中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

ToC企業が敏感に反応した第3のショートムービー「WeChatチャネルズ」

テンセントのSNS「WeChat」が、TikTokに対抗するためにショートムービー機能「チャネルズ」を公開して以来、ファストフードやカフェなどのToC企業のムービー配信が盛んになっている。WeChat内の配信であれば、拡散しやすく、ミニプログラムなどの購買にも結びつきやすいからだと紅餐網が報じた。

 

ニュースもテキストよりもショートムービーに

中国では、インターネットの中心が、テキストや画像からショートムービーに移ろうとしている。「2021全景生態流量洞察報告」(QuestMoible)によると、2021年1月のサービス別の利用状況は、動画系が突出するようになっている。動画系は1日に20.4回、利用時間は2時間41.4分にもなっている。これは「ニュース、情報」のそれぞれ、2.5倍、2.0倍になる。

特に「抖音」(ドウイン、TikTok)、「快手」(クワイショウ)の2つのショートムービーは、情報プラットフォームになり始めている。ニュースなども映像付きで15秒で配信をされているため、テキストのニュースアプリを読むよりも早く理解できる。TikTokでニュースを知り、ニュースアプリで詳しく読むというのが定番スタイルになろうとしている。

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▲すでにインターネットのメインストリームは動画系に移っている。利用回数、利用時間とも圧倒的。ショートムービーがあらゆるジャンルの情報源になっている。「2021全景生態流量洞察報告」(QuestMoible)より作成。

 

第3のショートムービー「WeChatチャネルズ」

その中で、第3のショートムービープラットフォームとして突然登場したのが、テンセントの視頻号(チャネルズ)だ。これはSNS「WeChat」の中の機能のひとつで、TikTokや快手と同じようにショートムービーが配信される。すでに国民インフラとなっているWeChatの中の機能であるため、多くの人が利用し、TikTok、快手に続く、第3のショートムービープラットフォームになっている。

「2020中国モバイルインターネット年度大報告」(QuestMoible)によると、2020年12月の月間アクティブユーザー数(MAU)はTikTokが6.5億人、快手が5.9億人となっている。また、テンセントは2020年12月にチャネルズの日間アクティブユーザー数が2億人を突破したことを公表した。TikTokのDAUは調査機関によると4億人程度、快手が3億人程度、ビリビリが0.5億人程度と見られている。チャネルズは少なくても、すでにビリビリを超えるプラットフォームになっていることは明らかだ。

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▲WeChatチャネルズ。見た目、操作方法などはTikTokそっくりだが、WeChat内の機能であるため、SNS、ミニプログラムとスムースに連動する。

 

WeChatの莫大な利用者を目指して、ToC企業が反応

WeChatはもはやSNSと呼ぶのが適切ではなくなるほど、インフラ化をしている。DAUは10.9億人、毎日3.3億人がビデオ通話を使い、6.7億枚の静止画が公開され、1億本の動画が公開されている。

このような場であるため、すぐに企業の公式アカウントがチャネルズでの発信を始め、大きなビジネス機会が生まれようとしている。ある程度の規模の企業は、すでにTikTokや自社ウェブでショートムービーの配信は行っているため、同じ素材をチャネルズでも配信すればいいので、すぐに対応ができた。しかし、チャネルズが大きく違うのは、同じWeChat内にSNS、ミニプログラム、WeChatペイという決済が揃っていることだ。

これにより、チャネルズに配信したショートムービーで、キャンペーンなどの告知を行い、それがWeChatで拡散をし、ミニプログラムで購入してもらい、WeChatペイで決済してもらうという一連の流れができあがる。

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▲ファストフード、カフェのWeChatチャネルズへの配信状況。WeChatはSNSやミニプログラムなどプロモーション環境が整っているため、ToC企業が鋭敏に反応して、ムービーの配信を始めている。

 

消費行動に直結できるWeChatチャネルズの強み

紅餐網では、2021年2月の段階の各企業のチャネルズの配信状況を調査した。すでにファストフード、カフェなど、消費者に近いサービスを提供する企業のムービー配信が活発になってきている。

テンセントの発表によると、2021年2月にトップ500のアカウントが7.9万のムービーを公開し、27.1億億回試聴されている。平均して3.43万回視聴されていることになる。

