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中国を中心にしたアジアのテック最新事情

若くて経験不足だからこそ成功したTik Tok開発チーム

ショートムービー共有プラットフォーム「Tik Tok」は、中国では1日のアクティブユーザー数が2.5億人を超え、もはやダンス映像だけでなく、動画共有プラットフォームに成長している。このTik Tokを開発したのは、まだ若く、経験もまるでない素人集団だった。経験不足だからこそ、正解はユーザーに聞くしかなく、その真摯な姿勢こそがTik Tokを成功させたと字節范児が報じた。

 

経験不足のチームが作ったTik Tok

15秒という短い時間に何ができるか。文字を打つなら10文字、歩くなら20m、文字を読むなら100字でしかない。しかし、Tik Tokであれば、ムービーを1本見ることができる。

Tik Tokは、2018年に中国でブレイクし、現在1日あたりのアクティブユーザー数は2.5億人に達している。さらに、日本、韓国を始めとする海外でもブレイクし、150の国と地域のアプリストアでランキング入りをしている。

しかし、Tik Tokの開発チームは、決して経験豊富ではなかった。わずか10人足らずのチームで開発が始まり、プロデューサーは初めてのプロデュース業務であり、チーフデザイナーは初めてのチーフ業務だった。コーディングは、業務経験のない学生インターンが行なった。「経験が少なすぎる」。それが最初のチームリーダーのチームに対する評価だった。

2016年中頃から開発が始まって1年余り、最初のTik Tokがリリースされた時でも、チームのメンバーは13人にすぎなかった。この時に撮影された記念写真がある。この13人のメンバーは、現在でも一人も離職をしていないという。結束力だけがこのチームの強さだった。

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▲Tik Tokの開発チーム。全員が経験不足だった。しかし、結束力は強く、立ち上げメンバーは1人もまだ離職していない。

 

突然、呼び出しを受けたインターン学生たち

小安は、2014年の大学2年生の時にバイトダンス社でインターン実習をしたことがあった。2016年大学4年になって、就職活動を始めた頃、バイトダンスの王暁蔚から電話がかかってきた。「新しいプロジェクトを始めようと思っている。話を聞きにこないか?」というものだった。

王暁蔚は、バイトダンス社の主力製品であったニュースアプリ「今日頭条」のワールドカップキャンペーンの仕事を終えたばかりで、音楽のショートムービーをテーマにした新規事業を始めるため、スタッフを集めている最中だった。

 

バイトダンスが目論む「テキスト」「画像」「動画」の3領域

バイトダンスは、創業当初から「テキスト」「画像」「動画」の領域でサービスを展開することを目論んでいたが、当時は大画面スマホがまだ普及してなく、パケット通信料も割高であったため、動画サービスの開発は見送られていた。しかし、2016年になると、にわかに動画共有サービスが次々と登場してきていた。「快手」などは地方都市を中心に1日のアクティブユーザーが数千万人というブレイクをしていたし、上海のスタートアップが開発した音楽ムービー共有サービスmusical.lyは米国でヒットしていた。

 

縦長動画、再生ボタンもない常識破りのTik Tokコンセプトモデル

バイトダンスを訪れた小安が見せられたのは、後のTik Tokのコンセプトモデルだった。「大画面スマホでアプリを起動すると、画面いっぱいの動画が勝手に再生されます。なんだこれはと。こんなの見たことないと驚きました」。

当時の動画の常識は、テレビと同じ横長の画面が表示されて、再生ボタンを押さないと動画が始まらない。それからスマホを横向きに持ち替えて見るというものだった。ところが、Tik Tokのコンセプトモデルは、縦長の画面いっぱいに表示される動画が、何もしなくても次々と再生されていく。

 

焼肉屋で結成されたチームは、誰もが未経験

その後、小安は王暁蔚に連れられて、会社近くの焼肉屋で食事をし、そこで他のメンバーに紹介された。プロデューサーの張禕はエクストリームスポーツが好きで、週末になると山野をバイクで走り回っているような男だ。プロデューサーの経験はなかった。コンテンツ運営の佳靚は、マイナー音楽に詳しかったが、学生インターンを経て正式入社したばかりで、自分が何の仕事をするのかすらよくわかっていなかった。ユーザー運営の李簡は、大学生の時に人気となった中国版ユーチューバーだったが、仕事をした経験はなかった。

 

若者にとっては、1分動画も長すぎて退屈

チームは当時市場に出回っていた動画関係のアプリ、ソフト100点を集めて、評価をすることから始めた。すると、ショートムービーを売りにしているものでも5分や1分というものはあったが、15秒というものはない。若者、特に大都市の95年代生まれ(20歳前後)は15秒ショートムービーを受け入れてくれるのではないかと思われた。

それを確かめるため、近所の中学生、高校生を会議室に集めて、自分たちのコンセプトモデルを見せて、意見を聞いていった。すると、若者たちは動画の時間は短い方を好むばかりでなく、1分以上の動画には退屈さを感じていることなどが浮かびあがってきた。

 

できあがったβ版は、無残な仕上がり

しかし、経験のないチームであったため、β版が完成したが、その内容は悲惨だった。そもそも起動しない。うまく起動しても、映像と音声がずれる。それはわずか2、300ミリ秒程度のことだったが、リップシンクをするTik Tokでは、大きな違和感につながる。チームの友人たちにアカウントを作ってもらったが、ほとんど誰も投稿してくれない。投稿動画がないので、バグ出しも進まないという八方塞がりの状態だった。

それからは、修正しなければならないバグリストが短くなることはなかった。全員でバグを潰しても、その間に新たなバグが見つかってリストがどんどん長くなっていく。深夜2時まで仕事をするのが当たり前だったが、もはや、その時間に帰れることもほとんどなくなっていった。

しかも、小安にとってつらかったのは、面白い動画を自分たちも考えることができなかったし、テストユーザーたちの投稿する動画もありきたりのものでしかなかったことだ。どこかで見たことがあるようなPVの真似にしかすぎない。こんなに苦労をして開発しているのに、果たしてTik Tokは面白いショートムービープラットフォームになるのだろうかと不安は大きくなるばかりだった。

 

ユーザーを信じて生まれたヒットダンス

その状況の中でも、リーダーの王暁蔚は「自分たちのユーザーを信じろ」と言い続けていた。ユーザーが望んでいるものを作り続ければ、ユーザーは必ず応えてくれると言い続けていた。

王暁蔚のその言葉通りのことが起こった。テストユーザーの「劉西籽」が投稿したスクラブダンスがチームとテストユーザーの間で大受けをしたのだ。いわゆる手振りダンスで、腕を水平に起き、もう片方の拳をその腕の上下から突き出すという動作が特徴的で、中国では「垢すりダンス」と呼ばれている。

