中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

安徽省で開催された科学普及博覧交易会(ロボット展)がなんだか変な方向に

2019年5月に安徽省蕪湖市で開催された中国科学普及博覧交易会が、年々おかしなことになっている。本来は最先端テクノロジー製品の展示会なのだが、ロボット恋人が人気となり、今ではロボット恋人だらけの展示会になっていると蕪湖新聞網が報じた。

 

科学普及博覧会がなぜかロボット恋人博覧会に

2019年5月下旬に、安徽省蕪湖市で開催された第9回中国(蕪湖)科学普及博覧交易会が年々おかしな方向に進み始めている。本来は、最新のデジタル製品の展示会だったのだが、ロボット恋人が出品されて話題となると、続々とロボット恋人が集まり始め、現在ではほとんどロボット恋人の展示会のようになっている。

最も価格が安いものでは1980元(約3万円)というものもあるが、今年話題になった「菲菲」(フェイフェイ)は6万8000元(約104万円)もする。

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▲コンパニオンのコスプレで展示をされていた菲菲。6万8000元(約104万円)から。

 


机器人女友菲菲

▲「彼女の登場で、味気ない生活が変わる」と題した菲菲のプロモーションビデオ。一部、不快な映像または爆笑する映像が含まれています(R18的な表現はありません)。

 

なぜか四川語や日本語まで話すことができる菲菲

この菲菲は、深圳全智能機器人科技が搭載した人工知能搭載のコンパニオンロボットAI-RQ01-T005-C008。このロボットは言葉を話すことができる。それも日本語、英語、中国語の3カ国語だけでなく、中国の方言である粤語、四川語も聞いて理解することができる。

唇は少しか動かないが、尋ねれば今日の天気や気温を答えてくれる。スマートスピーカーなどに搭載されているAIアシスタント程度の会話ができるようだ。WiFi接続をすると、物語を語ってくれたり、小話で喜ばしてくれたり、歌を歌ったりする。

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▲菲菲も展示内容を説明するなど、展示会の仕事をしている。

 

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▲会場では、なぜかロボット恋人と記念写真を撮る人が続出。

 

肌の温度は37度。触ると温かみのあるロボット

ボディはTPE(熱可塑性エラストマー)素材でできている。ゴムとプラスティックの中間のような素材で、人肌のような柔らかさを出すことができる。電源ケーブルや通信ケーブルのコネクタ部などにも使われている素材だ。内部からヒーターで暖められ、皮膚は常に37度程度に温められている。電源はUSBケーブルで供給する。

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▲室内に座る菲菲。内部ヒーターにより、肌は37度に加温されている。

 

身長、頭部などは選択可能。髪型もカスタマイズ可能

身長は158cmバージョン(体重22kg)と165cmバージョン(体重34kg)の2つが用意されている。頭部は9バージョンから選ぶことができ、身長、スタイル、肌の色、髪型などは別途カスタマイズに応じる。

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▲頭部は9種類から選択可能。肌の色も選択可能だ。

 

空輸用とソファ型の専用収納ケースも(別売)

また、収納ボックスとして、空輸可能なケースとソファにもなるケースが別売されている。

展示会で、説明員は、現在主に日本で売れていると説明しているという。日本でどうやって購入できるのかはわからないが、興味のある方は1台買ってみたらいかがだろうか。

中国では、結婚難が続いていて、特に「結婚できない男性」の問題がじわじわとクローズアップされている。菲菲が話題になるのも、こういった社会事情と無関係ではない。

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▲別売で、空輸可能なケースと、ソファに見えるケースも用意されている。

 

中国の宅配物流を変えるかもしれない自動運転販売車

 

福州市にオープンした5G AI公園に登場した自動運転の自動販売車が話題になっている。手を挙げると自動的に止まって、飲み物などが買えるというもの。開発元の新石器科技では、自動運転の配送車も開発していて、3年程度で宅配の末端物流が自動運転化される可能性が見えてきたと半斤瓜子が報じた。

 

福州市にも百度のAI公園がオープン

2019年4月に、福州市の飛鳳山公園が、5G AI公園としてリニューアルオープンした。基本的にはすでにオープンしている北京市海淀公園のAI公園と同じで、百度の自動運転プラットフォーム「アポロ」をベースにし、百度とアモイ金龍が共同開発したL4自動運転バスが園内を走っている。また、海淀公園で人気だったAR太極拳も設置されている。これは自分たちの映像の上に太極拳の人型ガイドがオーバーラップして表示されるというもの。ガイド通りに動くことで太極拳を学ぶことができる。

また5G智能公園全域を5G電波がカバーしているため、公園内で5G通信を体験することができる。

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▲AI公園としてリニューアルした福州市の飛鳳山公園。人気はやはりAR太極拳。モニター上に表示される人型のガイドに合わせて動くことで、太極拳を覚えられるというもの。

 