このようなショートムービーを生活サービスの消費行動に直結させることは、現在のところ、TikTokや快手にはできない。商品の紹介ムービーを配信して、購入に結びつけることができるだけだ。ToC企業にとって、WeChatがますます重要なチャネルになり始めている。 

 

タクシー料金が1/5になる怪しいタクシー配車。背後に犯罪集団の影

タクシーに乗ってもいないのに乗車料金が支払われる事件が連続している。その背後には、乗っ取りが行われたスマホ決済アカウントを利用する犯罪集団がいると九派新聞が報じた。

 

自宅にいたのに、タクシーに乗っていることになっていた

広州市天河区に住む呉俊さん(仮名)は、3月10日にタクシー配車アプリ「滴滴出行」で、222.99元の乗車賃が支払われていることに気がついた。3月7日に福建省泉州市で乗車したことになっているものだが、呉俊さんは、その日、福建省に行っていないどころか、広州市の自宅で休んでいた。もちろん、滴滴を利用していない。

すぐに滴滴出行の顧客センターに連絡を取った。滴滴の担当者が調査をすると、決済されたスマートフォンの製造番号が、呉俊さんが普段使っているものと異なっていることが判明した。滴滴はこの支払いを無効にし、呉俊さんにパスワードを変えるなどセキュリティ対策のアドバイスをした。

 

SNSで160円で販売されているアリペイアカウント

このような問題は、滴滴以外のタクシー配車、ライドシェアでも起きている。多くの場合、顧客センターに相談をすることで解決できるが、そもそもなぜこのような問題が起きるのかがわからないと不安になる。

九派新聞の記者は、この問題を追跡した。すると、SNS「QQ」でスマホ決済「アリペイ」のアカウントを販売しているグループを発見した。そのグループには700人ほどが参加をし、アリペイのアカウントを1つ9.36元(約160円)で販売をしている。

記者は取材のために、このアカウントを購入してみた。すると、名前や携帯電話番号などもわかり、同時にEC淘宝網タオバオ)、電子メール、タクシー配車「滴滴」「高徳地図」などが利用できる状態になっていた。

つまり、呉俊さんのアカウントもこのように販売をされて、転売され、他人に悪用されたのではないかと思われる。

 

不正アカウントを使えばすぐに露見する

しかし、このようなクラックされたアカウントを普通の人が簡単に使うことはできない。他人の口座からお金を盗むことになるので、罪は重く、公安も積極的に捜査を行う。アリペイもWeChatペイも安全性を重要視しているため、このような問題には積極的に公安に情報提供し、連携をする。使用した店舗、位置情報、店舗や該当の防犯カメラ映像から、すぐに特定され逮捕されるのが通常だ。

つまり、アリペイのアカウントがネットで売り買いされていると言っても、普通の人にとっては使い道がないのだ。そのため、低価格で販売されているようだ。

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▲記者が取材のために呼んだ、乗車料金が激安になるタクシー。犯罪集団とグルになっているものだと思われる。

 

フリマアプリで販売されている格安タクシー乗車の権利

記者が取材を続けると、中古品売買のフリーマケットアプリ「閑魚」(シエンユ)で、タクシー配車が売りに出されているのを発見した。連絡を取ると、例えば武漢から長沙までの350km程度が普通であれば1000元を超える料金になるところを200元でいける権利だという。

これも取材のため、記者は、このタクシー配車の権利を購入してみた。すると、名前や乗車地、目的地、携帯電話番号を聞かれて、車を用意するという連絡が入った。滴滴で配車した車を回すので、携帯電話番号の末尾4301だと告げて乗車してほしいという。そして、運転手に200元を支払ってほしいという。その場合、滴滴出行のアプリは使わず、直接現金かスマホ決済で運転手に支払ってほしいという。

 

正規の料金は、不正アプリアカウントに請求というカラク

これは、滴滴出行などに用意されている代理配車の機能を使ったものだ。他人のためにタクシー配車やライドシェアを注文する機能が用意されていて、支払いは代理で配車した本人が行うというものだ。

つまり、このタクシー配車の権利を販売していた者は、代理配車の機能を使って、車を回し、グルになっている運転手の車を指定する。そして、クラックされたアリペイのアカウントを使って、滴滴に正規の料金を支払う。運転手には乗客から直接支払われる200元と、滴滴からの正規の乗車賃が入るので、これを山分けするという手口のようだ。そして、請求はアリペイアカウントを盗まれた被害者の元にいく。

 

