中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

宅配便の梱包ゴミ洪水に飲み込まれていく中国の大都市

2016年の中国の宅配便件数は313.5億件、日本の8倍以上にもなる。宅配物流もパンク寸前だが、それ以上に問題化しているのが、宅配便の梱包材のゴミ問題だ。年平均1人が20kg以上の包装ゴミを出していると大洋網が報じた。

 

使用されたガムテープは地球425周分

中国でも、アリババが運営するタオバオ、Tモール、さらにはECサイト大手の京東商城などが人気で、ネット通販を利用する人が急増し、宅配便物流がパンク状態になっている。国家郵政局が2015年に公表した統計によると、宅配便件数が207億件で、その包装に布袋が31億枚、ビニール袋が82.68億枚、封筒が31.05億枚、段ボール箱が99.22億箱使用された。使われたガムテープの長さは169.85億メートルで、これは地球の赤道を425周する長さだという。

中国循環経済協会によると、宅配便件数は2016年に300億件を突破し、2017年には400億件を超えるとみられている。2020年には700億件に達する見込みだ。

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年間300億件以上の宅配便が利用されるが、そのすべてが梱包され、その梱包材がゴミとなっている。このままでは、宅配便ゴミに飲み込まれてしまう都市が現れてくる。

 

宅配ゴミは年一人20kg以上

宅配便の物流がパンク状態となり、すでに郊外ではドローン配送なども始まっているが、物流とともに大きな社会問題になっているのが、包装ゴミのリサイクル問題だ。

深圳市では、毎年一人が平均で172回の宅配便を利用し、毎年一人あたり20.29kgの宅配包装ゴミを生み出しているという。これは深圳市で処理するゴミの、実に40%以上になる。

中国の大都市では、どこでも似たような状況で、物流拠点は荷物に埋もれ、街は包装ゴミに埋もれそうになっている。

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過剰包装が大量ゴミの原因

深圳市の都市環境問題研究機関の報告によると、大量の包装ゴミが生み出される最大の原因は過剰包装だという。ネット通販を利用するのは女性が多く、美容関係の商品がよく売れる。ガラス瓶の場合、小さいものでも、段ボール箱の中に緩衝材を大量に入れる梱包が多い。段ボール箱の大きさを揃えた方が、梱包作業、運搬などが効率化できるため、大きな段ボール箱の中に大量の緩衝材を入れて、小さな商品を発送する。

 

もうひとつの理由がリサイクル率の低さ

すでに再利用できる梱包材、容易に分解する梱包材なども開発されているが、価格が高いために多くのECサイトが、従来型の段ボール箱とビニール袋などを利用する。このような低価格の梱包材のリサイクルは、価格が安いので利益がほとんど出ないため、進んでいない。

ある研究機関の推計によると、宅配梱包材のリサイクル率は10%程度で、段ボール箱ですら20%に達していないという。緩衝材やガムテープなどのリサイクル率はほぼ0であるという。

 

リサイクルの循環回路を確立することが重要

また、多くの人の誤ったリサイクル知識もこの問題を複雑にしている。宅配企業の順豊の包装実験室上級エンジニアの肖志明氏は、大洋網の取材に応えた。「多くの人がビニール素材よりも、段ボール箱の方が環境に優しいと考えています。しかし、紙をつくるには大量の樹木を伐採し、生産過程で大量の廃棄物を出し、環境に与えるインパクトは大きいのです。やるべきことは、リサイクルの循環を確立して、同じ梱包材を何度も再利用することなのです」。

順豊の包装実験室では、すでに複数回再利用が可能な梱包材を開発済みだが、価格が高い(リサイクル循環が確立すれば、1回あたりのコストは安くなる)ため、なかなか使用が広がらないという。

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宅配便の件数が多すぎて、どこの集荷場もパンク状態。遅配、不達なども日常的になっているという。

 

このままでは街が宅配便ゴミに飲み込まれる

中国循環経済協会の廃棄物資源化専門委員会の李海濤服秘書長は、大洋網の取材に応えた。「重要なのは、逆向きの物流体系を構築することです」。政府が主導をして、通常の物流とは逆に流れ、梱包材を回収するリサイクル物流経路を構築する必要があるという。集合住宅やオフィスビルに、回収ポイントを設置し、宅配便業者が、そこに出された梱包材を配達と同時に回収をしていく。必要な費用は、リサイクル基金を設立し、ECサイトの商品に上乗せをして徴収する。

こういった構想は、各都市でも提出されている。しかし、リサイクル基金の設立が進まず、リサイクル率はほとんど上がっていない。

このままでは、1、2年で限界を超え、街に段ボール箱と緩衝材があふれ出すことになるが、有効な対策はほとんど取られていない。

ECサイトと宅配便はより便利になり、農村でもECサイトを利用する人が増え始めている。その前に、宅配便ゴミをリサイクルする仕組みを作らない限り、中国の都市は宅配便ゴミの洪水に飲み込まれてしまう危険性がある。

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中国の都市部では、翌日配送が普通になっている。さらに、当日配送も始まるなど、サービスは急速に向上しているが、その裏でスタッフの重圧は限界を超えている。

 