このスクラブダンスはテストユーザーがすぐに真似をし出して拡散した。難しいダンスではなく、1回見れば誰でも真似ができそうなほどに簡単なことが素晴らしかった。

開発チームは、これこそTik Tokの進むべき方向だと確信した。王暁蔚の言葉通り、ユーザーがTik Tokの方向性を指し示してくれたのだ。


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▲Tik Tok成功の要因となった手振りダンス。開発チームが作ったものではなく、ユーザーの中から生まれてきた流行だった。

 

ユーザーの拡散を加速するのがチームの仕事

チームは、このスクラブダンスの15秒の映像をあちこちの動画共有サイトに投稿し、スクラブダンスが拡散し始めた頃を見計らって、2017年2月、Tik Tokを正式リリースした。すぐにTik Tokを使って、スクラブダンスの映像を投稿する人たちが殺到した。5月には、1日あたりのアクティブユーザーが100万人を突破して、早くもチームの目標が達成された。

それ以来、現在のアクティブユーザー2.5億人になるまで、チームがやってきたことは「ユーザーを信じる」ということだった。どのようなダンス映像が流行るのか、どのような映像が拡散するのか、チームが決めるのではなく、すべてユーザーが生み出し、ユーザーが拡散をする。チームは、その小さな拡散を素早く発見して、他のユーザーにリコメンドする作業に集中している。そのため、Tik Tokは、常に新しい流行が起きていると感じられるプラットフォームになっている。

 

経験不足だから、正解はユーザーに聞くしかない

なぜ、ユーザーの気持ちに寄り添えるプラットフォームが作れたのか。メンバーは全員が「若くて経験がなかったから」と答える。経験がなかったから、答えはユーザーに教えてもらうしかない。そのユーザーの声に真摯に耳を傾けてきたのが成功の理由だと考えている。

Tik Tokは、今、グローバルでの流行を狙っている。アジア圏ではすでに流行し、定着をしたが、欧米圏ではまだこれからだ。バイトダンスの張一鳴CEOは、創業6周年のお祝いの席上で、こう述べた。「グローバル化という線路を走るには、機関車を大きく改造する必要がある。しかし、走りながら改造しなければならなず、速度を落としてもならず、前に進みながら改造しなければならない」。

グローバル展開の経験のないTik Tokチームは、再び未経験のことに挑戦をしている。

 

シェアリング自転車ofoが空中分解。その原因はCEOの傲慢さか理想主義か

中国人の生活を大きく変えたシェアリング自転車。この新しいサービスは、北京大学の学生だった戴威が始めたofoから始まった。しかし、今、そのofoが経営難となり、空中分解が始まっている。多くのメディアがその原因は、戴威個人の傲慢で不遜な性格にあると論評しているが、戴威は類まれな理想主義者でもあるとAI財経社が論じている。

 

「理想に殉じる子ども」ofoの創業者、戴威

ofoの創業者、戴威(ダイ・ウェイ)のことを多くの人が「子ども」と形容する。実際、北京大学在学中にofoを創業し、現在でもまだ28歳でしかない。しかし、「子ども」と言われるのは若さだけではない。「自転車は世界を理解するのに最高のツール」「この世界から未知の街角をなくす」という理想を掲げ、それに反することは頑なに拒否をする。戴威を信奉する人からは純粋、理想主義者とみられ、投資家からは狂信的とみられ、パートナーからは傲慢と見られることもある。

2019年1月17日、ofoの共同創業者である薛鼎と張巳丁が辞職をした。2人とも元北京大学の学生で、戴威とともにofoを創業したメンバーだ。戴威と意見が決裂したことが理由で、いよいよofoの空中分解が始まった。

ofoはこれまで無数の投資話が持ち込まれ、一時期はそのような投資を受けたこともある。しかし、投資を受けるということは株を売り渡し、経営権を渡すということだ。戴威はこれでは理想の運営ができないと、投資家に対抗してきた。これがofoの経営難の主要因になっている。現在でも、ofoの株の70%は戴威が保有している。

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▲シェアリング自転車ofoの創業者、戴威CEO。共同創業した北京大学の仲間たちもofoから離脱し、ofoの空中分解が始まっている。しかし、若い学生や経営者からは圧倒的な尊敬を集めている。

 

重要な商談を「寝過ごしてしまう」戴威

2017年末、カザフスタンに進出するため、カザフスタンの政府関係者との会談をしたことがあった。この時は、ライドシェアの滴滴出行とofoのカザフスタン進出が検討されていた。滴滴出行の程維CEOは、約束した9時の15分前にスーツ姿で現れ、先方の政府関係者がくるのを待ち、有意義な話し合いをした。

9時半からはofoの戴威と会談をする予定だったが、戴威が時間になっても現れない。秘書が連絡を取ってみると、戴威はホテルで寝ていた。寝過ごしたというのだ。カザフスタンの政府関係者は怒って帰ってしまった。周辺によると、戴威はこんなことがよくあるのだという。

 

投資家の都合に振り回されるofo

ofoの経営がおかしくなったのは、2017年11月に、戴威が投資家との決別の大号令をかけたことからだった。ofoの投資会社の人間が匿名でAI財経社の記者に語った。「彼は投資家のことをまったく考えないのです。投資家は、戴威の夢を買ったのだと考えているようです。資本市場ではあり得ない話です。まったく子どものような考え方なのです」。

しかし、戴威が投資家との決別の大号令をかけた背景には、投資家に振り回された経験がある。シェアリング自転車市場は、ofoとmobikeが競い合っていた。しかし、2社が競い合うことによって、大きな無駄が出ていた。需要が100万台である都市に対して、ofoとmobikeの2社が100万台ずつ自転車を投入する。無駄であるし、余剰な自転車が歩道にあふれ、社会問題にもなっていた。

そこで、初期のofoの投資家である朱虎は、ofoとmobikeの合併を画策した。経営を統合することで、適正量の自転車を投入すればよくなり、両社の収益が改善され、社会問題となっている余剰自転車問題も解決される。

虎の案では、戴威とmobikeの胡瑋煒CEOが新会社の共同CEOになるが、実質的なCEOは戴威だというものだった。戴威は、この案に積極的ではなかったものの拒否もしなかった。

しかし、当時、ofoの大株主であった滴滴出行がこの案を潰しにかかった。ライドシェア滴滴出行は、都市交通のすべてを抑えているわけではなかった。近距離であれば車ではなくシェアリング自転車で移動する人もいるし、交通渋滞のため目的地の手前で車を降りて、シェアリング自転車に乗り換える客も多かった。

滴滴出行は、自社のライドシェアサービスとofoのシェアリング自転車を組み合わせることで、都市移動の「最後の1km」までカバーしようと考えていた。滴滴出行のビジネスはライドシェアの営業収入だけではなく、都市移動のビッグデータを収集して行うコンサルティング収入も大きな柱になっている。それが「最後の1km」の部分が把握できないのは大きな問題だった。これを解決し、都市移動データを把握するには、ofoが独立をしたまま、滴滴出行傘下に入ることが理想的だったのだ。