注目される新石器科技の自動運転販売車

この飛鳳山公園に、新しく登場したのが、自動運転自動販売車だ。これも百度の自動運転プラットフォームをベースにし、新石器科技が開発した。

この販売車は園内の固定路線を無人運転で巡回している。人が前にいると、避けるか止まるかをする。しかし、人が販売車に向かって手を挙げると目の前に止まってくれる。タッチパネルから飲料などの商品を選んで、スマホ決済をすると、商品が出てくるという動く自動販売機だ。

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▲飛鳳山公園内を走る自動運転販売車。人がいると避ける、止まる。手を挙げると、目の前にきて止まる。

 

人は巡回せず、自販機が巡回する

この自動運転自動販売車は、公園の自動販売機としては非常に優れている。固定式の自動販売機を設置すると、景観を乱すだけでなく、商品補充や管理などのために人が巡回をしなければならなくなる。しかし、自動運転自動販売車であれば、園内の拠点に帰ってきたときに商品を補充すればいいのだ。

広い敷地に工場や研究施設等をもっている企業の中にも、この自動運転自動販売車を採用しているところがある。この場合、固定路線を巡回するのではなく、工場の休憩時間に入り口付近にやってきて停車をするというパターンが多い。昼休みと休憩時間で必要とされる商品が異なるので、いったん拠点に戻って、商品を入れ替えて、所定の位置に自分で移動をする。

この自動運転自動販売車を導入すると、広い工場内に購買部を1箇所設置するだけで、全棟に商品を提供できるようになる。

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▲右側のタッチパネルで飲み物やスナックを購入することができる。支払いはもちろんスマホ決済。

 

自動運転の短距離配送車も活用が始まっている

新石器では、販売車だけでなく、バリエーションとして短距離配送車も製造している。これもすでに企業導入されていて、郵便物や荷物を配送するものだ。到着すると、受取人のスマートフォンにプッシュ通知がいくので、スマホを鍵にして開けて、荷物を受け取る。つまり、自動運転宅配ボックスだ。

現在は、企業内、大学内、公園内といった閉鎖区間内での運用のみだが、新石器は路上での運用を狙っている。

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▲新石器科学技術が開発した自動運転自動販売車。百度の自動運転プラットフォーム「アポロ」をベースにし、固定路線を巡回する。自動販売機だけではなく、宅配の配送拠点から家庭までを配送する「動く宅配ボックス」としての活用に注目が集まっている。

 

パンク寸前の末端物流に自動運転配送車を

中国では1日あたり、2億個の宅配便が配送されている。2013年から比べると5倍になっているが、配送員の数は2倍弱にしかなっていない。これが大きな問題になっている。配送拠点から各家庭までの5km以内の末端配送は、2兆元から3兆元(約46兆円)規模の市場だが、約4000万台のオート三輪、小型車で配送されている。新石器はここに自動運転宅配ボックスである短距離配送車を売り込みたいと考えている。

 

突発事態には、5Gによる監視でリモート制御

問題は、この自動運転配送車は、L4自動運転車であるということだ。L4は「一定条件下の無人運転」であるために、突発的に条件から外れる事態が起きた場合は、人が介在して緊急対応をする必要がある。乗用車などでは、人が運転席に座り、いざという場合は人がハンドルを操作する。

短距離配送車に人が乗るのであれば意味がないので、リモート監視をして、緊急時にはセンターからリモート制御をすることになる。しかし、4Gでは300ミリ秒程度の遅延が起きるので、緊急制御が難しい面があった。しかし、5Gになると遅延はわずか10ミリ秒程度になる。

5Gを利用することで、短距離配送車が路上を走る可能性が出てきている。

 

短距離無人配送車は「走る宅配ボックス

短距離配送車の路上走行は、5G通信が街中をカバーし、試験走行を行ってから実戦投入となるので、まだ時間がかかるが、大型マンションなどの閉鎖敷地内では5G通信がカバーされていれば、現在でもすぐに投入ができる。

宅配便配送員は、マンション内の各戸に配送するのではなく、マンション内に待機している短距離配送車に荷物を預ける。短距離配送車はマンション内を巡回して、各戸にプッシュ通知を送りながら、荷物を取りにきてもらう。宅配便配送員は、すべての荷物を宅配ボックスに届けるのと同じことになり業務効率があがる。各戸の利用者は、マンション入り口の宅配ボックスではなく、宅配ボックスの方から自分の棟の下まできてくれるということになる。

この無人短距離配送車が普及をすると、末端物流は大きく変わる。

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▲新石器科技は、江蘇省常州市に、年間3万台の生産能力がある工場を新設した。3年から5年でフル生産になる見込み。自動運転自動販売車だけでなく、自動運転配送車としても利用が見込まれている。

 

すでに量産を始める新石器科技。3年で無人配送が始まる

新石器科技では、5月に江蘇省常州市武進高新区に、年間3万台の生産能力がある量産工場をオープンした。すでに200台の注文が入っていて、年内には1000台の注文が獲得できる見込み。3年から5年以内に、フル生産に入るとしている。

多くの識者が、現在の末端物流は3年以内に人手不足で破綻をするか、無人配送の普及が始まるかのいずれかであると述べている。あと数年で、中国の末端物流は無人配送の時代に入っていくかもしれない。

 