リニア、無人運転、路面。未来地下鉄の実験場となる北京市

年々延伸される北京地下鉄は、すでに19路線、総延長574kmと、東京の2倍の規模に達しているが、延伸工事はさらに続き、2020年には1177kmになる予定だ。従来は、速く大量にという輸送効率を考えた路線、車両が開発されてきたが、今年からは次世代の地下鉄路線の開通が相次ぐことになると北京日報が伝えた。

 

東京の倍の規模の北京地下鉄

北京市の地下鉄の総延長はすでに東京を上回っている。現在19路線、総延長574km、駅数は345箇所。さらに延伸工事が進んでいて、2020年には30路線、1177kmになる予定だ。1日あたりの乗客数は1000万人を超えると見込まれる。

東京の地下鉄が19路線、総延長301.3kmであることを考えると、北京の地下鉄はおおよそ倍の規模だ(ただし、東京には郊外私鉄があるので、鉄道規模としてはほぼ同じ)。

さらに今年の暮れから来年にかけて、延伸3路線の開通を控え、すでに試験運行が始まっている。

しかも、この3路線がバラエティーに富んでいる。燕房線はなんと人工知能による無人運転地下鉄。S1線は低速リニアモーターカー。西郊線は観光を意識した路面電車とそれぞれに異なった路線となる。北京は、都市鉄道の実験場になろうとしているかのようだ。

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北京地下鉄の路線図。延伸工事は現在でも行われていて、2020年には30路線、1177kmになる。

 

人工知能が運転する地下鉄

燕房線は全長16.6km、駅数9という短い路線だが、人工知能による無人運転列車となる。当初は安全監視員が乗車するが、時機を見て完全無人となり、運転手も車掌も乗車しなくなる。すべての運行管理は運行センターから行われることになる。

この燕房線は、未来の北京地下鉄の実験線の意味合いも持っていて、この燕房線での結果を見て、既存の地下鉄路線も無人運転に置き換えていく。すでに3号線、12号線、17号線、19号線、新空港線無人運転化が計画されている。

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完全無人運転となる燕房線。完全無人運転技術は、北京市地下鉄が最も力を入れて開発していて、他路線も次々と無人化していく計画だ。

 

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現在は、安全のために安全監視員が乗車するが、時機を見て、運転手、車掌のいない完全無人列車になる。

 

地下鉄に向いている低速リニア

S1路線は低速リニアモーターカーだ。8mmから10mm浮いて走行するため、振動はほとんどなく、コインが倒れないほどスムースだという。最高速度は時速120kmで、上海のトランスラピッドのような高速リニアではない。速度ではなく、登坂能力が高い、磨耗部分がないのでメンテナンスコストが安いという都市交通向きのメリットを活かした低速リニアになる。

また、地下鉄リニアということにも意味がある。リニアの分岐部分は、温度変化や日照などによるガイドレールの伸び縮みに神経質にならざるを得ない。厳格な点検、管理をしておかないと重大事故につながりかねないのだ。しかし、地下鉄であれば温度がほぼ一定し、日照もないので、点検、管理が簡素化できる。

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低速リニアのS1路線。接触部分がないので騒音が小さいので、住宅地の高架路線を走る。また、登坂能力も高いので、すでに密に走っている路線を上下に避けながら、路線を新設することが可能になる。

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観光路線に適している次世代路面電車

西郊線は全長9km、最高速度時速70kmの路面電車となる。この路線は、頤和園、植物園、香山という北京市の観光スポットを結ぶ路線で、観光客に車窓の風景も楽しんでもらうというものだ。

北京市も以前は、バス、トロリーバス路面電車で、都市交通をまかなってきた。しかし、人口の増加するとともに輸送効率の面でバスに勝つことができず、地下鉄が建設し始められた1966年に、路面電車はすべて廃止になっている。しかし、エコ、低床、高速といった路面電車の技術改良が進み、郊外路線ではコストなどの面から路面電車が適している地域も出てきている。北京市では、現在、西郊線を含めて、3路線の路面電車を計画、建設中だ。

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西郊線の車両のロゴが面白い。車という字をデザインしている。漢字はもともと象形文字なので、ロゴデザインがしやすい。

 

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頤和園、植物園、香山という北京の観光スポットを結ぶ路面電車、西郊線。道路の渋滞を招くと次々に廃止になった路面電車が、観光電車として復活をしていく。

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次世代の都市交通の実験場となる北京地下鉄

北京市の地下鉄には時刻表というものがない。あるのだとは思うが、どの路線も3分間隔から5分間隔で列車がやってくるので、誰も気にしていない。流入する膨大な人口の移動を支えるため、地下鉄はこれまで効率一辺倒で建設されてきた。しかし、ここへきて、ようやく2100万人の人口の移動を支える体勢が整い、効率とは別のものを追求し始めた。人工知能による無人運転、低速リニア、路面電車とさまざまな新しい形の都市交通技術が試されていくことになる。

世界の美しい地下鉄マップ 166都市の路線図 を愉しむ

世界の美しい地下鉄マップ 166都市の路線図 を愉しむ

 

 

中国のユニコーン企業(2):ofo

自転車ライドシェアのofoは、創業わずか2年でユニコーン企業となった。戴威CEO以下、社員はみな若く、まだまだ伸び代のある企業だ。スタートアップ企業のお手本になる企業だと科技企業価値が報じた。