この絵図が崩れてしまうために、滴滴出行は、ofoとmobikeの合併に反対をした。2017年、滴滴出行は、ofoを30億ドル(約3300億円)で買収する計画を実行に移した。その資金を用意するため、滴滴出行は日本のソフトバンクから15億ドル(約1600億円)の投資も受けた。

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滴滴出行の程維CEO。元アリババ社員で、老練な経営を行い、ライドシェア滴滴出行を急成長させてきた。しかし、ofoを買収しようとして、ofoの内情に青ざめ、ofoの買収を中断したという。

 

滴滴出行も青ざめたofoの内情

滴滴出行は、ofo買収の前段階として、ofoの経営陣に2人の滴滴出行の人間を送り込んだ。すると、大きな問題が発覚した。

ひとつは、ofoの社員はすべからく高給だったということだ。この時、ofoの社員は3000人ほどだったが、チームリーダーの月給は5万元(約80万円)を超えていた。製造やエンジニア部門はさらに高給をもらっている。滴滴出行は、これでは人件費がかかりすぎると考え、買収にあたって大規模なリストラと給与体系を変える必要があると感じた。

戴威は、ofoはお金儲けをする企業ではなく、自転車の理想を実現する活動コミュニティーだと考えていた。それが理想に向かって一定の成功をし、利益も出ているのだからメンバーに還元をするのは当然のことだと考えていた。

もうひとつの大きな問題が、利用者から預かっていたデポジット資金を消費していたことだ。ofoのシェアリング自転車を利用するには、最初の入会時に199元(約3200円)のデポジットを支払わなければならない。自転車を返却しない、破損したという場合を除き、このデポジットは退会時に返金をしてもらえる。この預かっているデポジット総額は36.05億元(約590億円)にもなっている。

ofoは、このデポジット資金をキャンペーンや運営費に消費していた。滴滴出行は青ざめた。中国の法律では問題ないというものの、いつか返金しなければならない資金は、会社の運営資金とは別にしておかなければならない。理財運用をするならともかく、使ってしまっているのだ。滴滴出行がofoを買収した場合、もしデポジットの返却を求められたら、滴滴出行がこの原資を用意しなければならなくなる。とても、買収額は30億ドルというわけにはいかない。デポジット資金分を差し引かなければならない。

 

破談となる滴滴との買収話。投資家も離れ始める

滴滴出行の担当者と戴威の買収条件交渉が続いたが、戴威は頑なだった。「高い給料を社員に支払って何が問題なの?」「デポジット資金を使って何が問題なの?」。それどころか、デポジット資金を消費しているという事実を経営上の大きな失策だとあげつらって、その責任を取るという形で、買収後に戴威をofoから追放しようとしているのではないかとすら疑い始めた。滴滴出行の担当者は匙を投げた。「私たちの仕事は、子どもをあやすことではない」とそのうちの一人が語ったという。

最初に戴威の才能を見抜き、ofoの黎明期に投資をした投資家、朱虎もofoから距離を置いた。「投資家は、創業者の理想には関心はない。リターンのみに関心があるのだ」と別れ際に戴威に語った。戴威は裏切られたと感じたが、朱虎にしてみれば、若い理想主義の経営者に対する最後の教えのつもりだった。

 

独自のシェアリング自転車サービスに舵を切る滴滴出行

滴滴出行は、ofoの買収をいったん保留したが、2018年になって再度買収を持ちかけている。ofoの資金繰りが悪化し始めたからだ。しかし、この時の提示額は17億ドル(約1800億円)程度だったという。戴威はあっさりと拒否をし、経営陣からも滴滴出行系の人間を排除した。

滴滴出行の程維CEOは、この顛末を休暇先の海南島の三亜のリゾートで受けた。集まった経営陣と酒を飲みながら会議をし、10億ドルの資金を使って、滴滴出行独自で新しいシェアリング自転車サービスを始めることにした。その後、経営が難しくなっていたシェアリング自転車Blue GoGoを買収し、これを元に滴滴出行のシェアリング自転車サービスを始めている。

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▲ofoの買収を狙っていた滴滴出行は、ofoの内情に驚き、Blue GoGoを買収し、独自のシェアリング自転車サービスを始めた。

 

アリババにも喧嘩を売る戴威

滴滴出行の買収を拒否したofoだが、運転資金不足であることは明らかだった。戴威は、アリババから17億元(約280億円)の融資を受けてしのいだ。投資ではなく、融資であるので、アリババが経営に加わることはできない。戴威の独立宣言でもあった。

しかし、ここでも戴威は戴威だった。2017年9月、突然、WeChatのミニプログラムからofoが利用できるようにした。WeChatは、アリババのライバルであるテンセントが運営するSNSで、当然、WeChatペイで決済をする。アリペイを運営するアリババは激怒して、戴威に詰め寄り、WeChatのミニプログラムを停止することを求めた。しかし、ここでも戴威は拒否をした。

アリババは2017年末、シェアリング自転車サービスHello Bikeに投資をした。ofoを通じてシェアリング自転車サービスに参入したかったアリババは、方針を転換して、Hello Bikeを通じてシェアリング自転車サービスに参入することにした。

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▲アリババもofoを支援したが、ライバルであるテンセントに擦り寄るという裏切りにあい、ofoを見限り、Hello Bikeとの提携に舵を切った。

 

会社の資産も、個人の資産もすべて担保に入れる

ofoの資金繰りは、その後も悪化の一途をたどった。2018年3月には、さらにアリババから追加融資を受けている。この時、アリババは厳しい条件をつけた。それはofoが所有する自転車などの資産を担保に入れることを求めたのだ。つまり、返済ができなければ、資産はすべてアリババに渡る。アリババは自動的にofoを買収できることになる。

それでも、まだ資金繰りが改善しない。2018年9月には、さらにアリババから追加融資をしてもらっている。この時の担保は、戴威が所有する株式だった。

もし、返済が滞るようなことがあれば、ofoの資産はすべてアリババに渡り、戴威は一文無しに近い状態で放り出されることになる。まさに背水の陣になっている。しかし、それでも戴威は、この期に及んでも、「自転車は世界を理解するのに最高のツール」「この世界から未知の街角をなくす」という自分の理想を熱く語っているという。

 

戴威は傲慢な「子ども」なのか、それともイノベーターなのか

ofoの経営難の主な原因は、戴威CEOの頑な性格にあると結論づけているメディアがほとんどだ。しかし、反論するコメントも多い。なぜなら、戴威が熱狂的な理想主義者であったからこそ、シェアリング自転車という新しいサービスが生まれ、中国人の生活の中に定着をしたからだ。戴威が金儲けをしたいだけの平凡な経営者であったら、ここまでシェアリング自転車は浸透しなかっただろう。

戴威は、いまだに北京大学周辺で暮らしており、10km四方のその地域から外に出ることはほとんどない。食事は、ほとんどがファストフードかコンビニの弁当だ。唯一の贅沢は、社員を連れてカラオケ店の個室で朝まで騒ぐことぐらいだという。戴威の頭の中には理想を実現することしかなく、それ以外のことはどうでもいいのだ。それが時として、不遜に映ったり、傲慢に映ったりする。

