中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

大規模マンション内を走る自動運転バス。広州市のマンションで初めて採用

中国の都市郊外では、4000戸規模の大規模マンションが開発をされている。あまりに広いため、ゲートを入ってから自宅まで歩いて15分などというケースもある。そこで、広州市の実地常春藤マンションでは、L4自動運転バスを巡回させていると愛范児が報じた。

 

規模が大きい中国都市のサイズ感

中国では、「移動の最後の1km問題」という言葉がある。中国の都市は、日本の都市と比べてサイズが大きく、1ブロックのサイズが大きい。都市内の幹線道路も片側5車線も6車線もあったりする。横断歩道よりも地下横断道が多く、地下鉄の駅間も長い。

そのため、日本の都市の感覚で地図を見て、駅から歩けばいいなどと簡単に考えると、15分や20分はしっかり歩かされることになる。

このため、シェアリング自転車が普及をした。地下鉄駅から目的地まで歩くよりは、自転車を使った方が快適だし、早いからだ。

 

4000戸+規模の大規模マンションも登場

しかし、シェアリング自転車でも解決ができない場所がある。それは小区と呼ばれる大型マンションだ。

一般的な大規模マンションでは、門があり、顔認証ゲートや守衛がいて、関係のない人は入れないようになっているところが多い。マンション内の安全と静寂を保つためだ。また、敷地内には公園のようなスペースばかりでなく、コンビニやスーパー、クリーニング店、カフェといった商業施設まであることが少なくない。マンション内で、生活の用事が済むようにすることが、そのマンションの付加価値となっている。

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広州市郊外に建設が始まっている実地常春藤マンション。高層マンションエリアと、戸建てエリアがあり、総面積は東京ドーム11個分になる。総戸数は4237戸という大規模マンションだ。一般に、1000戸を越えると、敷地内に居住者専用の商業施設を入れても、経営が成り立つと言われている。

 

広州市のマンションは東京ドーム11個分の広さ

このマンションの大規模化がどんどん進んでいる。広東省広州市にある「実地常春藤」マンションは、敷地面積52万平米(東京ドーム11個分)、総戸数4237戸という大規模マンションだ。

主力の部屋は、3LDKの99平米。不動産サイトによると、1平米の平均価格が26900元となっっているので、3LDKは、266.31万元(約4100万円)となる。

中国では、この実地常春藤のように、郊外の広い土地を使った大規模マンションが増えている。行政も協力をして、マンションに隣接をするように、地下鉄駅やバスターミナルを設置しくれる。

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▲実地常春藤マンションの主力の部屋は3LDK。99平米なので、日本のマンションと比べるとゆったり目だ。これで約4100万円。ただし、広州市中心部からは30分ほどかかる。

 

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▲現在開発が終わって発売されている第1期部分には、バスターミナル、食品市場、幼稚園、中学高校などが隣接している。市場、バスターミナル、幼稚園は、マンション敷地内に整備されている。地下鉄の駅も開通予定。

 

マンションの正門から自宅まで歩いて15分

しかし、問題は、マンションの門を入ってからだ。自分の家の場所にもよるが、門を入ってから自宅まで、歩いて15分などということも珍しくない。

そのため、シェアリング自転車を使う人も多かったが、放置自転車の問題が起こり、多くのマンションでシェアリング自転車での侵入を禁止している。

巡回バスを走らせているマンションも多いが、人が運転をするためコストがかかるため、本数は少なく、夜間まで営業ができないため、結局、歩いて自宅から門まで行くことも多くなるという。

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▲マンション内を走る自動運転バスhachi auto。6人乗りで、マンション内の5つのバス停を巡回している。


マンション敷地内を巡回する自動運転バス

そこで、実地常春藤では、自動運転の巡回バスを導入した。実地が自社開発をしたhachi auto無人運転通勤車だ。6人乗りの小さなバスだが、マンション内を巡回する。マンション内という閉鎖区間内の運転なので、安全も確保しやすく、運行免許などの取得もしやすい。

マンション内に5つのバス停が設置され、バス停で待っているとバスがやってきて止まるので、乗るのであればボタンを押して、ドアを開け座る。車内のパネルで、降りるバス停を指定すると、そのバス停に着くと、自動的にドアが開いて降りることができる。

多くの住民は、専用アプリを利用している。アプリから乗車を指定すると、バスの到着時間が分かり、満員の場合は、次のバスを増発してくれるからだ。乗車時は、顔認証かQRコードで乗車ができる。

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▲マンション内には5つのバス停が設けられ、無料で乗車することができる。アプリからバスを呼ぶことも可能。

 

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▲車内のパネルで降車位置を指定すると、そのバス停に止まってくれる。

 

安全を配慮して、最高時速を制限

hachi autoそのものは、時速25kmで走行できるように設計されているが、安全性を考えて、最高速度を時速10kmに制限している。

マンション敷地内で最も恐れるのは、子どもやペットの飛び出しだ。hachi autoは、最高速度を時速10kmに制限することで、突然目の前に人が飛び出てきた場合でも、停車をすることができる。避ける行動ではなく、いったん停車をして、それから避ける行動をとることで、歩行者の安全を確保している。

hachi autoは、L4自動運転車であるため、運転手はいないが、監視員が乗車している。

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▲hachi autoは、障害物を認識すると、回避する前にいったん停止をする。これでマンション内を走行中に、子どもやペットの飛び出しに対応する。