無料貸し出しでも返却率は95%以上。中国人自身が驚く、中国人の民度の改善ぶり

スマホ決済「アリペイ」が、4都市で商品を無料貸し出しを行う社会実験を行った。4年前の返却率は63%だったが、今回の実験では95%以上となり、中国人の信用に対する民度が劇的に改善されていると経済視野網が報じた。

 

無料貸し出し実験。返却率は95%以上

スマホ決済「アリペイ」が面白い社会実験を4都市で行った。それは、玩具や雨傘などを誰でも持っていけるように、街中の棚に置き、無料貸し出しを行う。さて、何人ぐらいの人がちゃんと返しにくるだろうかというものだ。

実験は、鄭州、上海、成都、東莞の4都市で行われたが、結果は95%の人がちゃんと返しにきた。東莞では100%の人がちゃんと返しにきたというのだ。

 

https://www.bilibili.com/video/av54764671/

▲4都市で行われた社会実験の様子。ノートに名前と連絡先を書くだけで借りることができるというもの。返却時間に間に合わなくても、連絡をしてくる、バイク便で返却するなどで、返却率は95%以上になった。

 

4年前の返却率は62%。民度の向上に寄与した「芝麻信用」

4年前、アリペイは似たような実験を行なっている。この時の返却率は62%にすぎなかった。1/3以上の人が、返しにこなかったのだ。

この違いは、間違いなくアリペイの芝麻信用(ジーマクレジット)信用スコアが影響している。

芝麻信用は、「身分特質」(社会的地位や高級品の消費量)、「履約能力」(支払い、返済履歴)、「信用歴史」(クレジット利用歴)、「人脈関係」(知人の信用スコア)、「行為偏好」(消費行動の傾向)の5つの観点から、個人の社会信用スコアを最低350点から最高950点まで算出するもの。高得点になると、ホテルのデポジットが免除されたり、ビザの取得申請、出国手続きが簡略化されるなどの特典を受けることができる。

この社会スコアは、行動をとるたびに少しずつ変化をしていく。ゴマ粒を集めるようにして作る信用スコアなので「芝麻」(ゴマ)というネーミングになっている。具体的にどのような行動をすると、どの程度スコアが上下するのかは非公開だが、支払いや分割払いの返済をきちんとすることが高得点に結びつくことは明らかで、中国人の社会信用のあり方を大きく変えたサービスとも言われている。

4年前には、1/3以上の人が、勝手に商品を持って行ってしまったのに、芝麻信用がある現在では、ほぼ100%の人がきちんと返却をしにくるという結果が出て、改めて芝麻信用による中国社会の変貌ぶりが明らかになり、当の中国人ですら驚いている。

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▲4年前にも同様の実験が行われている。この時の返却率は62%だった。1/3の人は返しにこなかった。

 

バイク便を使って返却する人も

鄭州では、幼稚園の前に玩具を並べた棚を置き、借りたい人は名前をノートに書くだけで24時間借りられるという実験を行なった。朝7時から実験を始めると、続々と子供たちが集まってきた。中には「借りるってどういうこと?買うのとは違うの?」と尋ねて、他の子どもが「借りるということは返さなければならないということだよ」と教えている微笑ましい情景もあった。

成都では、雨傘を並べた棚を街頭に置いた。都合よく雨が降り始めたため、観光名所ともなっている春熙路を歩いている人たちが続々と傘を借りにきた。これも名前をノートに記入するだけで借りることができる。夕方の返却時間になってもまだ雨が降っていたが、多くの人が自分の傘をどこかで手に入れて、借りた傘を返しにきた。成都に観光にきていたあるカップルは、ここで雨傘を借りたが、帰りの列車の時間ギリギリになってしまい、返しにくることができなかった。しかし、二人はわざわざネットでバイク便を探し、駅から春熙路まで傘を配送した。

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鄭州市では、幼稚園の前に子どもの玩具を提供した。すぐに子どもたちが見つけ、多くの子どもが集まってきた。返却率は100%だった。

 

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成都市では雨傘を提供したが、列車の時間に間に合わなくなった観光にきたカップルは、わざわざバイク便を使って返却をした。

 

返却時間が遅れても、事前に電話連絡をしてくる

東莞では、マッサージ機や美容家電の貸し出しを行った。近くの工場に勤める女性たちが集まり、38個の商品が借りられらたが、夕方の返却時間までに返ってきたのは34個だった。3個は約束の時間を数分遅れて返しにきた。1個は未返却だった。しかし、ポスターに記載していた電話番号に電話がかかってきて、「カーラーを借りたものですが、忙しくて返しにいく時間がない」と告げて、30分返却時間を延ばしてほしいと頼んできた。そして、30分後にその女性はカーラーを返しにきた。

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▲東莞市では、美容器具の貸し出しを行った。近くの工場で働く女性たちが借りにきたが、返却率は100%だった。

 

わずか4年で、急速に高まった中国人の民度

今回の実験では、借りるときにノートに名前と連絡先を記入するだけで、返さなかったからといって信用スコアが下がるようなことはない。しかし、信用スコアが広まるにつれて、「借りたものは返す」「約束の時間は守る」という習慣が根付いてきている。雨傘、モバイルバッテリー、自転車などジーマクレジットと連動させるレンタルサービスでは、返却率が99%を超えている。