 

若者たちの手作りスタートアップofo

ofoは、いろいろな意味で若いスタートアップだ。戴威(たい・い)CEOは、まだ26歳、ofoを創業したのは24歳の時だった。そもそもofoという名前がしゃれている。何かの略というわけではなく、単にofoという文字を図として見た時に、自転車に乗っている人の絵に見えるからという理由だ。

若い企業だけに、失敗も多かった。しかし、その失敗でめげずに、ひとつひとつ乗り越え、現在の企業価値は7億ドル(約120億円)と見積もられている企業に成長した。

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▲まだ26歳の戴威CEO。学生のような雰囲気だ。失敗も多かったが、その失敗をひとつひとつ解決することで、現在中国の自転車ライドシェアのトップ企業になった。若い企業だけに、いい意味での“やんちゃ”な施策を次々と打ち出している。

 

世界を理解するのに最も適した自転車

戴威CEOは、北京大学金融工学を学んでいた。当時から自転車が大好きで、北京大学自転車協会に入り、自転車ツーリングを楽しんでいた。

2013年、北京大学を卒業し、大学院に進学する予定だったが、それを1年遅らせて、1年間、青海省大通県東峡鎮で数学の教師をした。

東峡鎮は山の中の山村で、町との間は徒歩で何時間もかかった。戴威CEOはマウンテンバイクを持ち込み、これで町との往復をした。自転車で山道を走りながら、戴威CEOは雄大な景色を眺めていた。「自転車に乗ることが、世界を理解するのにいちばんいい方法だとわかったのです」。

 

シンプルにするため、GPSも電子鍵もつけない

大学院に進学するため北京に戻ると、すぐに自転車ライドシェアビジネスをやろうと考えた。協力する友人も集まった。

戴威CEOは、低コストを徹底することにした。自分たちはで自転車は生産しない。購入だけをして、利用者とマッチングさせる部分に集中する。また、GPSも電子鍵も搭載しない。自転車がどこにあるかは、自転車にGPSを搭載しなくても、利用者のスマホの位置情報から推測できるはずだ。

自転車をIT化するといっても、できるだけ余計な装置をつけたくなかった。自転車はタイヤとチェーンとペダルだけで、人間がこげば、人の力で前に進む。そういうシンプルな道具であってほしかった。

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▲ofoの中国名は「小黄車」。中国の都市ではどこでも見かけるようになった。Mobikeと激しいシェア争いをして、ここ半年はわずかながらofoが上回っている。

 

いきなり盗難、私物化、放置の問題が生じる

しかし、これが裏目に出てしまった。ofoの自転車は、心ない利用者によって私物化される事態が続出することになってしまったのだ。電子鍵ではなく、固定の番号鍵であるということが問題だった。アプリに自転車のナンバーを入力すると、固定鍵の番号が表示される。利用者は、その番号を自転車の鍵に入力して解錠する方式だった。

ofoの自転車を使った人が、ある場所で使用を終了する。すると、自動的に鍵が施錠される。しかし、鍵の番号は変わらないのだから、同じ番号を使って再び解錠し、どこかに乗っていけば、料金を支払わずに使い続けることができてしまう。後は、自分の家の庭や近所に置いておけば、無料で使える自転車になる。

また、小学生が勝手に自転車に乗ってしまうという問題も生じた。中国の道路状況は危険なので、12歳以下は、公道を自転車で走行することができない。ところが、鍵の番号を知っている小学生たちは、勝手に鍵を開けて乗ってしまう。そのような小学生が右折するバスに巻き込まれ、死亡するという事故まで起きてしまった。

 

誰だって、初めてのことは経験をしたことがない

戴威CEOたちは、このような問題をひとつひとつ解決していった。毎回、番号が変わる電子鍵を搭載するようにし、GPSも搭載していった。子供たちが勝手に自転車に乗らないように、下校時の時間に合わせて、小学校近くを巡回するようにした。放置された自転車を回収するチームを結成し、市民ボランティアにも協力してもらうようにした。保険会社も立ち上げて、利用者が自動的に傷害保険に入れるようにした。

その努力が実り、国内が170都市で800万台の自転車を提供する企業に育った。今年7月には、アリババなどから7億ドルの投資を受け、ユニコーン企業となった。創業当初は、ビジネス経験のない若い社員たちであったため、継続を危ぶむ専門家も多かった。しかし、問題を丁寧にひとつひとつ解決していくことで経験不足を補い成長し、いつ株式公開をしてもおかしくないところまで育ってきた。戴威CEOは言う。「誰だって、初めてやることは、未経験。ひとつずつ解決していけばいいだけ」。

今年には、サドルの下に1元硬貨を隠し、宝探しゲームのようなユニークなキャンペーンを行った。若い企業だけに、まだまだ楽しいことをやってくれそうだ。

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復活するシャオミー。中国のアップルではなく、中国の無印商品になりたい

しばらく低迷していたシャオミーが、ここのところ元気だ。iPhone 8よりも先にベゼルレススマートフォンMi MIXを発売し、中国国内で好調に売れている。その雷軍CEOがイエール大学北京校で公演を行い、「中国のアップルではなく、中国の無印商品になりたい」と述べた。その意図はどこにあるのか、36が報じた。