 

自動運転バスが、マンションの付加価値となる

将来は、規制がなくなれば、監視員不要の無人運転にすることも考えている。現在、運行は朝夕の通勤時間帯と昼間に限られているが、無人運転になれば、夜間など、居住者の求めに応じて運行できるようになる。

公園内、企業の敷地内といった閉鎖区間では、自動運転車の運行が各地で始まっている。しかし、大規模マンション内の移動に応用されたのは、この実地常春藤マンションが初めてではないかと愛范児は報じている。今後、実地グループの大規模マンションを始めとして、他の大規模マンションにも自動運転車が、敷地内移動の道具として使われることが増えていきそうだ。

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▲実地常春藤マンションが行った自動運転バスの試乗体験の広告。大規模化するマンションにとって、自動運転バスの設備は、マンション価値を高めるアイテムのひとつになりそうだ。

 

世界一、ITエンジニアの数が多い国インド。途上国であることを逆手にとった強み

ITエンジニアを最も多く輩出している国はインドだ。270万人と推定されていて、中国の200万人を大きく超えている。インドはまだ途上国で、教育機関、テック企業の環境は整っているとは言えない。しかし、それが大量のITエンジニアを生み出す要因になっていると柚柚科技が報じた。

 

ITエンジニアを世界一たくさん生む国インド

ITエンジニアの世界では、近年、インド人の活躍が目につくようになっている。特に米国では、3人起業のスタートアップであれば、米国人、中国人、インド人という組み合わせが増えている。

インドは国としては、まだまだ途上国。女性の地位の問題、公衆衛生の問題、識字率の問題、貧富の格差の問題など、数々の問題を抱えている。しかし、ITエンジニアの数は世界一多い。これはなぜなのか。

そもそもインドは人口が多い国だ。13.24億人もいる。その中で、ITエンジニアは人口の0.2%、270万人になる。しかし、識字率が50%に満たない国で、この数は異常ともいえる。中国は識字率が99%だが、ITエンジニアの割合は0.14%、200万人程度なのだ。

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▲グーグルの新しいCEO、サンダー・ピチャイ氏もインド人留学生で、卒業後、そのままグーグルに入社した。米国ではインド人のエンジニア、起業家が目立つようになってきている。Wikipediahttps://en.wikipedia.org/wiki/Sundar_Pichai)より引用。

 

英語が準公用語であることからアウトソース大国に

インドは、200年に渡り英国の植民地だった。インド英語と呼ばれながらも、英語が準公用語であるため、ITエンジニアの仕事がしやすい。プログラミング言語の多くは英語ベースであり、仕事のやり取りも英語を使うからだ。

このおかげで、インドはIT産業のアウトソース大国となった。現在、世界のITアウトソース市場の60%をインドが占めている。インドでは、プログラミングが手っ取り早く、高収入を得る職業になっている。そのため、ITエンジニアの比率が高いのだ。

 

企業が独自に教育制度を整備

しかも、インドの人材育成の仕組みは、先進国とは違っている。先進国では、学校、コミュニティスクール、専門学校など、教育機関でスキルを身に付ける。あるいは書籍やネット教材も豊富なので、独学をすることも可能だ。

しかし、インドではそのような教育リソースは多くない。そこで、企業内で学習ができる仕組みができあがっている。もちろん、業務に必要なスキルだけを身につけるため、それが教育として質が高いかどうかは別として、必要なスキルを短時間で誰でも身につけられる環境になっている。ITエンジニアとして、広い知識を身につけてさらに上級エンジニアになりたいと考える人は、キャリアを戦略的に変えながら必要な知識を身につけていく。

 

共通試験がないために、大学が独自の人材選抜が可能

また、最近では優秀な工学系の大学も増えてきて、米シリコンバレーに人材を供給する拠点となっている。

しかし、受験制度はまだ整っていないために、日本のセンター試験、中国の高考、米国のSATのような共通試験が存在しない。入学試験の内容は、各大学に任されている。これが突出した人材を採用することに寄与をしている。平均点が高い人材ではなく、特定の分野に突出した人材を入学させ、養成することができるからだ。

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▲米国留学生の数は、中国人が1位だが、インド人も2位になっている。しかも、インドはまだIT産業が大きくはないため、多くの留学生が卒業後も帰国せずに、米国に留まり、職を得るという。

 

米国に留まることが多いインド人留学生

米国国際教育研究所(IIE)の統計によると、2018年から2019年の米国への留学生が最も多いのは中国で、インドは第2位となっている。

しかし、卒業後、中国人留学生はかなりの部分が中国に帰国をするのに対して、インド人はほとんど帰国せずに米国に留まるという。中国はすでにテック企業が成長してきて、帰国をしても仕事があるが、インドの場合、帰国をしてしまうと仕事を見つけることがまだ難しい。そのため、米国のテック企業でそのまま働いたり、意欲のある人は米国で起業することを考える。

このような理由で、米国のテック企業にはインド人が増えている。

 

メルマガvol.004を明日発行いたします

まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 004が発行になります。

 

vol. 004の特集は、「ファーウェイと創業者、任正非」です。

中国のテック企業経営者の中では、アリババのジャック・マーとファーウェイの任正非(レン・ジャンフェイ)に圧倒的な人気があります。ジャック・マーは情熱の人、任正非は苦労の人です。