わずか4年の間の変貌ぶりに、当の中国人も驚きをもって、このニュースを受け止めている。

 

ポケットにも入るワイヤレス洗濯機。キックスターターに登場

深圳のOmiSonicがキックスターターに、どんなものでも洗える超音波洗浄デバイスが話題になっている。バッテリー駆動、Bluetooth接続であるため、アウトドアや旅行にも持っていくことができ、その利便性からすでに9000個程度の予約が入っていると設計癖が報じた。

 

ポケットサイズのワイヤレス洗濯デバイス

ポケットにも入るサイズの洗濯機が話題になっている。これは超音波洗浄機で、同様の製品はいくつか発売されているが、このOmiSonicは世界で初めてのワイヤレス超音波洗浄機であり、電源コンセントの位置を考えることなく洗浄ができる。

キックスターターに登場して、目標金額の10万香港ドル(約140万円)をわずか6時間で達成。現在、約150万香港ドル(約2100万円)が集まっている。

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▲使い方はボールなどに水を入れて、OmiSonicと洗うものを入れるだけ。動作はスマホから。専用の紙状の石鹸もある。

 


OmiSonic - World's First Wireless Ultrasonic Cleaning Tool

▲OmiSonicのデモ映像。さまざまなものが洗濯、洗浄でき、胸ポケットに入るサイズであり、バッテリー駆動なので、旅行やアウトドアにも持っていける。

 

衣類や下着だけでなく、野菜やメガネ、食器も洗える

完全ワイヤレスで、洗いたいものと一緒にボウルやバケツなどの中に入れ、専用のペーパー状の石鹸を投入、スマートフォンから操作をする。

衣類や下着だけではなく、手洗い必須のセーターなどもOK。さらに、野菜や果物、食器、玩具、メガネ、アクセサリーなど多くのものが洗える。衣類であれば、最高4.4ポンド(約2kg)まで洗える。

バッテリーは3000mAh容量のものを搭載して、標準的な洗浄(0.5kgのものを30分)であれば、満充電で5回程度可能だ。また、一般的な洗濯機に比べて、水は1/15、エネルギーは1/40で同等の洗浄効果があるという。

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▲OmiSonicで洗えるもの。超音波洗浄なので、複雑な形状のものは手で洗うよりもきれいになる。

 

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▲アウトドアでは、食品を洗うことができる。

 

出張やアウトドアなど用途は広い

特に注目されているのが、旅行やアウトドアだ。胸ポケットに入るサイズなので旅行に持っていけば、ホテルで下着などを洗面台などに入れて洗うことができる。さらに、アウトドアでは鍋の中に食材を入れて洗うことができる。

価格は165香港ドル(2300円)と安く、これも人気の理由になっている。集まった資金から計算すると、すでに9000個以上の予約注文が入っていることになる。生産は2019年9月から始まり、10月から出荷が始まる予定だ。

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▲胸ポケットにも入るサイズなので、旅行やアウトドアにも気軽に持っていける。

 

キックスターター経由で、最初から世界市場を狙っているOmiSonic

このOmiSonicを開発したのは、深圳市のスタートアップOmiSonic。デビット・シュー、アンソニー・リーの2人が創業し、ここにエンジニアのマーティン・チェンが加わっている。3人は洋風の名前を持っているが、写真を見る限り中国人だ。このOmiSonicがユニークなのは、オフィスや製造拠点が深圳にあるのに、中国市場を狙うのではなく、キックスターターを使って最初から世界市場を狙っている点だ。そのため、製品情報やキャンペーン情報も中国語情報のものはなく、すべて英語情報になっている。

これはAnkerとよく似ている。Ankerの創業者は、元グーグルのエンジニアだった陽萌が湖南省長沙市で設立した湖南海翼電子商務だが、最初からアマゾンを利用し、モバイルバッテリーなどの製品をワールドワイドに販売をして成功をした。

OmiSonicが2019年10月に出荷が始まり、成功をすれば、このような「最初から世界市場」の流れが加速することになる。

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▲深圳のOmiSonicの工場。予約数は非公表だが、キックスターターに集まった資金から考えると1万個程度の注文が入っていると推定できる。

 

刑務所の中でもEC通販。指紋認証決済で翌日配送。社会復帰意識を持たせる効果が狙い

広東省広州市従化区にある広東省従化監獄で、受刑者のためのネット通販システムがスタートした。刑務官の業務負担を減らす他、受刑者に早期の社会復帰に対する意識を持たせる狙いもあると南方都市報が報じた。

 

刑務官の業務負担を減らし、社会復帰を促す刑務所内ECの導入

受刑者といっても、社会との繋がりがまったく絶たれているわけではない。以前から、受刑者が買い物をできる制度はあった。申請書に商品名を書いて申請をし、刑務官が問題のある商品でないかどうかをチェックして、業者に発注をする。商品が届くと、刑務官が開封をして、余計な通信文や品物が入っていないかどうかをチェック、さらにX線検査をして内部もチェックする。注文をしてから、受刑者の手に届くまで10日から20日かかるのが普通だった。