 

奇跡のシャオミーもここ数年は迷走

アップルが世界でスマートフォン革命を起こしたとしたら、シャオミーは中国でスマートフォン革命を起こした。2007年に登場したiPhoneは、翌年のiPhone 3GS発売前後から、世界のITビジネスと生活を変え始めた。しかし、当時の中国人にとっては、iPhoneは高価なスマホであり、一部の富裕層でなければなかなか購入することができなかった。

そのような状況の2010年、スタートアップのシャオミーは、iPhoneと遜色のない性能、遜色のないデザインのAndroidスマホを、iPhoneの半額程度の価格で発売し、中国にスマホ革命を起こし始めた。2015年には、世界での売り上げランキングがアップル、サムスンに続く第3位となり、「シャオミーの奇跡」とまで呼ばれた。

しかし、OPPOやvivoなどのライバルが登場してくると、次第に存在感が薄れていき、ランキング圏外に消えてしまった。すると、シャオミーは家電の製造に乗り出し、炊飯器などを開発するようになる。いずれも価格も手頃でデザインも優れていたことから好評ではあったが、自動開閉雨傘なども発売し、一体何屋なのかわからない状況となり、売り上げも低迷し、企業の方向性も迷走するようになってしまった。

 

iPhoneよりも先にベゼルレススマホを発売

しかし、2016年秋に発売したスマホ「Mi MIX」がヒットした。世界で最初にベゼルレスデザインを取り入れた機種だった。スピーカーの位置などを工夫し、前面はすべて画面という縁なしスマホだ。

雷軍CEOは、このベゼルレスデザインは、2014年の初めから研究をしていたという。それがMi MIXに結実して、シャオミーは再びスマホメーカーとして注目されることになった。改良版のMIX2は、折しもベゼルレスデザインのiPhone Xと発売時期が重なった。それでも雷軍CEOは、圧倒的な自信を持っている。「ベゼルレスデザインはシャオミーがリードをしてきました。関連特許も4806件を保有しています」。

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iPhone Xと同時期に発売されるMi MIX2。ベゼルレスデザインは、iPhone Xよりも先にシャオミーが手がけていた。中国のスマホユーザーは、iPhone Xに斬新さを感じていない。

 

iPhoneと対決する時に輝くシャオミー

面白いことに、以前のシャオミーは、iPhoneに対抗するスマホを発売する企業としてシェアを伸ばしてきた。雷軍CEOは、ジーンズにスカイブルーのシャツというカジュアルなスタイルで発表会に登場し、一挙手一投足までスティーブ・ジョブズを研究し、「中国のジョブズ」と呼ばれ、シャオミーは「中国のアップル」と呼ばれた。

その後、家電製品を開発するようになると、低迷が始まり、再びiPhone Xに対抗するMi MIXで注目を浴びるようになっている。不思議と、iPhoneと対抗する製品を発売すると、シャオミーは輝くのだ。

しかし、雷軍CEOは「中国のアップルになろうとは考えていない」と断言する。「創業した時の想いは、中国の製造業を変えたいということでした。中国人の国産品に対するイメージを変えたいということでした。中国の高いものづくり能力をどう活かせば、世界でトップクラスの製品が作れるか。それを考えていました」。

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▲一時は迷走をして、消えてしまうのではないかとも言われたシャオミーは、ベゼルレスデザインで復活を遂げた。中国のスティーブ・ジョブズと呼ばれた雷軍CEOの表情も明るい。

 

テクノロジー界の無印良品になりたい

シャオミーは、テクノロジー界の無印良品になることを目指しているのだという。「設計を重視し、品質を重視する。たくさんの商品を組み合わせることができる。インターネットを使って、オンラインでも店舗でも同じような購入体験ができる」。そういう企業を目指している。

無印良品ではほとんどすべての生活雑貨が販売されている。決して、過度な高級さないが、品質が高く、デザインも優れている。さらに、その背後にはエコやミニマムという思想があることがわかる。

生活雑貨はすべて無印良品を買うという人も多いだろう。しかし、それはアップルのように熱狂的な“信者”ではなく、無印良品の企業活動を支持する“静かなる支援者”だ。シャオミーは、家電製品、電子製品の世界で、無印良品のような“静かなる支援者”を増やそうとしている。

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イエール大学北京校での雷軍CEOの講演。雷軍CEOは、静かに率直に心のうちを語った。

 

創業してすぐにアップルやサムスンと対決

雷軍CEOは、中国のビジネスの最大の問題は効率の悪さだと言う。メーカーから消費者の手に渡るまで、さまざまな問屋、仲買人の手を経ることになり、その度に利益が乗せられ、消費者小売価格は、品質に見合わない高額になっている。シャオミーが最初にやったことは、この販路をショートカットし、無駄なコストを削減することだった。それが、「広告はしない、定価販売のみ」のネット直販方式につながった。

雷軍CEOは、聴衆の前で創業以来の7年間を振り返った。「創業した時は、10数人のメンバーで3000万元(約5億円)の投資資金で始めました。そんな小さなメーカーが、いきなりアップルやサムスンという世界的な企業と競争をすることになったのです」。

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▲講演後に、イエール大学北京校センター、李恩祐主任からイエール大学のフリースが贈られた。

 

進化すればするほど退屈になるスマホはいったいなんなのだ?