中国の黒歴史とも言える文化大革命時代に翻弄されながら、44歳という年齢でファーウェイを起業し、世界屈指の通信設備製造企業に育てた人物です。

 

また、この号より、アリババの創業から現在までを紹介する「アリババ物語」をスタートさせます。新聞の連載小説の感覚で、短く分割して連載をする予定です。

 

毎週月曜日発行で、月額は税込み550円となりますが、最初の月は無料です。月の途中で購読登録をしても、その月のメルマガすべてが届きます。無料期間だけでもお試しください。

 

今月発行したのは、以下のメルマガです。

vol.001:生鮮ECの背後にある前置倉と店倉合一の発想

vol.002:アリペイとWeChatペイはなぜ普及をしたのか

vol.003:シェアリング自転車は投資バブルだったのか

 

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アリババの経営層が大規模な人事異動。アリペイ関連企業もアリババグループに

2019年9月に、創業者のジャック・マーが引退をして以来、アリババの経営層の人事が大きく動いている。データテクノロジーと農産物小売を重視するために、張勇CEOが大規模なアリババ改革を行っていると雷鋒網が報じた。

 

アリペイ開発の立役者がグループCTOに

2019年12月、アリババCEOの張勇(ジャン・ヨウ、ダニエル・チャン)は、社員全員にメールを発信し、経営層人事の変更を発表した。

人事異動の目的は、権力を各部門のキーマンに集中させ、アリババという企業の構造をシンプルにすることだと見られている。

その中でも、注目されているのが程立CTOだ。アントフィナンシャル(螞蟻金服)CTOからアリババグループ全体のCTOとなり、しかも直属上司は張勇CEOになっている。張勇CEOがテクノロジーを重視していることが窺われる。

程立CTOは、2005年というアリペイ黎明期にアリペイに入社し、アリペイの決済システムを構築した中心人物。その功績により、アントフィナンシャルのCTOを務めていたが、2016年にはアントフィナンシャルの国際事業グループのCOOを兼務し、ビジネス面での経験も積んできた。

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▲程立グループCTO。アリペイ開発の中心となったエンジニア。アリババグループ全体のCTOに抜擢された。

 

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▲アリババの主な人事異動。丹念に見ていくと、アリババがデータテクノロジーと農産物に注力しようという姿が見えてくる。

 

アリママ、フーマもシナジー効果の得られる構造転換

また、アリババのもつビッグデータを分析し、企業に提供をするアリママは、タオバオTmall(EC事業)の下に位置づけられることになる。また、新小売スーパーを伸ばしているフーマフレッシュもB2B事業グループの下に位置づけられることになる。B2B事業グループは、農村タオバオやスマート農業なども事業も手掛けているため、フーマの生鮮食料品の仕入れなどでのシナジー効果を狙っているのだと思われる。

 

複雑怪奇だったアリババとアントフィナンシャルの関係

長い間、複雑になっていたアリババ とアントフィナンシャルの関係もすっきりとしたものになった。

アリババは、ECサイトタオバオ」のEC内通貨として、2003年にアリペイを開発した。2004年にはアリペイはアリババの子会社として独立したが、さまざまな金融サービスを提供するため2014年にアントフィナンシャルを設立し、アリペイはその子会社という体制ができ上がった。

しかし、それまで規制がなかったスマートフォン決済にも当局の規制がかけられるようになり、決済業者の免許を取得する必要が生まれた。その取得条件のひとつに「100%内資であること」というのがあり、アントフィナンシャルがアリババの子会社であると、この条件に反することになる。

なぜなら、アリババの大株主は創業者のジャック・マー、日本のソフトバンク、米国のヤフーであるため、外資企業といってもよかったからだ。アリババが直接アントフィナンシャルの株を保有すると、アントフィナンシャルは100%内資ではなくなり、決済業者の免許取得に問題が生じるかもしれなかった。

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▲胡暁明アントフィナンシャルCEO。アリペイを運営するアントフィナンシャルも、明確にアリババのグループ企業として位置付けられ、世代交代をした。

 

間接的な統治関係にあったアリペイ関係企業

そこで、アリババとアントフィナンシャルは実に複雑な関係になってしまった。株を保有せずに、アリババが統治をし、適正な利益を得るにはどうしたらいいのか。

アントフィナンシャルの大株主は、「杭州君瀚株式投資」「杭州君澳株式投資」の2社だ。この2社で、アントフィナンシャルの株式の8割近くを保有していた。

この2社の株主は、ジャック・マー個人が保有する投資会社だ。つまり、アリババが直接株式を保有することができないので、ジャック・マー個人が、投資会社を経由してアントフィナンシャルの株を保有することで、アリペイを統治してきた。

利益については、アントフィナンシャルは、設立時に、アリババと契約を交わしている。それは、利潤の37.5%を、アリババに対してアリペイ関連の知的財産使用料、技術使用料として支払うというものだ。

これで、アントフィナンシャルの株式を保有しているのとほぼ同じ利益を、アリババは得ることができていた。

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▲複雑怪奇だったアリババとアントフィナンシャルの関係。決済業者の免許の取得条件である「100%内資」をクリアするために複雑な関係になってしまった。今回、アリババがアントフィナンシャルの株を33%取得し、「アントフィナンシャルはアリババグループ企業」「アリババのアリペイ」と言うことに何の差し支えもなくなった。