今回、従化監獄がネット通販システムを導入したのは、ひとつはこのような刑務官の業務負担を減らすためだ。もうひとつは、今、中国社会では、「ECで注文すれば翌日には配送される」という便利さを受刑者に実感させ、早く社会復帰したいという意識を持たせ、同時に社会復帰後の戸惑いを減らす狙いがある。

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▲EC端末は各管理区ごとに1台置かれている。利用をできるのは月1回のみ。みな、きちんと整列して順番を待っている。

 

指紋認証だけで決済までできる便利さ

EC端末は全体で52台が設置され、各管理区の各フロアに1台ずつ設置されている。いつでも利用できるわけではなく、利用できるのは月に1回と定められている。

刑務所に入る時点で、指紋データが登録されているので、EC端末に指で触れるだけで自動ログインでき、決済も指紋認証で行われる。

購入できるものは、シャンプー、靴、シャツ、飲料、副食品、ペン、便箋などで、68種類、200品目。特に、以前は購入できなかったペプシコーラが買えるようになったことが好評だという。一人平均の購入額はで毎月300元(約4700円)にもなる。

強盗罪で11年の刑で服役している王俊(仮名)は、南方都市報の取材に応えた。「日用品と食料品が買えます。価格も高くなく、以前よりも安くなったぐらいです。食事の時に食べるお惣菜を買っていますが、以前と比べてメーカーや味付けを選べるようになりました」。

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▲購入できるのは68種類、200品目。日用品が主だが、ペプシコーラが人気商品になっているという。

 

受刑者の管理クラスにより購入限度が定められている

ただし、あくまでも刑務所の中であるので、無制限に買い物ができるわけではない。受刑者の管理には3つのクラスがあり、最もゆるい寛管クラスでは、月800元まで、一般の普管クラスでは600元まで、最も厳しい考察クラスでは500元までとなっている。

考察クラスであっても、きちんと服役していれば、管理のゆるいクラスに変更してもらえるため、買い物がしたいから真面目に服役するという効果も生まれているようだ。

 

受刑者には4つの口座が設定され、社会復帰資金を作る

決済は、受刑者の個人口座から行われる。受刑者は1人で4種類の口座が作られる。A口座が基本の口座となり、購入した代金はここから引き落とされる。この口座は、一般の銀行ATMから、家族がお金を振り込むことができるようになっている。また、家族は通帳の履歴も、ATMやスマホから見ることができるようになっているので、何をどのくらいの頻度で買っているのかもわかるようになる。

A口座の上限は1万元で、それ以上の金額になると、自動的にC口座に送金される。C口座のお金は服役中は引き出すことはできない。

刑務所の中では、刑務作業を行い、その報酬はB口座に振り込まれる。B口座からは毎月一定額がD口座に送金される。これも服役中は動かすことができない。

つまり、受刑者が利用できるのはA口座のみで、家族から振り込んでもらうか、C口座に溜まった刑務作業の報酬をA口座に移して使う。

出所するときは、ABCDすべての口座の資金が渡され、社会復帰のための資金として利用できる。

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▲翌日配送された商品は、刑務官がX線などで内容を検査して、各受刑者に配られる。

 

将来的には刑務所が商品の販売を始める計画も

この試みは、広東省従化監獄だけでなく、全国の刑務所に広げていく計画だ。受刑者に利便性を提供することで、刑務所内でのストレスを発散することができ、早く社会復帰したいという意識を高めることに役立つからだ。

将来的には、刑務所がEC業者の許可を得ることで、刑務作業で製造した家具や衣服などを外部に向けて販売するECサイトを構築することも視野に入れているという。従化監獄は、ECを通じて社会とのつながりを保ち、服役にいい効果をもたらそうとしている。

 

食料品はもう宅配が常識。競争が激化する新小売。鍵は「前置倉」vs「店倉合一」

アリババの新小売スーパー「フーマフレッシュ」が成功し、テンセント系の生鮮EC「毎日優鮮」も利用者を増やしている。もはや、食料品は宅配をしてもらうのが常識になりつつあり、競争が激化している。この競争の鍵となるのが「前置倉」「店倉合一」という2つの考え方だと物流サロンが解説している。

 

ECの限界が新小売という新しい業態を生んだ

生鮮ECや新小売といった、日常の食料品を自宅まで配送してくれるサービスの競争が激しさを増している。多くの専門家が2019年は、このような生鮮宅配サービスが大きく普及する年になると指摘をしているからだ。

このようなサービスが生まれた背景には、ECの成長が頭打ちになっていることがある。ECは大都市ではすでに飽和をし、地方都市や農村に広がり始めているため、一見売上は伸び続けている。しかし、住居密度が低い地区へ拡大しているため、配送効率は低下し続けている。

そこで、ECの10倍近い売上がある、日頃食べる肉、野菜、魚といった生鮮食料品をどうにかして扱う必要がある。これが生鮮ECサービスが続々と生まれている理由だ。しかし、生鮮食料品は、伝統的なスーパーやコンビニの市場であり、既存スーパー、コンビニも宅配サービスを始めて、生鮮ECに対抗するようになっている。