理想に燃える若き経営者が、現実の問題に直面をした時にどうなるのか。そういうストーリーとしても、ofoの経営難問題は注目されている。大人たちは、戴威を「子どもすぎる」と言うが、学生や若いスタートアップ経営者は戴威を「イノベーター」と呼ぶ。

 

 

人工知能が豚を育てるIoA。四川省の養豚場にET産業ブレインを導入

中国四川省宜浜市麻衣村の養豚場で、人工知能の導入が始まっている。センサーで豚の日常行動を監視し、人工知能が健康状態や栄養状態を把握し、品質の高い豚を出荷しようとする試みが始まっていると毎日人物が報じた。

 

人工知能が豚を育てる

このIoA(=Internet of Animals)とも言える試みは、養豚場を運営する徳康集団とアリクラウドの共同ブロジェクトで、アリクラウドが開発した人工知能「ET産業ブレイン」を養豚場に応用して、養豚業の効率化を図ろうというものだ。

しかし、アリクラウドのAIエンジニア、雷宗雄氏は最初に豚舎に入った時に、これは難しいと感じたという。「豚舎がこんなにフンだらけだとは知りませんでした。それにネット回線もきていない」。

さらに常に粉末化した飼料が空中を漂っっている。同行したチームのメンバーに鼻炎の人がいて、入るなり連続してくしゃみをし始め、ふらふらになって、母豚の上に倒れてしまったほどだという。

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▲豚舎の内部環境も改善された。当初は、粉塵化した飼料が漂っていたため、パソコンを持ち込むこともできなかった。

 

難しかったロボット導入

プロジェクトを共同で進めている徳康集団の技術総監督の蘇志鵬氏は、当初、ロボットの導入を考えていた。人間の代わりに、豚舎の中を巡回し、撮影をし、飼料を与え、掃除をする人工知能搭載ロボットの開発を考えていた。

しかし、実際の豚舎を初めて見て、その考えを捨てた。麻衣村の養豚場には8つの豚舎があり、外光を取り入れる窓はあるものの、倉庫のような閉鎖空間になっている。豚は幅60cm、長さ180cmのケージに収められ、向きを変えることはできない。この中で、飼料を食べ、排泄をし、一生を終える。狭い作業用通路は、豚のフンと飼料であふれている。しかも、天井の高さは2.2mしかない。この中で、ロボットを巡回させるのは不可能だし、ロボット内部の精密機器は粉塵化した飼料に汚染されてすぐに故障してしまうだろう。

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▲エンジニアも豚の世話をしなければならない。不慣れな作業に苦戦をするエンジニアたち。しかし、実際に豚に触れてみて気づくことも多い。

 

遅れている中国の養豚業

中国人は豚肉を食べるのが大好きだが、養豚業は遅れている。中国の養豚家の平均頭数は150頭前後で、海外の効率化した国では250頭と中国はまだ遅れている。母豚が1年に産む子豚の数もデンマークなどの養豚先進国では30頭を超えているのに、中国では20頭でしかない。アリクラウドと徳康集団の共同プロジェクトの目標は、この養豚場をデンマークなどの先進国並みの効率に高めることだ。

徳康集団のの蘇志鵬氏は、12年前から養豚場の近代化に携わってきたが、アリクラウド人工知能のデモを見て、これこそが養豚業の近代化を進める決め手になると直感した。

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▲近隣の壁には、アリクラウドETブレインの手書き広告も現れた。「スマート養豚はすごくいい。美しい娘はすぐに嫁入りできる」というもので、文化大革命時代以前に掲げられたていたスローガンをもじったもの。

 

大げんかになったエンジニアたち

しかし、アリクラウドと20名のエンジニアチームは現状を見て失望した。どこから手をつけていいのかわからない。エンジニアチームが麻衣村に到着した最初の晩、チーム内は大ゲンカになったという。人工知能を応用するにもデータを収集するデバイスが何もない。こんな不衛生なところで働くのも嫌だった。騙された、できるわけがない。エンジニアの誰もが弱音を吐いた。

しかし、数日間、徹夜の議論をして、ようやく突破口が見えてきた。養豚場の職員は毎日10時間働いているが、そのうちの1.5時間はデータ入力に費やされていた。豚の行動をすべて数値化して、手元のメモに記録をし、それをエクセルに入力していたのだ。しかし、その数値データはいずれも職員の主観に基づくものであり、数値データとしてはあまり意味のあるのものに思えなかった。

そこで、雷宗雄氏は天井にレールを設置して、カメラ、赤外線カメラ、レーダーなどのセンサー類を設置し、このセンサーが豚舎全体を常に巡回するようにした。これにより、すべての豚の心拍数、呼吸数、皮膚体温などの他、行動の映像が撮影できるようにした。

豚の識別は、背中に特殊塗料でID番号をプリントし、映像から豚の識別ができるようにした。人工知能の行動解析により、食事、睡眠などの行動時間がわかるようになり、さらに行動量から健康状態や病気も推測ができるようにした。

エンジニアチームは、このような行動解析をする17種類のプログラムの開発を始めた。

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▲アリクラウドのエンジニアチーム。養豚場に到着した日は、こんなところで働きたくないと大げんかになったという。

 

豚の育ち具合は尻を見ればわかる

麻衣村の養豚場にきて開発をすることにも意味があった。養豚場では「豚の健康状態は尻を見ればわかる」と言われている。尻の脂肪のつき方で、健康状態がわかり、おいしい肉になるかどうか、妊娠がうまくいっているかなどが、感覚的にわかるのだという。エンジニアチームはさっそく、得られた映像から豚の尻の形を人工知能に学習させるプログラムを開発し始めた。

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▲天井レールを巡回するセンサーから得られたデータ、画像を人工知能に処理させる。17種類プログラムが同時並行で開発されている。

 

期待されるIoAプロジェクト

このプロジェクトは、人手不足の問題も解決するのではないかと期待が高まっている。養豚場という劣悪な環境の中での仕事は若者から嫌われていて、若い新人がやってきてもすぐに辞めてしまう。

しかし、天井レールで巡回を自動化することで、職員の作業負担は大きく減った。特に養豚場の中での作業時間が半減をした。データを記録して、エクセルに入力する作業も不要になった。また、人工知能システムを導入したことで、養豚を科学的に考えることに興味を持つ若者が注目し始めている。

人工知能システムは、まだ開発中で、具体的な成果が出るところまでは到達していないが、蘇志鵬氏は大きな期待をしている。

センサーを天井レールで巡回させ、人工知能に処理をさせるという方式は、完成すれば、小さな設備投資で他の養豚場にも簡単に導入ができるようになる。中国の養豚業を根底から変えていくかもしれないと注目が集まり始めている。

 