「ベゼルレスデザインの研究を始めた2014年、私はエンジニアたちとあることについて議論をしていました。それはスマホ開発は、やればやるほど退屈になっていくのはなぜなんだ?というテーマです。答えは明らかでした。iPhoneがその後10年のスマホのデザインを決めてしまい、私たちはみなiPhoneという枠の中でスマホを作っていたからです。ですから、未来のスマホを作るには、iPhoneの枠を超えたものを作るしかない」。

そこで出てきたのが、透明の板に必要な時だけ画面が表示される透明スマホと、前面すべてが画面になるベゼルレスデザインだった。その内のひとつ、ベゼルレススマホがMIXとして結実し、シャオミーは復活を遂げた。

後継機種MIX2は、46カ国の市場で販売される。再び、シャオミーの奇跡が起ころうとしている。

 

 

中国の投資動向を決めているBATJ。人工知能とシェアリング経済に集中投資

テンセント科技とIT橘子は、共同して「中国投資領域資金傾向報告」を公開した。それによると、シェアエコノミーに対する投資は依然と強く、さらに人工知能関連への投資も高くなってきたという。

 

雨後の筍創業のステージは終わり、収穫のステージへ

2017年上半期のスタートアップ状況は、創業企業数が大幅に減少をした。一方で、投資利益率は上がっているので、「なんでもかんでも創業」という時期は終わり、有望なスタートアップだけが創業をし、手堅く利益を生み出している状況だと言うことができる。

投資資金では、自動車交通関連が905億元(約1兆5300億円)と目立つ。自転車ライドシェアだけでなく、無人バスや路面電車などの開発も進んでいるため、大型投資案件が増え続けている。ライドシェアサービスの滴滴出行が、55億ドル(約6100億円)の投資資金の調達に成功したことなども話題にもなった。

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▲2016年下半期から起業数は大きく減少した。しかし、投資利益率は上がっており、雨後の筍のように起業する時期が終わり、収穫期に入ろうとしていることがわかる。

 

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▲分野別投資資金額。最大は自動車交通関連で、ライドシェア企業への投資。ただし、滴滴出行に大型投資が行われたことを考慮に入れておく必要がある。単位は億元。

 

人工知能分野では基礎技術に投資が集中

現在、投資が集中しているのが、人工知能とシェアリング経済の2分野だ。人工知能分野への投資を見てみると、件数が圧倒的に多いのが人工知能ロボットの分野。しかし、面白いことに投資金額は自然言語処理クラウド計算に集中をしている。人間と会話ができる人工知能ロボットは、話題になりやすく、スタートアップも数多く登場しているが、それよりも重要なのは基礎技術となる自然言語処理や画像処理、クラウド計算などで、このような基礎技術分野に投資が集中しているのは健全なことで、5年後、10年後に大きな見返りとなって返ってくる可能性がある。

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人工知能分野への投資件数と投資金額。件数が多いのはロボットだが、額が多いのは自然言語処理クラウド計算という基礎技術開発。投資企業が長期展望に基づいて投資判断をしていることが伺われる。

シェアリング経済への投資は一段落

シェアリング経済への投資は、一段落をした。サービス地域をまだ拡大しているシェア自転車に対してはまだ多くの投資資金が流れこんでいるが、その他のシェアリング経済に対しての投資額は少なくなっている。バッテリーや雨傘といった安価なもののシェアリングサービスが増えてきて、大きな投資資金も必要としていないこともある。

シェア自動車への投資金額が突出しているのは、滴滴出行が55億ドルの資金調達をしたことが大きい。

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▲シェアリング経済分野への投資件数と投資金額。シェア自転車とシェア自転車への投資が多い。シェア物流という地味な分野への投資金額が大きいことにも注目しておく必要がある。

 

スタートアップは3年で成功か倒産かが決まる

投資をしたスタートアップ企業が必ず成功するなどという保証はどこにもない。むしろ、倒産してしまうスタートアップの方が圧倒的に多い。その倒産数もだいぶ減ってきた。創業するスタートアップ数も減っているので当然と言えば当然だが、スタートアップの平均寿命も33ヶ月と短期間である状態が続いている。

驚くのは、中国のスタートアップ企業の勝負の速さだ。平均寿命も3年足らずだが、企業価値が5億ドルから10億ドルを超えるユニコーン企業化の平均年数も同じく3年弱だ。つまり、中国のスタートアップは2年から3年で、成功するか失敗するか結果が出てしまうことになる(シリコンバレーではユニコーン化まで平均7年かかる)。このスピード感が、中国の変化の激しさの源泉になっていると思われる。

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▲スタートアップの倒産件数と平均寿命。2015年下半期に大量倒産が生じ、劣悪なスタートアップの淘汰が起きたと考えられる。平均寿命は3年弱と極端に短いが、ユニコーン化への平均年数も3年弱であり、中国のスタートアップは勝負が早いことがわかる。

 

中国の投資動向を決めているBATJの4社

中国の大手IT企業は、百度、アリババ、テンセントの3社。頭文字をとって、BATと呼ばれることがある。このBATの投資動向は、中国のIT業界において、最も重要なニュースだ。投資機関もBATの動向を探りながら、投資先を考えている。