正規料金と乗客から二重取りをする犯罪

正規料金よりも安くタクシーに乗れるということから、長距離乗車の時に、このような怪しいタクシー配車を利用する人がいて、運転手と犯人は、長距離の客を効率よく見つけることができ、正規料金よりも多く稼ぐことができる。不正入手したアリペイアカウントから正規の手数料が入り、さらに乗客から直接200元の現金を手に入れることができる。

このような不正行為は、滴滴出行だけでなく、他のタクシー配車、ライドシェアでも横行をしている。

すでに滴滴出行では、この問題を把握していて、閑魚を始めとするフリマプラットフォームに対して、タクシー配車の出品をしないように協議をし、このような商品は出品できないようになっている。また、各地公安とも連携し、背後にいる犯罪サプライチェーンの捜査が始まっている。

 

 

 

ビジネスとして成立をし始めたeスポーツ。老舗企業も注目する新たなコンテンツ産業

まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 067が発行になります。

 

eスポーツというと、日本では「ゲーム大会」の感覚がまだまだ抜けませんが、中国ではすでに産業として成立しています。

転換点となったのは、2017年10月に、北京市の国家体育館で開催されたレジェンド・オブ・リーグ(LoL)世界大会の準決勝戦でした。LoLはMOBA(マルチプレイヤー・オンライン・バトル・アリーナ)に分類されるゲームで、3人から5人のチームが対戦相手のチームと戦います。ゲームとしては、相手の陣地に到達したら勝ちというシンプルなものですが、チームメンバーの役割分担、協力、コミュニケーションが決め手になります。斜め上から俯瞰をして、各プレイヤーの動きを見て、コミュニケーションを取りながら、敵を倒し、相手の陣地を目指します。

この準決勝戦は、中国のRNG(ロイヤル・ネバー・ギブアップ)と韓国のSKテレコムの対戦となりました。北京で開催され、国のプライドをかけた戦いになったこともあり、ライブ中継は異常な盛り上がりで、中国内で1億人以上が視聴したと言われています。

残念ながら、RNGは負けてしまい、決勝戦SKテレコムサムスンギャラクシーという韓国チーム同士の対戦となりましたが、それでも中国内で2500万人がライブ中継を視聴しました。

 

なぜ、このような桁違いの視聴者数になるのでしょうか。中国は人口14億人、有効消費者数10億人という巨大な市場ですが、理由はそれだけではありません。日本ではサブカルチャーと呼ばれているオタク文化が、根付いているどころではなく、若い世代のメインカルチャーになっているのです。

中国では、このようなオタク文化はACG(アニメ、コミック、ゲーム)と呼ばれます。「バーチャルアイドル観察報告」(愛奇芸)によると、ACGファンの数は4.9億人と推定されています。これはなんとネット民の52%にもあたります。若い世代では、ACGに興味のないという人の方が珍しいほどです。

この巨大な市場があるために、eスポーツもビジネスとして成立しますし、さまざまな企業が販売促進になるという理由で、eスポーツのプロチームや大会のスポンサーになります。

 

現在世界のeスポーツ人口は、「2020 Global Games Market Report」(NEWZOO)によると4.95億人で、ちょうど中国のACGファンと同じくらいの規模になっています。つまり、eスポーツは中国と北米を除くと、1国ではなかなかビジネスとして成立しづらいものの、世界を市場にすればビジネスとして成立する状況です。eスポーツは、中国、北米、欧州という3つの地域から新しいトレンドが生まれ、それが世界展開されていくという図式で展開をしていくことになります。

特に中国では、企業のスポンサー活動が盛んです。自動車、家電、服飾、化粧品、飲料などの企業ばかりでなく、金融などの老舗企業もeスポーツとコラボをしたプロモーションを行っています。

このように、企業が積極的に参加しているというのが中国のeスポーツのひとつの特徴になります。

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▲世界のeスポーツ人口は4.95億人。世界という枠組みであればビジネスとして成立する状況になっている。核心ファンとは1ヶ月に1回以上、eスポーツコンテンツに触れる人と定義されている。「2020 Global Games Market Report」(NEWZOO)より作成。

 

もうひとつの特徴が、歴史が古いということです。弾幕付きの動画共有サービス「ビリビリ」はACGのホームグラウンドになっていますが、創業は2009年です。しかし、ゲームライブ配信サイト「遊戯風雲」は2004年の創業です。世界的に有名になっているTwitch(ツイッチ)の成立が2011年で、そのTwitchの元になっているJustin.tvですら2007年の創業です。つまり、中国人にとって、eスポーツとは、外から輸入されて入ってきたものではなく、自国の中から生まれた文化でもあるのです。