 

アリババが1/3の株を保有する健全な関係に

しかし、仕方がないとは言え、あまり健全な姿とは言えない。いったいアントフィナンシャルはアリババの子会社なのか、グループ関連企業なのか、あるいはまったく無関係な企業なのか。アリババですら、過去、言葉を濁すことがあった。

この問題も解消された。アリババは、子会社を通じて、アントフィナンシャルの株式の33%を取得したと発表している。これはアントフィナンシャル設立時の協議の中で決められていたことで、状況が許す環境が生まれたら、アントフィナンシャルが新規に株式を発行し、それをアリババが取得する。使用料の支払いの仕組みは解消するというものだ。

これにより、「杭州君瀚株式投資」「杭州君澳株式投資」の株式比率は50%程度まで低下したという。

これにより、「アントフィナンシャルは、アリババグループ企業」と言うことに何も問題がなくなった。アリペイは、運営はアリペイ、その親会社はアントフィナンシャルだが、そのまた親会社がアリババなので、「アリババのアリペイ」と呼ぶことにも何も問題がなくなった。つまり、本来、あるべき姿にようやく戻ったのだ。

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▲張勇CEO。海外ではダニエル・チャンと呼ばれる。経理畑出身であることから、堅実な経営をするのではないかと見られていたが、ジャック・マー引退後、矢継ぎ早にアリババを改革し、攻めの経営者であることを証明している。

 

ジャック・マー後の新生アリババ体制の構築

ジャック・マーが引退して以来、香港上場、大掛かりな人事異動、グループ構造の改善など、張勇CEOは、矢継ぎ早やに構造改革を進めている。人事異動から、張勇CEOがテクノロジー全般、ECとデータテクノロジー、農産物生産と新小売を重視していることも見えてくる。

張勇CEOは、社員全員に宛てたメールの中で「アリババの従来の習慣を、未来のために改革するのに、最も適した時期」だと述べている。

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9割以上の確率で、車が2km以内にいる。滴滴出行の配車の仕組み

滴滴出行のタクシー、ライドシェアの特徴は、呼ぶとすぐにやってくることだ。滴滴出行では、車が必要な人の近くにあらかじめ配車をしておくシステムを構築している。その初歩的な仕組みを、滴滴の首席アルゴリズムエンジニアの王犇氏が滴滴技術で解説をした。

 

90%以上の乗車で、車が2km以内にいる滴滴出行

滴滴の「快車」と呼ばれるサービスは、基本的にタクシーと同じだ。大きな違いは、流しているタクシーを路上で拾うのではなく、スマホから呼ぶこと。自動的に現在地が取得され、最も近くにいるドライバーとマッチングされる。現在、90%以上の乗車が、ドライバーが2km以内にいるという状況が実現できている。

この、乗客とドライバーのマッチングをいかに効率的に行うかが、滴滴のサービス品質向上の鍵になっている。

 

近い方、評価が高い方をマッチングさせる

乗客とドライバーが1:1であれば話は簡単だ。マッチングさせるしかなく、乗客に待ち時間を伝え、ドライバーは乗客を迎えにいく。

乗客とドライバーが1:2の場合も、事情はさほど複雑ではない。近い方のドライバーをマッチングさせる。

では、2人のドライバーがまったく同じ時間かかる場合はどちらにマッチングさせるべきだろうか。この場合は、ドライバーの評価が高い方を優先してマッチングさせる。

滴滴などのライドシェアでは、乗客は利用した時に、運転手の評価ができるようになっている。主に接客品質などの評価で、これが低いドライバーは、マッチングされる確率が下がり、一定以下になると、まったくマッチングされなくなることもある。これにより、接客品質を維持している。

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▲1人の乗客に1台の車。マッチングは自動的に決まってしまう。

 

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▲1人の乗客に2台の車。早くつく方の車がマッチングされる。

 

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▲1人の乗客に2台の車。どちらも同じ距離にいる場合は、評価の高いドライバーがマッチングされる。これで接客品質を保っている。

 

平均待ち時間を最小化させる最適解を計算する

乗客とドライバーの数が少ない時は、アルゴリズムと呼ぶほどの複雑さはないが、実際の都市では、問題は一気に複雑になる。

仮に20人の乗客と20人のドライバーをマッチングさせるとなると、その組み合わせは20!(20の階乗)という19桁もの数になる。

その前に2:2のケースを考えてみよう。乗客1に対しては3分で配車され、乗客2には12分で配車される。一見、これでいいように見えるが、実はこの配車には問題がある。なぜなら、乗客は待ち時間が長くなれば長くなるほど、キャンセルをする確率が上がっていくからだ。しかも、キャンセル確率は、時間が長くなるほど尻上がりに上がっていく。待ち時間12分の乗客は途中でキャンセルをしてしまうかもしれない。それは避けなければならない。

そのため、乗客の平均待ち時間と累積待ち時間の両方を最小化することが重要なのだ。3分と12分の場合では、平均待ち時間は7.5分、累積待ち時間は15分ということになる。

一方で、同じケースで、マッチングの組み合わせを変えてみると、乗客1の待ち時間は5分になり、乗客2の待ち時間も5分になる。平均待ち時間は5分、累積待ち時間は10分となり、大幅に短縮される。このマッチングが正解となる。