アリババのジャック・マー会長は、ECは生鮮食料品を扱い新小売業態になり、伝統的なスーパーもECに進出を新小売業態となり、生鮮食料品の世界では、10年後にはECと実体店舗の区別はなくなっていくだろうと予言している。

 

保温管理が必要な生鮮ECの物流は「前置倉」

ECが生鮮食料品を扱う上での最大の問題は、ECの配送物流そのままでは生鮮食料品は扱えないということだ。白菜や魚といった食料品は、生産地から各家庭まで温度管理をしなければならない。巨大倉庫に集積をして、大型トラックで拠点まで配送、そこから小型トラックで各家庭に届けるというECのやり方で、倉庫、拠点、冷蔵トラックによる温度管理物流網を構築するには莫大なコストがかかる。

そこで生まれたのが「前置倉」(前線倉庫)という考え方だ。倉庫を前線である配送地域に置くというもの。配送地域である住宅地近くに小さな倉庫を置き、そこまで冷蔵車が巡回をして商品を配送し、倉庫からはバイクなどで周辺地域に配送をする。コンビニの配送物流の仕組みによく似ている。ただし、お店ではなく倉庫なので、客が買いにくることはない。宅配専門なのだ。

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▲毎日優鮮の倉庫。純粋な倉庫なので、ピックアップのしやすさを考えてレイアウトされている。加工食品が多く、宅配できるコンビニ感覚で利用されている。

 

品質を直接確かめることができる「前置倉+店倉合一」

しかし、前置倉には大きな課題がある。それは品質の個体差が大きな生鮮食料品を、ものを見ないで注文しなければならない点だ。消費者に品質を信頼してもらうまでに時間がかかる。一度でも低品質の食料品を届けてしまうと、離脱されてしまう。そのため、多くの前置倉で、無条件返金制度をとっている。「理由を問わず」「商品がなくても」返金できるというものだ。

この問題を根本から解決しようとしたのが、「店倉合一」(店舗と倉庫の融合)の新小売スーパーだ。普通のスーパーだが宅配をする。狙いは宅配だが、消費者が店舗に買い物にきて、商品の品質を自分の目で確かめることができるという点が大きい。新小売スーパーの代表である、アリババ系の「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)では、販売している食材を使った料理を食べることができるエリアが設けられている。利益はほとんど乗せていないため、格安のレストランとして利用されている。これは、食材のプレゼンであり、客に足を運んでもらって、商品の品質を見てもらうことが目的なのだ。

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▲フーマフレッシュの店内。伝統的なスーパーでは、来店客が野菜、魚、肉と、献立を考えながら回遊できるレイアウトにしているが、店倉合一のフーマフレッシュでは、野菜、魚、肉がゾーン別にレイアウトされている。ピックアップのしやすさを優先しているためだ。通路も広くとってある。

 

4つのスタイルに分類できる生鮮EC

小売業コンサルタントの張陳勇氏は、このような生鮮ECを4種類に分類している。

1)前置倉:いわゆる生鮮EC。配達地域に小さな倉庫を設置し、その周辺に配送をする。スタートアップが多く、競争が激化している。代表格は、テンセントが出資をしている「毎日優鮮」だが、「叮買菜」(ディンドン)にも勢いがある。サービス地域は上海だけのものの、他地域にも拡大したら毎日優鮮の強力なライバルになると見られている。

2)新小売スーパー:アリババのフーマフレッシュが代表格。「店倉合一」のスタイル。多くのチェーンが登場しているが、この分野ではフーマフレッシュが一人勝ちになっている。

3)プラットフォーム生鮮EC:ECサイトが前置倉の考え方を取り入れて、配送物流を工夫し、生鮮食料品も扱うというもの。「京東到家」(ジンドンダオジャー)が代表格。中国ではサービスを提供していないが、アマゾンフレッシュもこのタイプ。

4)単店生鮮EC:既存のスーパー、コンビニが宅配をして対抗をしたもの。見た目は新小売スーパーとよく似た形態になる。しかし、新小売がオンライン売上に軸足を置いているのに対して、単店生鮮ECは店舗売上に軸足を置いている。いわゆる「宅配もするスーパー」だ。生鮮ECに市場を蚕食されないための対抗措置の感が強い。スーパーチェーン「永輝」が始めた「永輝生活」が代表格。

このうち、競争が激化しているのが、1の前置倉と2の新小売スーパー(店倉合一)だ。3は生鮮食料品も扱うことで本来のECからの離脱を防ぐ、4は宅配をすることで実体店の売上低下を防ぐという防衛的な意味合いが強い。

 

中高年が利用する「店倉合一」、若者が利用する「前置倉」

店倉合一と前置倉は、利用する年齢層が異なっている。店倉合一の代表格であるフーマフレッシュの利用者は25歳以上が中心。店舗に行って、自分の目で品質を確かめることができるという安心感が利用につながっている。一方で、前置倉の代表格である毎日優鮮の利用者は24歳以下が目立って多い。若い世代は、品質を確かめなくても、まず試してみるということをする。割引クーポンをもらって、一度使ってみて、体験がよければ次からも使う。

