中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

身売りまでされたカルフールが復活の兆し。鍵は到家サービス

中国に上陸をして25年、近年は経営不振が続き、昨2019年9月に、蘇寧グループが48億元(約760億円)で株式の80%を取得するという形で買収されたカルフール。しかし、2019Q4から3四半期連続で黒字を達成するという回復を見せている。蘇寧はわずか1年という短期間でカルフールの何を変えたのか。北京商報が報じた。

 

買収直後から黒字化を達成させた蘇寧グループ

蘇寧傘下に入ってからのカルフールの回復ぶりが目覚ましい。昨2019年9月に買収が行われ、その次の2019Q4には、7年ぶりの黒字化を達成した。その後の2020Q1、Q2とも黒字で、3四半期連続の黒字となり、カルフールの回復が本物であることが証明された。

いったい、蘇寧はこの短期間にカルフールをどう変えたのだろうか。

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▲現在のカルフールには「蘇寧」の看板が並ぶ。蘇寧に買収されてから、カルフールは急速に復活の兆しを見せている。

 

「豊富な物資」から「利用しやすさ」へ変化

カルフールが大きく変わったことは、来店客の誰もが感じている。以前のカルフールは、床から天井まである大きな商品棚にぎっちりと商品が詰め込まれていた。スペースがある場所には卓球台ほどもあるワゴンが置かれ、そこに特売品が乱雑に投げ込まれていた。また、箱物商品は、人の背よりも高く山積みされるディスプレイ手法もよく使われていた。要は、「物資の豊富さ」がコンセプトだった。

これは25年前、カルフールが中国に上陸をした時には、中国人消費者を圧倒した。カルフールの上陸から「週末に家族で車に乗ってスーパーに行き、1週間分の買い物をする」というライフスタイルが始まった。カルフールは、中国人の消費生活のスタイルを変えることに成功した。

しかし、現在のカルフールの商品棚は、人の背丈程度のものになり、標準的なスーパーと同じものになっている。ただし、異なるのは、すべての商品のデジタル化が行われ、ビッグデータ解析によって、商品の配置が決められていることだ。

以前のカルフールは、一度入ってしまうと、店内を一巡しないと買い物が終わらなかった。現在は、必要な商品の場所がすぐわかるようになり、短時間で買い物がすむようになっている。

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▲以前のカルフール。商品が天井までぎっしりと並べられ、物資の豊富さで圧倒するコンセプトだった。

 

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▲現在のカルフール。一般的なスーパーに近い形になり、目的とする商品にたどり着きやすくなった。買い物の断片化に対応している。

 

「買い物の断片化」に対応できなかったカルフール

この変化は、消費者、特に若年層の「買い物の断片化」に対応したものだ。現在の若者は1日に何回もコンビニを利用するが、カルフールのような郊外大型店には年に数回しか行かない。必要なものは、必要な時に購入する。そういう傾向が強まっている。

カルフールの不振は、このような消費者の変化に対応せず、25年前と変わらないコンセプトによる売場設計を行っていたことによる。カルフールの場合、ペットボトル飲料を1本買うだけであっても、入り口から入って、売り場を抜け、ペット飲料のコーナーにたどり着き、それからレジに向かうと10分近くかかってしまう。買い物の断片化が進んでいる若者がカルフールに行かなくなるのも当然のことだ。

このような利用に対応するために、売場設計を大きく変えただけでなく、スマホによるスキャン決済も導入した。売場で自分のスマホでバーコードをスキャンして決済まで行ってしまう。決済完了の表示が出るので、レジ横のスタッフにそれを提示することで、そのまま外に出ることができる。

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▲蘇寧グループは、自社の蘇寧易購、蘇寧生活広場などと到家サービスを含めて統合し、サービス水準を高め、コストを下げていく計画だ。

 