アプリの9割が過度な個人情報収集。半数がプライバシーポリシー上の問題

中国消費者協会は、100種類の主要スマートフォンアプリの個人情報収集状況を調査した「100種類アプリ個人情報収集とプライバシーポリシー評価報告」を公開した。それによると、85.2%の消費者が個人情報流出を経験しており、91のアプリに個人情報収集上の問題が存在し、47のアプリにプライバシーポリシー規約に問題があったと人民日報が報じた。

 

WeChatの報告書が炎上

今、中国でアプリによる個人情報収集が問題になっている。きっかけは、テンセントが公開した「2018WeChatデータ報告」だ。WeChatは中国人のほぼ全員が使っているといっても過言ではないSNSメッセンジャー。運営元のテンセントは、WeChatから収集したデータを処理して、世代別の行動や嗜好を報告している。

例えば、00年代生まれ(10代)は、泣き顔の顔文字が好き。寝るのは遅く、起きるのは早く、睡眠時間は短い。夜10時から活動をする夜更かしの人が多い。冷たいものと甘いものを好むなどとなっている。

この報告書が炎上した。利用者から「WeChatはここまで詳細な個人情報を収集しているのか?」と批判が起きたからだ。テンセントはすぐに「すべてのデータは匿名化をしてから処理している」と説明をしたが、納得をしない利用者もいて、この問題はいまだにくすぶっている。

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▲テンセントが公開した「2018WeChatデータ報告」。00年代生まれ(10代)は泣き顔の絵文字を好み、遅寝遅起き、睡眠時間が短いなどの特徴が報告されている。匿名化したデータによる集計だが、この報告書が炎上をした。

 

スマホアプリに過度の個人情報収集の問題

この問題をきっかけに、人民日報は、中国消費者協会の2つの報告書「アプリ個人情報流出状況調査報告」「100種類アプリ個人情報収集とプライバシーポリシー評価報告」を取り上げて、個人情報の保護の問題を論じている。

「アプリ個人情報流出状況調査報告」によると、個人情報流出に遭遇した人は全体の85.2%であり、しかもそのうちの86.5%の人が迷惑電話、迷惑メールという被害にあっており、75%の人が詐欺の電話を受けており、63.4%の人が不当なダイレクトメールを受け取っている。

現在、このような個人情報の流出はスマートフォンから起きていると考えるのが妥当だ。そこで、中国消費者協会は主要なアプリ100の個人情報収集状況とプライバシーポリシー規約の調査をし「100種類アプリ個人情報収集とプライバシーポリシー評価報告」を公開した。

それによると、100のアプリのうち91のアプリに過度の個人情報収集があり、47のアプリにプライバシーポリシー規約の表記上の問題があった。

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▲過度な情報収集の例。プライバシーポリシーの同意文書をよく読むと、身分証、パスポート、運転免許証、個人資産情報、個人のネット履歴なども収集されている。多くの人がよく読まずに同意ボタンを押している。


悪意のない過度な個人情報収集が最も危険

アプリが一定の範囲で個人情報を収集するのは当たり前のことだ。例えば、地図アプリは利用者の位置情報を収集しなければ、現在地周辺の地図を表示することができない。また、多くのアプリが、起動時間、終了時間などの情報を収集し、サービスの品質向上に役立てている。

しかし、通信相手の把握、身分情報、携帯電話番号などは、把握することが必要なアプリやサービスもあるが、「収集できてしまうので収集している」というアプリも少なくない。さらに、必要もないのに、資産状況や信用スコア、生体情報などまで収集しているケースもある。

91の過度に個人情報を収集しているアプリの多く、あるいはすべては悪意があって個人情報を収集しているわけではない。「技術的に簡単に収集できてしまうので、必要かどうかはわからなけど、将来利用できるかもしれないので、とりあえず収集して保存しておく」という感覚でいる。

実はこれが極めて危ない。収集する側は気楽な気持ちで集めているので、扱いが雑になり、流出に繋がりやすいのだ。特に、中国の場合、個人情報流出のほとんどは内部犯行によるので、扱いが雑になった個人情報は流出する危険性が増す。

このような問題を防ぐため、中国の法律では、アプリ使用開始時にプライバシーポリシー規約を表示して、利用者の同意を得ることを求めている。このプライバシーポリシーには、収集する情報の種類とその使用目的、方式、範囲、保存期間なども明記しなければならないが、これが多くのアプリで守られていない。47のアプリで不明瞭な表記の元にプライバシーポリシーの同意が求められていた。

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▲画像共有アプリのプライバシーポリシー。銀行口座番号やスマホ決済のアカウント情報、さらには指紋や顔の生体認証情報まで収集するとしている。明らかな過度な個人情報収集だ。

 

最も重要なのは利用者の「制御権」

人民日報では、このような個人情報保護を目的として、中国には40の法律と30以上の法規が整備されている。また、業界では「3Cの原則」があるという。Consent(同意)、明快(Clarity)、制御権(Control)の3つのCだ。

このうち最も重要なのは制御権だ。同意をした後でも、個人情報を個別に提供しないようにできる仕組みを導入することだ。もちろん、地図アプリを使っていて、位置情報の提供をオフにすれば、現在地の地図が表示されないなどの不便さは生まれてしまう。それでも、利用者自身が利便性と個人情報の開示を秤にかけて、選択できるということが重要だ。

個人情報の収集そのものは悪ではない。人は、太古の昔から、名前や顔といった個人情報を開示することで、社会との関係性をつけて生きてきた。現代社会でも、多くの個人情報を開示することで、利便性という恩恵を得ている。重要なのは、本人が自分の意思で、誰にどの個人情報を開示し、どの利便性を得るかを選択できることなのだ。

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▲動画共有アプリのプライバシーポリシー。位置情報などはまだ理解できるものの、銀行カード番号やその出入金履歴なども収集されるとしている。法律では、個人情報を収集する際に、その目的を明記することが求められているが、多くのアプリで守られていない。

 

台湾「QRコード決済は面倒!」。中国「QRコード決済は便利!」

台湾のあるネットワーカーが、「QRコード決済は手順が多すぎて面倒だ」という発言をしたところ、これが中国で拡散して「なんで面倒なのかわからない」という意見が寄せられ、興味深い論争になっていると数碼妖精が報じた。

 

状況が日本とよく似ている台湾のキャッシュレス決済

キャッシュレス決済の面では、日本と台湾は状況がよく似ている。キャッシュレス決済比率は2015年で26%と、日本をわずかに上回っている程度。台湾政府はこれを2020年までに倍の52%、2025年に90%にまで引き上げようという目標を立てている。

現金決済がまだまだ好まれ、街中には多くのATMがあるのも日本とよく似ている。また、クレジットカードが普及をしていて、キャッシュレス決済の主体がクレジットカードであるという点も日本と同じだ。