滴滴では、毎日3000万件のマッチングを行い、ピーク時には1分間で6万件以上のマッチングを行なっている。

基本的には、すべての乗客とドライバーの予想待ち時間マトリクスを計算し、その中から適切な組み合わせを探し出している。

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▲2人の乗客に2台の車。一見、これで最適解のように見えるが、平均待ち時間は7.5分、累積待ち時間は15分となり、最適解にはなっていない。

 

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▲マッチングを変えることで、平均待ち時間は5分、累積待ち時間は10分となり、最適解が得られた。待ち時間が長くなればなるほど、キャンセルされる確率が高くなるので、平均待ち時間を最小化することが重要になる。

 

未来の状況も加味して、さらに待ち時間を短縮する

滴滴は、これに未来予測を加えている。数分後の状況を予測して、より平均待ち時間が短くなるようにする。

例えば、ある乗客に対して、最も近い空車が12分の距離にいるとする。他のドライバーはすべて乗客を乗せているのでマッチングの対象にはならない。しかし、ここで目的地近くになっているドライバーの未来予測を行う。ある乗客を乗せているドライバーは、2分で目的地に到着をし、そこから2分で乗客を迎えに行ける。合計4分で乗客を乗せることができる。

この場合は、乗客を乗せている方のドライバーがマッチングされる。乗客から見ると、12分の待ち時間だったものが、4分間に短縮された。

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▲マッチングには未来予測も考慮される。単純マッチングでは、12分の距離にいる空車がマッチングされるが、もう一台、2分後に乗客を降ろし、2分で迎車できる車がある。この場合は、乗客を乗せていても、次のマッチングがされることがある。

 

需要と供給のヒートマップを計算し、車を必要な場所へ移動させる

これは未来予測というほどまでのことはない。ほぼ確定している予測情報を利用しているだけだ。滴滴ではさらに大局的な未来予測を行っている。

人間のドライバーは、乗客を乗せていない空車の時、乗客が多そうな場所に向かい、客を捕まえる確率を高めようとする。しかし、この行動が、配車の効率を悪くしている。10人の客が予想される場所に、20台のタクシーが集まってしまようなことが起きるからだ。理想的には10人の客が予想される場所に10台のタクシーが集まり、残りの10台は別の客が予想できる場所に向かってほしい。

適切な配置は、需要と供給の比があらゆる場所で1:1になることだが、人間のドライバーは需要の絶対量が大きな場所に向かってしまいがちなので、需要の大きな場所では余剰のドライバーが生まれてしまう。

ドライバーの多くが、局所最適解に殺到するために、全体の最適化が阻まれている。しかし、人間一人の判断では、局所的な最適解しか知ることができない。この課題を解決するために、滴滴プラットフォームが存在している。

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滴滴出行プラットフォームでは、1.5秒から2秒ごとに、各セルでの需要と供給のヒートマップを計算している。ドライバーは隣のセルの方が需要が強ければそちらに移動するということを繰り返していく。これで最適な配車が可能になる。

 

ドライバーは隣のセルへ移動するだけでいい

滴滴では、時間、曜日、天候などを機械学習し、各地域での需要予測を計算し、それを実際の配車数と比較して、需要と供給の過不足を計算する。過剰な地域にいるドライバーを、近隣の不足地域に誘導することで、全体の最適化を計っている。

このような計算を1.5秒から2秒ごとに行うことで、配車を最適化することで、滴滴の乗車の90%以上で、ドライバーが2km以内にいるという状況を実現できている。

滴滴出行実車率(全走行距離に対する収入の対象となる走行距離の割合)は公開されていないが、「TAXI TODAY in Japan 2019」(全国ハイヤー・タクシー連合会http://www.taxi-japan.or.jp/pdf/Taxi_Today_2019.pdf)によると、日本の都市部では40%台になっている。つまり、走っている間の半分以上は、お客を乗せていないことになる。

滴滴出行は、アルゴリズム機械学習を使って、この実車率を高めることに挑戦している。乗客から見ると、「すぐにやってくる」「タクシーを探さなくてもいい」などの利点が生まれることになる。

 

アリババとテンセント。2強の狭間で独自のポジションを確保する「美団」

中国のテック企業の多くは、アリババとテンセントのいずれかの投資を受け、いずれかの陣営に属している。その中で、「美団」(メイトワン)は、テンセント系とはいうものの、距離を保っている。以前は、アリババの資本を受け入れていたものの、生き延びるために独自のポジションを確保していると易馳科技網が報じた。

 

アリペイにだけ対応していない「美団」の不思議

中国の中堅テック企業の多くは、アリババかテンセントの資本を受け入れている。規模の小さなサービスは、いずれかの陣営に属さないと生き残っていくことが難しいからだ。それは、三国志演義の後半部分、魏と蜀、司馬懿諸葛亮の対決によく例えられる。

その中で、テンセント陣営に属しながらも、独特のポジションを保っているのが美団(メイトワン)だ。主なサービスはまとめ買いECサイト「美団網」、フードデリバリーサービス「美団外売」の2つ。最近では、Mobikeを買収し、シェアリング自転車サービスも始めた。また、映画、ホテル、娯楽などの検索、予約、購入などもあり、「お出かけ関係の生活サービス」全般のプラットフォームになってきている。