そのため、eスポーツという言葉はあまり使われず、「電競」(ディエンジン)と呼ばれることがほとんどです。電子競技の略語です。なので、勝ち負けがつくゲームであれば、すべてeスポーツになります。

 

歴史が古いと言っても、最初からeスポーツが盛り上がっていたわけではありません。ゲームライブの配信サイト「遊戯風雲」は2004年に創業しましたが、当初は視聴者数も少なく、従業員の月給は3000元(約5万円)という時代が長く続きました。ようやく人並みの給料がもらえるようになったのは2013年頃だそうです。

それでもやり続け、情熱を注ぎ込んだ人たちがいたのです。2011年に、米国で同じコンセプトのTwitchが誕生しました。しかし、Twitchも当時はコアなファンだけが視聴する知る人ぞ知るサイトでした。

同じようなコンセプトのサイトが登場したことを知った遊戯風雲のeスポーツ部門の責任者は、2012年に渡米し、Twitchの賠償交渉を行なっています。遊戯風雲が提示した価格は5000万円というものでした。Twitch側の感触は悪くなく、買収交渉がまとまる気配があったと言います。現在のTwitchを知る人には信じられないほどの低額の買収交渉ですが、当時の規模はそんなものだったのです。

この話は、遊戯風雲側が5000万円の買収資金を用意することが難しく、流れてしまいました。しかし、その2年後の2014年に、Twitchはアマゾンから9.7億ドル(約1000億円)で買収されることになりました。

 

もうひとつ大きな転換点になったのが、2015年に登場したテンセントのMOBA「王者栄耀」です。ゲームシステムはLoLそっくりですが、キャラクターに項羽劉邦孫悟空武則天、チンギスハン、さらには宮本武蔵までの古今東西の有名キャラが選べるというのが特徴です。

このゲームが子どもから大人まで大流行し、小学生のスマホ所有率を一気に引き上げたと言われます。あまりの流行ぶりに、学校でのプレイは禁止となり、テンセント側が12歳未満には、1日の利用時間制限や夜間の起動ができないなどの仕組みを導入したほどです。

王者栄耀は今でもプレイ時間、ダウンロード数ともに中国スマホゲームランキングのトップ10に入る人気ゲームですが、最も流行していた2017年頃、女性ユーザーの比率が高いということも話題になりました。女性の比率が高いどころではなく、当時、多くの調査会社が調査をしたユーザーの男女比で、女性の方がわずかに多かったのです。これはバトルを基本にするゲームとしてはありえないことでした。

 

なぜ、王者栄耀はここまで女性比率が高かったのか。それは課金の考え方が大きく変わったからです。これにより、王者栄耀は、競技性が生まれ、eスポーツ産業が花開く下地をつくりました。

今回は、中国でどのようにしてeスポーツ産業が成長していったのかをご紹介し、企業がどのようなスポンサー活動を行っているか、事例をご紹介します。

 

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vol.066:ネットの中心はテキストからショートムービーへ。始まりつつある大変化

 

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TikTokがEC販売を本格化。キーワードは食飲遊楽泊商品

中国版TikTok「抖音」がECを本格化させている。2020年にはすでに流通総額が約8兆円を突破したという。現在のところ、宅配する商品ではなく、飲食店など現地で消費する食飲遊楽泊の商品が中心になっていると最極客が報じた。

 

主要テック企業に全方位で挑戦をするTikTok

バイドダンスは中国版TikTok「抖音」(ドウイン)の大改造を行っている。SNS化を進めてテンセントのWeChatと衝突しているだけでなく、ライブコマース、独自のスマホ決済「抖音支付」を始めてアリババの淘宝網タオバオ)と衝突、ショートムービー検索エンジンの開発を始めると宣言して百度と衝突、さらに今度は「団購」と呼ばれるまとめ買い機能を搭載し、美団(メイトワン)と衝突をすることになった。

まるで、中国の全テック企業に次々と挑戦をしているような状況だ。

 

ムービーの商品紹介を見て購入するEC

この団購は、現在、上海、北京、杭州の大都市で、評価版として提供されており、企業アカウントを取得している企業は、現在のところ、手数料なしで、商品を販売できるようになっている。