近中遠で濃淡をつけた到家サービスが復活の鍵

しかし、カルフール復活の鍵となったのは「到家サービス」だ。新小売スーパーの成功の鍵となった「スマホ注文+短時間宅配」をカルフールでも始めた。

カルフールでは、店舗を中心として、近、中、遠の3つのゾーンに分けて、サービスを提供する戦略を立てている。近距離の顧客に関しては店舗にきてもらい、スキャン購入で商品1つから買ってもらう。

中距離の顧客には、半径3km圏内に1時間で配送する到家サービスを提供する。そのために、WeChatミニプログラムを新しくして、スマホから気軽に注文ができるようにした。

遠方の顧客には、市内翌日配送を提供する。このためには、カルフールは209カ所の前置倉(前線倉庫)を設置した。遠方の顧客には、この前置倉から宅配を行う。

カルフールは運も強かった。このような体制を整えたところで、新型コロナの感染拡大が始まり、到家サービスの需要が急増した。

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カルフールのWeChatミニプログラム。生鮮食料品などカルフールで販売しているものはすべて1時間配送してもらえる。これが復活の鍵となった。

 

新店舗展開も進めるカルフール

蘇寧グループは、独自に「蘇寧易購」「蘇寧生活広場」「蘇寧百貨」などの店舗、「蘇寧小店」「紅孩子」「蘇寧極物」などの新小売を運営している。すべてがうまくいっているわけではなく、特に新小売系では苦戦をしている。蘇寧はカルフールを得たことにより、到家サービスを融合させ、扱い商品点数を増やし、配送の効率化を図る計画だ。

蘇寧がカルフールを買収して1年。カルフール成都市、瀋陽市、北京市などに新店舗を5店開店した。1年前はフェードアウトすると見られていたカルフールが、再び成長軌道に乗ろうとしている。

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カルフール復活の鍵は到家サービス。半径3km圏内では、スマホ注文をした商品が1時間で宅配される。新型コロナの感染拡大が強い追い風となった。

 

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ライブコマース利用者の4類型と5つの対応策

まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 047が発行になります。


今年の11月11日独身の日セールも終わり、アリババの天猫(Tmall)では流通総額が3723億元(約5.9兆円)、第2位のEC「京東」(ジンドン)では2715億元(約4.3兆円)という予想を超える記録が生まれました。この他、流通総額を公開していませんが、ソーシャルEC「ピンドードー」も昨年の流通額を大きく上回ったと見られています。今年は、コロナ禍がどのように影響するのか不確定要素も大きく、関係者はまずは胸をなでおろしたことでしょう。

 

一方で、ECという販売方式がかなり金属疲労を起こしていることも確かです。セールが終わった翌日は「返品」という言葉の検索率が急激に上がります。返品率は明らかにされていませんが、メディアの報道によると、服飾品で30%以上、その他の生活雑貨でも30%近くという数字が報道されます。この数字の信憑性がどの程度のものなかはわかりませんが、多くの消費者は納得をします。実感と合うのです。それほど「購入してから返品」というやり方が一般的になっています。

 

返品をする理由はクーポンとの組み合わせの問題です。独身の日セールで多くの人が買い物をするのは、セール期間に買うと、大幅に得ができるからです。しかし、販売価格はさほど下がりません。むしろ、セール期間の割引率の数字をあげるために、9月、10月あたりからじわじわと価格が上がっていく商品もあるほどです。

得ができる理由は、大量のクーポン券で、基本になるのが満減券と言われるものです。これは「満300減40」であれば、「300元買うと40元割引」というものです。そのため、必要がなくてもクーポンが使える金額に達するために余計なものを購入せざるを得ません。そして、購入をした後、返品をするというわけです。

さらに、消費を促すため、中国の商店、ECの販売業者は「三無返品」制度を採用しているのが一般的です。三無返品とは「理由なし、現物なし、レシートなし」です。特にECの場合、購入記録は残っているので、カスタマー担当が返品の理由を聞くような高コストの対応をするよりも、さっさと返品を受け付けてしまった方が得策です。