中高年に支持されている店倉合一、若者に支持されている前置倉という図式が出来上がりつつある。

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▲フーマフレッシュ(店倉合一)と毎日優鮮(前置倉)の会員の年齢分布の違い。生鮮ECは若者の利用が多く、新小売スーパーは中高年が多い。

 

低コストの小さな倉庫を分散させて、広い地域をカバー

毎日優鮮の特徴は、倉庫面積が80平米と狭いことだ。一般の個人商店程度の面積でしかない。この小さな倉庫を市内に分散させるというところが、毎日優鮮のビジネスのポイントになっている。

倉庫だけで、店舗機能はないので、場所はどこでもいい。裏路地の廃業した商店を借りて、冷蔵施設を入れればいいのだ。このため、賃貸料が安く抑えられる。特に大都市では何のビジネスをするにも、賃貸料が大きなコストになるため、店舗機能を捨てることで、毎日優鮮は低コスト運営を可能にした。

また、倉庫が狭いので、商品のピックアップにかかる時間も短い。このような低コストの倉庫+配送拠点を住宅地のそばに置くことで、平均客単価が75元という高さにつながっている。一般的な生鮮ECの場合、客単価50元が採算ラインだと言われている。

 

単価の高い加工食品を主体にした毎日優鮮

倉庫が狭いということは扱える商品の品目数も少なくなる。毎日優鮮では、400種類から600種類(SKU=Stock Keeping Unit。同じ商品でもサイズが違えば別に数える)程度。しかも、売れているのは果物、飲料、加工食品といった調理をしなくてもすぐ食べられる食品が主体になっている。

これが客単価を押し上げている。野菜、魚、肉といった生鮮食料品の価格は、一部の高級品を除けば、とても安い。白菜やねぎを買われても客単価があがらない。しかし、毎日優鮮では、果物、飲料、加工食品という単価の高いものを若者が利用をしている。これにより、客単価75元が実現できている。生鮮ECというよりは、宅配コンビニ感覚で利用されているのだ。

しかし、中年以上の「家で調理をするために生鮮食料品を購入したい」というニーズには対応しきれていない。家庭では、毎日優鮮だけでは必要なものが購入できず、結局、他のスーパー、コンビニを利用するか、他の生鮮ECを併用しなければならない。毎日優鮮の1倉庫あたりの1日の平均注文数は360件程度だ。

すでに20都市に展開をし、1000以上の倉庫を展開しているが、今後、品目をいかに増やしていくかが大きな課題になっている。そのため、最近では100平米から150平米の中型倉庫の設置も進めているが、そうなると毎日優鮮の「小さな倉庫による低コスト」という優れた点が失われてしまう。

 

倉庫を広くして、品目を増やしたディンドン

この問題を解消したのが、上海で始まったディンドンだ。ディンドンの倉庫は300平米と広い。中型のドラッグストア程度の広さがある。品目は1500程度と多く、若者だけでなく、広い世代から利用されている。

倉庫を広くすると、その分、賃貸、ピックアップなどのコストはあがるが、必要な生鮮食料品をワンストップで購入できるという利点を活かして、中年以上の家庭に浸透し、1倉庫の1日の注文数が750件と、注文数をあげることでカバーをしている。

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▲上海で急成長している生鮮EC「ディンドン」。大型倉庫を設置し、商品点数が多いことが受けている理由だ。

 

意外に効率のいい短時間配送。鍵は不在率の低さ

生鮮ECは、宅配時間も選ばれる決め手になる。ディンドンは29分配送、フーマフレッシュは30分配送、毎日優鮮は1時間配送を行なっている。これは、料理をしようと思って、卵がないことに気がついたというような場合でも、注文をして待っていられる時間だ。

これを実現するためには、多数の配送員を待機させておく必要があり、一見、効率が悪そうに見えるが、実は一般の宅配よりも効率がいい。なぜなら、「待っていられる時間」で配送をするために、不在率がきわめて低いのだ。

一般のECは翌日配送、翌々日配送が基本なので、不在であることがけっこうある。中国の住宅は多くが集合住宅で、古い建物だとエレベーターがなかったり、少なかったりすることもある。そのため、宅配便の配達員は、マンションの前で一人一人に電話をし、在宅であることを確かめてから、各戸に配達をしている。1人の電話に1分かかるとしても、60件の配送では60分を在宅確認に費やしてしまうのだ。

 

無人配送の時代をにらんで加熱する生鮮ECの競争

張陳勇氏は「4年から5年で無人配送の普及が始まる」と断言している。現在のところ、自律走行するカートによる無人配送が最も有力視をされている。

しかし、配送拠点から5km、10kmの範囲に配送をするEC配送では、無人カートの導入には数々の問題が出てくる。一方で、前置倉で配送距離が1kmから3km程度の生鮮ECでは、無人カートの導入もしやすい。無人カートによる無人配送は、生鮮ECなどの短距離配送からまず普及をしていくことは間違いない。