また少額決済では、日本のSuicaにあたる交通カード「悠遊カード」を多くの人が持っていて、公共交通だけでなく、コンビニや商店でも利用できるようになっている。

面倒、乱立で普及が進まないQRコードスマホ決済

これに加えて、スマホ決済も普及し始めているが、主体になっているのはNFC決済だ。観光立国である台湾は、外国人観光客がくるような場所では、海外のペイメント方式に対応しているところが増えてきている。アップルペイ、グーグルペイ、サムスンペイなどや、中国のアリペイ、WeChatペイに対応をしている。さらに、台湾独自のスマホ決済もある。

また、導入が簡単なことからQRコード方式のスマホ決済も複数登場しているが、消費者からの評判はあまりよくない。支払い時の手数が多くて面倒ということと、QRコード決済方式が乱立をしてわかりづらくなっていることが問題のようだ。

このため、QRコード決済の統一規格「台湾ペイ」を推進している。これであれば、台湾ペイに参加しているQRコード決済であれば、どれでも好きなもので決済ができる。この点では日本よりも進んでいる。

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▲世界的にも有名な台湾の小籠包レストラン「鼎泰豊」。支店もたくさんあるが、どの店もどの時間帯にいっても行列をしているという人気店だ。

 

それでも現金オンリーの店舗が多い

しかし、それでも現金オンリーの商店が多いのも日本とよく似ている。小さな商店では現金のみのところが多いし、台湾で外国人にも最も有名な小籠包店「鼎泰豊」(ディンタイフォン)も現金決済のみで、クレジットカードすら利用できない。レストランは現金オンリーの店が多い。

キャッシュレス決済が使えるのは、モール内の店舗やコンビニ、カフェ、スーベニアショップといった新しい業態の店舗のみで、伝統的な歴史のある商店ではあまり使えない。インバウンド客に対するキャッシュレス対応という点では、日本の方がきめ細かく対応できているという印象を受ける。

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▲海外旅行客もいくことが多い「鼎泰豊」も、意外なことに現金のみで、クレジットカードも利用できない。台湾のレストランは、現金オンリーのところが多い。

 

台湾「QRコード決済は面倒!」。中国「便利!」論争

日本でもQRコード決済は、「手数が多くて手間がかかる」と感じている人は多い。台湾のネットワーカーも同じことを感じていて、「大陸の人がスマホ決済は便利だというのがまったく理解できない!」という内容をSNSにあげたところ、これが中国で拡散し、「台湾の人がスマホ決済の便利さを理解できないというのが理解できない」と多くのコメントがついた。

その内容は、QRコードスマホ決済では「1:スマホを取り出す」「2:WeChatアプリを開く」「4:QRコードスキャンを選ぶ」「4:QRコードをスキャンする」「5:金額を入力する」「6:支払いをタップする」「7:パスワードを入力する」「8:支払いが完了したことを確認する」「9:金額を確認する」「10:レジ側で決済が完了したことを確認する」と10ステップもかかる。ところが、クレジットカードを使えば、「1:カードを取り出す」「2:カードをレジに通す」「3:サインをする」「4:月末に明細を確認する」と4ステップでいいというものだ。

お分かりの通り、この台湾のネットワーカーは、QRコード決済が手数が多くて面倒だということを強調したいために、あえて手数のかかる方法を紹介しているが、日本人にとってもQRコード決済が面倒に感じるのは同じだ。わざわざアプリを探して起動し、QRコードを表示させる/スキャンをするという手数が面倒に感じる。NFC系のカードやスマホ決済であれば、基本的にタッチするだけで完了する。

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▲論争になった台湾ネットワーカーによる書き込み。「大陸の人がスマホ決済が便利だというのが理解できない!」としたもので、クレジットカードの方がはるかに便利で、これは「橋があるのに渡らず、飛び石を探しながら河を渡るようなものだ」と発言した。大陸の中国人が反論をし、面白い論争になっている。

 

多くの中国人は、QRコード決済の経験しかない

中国人ネットワーカーは、これに対して、「QRコード決済は面倒じゃない」と反応している。その理由のひとつは、クレジットカードを使った経験がある人はそうは多くないということだ。

中国でVISAやMasterなどの国際ブランドのカードを持っている人はごくわずかで、持っている人もほとんどは海外で利用をする。そのため、中国国内で国際ブランドのカードが使える商店は、ホテルやホテル内のレストラン、百貨店などごくわずかな場所でしかない。要は、外国人が来る場所で、客単価が高い場所に限られている。

一方で普及をしたのは銀聯カードだが、これはデビットカードであり、分割払いなどのクレジット機能はついていない。各銀行により、オプションで分割払いやリボ払いなどの機能をつけることができるが、別途申し込みが必要であり、信用審査が必要となるため、時間もかかる。一方で、アリペイなどの分割払い機能を開通するには、スマホから申し込んで数分で使えるようになる。決済履歴などから信用スコアが算出されているので、信用審査が瞬時に終わるからだ。

アップルペイなどのNFCスマホ決済が入ってきたときには、すでにQRコード系決済である「アリペイ」「WeChatペイ」がかなり普及をしていた。

つまり、簡単に言うと、多くの中国人はQRコード決済しか知らず、比較対象になるクレジットカードやNFC決済を使った経験がないので、「QRコード決済は不便」と言われても、ピンとこないのだ。台湾ではクレジットカードやNFC決済が普及をしてから、QRコード決済が入ってきたために、不便だと感じてしまう。

 

利便面での改善が急速に進むQRコード決済

ただし、QRコード決済もその不便さを解消してきている。パスワードは現在入力している人はほとんどいない。指紋認証、顔認証で自動でパスワードが入力されるように設定している人がほとんどだ。さらに、一定額以下の少額決済では、パスワードの入力自体を省く設定にできる。

また、決済アプリを起動する面倒も解消されてきて、多くのスマホで、「QRコード表示/スキャン画面」のショートカットを設定できるようになっている。つまり、今では「1:スマホを取り出す」「2:QRコードを表示する」「3:店舗側にQRコードをスキャンしてもらう」「4:レジ側で決済が完了したことを確認する」と4ステップで済むようになっている。

また、顔認証決済を導入している商店も増えてきている。これであれば、「1:顔を見せる」「2:携帯電話の番号下4桁などを入力」だけで決済が済み、スマホを取り出す必要もなく、スマホを忘れたとしても決済ができる。

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▲中国のケンタッキーが運営するKPro。入り口付近にメニュー端末があり、顔認証で決済ができる。顔認証を登録していない場合は、QRコードでも決済可能。このタイプの端末を導入するファストフードが増えている。


カードは紛失するけど、スマホは紛失しない?