日本の感覚だと、返品をするのは申し訳ない気持ちになる感覚がありますが、もはや中国ではその感覚はありません。賢い買い物のテクニックとして認知されていますし、販売業社の方も返品されることを織り込んで販売計画を立てています。

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▲WeChatで「返品」が検索された指数。10月中旬、11月11日など大型セールの後は「返品」で検索する数が跳ね上がる。

 

また、多くの人が、特に中年以上の年齢の高い層では「EC疲れ」が見られるようになっています。日本でもそのような傾向がある程度ありますが、クーポンを適用するには「◯◯円以上」であるとか、「この商品は対象外」「この商品と組み合わせると有効」「クーポンの併用はできない」などさまざまなルールがあって、その組み合わせを考えるのは、もはやパズルになってきています。

また、豊かになった中国都市部では、さほどほしいものがなくなってきています。それでもセールに驚異的な数字が出るのでは、この日に買うのが得というよりも、他の日に買うと損をするという感覚が生まれているため、日用の消耗品をまとめ買いしたり、なんとなく熱気に煽られて、何も買わないと寂しい気持ちになるので買うという人もいます。

このような事情は、もちろんアリババにしても、京東にしても気がついていることは間違いありません。そのため、今年の独身の日セールは、11月11日1日だけではなく、アリババでは11月1日から3日までの第1波、11月11日の第2波の2回に分けて行われました。京東や他のECでも2回に分けて数日間行われました。長期間にわたって、さまざまなイベントやプロモーションを行って、消費欲を刺激したのです。また、ECだけでなく、ライブコマースにも力を入れるなど、セールの内容を徐々に変えつつあります。

 

その中で注目されたのが、バイトダンスの「抖音」(ドウイン)がライブコマースで187億元(約2980億円)を売り上げたことです。抖音はショートムービーSNSサービスで、この国際版がTik Tokです。本家の抖音にはライブ配信の機能があり、これを利用したライブコマースが盛んになっています。

この187億元という数字は、アリババの1/10以下で極めて小さな数字ですが、バイトダンスが独身の日セールに参加をしたのは今年が初めてのことで、最初の年に187億元という数字は各方面の関係者を驚かせました。

なぜなら、アリババは2009年から独身の日セールを始めていますが、最初の年は5200万元で、4年目の2012年になってようやく191億元になります。つまり、抖音は最初の年で、いきなりアリババの4年目の記録に迫ったのです。

抖音は、以前からライブコマースに対応をしていましたが、実際の販売は淘宝網タオバオ)や京東に委託をし、送客手数料をもらうというものでした。しかし、今年2020年6月にEC部門を立ち上げ、自社で製品のEC販売も行うようにしました。その最初の大きな仕事が独身の日セール(バイトダンスでは抖音寵粉節と呼んでいる。愛しいファンのためのお祭りといった意味)で、初年度としては大きな成果をあげたのです。

 

このバイトダンスの参入が、関係者に衝撃を与えたのは、みな、どこかに「ECの時代は終わり、ライブコマースの時代になるのではないか」という不安があるからです。ライブコマースは、一時の流行ではなく、次のプラットフォームになる可能性があると見ているのです。

なぜなら、若い世代は、ECではなくライブコマースを利用する人が多いからです。タオバオライブの調査によると、ライブコマース利用者のうち、40%が90后と00后でした。90后は90年代生まれのことで20代です。00后は2000年代生まれのことで10代です。

若くてお金に余裕がないために、流通総額はライブコマース全体の1/3と少な目ですが、いずれ社会に出たり、地位が上がれば、購入量も増えていくし、購入金額も増えていくでしょう。

ライブコマースを好む若者が、中年になったら突然ECを使い始めるというのは考えづらいことです。中年になってもライブコマースを好むでしょう。つまり、ネットの小売業のプラットフォームは、ECからライブコマースに移り始めているのではないか。この数年でその傾向が進むのではないか。ここに多くの人が注目をしています。

 

