど配送されるようになる。配送時間の短縮が難しいことをうまく解消している。

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▲街頭、バス停、駅などに設置されたスキャン&ゴー。帰る前に注文させることで、人の多い場所に設置ができ、配送時間が長いという欠点を打ち消すことができている。

 


Trải nghiệm VinMart Scan & Go đi mua sắm không cần xếp hàng, không lo xách nặng | VTV24

▲商品バーコードをスマホでスキャンしてその場で決済してしまうVinMartのスキャン&ゴー。

 

生鮮ECは東南アジアにも広がるか

中国の都市部では、生鮮食料品は「買いに行くもの」から「届けてもらうもの」になりつつある。ベトナムだけでなく、世界各国で、生鮮食料品を買いに行くことの困難さ、不安を感じた人は多かった。中国だけでなく、世界各国で生鮮ECがその国の事情に合わせた形で定着をしていく可能性が生まれている。