美団サービスの決済方法は、WeChatペイ、銀聯ユニオンペイ)、ApplePayなどに対応しているが、なぜかアリババのアリペイには対応していない。多くの消費者が、このことを不思議に思っている。

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▲美団アプリ。外売だけでなく、ホテル、映画、娯楽、グルメ、シェアリング自転車など、お出かけ関連のサービスのプラットフォームになっている。

 

独特の存在感を放つ経営者「王興」

美団の創業者、王興(ワン・シン)は、中国テック起業家の中で、独特の存在感を持っている人だ。この人は決してイノベーターではない。むしろ、既存のサービスを真似をするフォロワーだ。

しかし、それはただの真似ではない。パイオニアのサービスをよく観察して、その弱点を炙り出し、痛点を鋭くついてくる。そして、イノベーターを圧倒し、市場を握ってしまうのだ。

そのため、投資家たちは王興の動向に注目をしている。王興が注目をしている分野は競争が熾烈になり、パイオニアのサービスと王興のサービスを比較すると、そのサービスのどこがキーポイントになるのかが分かるからだ。

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▲美団の創業者、王興。イノベーターではないが、コピーキャットでもない。後からやってきて、先行者の弱点を鋭く突き、シェアを握ってしまう。中国起業家の中でも、独特の存在感を放っている。

 

米国のサービスを真似することから始めた王興

王興は1979年に福建省で生まれ、清華大学電子工学系を卒業後、奨学金を得て、米デラウェア大学に留学をした。この留学を中断して、帰国をし、SNS「多多友」を創業する。当時、米国では「世界中の誰でも、6人の知り合いを介することでつながることができる」という理論に基づいたSNSが登場してきていた。多多友は、その中国版SNSだった。ありていに言えば、米国で流行の兆しがあったMy Spaceの真似だった。自分を紹介するページを作成し、誰とでもオンライン上で友人となれるというものだった。

次に「游子図」を創業した。これは海外に留学、赴任をしている中国人向けのサービスだ。中国にいる親に海外で撮影した写真を送りたい。すでにPC版のSNS「QQ」があったので、QQ経由で送ればいい話なのだが、親世代の多くはまだPCの使い方がわからない。そこで、デジタル写真をアップロードすると、プリントをして、親の家に郵送してくれるという有料サービスだった。


新興サービスを真似て、シェアを奪ってしまう

王興は、2005年にそのまま大学生向けのSNS「校内網」を創業。米国で急成長していたFacebookの中国版だが、当時の中国の大学生のほとんどがPCを使える環境にあったため、サービス開始3ヶ月で、ユーザー数が3万人を突破するという成功をした。

翌2006年になると、ユーザー数はさらに増加したが、サーバーを増強する資金がなかった。そのため、校内網を千橡互動集団に売却。王興はまとまった資金を手にすることになる。校内網は、その後、人人網に改名され、2011年に上場をしている。

その後、いくつかのSNSを創業した後、2010年になって、米国のグルーポンが成功したのを見て、クーポンのまとめ買いサービス「美団網」を創業する。しかし、当時すでにまとめ買いサイトは複数存在していた。王興は、そのような先行サービスに徹底的に対抗して、シェアを握ってしまったのだ。

さらに、2013年には、フードデリバリーサービス「餓了麽」(ウーラマ)が急成長するのを見て、美団外売を始める。これも、ウーラマが需要の強い都市でしかサービスを提供していないという弱点をつき、あっという間にトップシェアを握ってしまった。簡単に言えば、購買力の強い都市なのにウーラマがサービスを提供していない都市に注力をし、シェアを握ることでブランド力をつけ、ウーラマを圧倒していったのだ。

王興は決してイノベーターではない。しかし、コピーキャットでもない。深い洞察力で、サービスの潜在的課題を掘り起こし、パイオニアよりも洗練させることで成功してきた人だ。中国テック企業経営者の中では、独特の存在感を放っている。

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▲フードデリバリーサービスで競合する美団外売(左)とウーラマ(右)。ウーラマはこの分野のイノベーターでありながら、アリババに吸収され、創業者は経営から離れてしまった。

 

恩人ともいえる存在のジャック・マー

2010年に美団が創業した頃、最大の問題は資金調達だった。「まとめ買い」(ひとつの商品を購入する人数がまとまればまとまるほど、価格が下がっていく)という仕組みが、収益にどう影響するのか、誰も正確に見積もれなかったため、投資家たちは美団に投資をすることを躊躇していた。

そこに手を差し伸べたのは、アリババの創業者ジャック・マーだった。ジャック・マーは、アリババのEC「タオバオ」の創業時と同じにおいを感じ、美団に5000万元(約7.9億円)の投資を行った。

つまり、王興にとって、ジャック・マーは恩人と言ってもいい存在だった。当然、美団でもアリペイ、WeChatペイなどで決済ができるようになっていた。

 

ジャック・マーの危険な提案

その後も、アリババは美団に対して、資金や技術を提供していく。美団はその助けもあって急成長をしていく。

すると、ジャック・マーが王興を訪ねてきて、ひとつの提案を持ちかけてきた。それは、アリババと美団の協力体制を強化するために、決済方法をアリペイひとつだけに絞らないかというものだった。