こうなると、生鮮ECのコストはますます下がり、大きな利益を生み出すことが期待されている。その期待から、投資資金が集まり、次々と新しいサービスが生まれている。もちろん、その中で生き残るのはごく一部だろう。その淘汰整理の時期が2019年から2020年だと見られている。生鮮ECの競争はますます激化していくことになる。

コールマン(Coleman) アウトドアワゴン 2000021989

コールマン(Coleman) アウトドアワゴン 2000021989

 

 

人工知能搭載の偵察衛星「吉林1号」が10機となり、本格運用が始まる

中国の偵察衛星吉林1号」は人工知能を搭載し、船舶、航空機の映像を撮影するだけでなく、瞬時に識別まで行う。今回の打ち上げで衛星は10機となり、本格運用が始まったと大水が報じた。

 

航空機では水平線の影響で400km先までしか見通せない

中国の偵察衛星吉林1号」が合計10機となった。2015年から打ち上げが始まったこの一連の衛星は、バージョンアップが随時行われ、現在は第3世代になっている。人工知能が搭載され、瞬時に空母の種類などを識別する能力がある。

この吉林1号の目的は、早期警戒だ。一般に領海侵犯、領海侵犯の発見には、航空機が使われるが、地球は丸いため、水平線の影響で、高度が10kmであったとしても、400kmほど先までしか見通すことができない。この問題を解決するために、衛星に早期警戒をさせるという発想が生まれた。

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吉林1号の打ち上げ風景。最終的に138機の衛星ネットワークを作り、地球上どこであっても10分以内に撮影、解析ができるようにするという。

 

https://www.bilibili.com/video/av55784573/

吉林1号偵察衛星の仕組みをCGで紹介したテレビ番組「すごいぞ!中国製造」の一部。

 

衛星による早期警戒には時間がかかるという問題

しかし、衛星による早期警戒にも大きな問題がある。地上から指令を出して、それから撮影を行い、映像を地上に転送する。そして、地上のチームが画像を解析してようやく領海侵犯を把握できるのだ。従来の方法では数カ月かかる作業であり、自動化を進めても数時間はかかる。これでは意味がない。

なぜこのようなことになるかというと、衛星はただのカメラにすぎず、何が写っているかの解析は、地上で行わなければならないからだ。そこで、人工知能を使って、衛星に解析機能を持たせてしまえばいいという発想が生まれてくる。

2015年に打ち上げられた第1世代衛星は、DSP(デジタルシングルプロセッサ)を搭載していた。ちょうどコンパクトカメラなどに搭載されている顔認識と似たようなもので、船舶を自動認識して、外形を把握し、速度と方向を地上に伝える。

2017年に打ち上げられた第2世代衛星、2018年に打ち上げられた第3世代衛星では、GPUが搭載され、深層学習された人工知能が、船舶、航空機を認識し、識別をする。

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吉林1号が撮影した船舶。人工知能がこの映像から、船舶の種類などを判別する。

 

1000km以上先まで警戒、ステルス機も発見可能

この吉林1号は、1000kmから2000km先まで補足することができる。一般的な航空機の早期警戒機の400kmと比べると、いち早く発見することが可能になる。

また、大きいのがF-22などのステルス戦闘機の発見にも対応していることだ。ステルス戦闘機は、レーダーなどの電波を吸収し、熱源からの赤外線も分散させるなどして補足させない。あくまでもステルス機は「センサーから姿を消す」技術だ。しかし、人間の目には見える。光学ステルスは研究はされているが実用化されていない。吉林1号は、カメラ、つまり光学的に目標を捉え、識別をするので、ステルス機も問題なく発見できる。

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吉林1号は、衛星に人工知能が搭載され、衛星内で画像解析も行う。赤外線映像などから、火器が使用されたことを察知し、地上にアラートを送信する。


吉林一号视频星拍摄的视频影像 墨西哥杜兰戈

吉林1号が撮影したメキシコの映像。よく見ると、道路上の自動車が動いており、写真ではなく、動画であることがわかる。

 

世界が驚いたフィラデルフィア造船所の写真

2015年頃まで、中国政府は、吉林1号は商用衛星だと説明をしていた。地質などを観測して、土地利用を促進するためのものだということだった。しかし、2016年5月に、吉林1号が撮影した米国海軍のフィラデルフィア造船所の写真に世界が驚いた。軍艦の形もはっきりと分かるほど解像度が高い写真で、商業用の観測衛星のレベルを超えている。それ以来、中国のメディアでも「吉林1号は偵察衛星」と報道されるようになっている。

吉林1号の計画では、60機の衛星でネットワークを作り、目標とする800地域に30分以内に偵察ができるようにすることが目標だ。その後、138機の衛星ネットワークが構築され、地球上のどこの地点であっても10分以内に偵察ができるようにすることが最終目標になっているという。

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▲問題となったフィラデルフィア造船所の写真。それまで商業衛星だとされていた吉林1号が撮影したもの。船の形もはっきりとわかる。これ以降、中国政府は偵察衛星であることを隠さないようになった。