面白いのは、中国人側からの「クレジットカードはなくしたり、忘れたりする危険がある」という指摘だ。スマホだって、なくしたり、忘れてきたりする危険性はあるが、今の中国では、スマホが生活のあらゆる局面で使うツールになっているので、紛失をしたらすぐに気がつくし、家に忘れてきてもすぐに取りに帰るだろう。

一方で、クレジットカードや電子マネーカード、交通カードは毎日使うとは限らない。使うとしても1日数回でしかない。紛失をしても、それに気がつくまでには多少の時間がかかる。

つまり、日常必要な機能は、すべてスマホという1つのツールに集約してしまえば、持ち歩くツールの数が減るし、頻繁に使うので、本人も気をつけるし、紛失をしてもすぐに気がつくので対処もすぐできる。一方で、年に何回かしか使わないクレジットカードをタンスの中にしまっている人は多いと思うが、ひょっとしたら半年前に盗難にあっていて、まだ気づいていないということもあり得る。

自宅の鍵は、毎日使うので、本人も気をつけるので失くすことはほとんどないし、万が一失くしてもすぐに気がつくだろう。しかし、数年に一度使うことがあるかないわからないスペアキーはどうなっているだろうか?最近、ちゃんとあることを確認したのはいつのことだろうか。あるいはしまってある場所すら忘れている人も多いのではないだろうか。

日常重要なものはできるだけスマホ化して、「なくしたり忘れてはならない大切なもの」をひとつに絞った方が、紛失のリスクが少なくなり、心理的負担も小さくなるという中国人ネットワーカーの指摘には、耳を傾ける価値があるのではないだろうか。

 

電子化が難しい大学の図書館で、テクノロジー導入が進む

中国の大学の図書館が、積極的に人工知能、IoT、ビッグデータなどのテクノロジーを取り入れ始めている。大学図書館の蔵書は、専門書などが多く、電子化が簡単ではない。そのため、図書館員の業務をテクノロジーで自動化する試みが進んでいると個人図書館が報じた。

 

図書運搬に無人カートを採用した清華大学

北京の清華大学では、無人カートを図書の運搬に使っている。2018年3月から試験導入を始め、同年4月29日より正式運用を始めている。清華大学の図書館と自動車工学部が共同開発したものだ。

従来は書庫とカウンターの間を人が台車を使って運んでいた。その代わりをすることになる。もちろん、人を感知すると停止あるいは回避をする。

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清華大学で導入された図書運搬用の無人カート。開発は、同大学の自動車工学系の学生たち。図書館のテクノロジー導入は、理工系学生の挑戦しがいのある研究課題にもなっている。図書館は、低コストで導入できるというメリットがある。

 

蔵書整理作業にロボットを導入した南京大学

南京大学では図書ロボット「図宝」(トゥーバオ)を導入している。南京大学図書館では、ほぼすべての本にRFID電子タグがつけられている。図宝はこの電子タグの情報から、本が正しい棚に収められているか、なくなっている蔵書がないかどうかを検査して、その結果を図書館員に伝える。図書館員は、図宝の画面で問題のある棚を検索し、その棚だけで整理作業をすればよくなる。

また、図書館の利用者が図宝を利用することもでき、蔵書の検索ができ、どこの棚にあるかを教えてくれる。万が一、間違った棚に返されていても、そちらの棚を教えてくれるし、閲覧中の場合も棚にはないことを教えてくれる。さらに、必要があるのかどうかはともかく、歌を歌う機能もあるという。

図書館員は、常に棚が整理されているかどうかを点検しなければならなかったが、現在では図宝が教えてくれる問題のある棚だけで整理作業をすればよくなった。作業時間が大きく効率化され、図書館員の本来の業務であるブックコンシェルジュ、研究などの作業に時間を割けるようになった。

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▲南京大学で導入された図書ロボット「トゥーバオ」。常に巡回していて、電子タグがつけられた書籍の位置を確認し、整理されていない書棚を図書館員に伝える。図書館員は未整理棚だけで整理業務をすればよくなった。

 

顔認証で図書貸出業務をセルフ化する浙江理工大学

浙江理工大学では、百度バイドゥ)の顔認証システムを導入して、図書の貸出を顔認証で自動化をした。

浙江理工大学では、すでに学生証をICカード化していて、そのカードをタッチすることで、図書館に入ったり、セルフで図書を借りたりすることができていた。しかし、学生証の紛失あるいは盗難が起こり、その学生証カードを使って、図書館の図書が盗まれるという事件が起きた。これを防止するために、学生証と顔を紐づけて顔認証で入館、図書の貸し出しが行えるようにした。

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▲浙江理工大学では、顔認証とIC学生証で図書を借りることができる。以前は、IC学生証だけでセルフ貸出を行っていたが、学生証の紛失、盗難により、図書が盗まれるという問題が起きていた。

 

電子書籍化が難しい大学図書館は、紙の本でIT化を進める

大学の図書館の蔵書は、古い書籍であったり発行部数の少ない専門書が中心になる。そのため、ほとんどが電子書籍化されてなく、今後も大半は電子書籍化されないと思われる。希少本はスキャンをして電子化されつつあるが、閲覧をするにはある程度の大きさのタブレット端末などが必要で、決して見やすいとは言えない。大学の図書館は、今後何十年も紙の本を扱っていかなければならない。

そのため、図書館員の作業負担を減らすために、IT化に熱心なのだ。図書館員は、本来は書誌情報に熟知をして、利用者に必要な本をすぐに紹介できるブックコンシェルジュ業務が主要な業務のはずなのだが、本の整理という仕事に時間を取られて、本来業務がなかなかできない状況になっている。

これをテクノロジーで解決をしていき、図書館の本来の機能を強めようということから、大学図書館でのテクノロジー導入が進み始めている。しかも、工学部の学生にとって挑戦しやすい研究課題になっている。今後も、他の大学の図書館でもさまざまなテクノロジー導入が進んでいくことになる。

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終わる海外旅行での「爆買い」。代理購入から越境ECへ

2019年1月から中国電子商務法が施行された。ネットで物品を販売するには、個人であっても営業許可が必要となり、海外から仕入れたものはすべて関税を支払わなければならなくなった。違反をすると、刑事罰が科せられ、罰金は最高で200万元以上になる。この法律の施行で、代理購入をしている業者がほぼ消えると見られていると藍媒滙が報じた。

 

爆買いの実態は、お土産ではなく転売

日本で数年前まで話題になっていた中国人の「爆買い」。ニュースでも炊飯器やシャワートイレ、日本製の漢方薬などを大量に買っていく訪日中国人の姿が報じられていたのを覚えている方もいるだろう。もちろん、中国人は親戚の数が多く、親戚や友人に旅行のお土産として買っていくという面もあった。しかし、多くは代理購入ビジネスで、中国でSNSなどを使って売りさばくことが目的だった。

このような代理購入のルートは2つある。ひとつは本人が海外旅行に行き、大量購入をし、持ち帰り、中国で売りさばく。もうひとつは、中国国内と海外在住者が連携をし、国際宅配便を使って中国国内に送り、売りさばくというもの。

ポイントは個人の荷物であるという体裁を取るので、税関に引っかかることが少なく、関税を支払わないで済むということだ。

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▲代理購入は、サプリメントや食品など、ドラッグストアで販売されている商品のうち単価の高いものが中心になっている。このような商品を現地で買い、あるいは現地から宅配便で送り、個人の荷物という建前で関税逃れをして、中国国内で売りさばくという商売が爆買いを支えていた。