そのBATの投資件数も落ち着きを見せ始めているが、それぞれの企業により、傾向は異なっている。百度は、自社事業と技術的なシナジー効果の得られる分野に投資をする傾向がある。アリババも自社事業とのシナジー効果を狙った投資をするが、技術的シナジー効果というよりは、ビジネス的なシナジー効果を狙う傾向がある。例えば、スマホ決済のアリペイを補完する金融サービスなどに投資を行う。テンセントは、ゲームなど投資分野を定めると、積極投資をして、その分野での支配的な地位を確立しようとする傾向がある。

この違いは、スタートアップの段階別投資を見ると、より明らかになる。百度は圧倒的に発展期のスタートアップに投資をしているが、アリババはバランスが取れている。一方で、テンセントは圧倒的に成熟期の企業への投資が多い。

また、中国内か国外かのデータを見ても、百度は国内外にこだわりを持たず、アリババ、テンセントは国内の企業への投資が多い。

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▲BATと呼ばれる百度、アリババ、テンセントの投資金額推移。百度は額がばらつき、アリババは安定している。テンセントは全体の投資金額の推移とほぼ連動している。3社それぞれに異なる投資戦略を持っていることがわかる。

 

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▲BATがどのステージの企業に投資をしているか。百度は発展期の企業に集中し、アリババはバランスよく、テンセントは成熟企業に投資をしている。

 

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▲BATの国内投資、国外投資もそれぞれに特色が現れている。百度は国内外問わず、アリババとテンセントは国内中心だ。同じ投資でも、3社は考え方がそれぞれに異なっている。

 

中国の投資はBATJを中心に回っていく

この報告のデータを見ると、中国のITビジネス革命はかなり落ち着いたステージに入ったことがうかがわれる。発芽期が終わり、今後は次第に収穫期に入っていくと思われる。中国のIT業界は、百度、アリババ、テンセント(それに加えて京東をあげる人もいる)のBATJの4社を中心に、しばらくは回っていくことになるだろう。

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ジオフェンス駐輪場は、ライドシェア自転車問題を解決する切り札になるか

中国でますます拡大する自転車ライドシェア。市民の手軽な足として利用が広まるとともに、放置自転車の問題も拡大している。各ライドシェア企業は、放置自転車対策の切り札としてジオフェンス駐輪場の試験導入を4月から始めた。しかし、新浪科技は、実地調査した結果、ほとんど効果が上がっていないと報じた。

 

最後の1kmの足となった自転車ライドシェア

中国都市部の自転車ライドシェアは、すっかり生活に定着をした。中国の都市部は1ブロックが大きく、地下鉄の駅からだと10分以上歩く場所が少なくない。バス利用が便利だが、渋滞が日常化しているため、時間が読みづらい。そこで「最後の1kmの足」として自転車ライドシェアが定着をした。

ライドシェアサービスにユーザー登録をすると、アプリの地図上に付近の空き自転車が表示される。自転車のところに行き、使用を開始すると、電子鍵が解錠して、利用できるようになる。料金は30分1元程度だ。目的地に着いたら、駐輪禁止地域でなければどこでも乗り捨てが可能。アプリで使用終了をタップすると、自動的に施錠され、スマホ決済で料金が支払われる。

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放置自転車の問題が各都市政府を悩ませている

一方で、社会問題も引き起こしている。最も大きな問題は、放置自転車だ。乗り捨て自由であるために、駐輪禁止地域でも平気で乗り捨てをしてしまう人もいる。また、歩道の狭い部分に停めたり、車の通行の妨げになるような停め方をしてしまう人もいる。

各ライドシェア企業では、回収班を巡回させ、そのような問題のある自転車をトラックに乗せ、地下鉄駅など利用者が多くいる場所に移動させたりしているが、回収が追いつかないのが現状だ。

市政府も放置しておくことができず、駐輪場を整備するとともに、駐輪禁止区域を拡大し、違法駐輪の自転車は積極的に回収するなどの措置を取るところも出てきている。また、自転車ライドシェアの営業そのものを禁止する市まで登場している。

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▲このようなひどい光景がたびたび報道される。交通の妨げになるところに、ライドシェア自転車が乗り捨てられてしまうために、近所の人や行政が通路を確保するために仕方なく自転車を積み上げたもの。

 

切り札のはずのジオフェンス駐輪場の効果が上がっていない

このような自転車ライドシェアの問題を解決するものとして登場してきたのがジオフェンス駐輪場だ。指定された駐輪場にビーコンを埋め込み、各自転車がジオフェンス内であるかどうかを感知する仕組みだ。ジオフェンス内に駐輪した場合、さまざまな優待を与えることで、駐輪場に停めることを促すねらいだ。

しかし、新浪科技の調査によると、優待の仕組みが的を射ていないため、ほとんど効果が上がっていないという。

 

意味がない優待施策により、駐輪場はガラガラ

新浪科技が調査をしたのは、北京市内の4カ所のジオフェンス駐輪場。世茂工三北門(Mobike専用)、崇文門地下鉄駅(ofo専用)、幸福村中路(共用)、玉橋中路(共用)だ。