王興は危険な提案だと感じた。もし、美団がアリペイでしか決済のできないサービスとなったら、消費者の多くは「美団はアリババグループの一員」と考えるようになる。実際、資金も技術も提供してもらっているのだ。美団はこのままアリババグループに取り込まれてしまうのではないか。

さらに、決済方法をアリペイだけにするということは、お金という兵糧の入り口をアリババに握られるということだ。まさか「アリペイ決済を停止する」とまでは言わなくても、それを臭わせることで、アリババの都合のいい要求をしてくるのではないか。王興はそう感じた。

「どのような決済方式を使うかは、消費者が選ぶことで、美団が決めることではない」と言って、この提案を断った。

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▲黄色がブランドカラーの美団外売。外売サービスを新小売戦略の重要なパーツと考えたアリババは、当初、美団を取り込もうとしていた。しかし、王興の強い拒絶にあい、ウーラマの買収に傾いていった。

 

アリババと決別し、テンセントと提携

これ以降、美団は、アリババの投資や技術協力の申し出をすべて断っている。また、新しい利用者については、決済手段の選択肢からアリペイを削除した。

こうなると、美団とテンセントは自然に接近をしていくことになる。美団はテンセントの投資を受け入れ、今ではテンセントが大株主になっている。テンセントは、美団を無理にグループ企業にしようとはせず、良好な距離感を保っているようだ。

一方で、美団とアリババの関係は悪化をしていく。美団がウーラマに対抗して美団外売を始めると、アリババはウーラマを支援し、最終的には買収してしまう。ウーラマを創業した張旭豪は、CEOの座を降り、実質的にウーラマの経営から離れることになった。

王興はこの経緯を見て、もし自分がジャック・マーの提案を受け入れたとしたら、自分も美団から追い出されていたかもしれないと感じた。

王興は、「ジャック・マーは不誠実な人」と公言する唯一と言ってもいい人になっている。

 

アリババ、テンセントとの距離感の保ち方に苦労する経営者たち

記事に対する読者コメントの中には、「決済手段は消費者が選ぶもので、美団が決めるものではないと言いながら、アリペイを使わせないと決めているじゃないか」というもっともなツッコミもある。

しかし、王興はアリペイが使えない状況を変えようとはしない。中国のテック企業は、アリババとテンセントに関わらないことはほとんど不可能になっている。どのように、この2社との距離感を保っていくか、創業者にとって難しい判断になっている。

 

検索から人工知能へ。百度のロビン・リーは30年前からAIを志向していた

中国メディアでは、百度バイドゥ)の売上が下がっていることが度々報道される。検索広告の売上が下がっているのに、利益にならない人工知能の開発に資源を集中しているという。しかし、創業者のロビン・リーは、30年前から人工知能に強い興味を持っていたと亜鉛財経が報じた。

 

BATから脱落した百度

中国のテック企業3強を表す言葉「BAT」。百度バイドゥ)、アリババ 、テンセントの頭文字をとったものだが、百度の経営数字が悪化をしている。グーグルと同じように検索広告を主力事業にした百度は、バイトダンスのTik Tokに代表されるショートムービーに広告の売上を蚕食されているからだ。

最近では、BATではなく、ファーウェイ(Huawei)を加えたHATという言い方もされるようになっている。

 

AI先生「ロビン・リー」は90年代から人工知能に恋をしていた

しかし、百度という企業が衰退を始めたわけではない。百度は現在、人工知能企業に生まれ変わろうとしている。すでに自動運転プラットフォーム「アポロ」は、長沙市などでロボットタクシーが営業運転を始めるなど、自動運転競争のトップグループにいる。

百度の創業者、李彦宏(リ・イエンホン、ロビン・リー)が、人工知能にかける情熱は昨日、今日のものではない。ロビン・リーは、自分を「人工知能楽観者」と呼び、メディアは彼のことを「AI先生」と呼ぶ。

90年代に米国留学で人工知能と出会って以来、ロビン・リーは一貫して人工知能技術を追いかけてきた。

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百度の創業者、李彦宏(ロビン・リー)。インフォシーク検索エンジンエンジニアで、帰国後、百度を創業。検索広告の企業だが、ロビン・リーが学生時代からやりたくて仕方なかったのが人工知能だ。百度は、人工知能企業に舵を切っている。

 

これからは、スマホへの依存度を下げていく20年になる

ロビン・リーは、人工知能が主役になった時代を「智能経済」=インテリジェンスエコノミーと呼んでいる。この智能経済では、3つの大きな変革が起きるという。

1)人と機械の関わり方が変わる。この20年は、人が携帯電話への依存を高めてきた20年だった。今後は、携帯電話への依存が低くなっていく20年になる。スマートデバイスが普及をする時代になり、あらゆる場所にスマートデバイス、スマートセンサーが設置されるようになる。当然、人と機械の関わり方が変わっていく。デバイスを操作するのではなく、デバイスが生体情報を読み取って動作するようになっていく。

2)ITの仕組みが変わっていく。伝統的なCPUと操作体系、ストレージが主役の座を降り、AIチップ、高効率のクラウドが主役となる。

3)新しい業態の産業が生まれてくる。交通、医療、安全、教育などではすでに人工知能による変化が起こっている。さらに、新しい消費、新しい産業が生まれてくることになる。