 

越境ECサイトの発展により、下火になる爆買い

しかし、このような代理購入ビジネスは次第に下火になっていった。アリババのTmallインターナショナルなどの越境ECサイトが登場してきたからだ。越境ECサイトではもちろん関税を支払っているので、個人の代理購入よりは仕入れ価格は高くなる。しかし、代理購入は関税分以上に自分の利益を乗せるので、結局、越境ECサイトと価格は変わらない。

多くの人が、怪しげな代理購入業者から買うよりは、きちんとした越境ECサイトから買うようになる。実際、個人の代理購入では、偽ブランド品であった、破損していたというトラブルが絶えない。

こうして、代理購入業者は次第に少なくなり、現地での「爆買い」は見られなくなり、旅行者が自分のためのお土産を買っていくという正常な状態になっている。中国で売れる化粧品を作っているメーカーなどでは、すでに日本の小売店での「爆買い」はあてにしておらず、中国越境ECサイトに軸足を移している。

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▲ブランドの服飾品なども爆買いの対象になっていた。単価が高いので、利幅が大きい。宅配便で送った場合は、関税で発覚し、関税を取れる確率が高いので、海外旅行にいって現地で買い付け、「個人の荷物」だという建前で中国国内に持ち込む。

 

監視を強めるSNS運営

このような代理購入業者は、WeChatなどのSNSを使って宣伝をし、連絡をしてきた客との間で個人売買の体裁をとって販売をしている。中国電子商務法では、このようなネットでの個人売買であっても、営業許可が必要だとしている。

また、WeChatなどのSNS運営会社では、無許可営業に対する監視を強めている。商品名の単語や商品の写真で検索監視をし、無許可営業が発覚した場合は、販売業者、購入者双方のアカウントを停止する。さらに、場合によってアリペイやWeChatペイのスマホ決済のアカウントも停止されることがあるという。

このため、中国電子商務法施行後、このような代理購入はすっかり影を潜めた。一部ではまだ行われているが、商品名を変えたり、写真の代わりに手書きの絵を載せるなど苦しい工夫をしている。

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▲代理購入業者は、SNSで顧客を探す。しかし、各SNS運営では商品写真や商品名で検索をし、代理購入をしている人のアカウントの凍結を始めている。そのため、商品写真ではく、手書きの絵を掲載して購入者を探す代理購入業者が登場した。

 

関税逃れがメリットだった爆買い

小琳は、韓国、日本、タイの化粧品、服、粉ミルクを代理購入して5年になる。収入は毎月数万元(数十万円)あったという。

「以前は、税関で箱が開けられるのは1割ぐらいでしたが、今では9割ぐらいが開けられます」という。関税は、商品の種類、量によっては免除されることもあり、小琳が扱っている商品の多くは単価の安いものなので、今までの関税を徴収されたことはないという。しかし、これからはわからない。

小琳は、韓国、日本、タイに友人がいるので、必要な商品を買ってもらって、国際宅配便で送ってもらっている。しかし、その友人たちの話では、自分が中国に帰るときにも、税関で自分の荷物が開けられ、関税を取られたことが増えているという。しかも、高価なブランド品の服では、売り物ではなく、何度も着た自分の服であっても関税を徴収されたという。

税関がかなり厳しくなっていることは間違いなく、代理購入した商品にも関税がかけられるようになると、利益が小さくなり、商売は厳しくなっていくと感じている。

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▲ある代理購入をする人。これだけのバッグを中国国内に持ち込み、税関では「自分のために買ったもの」と言い張り、関税を逃れる。税関も、今後は、規定通りに関税を徴収するようになる。

 

関税と手数料で個人では利益が出なくなる

玲玲は、英国で学ぶ留学生だが、生活費を稼ぐために英国の化粧品を代理購入して2年になる。学業の合間にビジネスをしているので、収入は一定しないが、平均すると月に数千元(数万円)程度だという。

国電子商務法が施行されると、業として大々的に輸入をしている業者は、当然営業許可を取得する。しかし、玲玲のようにアルバイト感覚で代理購入をしている者は、営業許可を取る手間もなかなかかけられない。頑張って営業許可を取ったとしても、個人で細々とビジネスを続けるのには限界を感じているという。

それは、代理購入は偽物の販売などのトラブルが多いため、個人の業者は顧客からなかなか信用してもらえず、何度もやり取りをしなければならず、手間ばかりがかかるからだ。その手間を減らすために、越境ECのプラットフォームに出品する手もあるが、かなりの手数料が取られるため、ほんとんど利益が出なくなってしまう。

結局、玲玲は単価の安いものだけに絞って様子を見ている。単価の高い商品は利幅も大きいが、送料も高くつき、税関で発覚して関税を取られる可能性が高いからだ。玲玲は実家に商品を送り、家族に販売を頼んでいるが、家族も最近ではこのビジネスを続けることに反対をしているという。

 

現地国と中国の両方の営業許可が必要になる

Nancyは、米国、欧州、ニュージーランドの日用品やベビー用品を大々的に代理購入して5年になる。年間で数百万元(数千万円)の収入があり、1000万元(約1.6億円)を超えた年もあった。しかし、この代理購入ビジネスはもう続けられないかもしれないと考えているという。

国電子商務法に則って、営業許可を取得するには、まず現地で輸出業者の営業許可を得ていることが条件になる。米国から中国に輸出をするのであれば、まず米国で輸出業者の営業許可を取り、それから中国でネット販売の営業許可を取る必要がある。これはNancyほど手広く代理購入をしている業者にとっても、手続きが面倒で、しかも時間のかかる作業になる。

現実的なのは、越境ECサイトに出品をすることだが、この場合は手数料が取られるので、利幅は大きく下がる。大量の商品の買い付け、発送処理、事務処理は人を雇わないともはや不可能だが、どうやっても越境ECサイトへの出品では利益がほとんどなくなってしまうのだ。

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▲海外のショップで、限定品などが発売されるときには、中国人が行列をすることが当たり前になってきている。中国人に人気があるというよりも、目的の多くは転売。現地の中国人が利益目的で並んでいる。

 

終わる代理購入と爆買い。今後は越境ECへ

結局、個人の代理購入業者は、ほとんど生きていく余地がなくなった。隠れて細々と続けることは不可能ではないが、SNSスマホ決済のアカウント停止や刑事罰のリスクを覚悟しなければならない。

今まで代理購入で利益を得てきた業者からはため息ばかりが聞こえてくるが、中国電子商務法の狙いは、個人の代理購入業者を排除することにあるのだから、これも仕方がないことだ。個人の代理購入業者では、関税逃れ、偽商品、顧客の個人情報の悪用、トラブル時の責任の所在など、数々の問題が起きていた。中国電子商務法は消費者保護の観点から、越境ECを大手の業者だけに絞ろうという法律なのだ。訪日中国人の「爆買い」はこれで完全に終わる。中国で商品を売るためには、正規のルートで越境ECに出品をするしかなくなる。