「同城」(同じ都市)のタブをタップすると、都市内で公開されたショートムービーの他に、団購の購入パネルが表示される。販売されている商品は、複数人分のコース料理、ホテル宿泊、娯楽施設のチケットなど。宅配される商品ではなく、現地で消費する商品が主体だ。ショートムービーを見て、内容に納得したら購入ボタンをタップし、抖音支付などで決済。QRコード画面が表示されるので、これを現地で見せれば、利用できるというものだ。

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TikTok団購の仕組み。コース料理など商品のショートムービーを見る。タップすると商品ページに移るので、内容に問題がなければ、購入ボタンをタップ。飲食店で表示されるQRコードを見せれば食事が提供される。

 

エンタメ方向ではなく、生活サービス方向に進むTikTok

TikTokがミニプログラムやライブコマースに対応をした時、アリババや美団のような生活サービスの方向に進むのではなく、映画やコンサート、クラブなどのエンターテイメント系サービスに進むのではないかと見る人もいた。しかし、今のところ、直球の生活系サービスを提供しようとしていて、アリババや美団と正面衝突をする可能性もある。ただし、現在のところ、食飲遊楽泊の商品が中心になっていて、生活サービスの中でもエンタメ要素の高い部分に特化をしている。

Tik Tokの検索も、商品検索を行うとライブコマース映像が表示され、販売価格もわかりやすく表示されるようになり、ECの検索画面と変わらなくなっている。違いは、多くのECが商品をテキストと写真で説明するが、TikTokの場合はショートムービーで説明するという点だ。

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TikTokで商品検索をすると、さまざまな商品が表示される。いずれも商品紹介は、ムービーが中心になっている。食飲遊楽泊の分野の商品は、テキストと写真の説明より、ムービーの説明の方が購買意欲が湧きやすい。

 

ECに本気を出しているTikTok

このTik Tokの生活サービス対応については、バイトダンスは本気のようだ。2020年12月に、バイトダンスは「本地直営営業センター」を設立して、生活サービスを扱う部門を設置した。すでにここには1万名規模のスタッフが勤務しているという。ライブコマースや団購などのEC系サービスの業務を行なっている。

2020年のTik TokのEC流通総額はすでに5000億元(約8.3兆円)超となり、2019年の3倍以上になっている。この販売チャネルの強さを軸に、バイトダンスはTik Tok上で次々と生活系サービスを展開しようとしている。

 

網紅が介在し、食飲遊楽泊商品を売る

Tik Tokでは、すでに300都市以上でその都市専用のページが提供されていて、「食飲遊楽泊」の5つのジャンルでのサービス、商品の販売が行われている。確かに販売されている商品は、アリババや美団と重なっているが、違うのはTik Tokインフルエンサーの存在だ。

団購商品を出品する企業アカウントからは、Tik Tokの網紅(ワンホン、インフルエンサー)に直接連絡を取る機能が用意されており、自社のサービス、商品を網紅に紹介することができる。それが面白いと感じた網紅は、利用をしてみて、そのショートムービーをTik Tokに投稿することになる。網紅が自主的に投稿することもあれば、企業が報酬を支払って投稿をしてもらうこともあるだろう。現在、バイトダンスは手数料や紹介料などを設定していない。しかし、どこかの段階で、仲介料を取るようになり、バイトダンスの大きな収入になっていくと思われる。

アリババや美団との違いは、この網紅の介在があり、他のEC、ライブコマースと比べて次元の異なる拡散力を利用できる点だ。

 

ショートムービーの方が伝えやすいという発見

バイトダンスは、現在のネットテクノロジーをすべて新しいものに置き換えようとしている。商品の紹介は、従来、テキストと写真で行われていたが、15秒のショートムービーを中心にした方が伝わりやすい。であれば、ショートムービーをダイレクトに検索できる仕組みが必要になる。そのため、ムービー用の検索エンジンの開発も始めている。

Tik Tokの手柄は、「情報密度の高い動画であれば、15秒で多くのことを伝えられる」ということを発見したことだが、このショートムービーを使って、インターネットのコンテンツすべてを上書きしようとしている。

 

 