 

30年前に留学先で人工知能と出会ったロビン・リー

ロビン・リーが人工知能と出会ったのは、30年前の米国留学時代だ。当時、ロビン・リーは中古のホンダ車に乗り、週に一度、紅焼鶏塊(醤油味の蒸し鶏煮込み)を作り、それを7つに分けて、毎日食べるような生活をしていた。

この時代に、ロビン・リーは人工知能に興味を持ち、専門的に学びたいと留学先のニューヨーク大学バッファロー分校の指導教官に相談をしたが、諭された。人工知能を学んでも役に立たない、仕事がないというのだ。

実際、当時はその通りだった。人工知能は面白いけど実用にはならない学問分野と見られていて、専攻をするのは変わり者の学生か、就職をしなくても生きている学生だけだった。

それでも、ロビン・リーは人工知能に興味を持ち続け、人工知能的手法でOCRの読み取り精度を高める研究をし、論文を発表している。

 

コピー企業から脱する鍵は、人工知能イノベーション

ロビン・リーが北京で百度を創業した時、百度はグーグルと同じような検索広告の企業だった。ありていに言えば、ロビン・リーが勤めていたインフォシークやグーグルのコピー企業だった。

しかし、2012年にすでに、ロビン・リーは、コピー企業から脱する意識を持っていた。「中国のネット市場は広大なので、米国よりも先にテクノロジーの限界がやってくる。米国のコピーテクノロジーだけでは、中国市場をカバーしきれない。その限界はイノベーションで超えていくしかない。これにより、中国のテック企業は米国のコピーを脱し、イノベーションを起こす企業になっていく」。

ロビン・リーは、人工知能こそ、この限界を打破するイノベーションだと考えていた。

 

儲かる企業に投資するAT、テクノロジーに投資するB

そこから、百度の投資戦略が変化をしてきた。テクノロジーを持った企業に投資をしていく方向性が明確になった。他の中国テック企業は、プロダクトを持っている企業、消費者を抱えている企業に投資をしようとする。しかし、百度はテックを持っている企業に投資をする。それゆえに、百度の短期的な投資効率はよくなかった。それでも百度は技術を貯め込んでいった。

 

当時は失敗だと批判された「AI先生の大転換」

百度人工知能開発は、2010年から始まっている。中国で最も早く人工知能開発に着手した企業のひとつだ。

しかし、当時、多くの識者は、この百度の転換を「失敗」だと見ていた。百度スマホに舵を切るべきところを、誤って人工知能などという岩礁座礁してしまったと見られていた。

メディアから「AI先生」と尊敬と揶揄の混ざった呼び方をされながら、2013年には百度ディープラーニング研究院を設立して、自ら院長に就任をした。その後、複数の研究チームを立ちあげている。

ロビン・リーは2017年にこう述べている。「百度は、営業収入がトップの企業ではありません。しかし、売上に対する研究費比率では間違いなく中国で1位の企業です。その研究のほとんどは人工知能に関するものです」。

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音声認識プラットフォーム「DuerOS」を搭載したデバイスもさまざま発表されている。アマゾンのアレクサやグーグルアシスタントと競争することになる。

 

2017年に実った自然言語解析「DuerOS」と自動運転「アポロ」

その成果は2017年に一定の成果を見た。百度は音声言語解析エンジン「DuerOS」を発表した。スマートスピーカーだけでなく、スマホ、カーナビ、家電などに搭載することで、自然言語の音声で操作ができるようになる。音声認識、画像認識(顔認識)、自然言語処理の3つの技術が使われている。オープンプラットフォームになっているので、一定の条件を満たせば利用ができる。

また、同年、百度は自動運転プラットフォーム「アポロ」の開発に着手をした。こちらもオープンプラットフォームで、中国の自動車メーカーばかりでなく、フォルクスワーゲンBMWダイムラー、ホンダ、ボルボ、フォード、現代、ジャガーランドローバーなどの海外自動車メーカー、さらにはNVIDIAマイクロソフトインテルなどのIT企業も参加をし、130の企業、研究機関が参加をしている。

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▲アポロの自動運転バスも、武漢市や雄安新区などで試験営業が始まっている。こちらも、一般乗客が利用でき、正式営業とほぼ変わらない。また、公園内のシャトルバスとして利用されることも増えている。

 

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長沙市で試験営業が始まっているロボットタクシー。監視員が乗車するが、運転は自動で行われる。試験営業といっても、45台が投入され、市民は誰でも利用することができる。正式営業を見据えた試験営業だ。

 

百度の「次の20年」が始まった

そのアポロも実用化の道が見えてきている。北京市海淀公園内の移動シャトルとして、無人運転バスの運行が始まっている。これはあくまでも閉鎖区間内の固定ルートを走るものだが、2019年9月には湖南省長沙市で、正規な営業免許を取得したロボットタクシーの試験営業が始まっている。試験営業といっても、45台の車両を投入する大掛かりなもので、長沙市民であれば誰でもモニター登録をして利用できるというもの。長沙市が自動運転用に開放した総延長135kmの道路に限定されているが、徐々に拡大をしていく予定だ。

百度は「中国の検索大手」と呼ばれることが多いが、すでに「中国の人工知能大手」と呼んだ方が的確になっている。ロビン・リーの言う「次の20年」がすでに始まっている。

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