Mobike専用の世茂工三北門ジオフェンス駐輪場は、驚いたことに駐輪場内に1台の自転車も停められていなかった。その代わりに、駐輪場の外に10台ほどの自転車が放置されている。Mobikeでは、すでに北京、上海、広州、深圳の4都市に同様のジオフェンス駐輪場を4000カ所設置していると公表しているが、これではほとんど効果が上がっていないことになる。

ジオフェンス駐輪場に停めると、次回利用できる優待クーポンがもらえることになっているが、Mobikeではすでに月極め使い放題のメニューを用意し、これが好評で、多くのユーザーが月極め利用をするようになっている。そのため、優待クーポンをもらっても意味がないのだ。多くのユーザーがジオフェンス駐輪場を意識することなく、自分が便利な場所に自転車を停めていると推測される。

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▲世茂工三北門では、ジオフェンス駐輪場には自転車はなく、その周囲に何台かの自転車が放置されていた。ジオフェンス駐輪場に停めた場合の優待策が弱いために、利用者はジオフェンス駐輪場を無視して停めてしまうからだ。

 

信用ポイントが増加するジオフェンス駐輪場

ofo専用の崇文門地下鉄駅前ジオフェンス駐輪場には、それなりの数の自転車が停められていた。アプリ上でも、「推薦駐輪場」と表示され、「信用ポイント+2点」と表示される。ここに停めると、各ユーザーの持ち分である信用ポイントが上昇する仕組みで、一定ポイントを超えると、利用料が割引になるなどの優待が与えられる。

ところが問題は、現場に「駐輪場。バイクは駐輪禁止」と書かれているものの、ofoの文字がどこにも書かれていないことだ。そのため、ofo利用者がアプリ上でジオフェンス駐輪場を見つけて停めようとしても、果たしてここでいいのかどうか戸惑うことになる。また、本来はofo専用であるのに、そのことが明記されていないため、関係のない自転車も停められていた。

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▲崇文門地下鉄駅前ジオフェンス駐輪場。駐輪すると、信用ポイントが追加されることもあって、よく利用されているが、ofo専用駐輪場である案内がないために、いろいろな自転車が停められてしまっている。

 

案内がまるでない謎空間になっている駐輪場も

北京市も公共のジオフェンス駐輪場を設置している。幸福村中路では、自動車用のパーキングメーターを撤去して、その跡を自転車用のジオフェンス駐輪場にしている。ところが、なんの説明もなく、ただビーコンを地面に埋め込んでいるだけなので、誰もなんのスペースなのかがわからない。自転車が停まっていないことはもちろん、自動車も停まっていない。パーキングメーターがないので、そこに停めてしまうと駐車違反になってしまうからだ。

近所の人に聞くと、「自転車が停まっているのを見たことがない。時々、近くの工場の人が自動車を短時間停めているぐらい」だと言う。

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▲幸福村中路の北京市の公共ジオフェンス駐輪場。元自動車のパーキングメーター駐車場に、ジオフェンスセンサーを埋め込んだだけで、駐輪場であることの案内がどこにもない。そのため、「謎の場所」になってしまい、誰も利用しない空間になってしまっている。

 

利用者がいないところにもジオフェンス駐輪場

玉橋中路も北京市が設置したジオフェンス駐輪場だ。ここにも1台も停められていない。驚くのはすぐ近くの地下鉄駅前には、ofoでもMobikeでもない通州公共のライドシェア自転車が大量に停められていた。通州公共は、ofoやMobikeのような多都市展開をしている自転車ライドシェアではなく、北京市ローカルのサービス。地下鉄の駅前に停められていることが多い。

この場所では、通州公共の自転車が大量にあるために、ほとんどの人が通州公共を利用し、ofoやMobikeを利用していないようだ。

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▲玉橋中路では、ジオフェンス駐輪場には自転車が止まっていないのに、近くの地下鉄の駅前広場には通州公共のシェア自転車が大量に並ぶという不思議なことになっていた。

 

まだまだ改善が必要なジオフェンス駐輪場

新浪科技の結論としては、ジオフェンス駐輪場の案内が不足しているために、利用者が見つけづらいことと、ジオフェンス駐輪場に誘導する優待制度が弱いことが問題になって、利用率が上がっていないとしている。

ジオフェンス駐輪場をアプリ内の地図だけで表示するのではなく、現地にofoやMobike、北京市のジオフェンス駐輪場であるということをしっかりと明示することが必要だ。

また、ジオフェンス駐輪場を利用した場合に、優待クーポンの配布などという弱い優待ではなく、むしろジオフェンス駐輪場以外に駐輪した場合は、駐輪費を追加徴収するなどの施策が必要になってくるのではないかとしている。

しかし、自転車放置問題を解決する切り札はやはりジオフェンス駐車場であり、適切な誘導、案内、優待策が取られるようになれば、放置自転車問題は解決していくはずだともしている。

 

ネットアイドルたちの拠点、武漢市に誕生

中国のネットで活躍するスターたちーー網紅。その網紅が集まる拠点が誕生した。場所は武漢市の花博滙。花をテーマにしたテーマパークの中だ。敷地内にスタジオなどを作り、網紅たちが動画を発信していく拠点に育てていくと人民網が報じた。

 