中国版新幹線は2035年までに約7万km。中国経済の時限爆弾とも言われながらも進められる大型整備計画

国家鉄路によると、中国版新幹線「高鉄」は、2035年までに、現在の3.79万kmから約7万kmまで延伸するという。一方で、国家鉄路はすでに79兆円もの借金をしながら、さらに大型の建設計画を打ち出している。高鉄が中国社会の発展に寄与したことは間違いないが、中国経済の時限爆弾にもなりかねないという批判も起きていると超感科学が報じた。

 

基建狂魔と呼ばれるほど伸び続ける中国版新幹線「高鉄」

中国版新幹線「高鉄」(ガオティエ)の総延長は3.79万km。日本のフル規格新幹線7路線の総延長が2765kmなので、日本の約14倍になる。2010年の段階では5000kmだったものが、2015年に1.98万kmとなり、現在3.79万km。2035年には、約7万kmに伸ばし、人口50万人以上の都市にはすべて高鉄を通す計画だ。あまりの延伸ぶりに、中国国内からも「基建狂魔」と呼ばれているほどだ。

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▲高鉄の建設計画図。すでに主軸部分(赤)にリニア高速列車を走らせる計画も提案されている。この図で、台湾の台北市まで延伸していることが台湾で大きな話題になっている。

 

コロナ禍により旅客数は前年割れが続く

しかし、コロナ禍の影響で、鉄道旅客数は、2020年1月から前年割れが12カ月続き、2021年2月にようやく前年を超えた。と言っても、前年の2020年2月は、コロナ禍により前年よりも87.2%も減少した最悪の月で、コロナ禍以前の2019年2月と比較すると、-50.8%となる。通常の半分程度しか戻していない。

それでも、中国国家鉄路集団(CR)が2035年延伸計画を公表したのは、コロナ禍も終息していない2020年8月。まさに基建狂魔だ。

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▲高鉄のここ2年の旅客数。2020年は前年割れが続いて、2021年の2月にようやく前年超えとなった。しかし、2019年から比べると、多少戻った程度にすぎない。

 

世界一の高速鉄道網は、借金額も世界一

国家鉄路の財政状況も最悪の状況になっている。2020年Q3の財務報告書によると、2020年1月から9月までの利益は、787.11億元(約1.3兆円)の赤字。運営コストが約610億元で、これがそのまま赤字になっている。

それでも大型の延伸計画を進められるのは、莫大な借入金だ。現在、国家鉄路は4.75兆元(約79兆円)もの借入金がある。高鉄は、世界一の高速鉄道網だが、借入金もおそらく世界一だ。

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▲疾走する高鉄。総延長は3.79万kmとなり、2035年には7万kmに延伸し、人口50万人以上の都市をすべて結ぶことになる。

 

灰色のサイになると国内からも批判の声

時速350kmの高速路線の建設コストは1kmあたり1.29億元(約21.5億円)、時速250kmの低速路線の建設コストは0.87億元(約14.4億円)になる。仮に、今後の延伸部分がすべて低速路線だとしても、これから2.8兆元(約47兆円)の建設費が必要になり、延伸をすれば、その分運営コストも比例をして増えることになる。

すでに、中国国内からも、このまま延伸計画を進めると、高鉄は、中国の「灰色のサイ」になりかねないという声があがっている。灰色のサイとは、おとなしく見えるので軽視されがちだが、一度暴れ出すと誰も手をつけられなくなるという意味で、市場で軽視される大きなリスクを指摘するときに使われる。もし、国家鉄路が借入金をきれいに返済をして、収支バランスを取ろうとすると、高鉄の乗車料金は飛行機のファーストクラス並みになってしまうかもしれない。

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▲高鉄網の整備により、国内の人の移動が活発になり、中国社会を発展させたことは疑いようがない。国家鉄路はこれからも莫大な借金をしながら、高鉄網を整備していく計画だ。

 

中国社会を大きく変えた高鉄網

しかし、高鉄が中国の経済成長に大きく寄与したことは確かだ。高鉄の車両、線路設備、駅舎などの建設によって、製造業、建設業は潤っただけでなく、技術力も大幅に上昇した。

さらに、上海と蘇州、杭州のような大都市と周辺都市が1時間程度で結ばれ、中核都市群が形成されつつある。さらに、中核都市群を4時間程度で結ぶリニア鉄道網の計画も構想されている。いくら赤字が出ようとも、いくら借入金が増えようとも、高鉄の延伸が止まることはないと見られている。

 

 