年収数十億円を超えるネットのスターたちーー網紅

網紅というのは、動画共有サイトで動画を発信し、多くのネット民から支持を受けているスターたち。トップクラスの網紅になると、年収は数十億円を超え、今では、若者たちはテレビや映画よりも、ネットでスターになる道を選ぶようになった。

海外でのユーチューバーたちと同じだが、中国の網紅たちは、少し毛色が違う。ただ好感度が高いだけの人気者は生き残っていくことができず、なんらかの”実力”が必要とされる。例えば、トップクラスの網紅の中には、ビジネス講座の講師や予備校教師なども顔を連ねる。講座をネット動画で配信し、大きな利益を得ているのだ。
 

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▲芸術村には、中国全土から網紅たちが招待され、ここから動画中継も行われた。

 

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▲網紅のイベントも開催された。今後もこのようなイベントが次々に開催されるという。

 

1枚の写真から有名になったシンデレラ、ミルクティーの妹

例えば、まったくの偶然から網紅となったスターがいる。嬭茶妹妹(ミルクティーの妹)と呼ばれる章沢天(しょう・たくてん)は、たった1枚の写真で網紅になったシンデレラガールだ。

高校2年生の時に、同級生が章沢天を撮影した写真を無断でネットに公開した。すると、そのミルクティーを手にした章沢天の写真が清純だと、中国全土で大人気となった。章沢天は「ミルクティーの妹」と呼ばれるようになり、一夜にして網紅になってしまい、メディアの取材が殺到した。

しかし、大学受験を理由に取材の多くを断ったため、それが希少価値を生み、ネットでの人気がさらに加熱した。2年後、章沢天は北京市清華大学にみごと合格する。北京大学や上海の交通大学、復旦大学などと並ぶ超難関校だ。

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▲章沢天を一夜にして有名にした写真。この写真がSNSで猛烈に拡散し、ミルクティーの妹として有名になった。

 

可愛いだけじゃなく、実力もなければ網紅にはなれない

大学3年生の時、南京電視台のインターン実習生となり、翌年にはマイクロソフトインターン実習生となり、この頃から再びメディアに露出をするようになる。清華大学卒業後は、チャリティ番組などの司会を中心に活動するようになり、ECサイト大手「京東」の劉強東CEOと結婚。劉強東CEOは、中国の富豪番付にもランキングされるお金持ちで、章沢天はたった1枚の写真から玉の輿に乗ったことになる。

しかし、「ミルクティーの妹」の写真が話題になった時、メディアに露出をし続けていたら、おそらく早々に世間の話題からは消え去っていたことだろう。多くの人が章沢天を支持するのは、受験のためにメディア取材を拒否する、清華大学に合格する、著名企業のインターン実習生になるなど、努力をし、結果を出しているところなのだ。中国ではそういう“努力を積み重ねた人”でなければなかなか評価されない。

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▲章沢天にはメディアの取材も殺到したが、受験勉強を優先、みごと清華大学に合格する。大学時代は、著名企業のインターンとなり、現在は京東のCEO夫人。こういう結果を出す人が、中国では人気が出る。

 

再生回数方式のユーチューブ、投げ銭方式の中国の動画共有サイト

それがいいことか悪いことかはまた別の話だ。まったく努力などしない人間が、くだらないことをやっている姿を見る方が、娯楽としては楽しいと感じる人もいる。日本のユーチューバーの多くは、影で努力をしても、それを見せずに能天気な人間を演じている。

中国の網紅の世界がこのような実力主義になっているのは、そのビジネスモデルの違いによる影響も大きい。

ユーチューブなどの利益の源泉は広告表示であるため、再生回数に比例して収入が増えていく。そのため、中身はどうでもいいからたくさん再生された者が勝ちということになる。どれだけ内容が素晴らしくても再生されないことには意味がない。

しかし、中国の動画サイトは投げ銭方式だ。視聴者が、その動画が面白いと感じたら、スマホ決済で、配信者に任意の額のお金を送ることができる。これが網紅の収入の源泉となっている。そのため、ただ「動画が見たくなる」だけではだめで、「財布を開きたくなる」なにかがなければならない。そこに網紅たちの独特さがある。

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花のテーマパークに誕生した網紅たちの活動拠点

武漢市の花博滙に新設された網紅の活動拠点は、「DAMARA VILLAGE 顔値+芸術村」と名付けられた。DAMARAはアフリカのナミビアのダマラ族のこと。舌打ちのようなクリック音で会話するという独特の言語を持っている。顔値は顔の値のことで、イケメンと美少女のことを指す。

この芸術村には、小劇場やメイド喫茶などの他、中継スタジオなども新設され、そのお披露目には約100人の網紅が集まった。著名網紅が、この芸術村を拠点に活動するかどうかはわからないが、若い網紅が登場する拠点として、アイドルが登場する拠点として育っていく可能性はありそうだ。

武漢市では、花博滙をただの花のテーマパークとしてだけでなく、こういった芸術文化面のテーマパークとしても育てていきたいとしている。

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武漢市の花博滙。ヨーロッパ風のお花畑のテーマパークだ。ここに網紅たちの活動拠点が作られた。

 

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▲夜は、お花畑がライトアップされ、観光客も自撮りを楽しんでいる。中国の自撮り文化は、子供達の間にも広がっている。