発送済みなのに商品が届かない。ECで架空発送が起こる謎

ECで商品を購入し、配送状況は発送済みになっているのに、商品が届かない。調べてみると、そもそも商品は発送されていない。この不思議な現象はなぜ起こるのか。その背後には、零細販売業者の苦しい理由があったと済南時報が報じた。

 

購入をしても商品が発送されない謎

2月20日、王澄さんは、あるECで69元の靴を購入した。翌日、ECのアプリ内の配送状況では発送済み状態になっていた。しかし、3日経っても商品が届かない。そこで、販売業者に問い合わせをしてみると、「発送した荷物がロストした」という返答だった。そこで、王澄さんは「では、新しい商品を発送してほしい」と要求したが、販売業者は「注文をキャンセルしてほしい」の一点張りだった。

納得がいかない王澄さんは、宅配業者に連絡を取った。すると、該当の番号の荷物は、そもそも発送がされていないことがわかった。

このようなことは、さまざまなECでたびたび起きている。商品を注文しても、プラットフォームの配送状況では「発送済み」となるのに、そのまま状況が変わらない。数日経って、消費者が問い合わせをすると、販売業者はさまざまな言い訳をする。「荷物がロストした」「倉庫が水没した」「配送ステーションが火事になった」。すべて嘘で、そもそもが発送をしていないのだ。

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▲ネットには、架空発送の証拠画像が大量に投稿されている。宅配便状況確認ミニプログラムで、「発送後7日以上立っても未着」というアラートが出たが、購入者は受け取ってもいないし、宅配便スタッフが自宅を訪れた記録もない。そもそもが発送されていない架空発送だった。

 

多くのECで定められている欠品違約金制度

しかし、なぜ、販売業者はこういう意味のないことをするのか。それは、多くのECプラットフォームで、注文を受け付けたのに商品が発送できない欠品の場合は、30%程度の違約金を加えて返金しなければならないルールがあるからだ。

販売業者は、商品注文を受けてから48時間以内に配送状況を入力しなければならない。これが間に合わないと、欠品となって、10%から30%の違約金を上乗せして返金しなければならなくなる。

であれば、「配送済み」という偽の情報を入力して、購入者が待ちきれずにキャンセルするのを待つ方が得策だというわけだ。

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▲詳細を見ると、武漢市で発送済みとなっていて、購入者が住む深圳市まで配送されている詳細記録が記載されている。そもそも商品は発送されていないのだから、なぜこのような詳細記録が記録できるのか謎になっている。ネットでは、宅配便のシステムに外部からアクセスして、架空の記録を入力できるのではないかと言われている。

 

零細業者は在庫を持てないが、注文は断りたくない

長年、ECの販売業者の仕事をしてきた李兵さん(仮名)によると、零細販売業者は大きな倉庫を確保するのもコスト的に負担になることが、このような架空出荷の原因になっているという。

小さな倉庫しかないので、注文が重なると在庫がなくなってしまう。しかし、在庫がないからといって、販売を中断すると売上がなくなってしまう。そこで、注文は受け付けながら、なんとかして商品を仕入れようとする。配送状況だけ出荷済みにして時間を稼ぎ、その間に商品を仕入れるという自転車操業だ。それでも間に合わなければ、多くの消費者は自らキャンセルをしてくるし、問い合わせをしてきた消費者にはキャンセルをするように勧めるのだ。

 

大規模セールで多発する架空発送

このような販売業者の行為は、もちろん不正行為であり、消費者にとっては迷惑な話だが、多くの消費者は同情的だ。零細の販売業者も生きていく必要があることを理解し、つまらないことで揉めたり、無理に違約金をせしめるよりは、素直にキャンセルをして、別の販売業者で購入するという人が多い。

しかし、これがより悪質な架空発送を生むことになっている。ひとつは、大幅な割引セールだ。大幅な割引セールを行う目的は、そのセールで大量の商品を販売することではない。商品は赤字販売なのだから、セールの売上がいくら高くても意味はない。セールをすることにより、商品や販売業者の認知度が上がり、その後の売上があがることが目的なのだ。

そこで、大幅な割引セールを行うが、架空発送をし、セール終了後の注文の方に商品を回そうとする業者もいる。

 

低評価レビューは高く売れる

さらに悪質な例も横行している。そもそも商品もなく、偽の販売を行い、個人情報を集めることを目的にしている例もある。発送済みの情報だけを入力して、商品は発送しないのだから、大量の購入者がレビューにクレームを書くことになる。この情報が高く売れる。

真っ当な販売業者であっても、クレーマー対策には頭を悩ませている。クレーマーあるいは正義感の強すぎる消費者は、どのようなクレーム形式をとれば販売業者に打撃を与えられるかを熟知しているので、電話やSNSで1対1で販売業者に連絡を取るのではなく、いきなり誰でも読める公開されるレビュー欄にクレームを書き、それをSNSで拡散させようとする。対応をして、誤解を解いた後、関係するレビューなどを削除するようにお願いしても、なかなか削除してもらえない。悪評だけがいつまでも生き残ることになる。

そのため、どの業者も、悪質クレーマーや正義感の強すぎる消費者のブラックリストをほしがっている。そのような消費者から購入があった場合は、欠品を理由にキャンセルしてもらうのだ。

 

機能していない欠品違約金制度

このような架空出荷に対して、淘宝網タオバオ)では10%、天猫(Tモール)では30%の違約金を乗せて全額返品しなければならないルールになっている。しかし、実際には、販売業者は自主的なキャンセルを求めてくるし、消費者は違約金の交渉をしなければならない。特に、個人情報を取得しようという悪質な業者の場合、数元の低価格商品の販売を餌にするため、違約金をとれたとしてもわずかな額になってしまう。それで、レビュー欄に怒りのレビューでも書こうものなら、販売業者の思うツボなのだ。

問題は、架空出荷情報であっても、荷物番号は正式なものであるということだ。宅配企業と契約をして、正式な荷物番号を取得している。この問題をなくすためには、宅配企業側での対策も必要になるため、すぐには解決しそうにない。この問題は、まだまだ続きそうだ。

 

 

壁の向こう側の物体をイメージングする。1.43kmの長距離非視線イメージングに、中国科学技術大学のチームが成功

中国科学技術大学の潘建偉のチームが、1.43kmという長距離の非視線イメージングに成功した。論文は、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された。この技術は、自動運転や医療、軍事などに応用が期待されていると科技日報が報じた。

 

壁に隠れた物体をイメージングする非視線イメージング

非視線イメージングとは、壁などの遮蔽物があって、直接目視できない物体の姿をイメージングする技術。簡単に言えば、壁の向こう側にあるものを見ることができる。自動運転などでは、交差点で、建築物の影にいる車両、歩行者を認識できるようになる。

さまざまな研究チームが、さまざまな手法で、非視線イメージングの技術開発を行なっているが、実験室内の短距離での成功例はあるものの、1.43kmという長距離で屋外の非視線イメージングに成功した例はこれが初めてとなる。

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▲A図のように、1.43km離れた建物の室内にある物体の非視線イメージングに成功した。C図のように、仲介する壁にレーザー光を発射して、反射光を測定し、壁に隠れた物体のイメージングを行う。

 

仲介の壁に反射させ、物体をイメージングする

壁の向こう側にある物体をイメージングするといっても、壁を透視するわけではない。仲介となる壁が必要になる。まず、レーザーをこの仲介となる壁に向かって発射する。レーザーは壁に反射して、目標の物体に届く。目標の物体は、レーザーを反射して、仲介の壁に戻り、さらに反射をして、発射位置に戻ってくる。

この戻ってきたレーザー光の時間差から、壁の向こうにある目標物体の形状を推測する。レーザー光は仲介の壁の1点にあてるのではなく、スキャンをするように満遍なくあてることになる。

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▲さまざまなイメージング手法との比較。右端の人型とH型が目標物体。その隣の「Ours」が研究チームのイメージング結果。

 

レーザー光の減衰と散乱が最大の課題だった

原理は簡単だが、実際に実用レベルにするのは簡単ではない。レーザー光は3回も反射をして戻ってくることになるので、大きく減衰してしまう。さらに、1.43kmもの空中を飛ぶことになるので、空中の粒子により散乱をする。このような実用上の問題を解決することが研究の大きな課題になった。

レーザーの光学系の技術開発も必要だったが、イメージングアルゴリズムの開発も重要だったという。

技術的な詳細は、米国科学アカデミー紀要に掲載された「Non-line-of-sight imaging over 1.43km」に解説されている(https://www.pnas.org/content/118/10/e2024468118/tab-figures-data)。

また、研究チームが作成した技術概要の動画も公開されている(https://movie-usa.glencoesoftware.com/video/10.1073/pnas.2024468118/video-1