この推測は合理的です。ウェブの使い方の変化を振り返ってみてください。インターネットが登場した頃は、「情報の大海をサーフィンする」などと言われ、ワード検索をして、情報を探し当てるという使い方が主流でした。しかし、スマートフォンが登場すると、情報検索のような使い方よりも、友人知人とコミュニケーションを取るSNS、著名人とも交流できるツイッターのようなコミュニケーションが主流の使い方になってきました。

ECは、商品専用の検索サイトです。「4Kテレビ」などのキーワードで検索をして、商品を探し当て、購入するかどうかを考えます。しかし、ウェブの使い方の変化を考えれば、信用できるインフルエンサーが商品を紹介してくれるライブコマース、友人知人が勧めてくれるソーシャルECに移るのではないかと考えることは、あながち間違いではありません。ネット小売業も検索の時代からコミュニケーションの時代に移っていくと考えるのは、きわめて妥当な予測です。

 

タオバオライブは「ライブコマース新世代人群洞察」という報告書の中で、ライブコマースを利用する典型的な若者像を分析し、販売業社はそのような若者に対してどのような施策を打つべきかというヒントを分析しています。

現在、ライブコマースでどのような人たちが利用をし、ブランド、メーカー、販売業者はどのような対応をしていくのか。もし、ライブコマースへの移行が、一時の流行ではなく、必然的な潮流であるのであれば、日本でも遅れてライブコマースの時代がやってくることになります。その時に、中国のライブコマースの実情を知っておくことは決して無駄になりません。

今回は、この報告書に基づいて、ライブコマースを利用する若者像をご紹介します。

 

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vol.044:貧困を撲滅するタオバオ村の成功例と失敗例

vol.045:SARS禍で生まれたEC。SARSで成長したアリババと京東

vol.046:デジタル人民元の仕組みとその狙い

 

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長征11号が海上発射に成功。商用衛星の低コスト打ち上げ時代が始まる

長征11号の黄海からの海上発射が成功した。海上発射であれば、衛星打ち上げに有利な低緯度地域から打ち上げができることになり、衛星の打ち上げコストが大幅に削減できる。長征11号の成功により、商用衛星の低コスト打ち上げ時代が始まると新華網が報じた。

 

長征11号の海上発射に成功

9月15日9時23分、長征11号ロケットの黄海からの海上発射に成功した。この長征11号は1ロケットで10機の衛星を打ち上げられるもので、そのうちの吉林1号衛星を高度535kmの太陽同期軌道に投入することにも成功した。

この長征11号ロケットは、中国航天科技集団所属の中国運載ロケット技術研究院が開発した固体燃料ロケットで、全長20.8m、最大直径2m、重量58トンという小型ロケット。主な用途は、衛星を地球低軌道または太陽同期軌道に投入することだ。

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海上で打ち上げられる長征11号。安全性も考え、船舶も無人化する技術も開発される。

 

最大10機の衛星を軌道投入可能

ロケット技術研究員の金鑫副総指揮によると、今回の長征11号の目的は2つあるという。ひとつは、ゼロ発射ウィンドウの技術を確立することだ。衛星を目的の軌道に投入する場合、その放出タイミングはわずか数秒に限定される。異なる10の軌道に投入する10の衛星を異なるゼロ発射ウィンドウのタイミングに次々と正確に放出をしていく必要がある。

もうひとつは海上発射の技術を確立することだ。商業衛星は将来海上発射が常態化をすることになる可能性が高い。低コストで衛星を打ち上げられるようになるからだ。

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▲今回の海上発射は、技術開発実験の目的もあるため、黄海の陸から近い場所で行われた。そのため、見物人も多く訪れた。

 

ビリビリ衛星も軌道投入される

今回の衛星群「吉林1号」は、吉林長光衛星公司が開発したもので、03C動画衛星3機と03B地上観測衛星6機が含まれている。この動画衛星のうちの1機はビリビリ動画衛星で、科学普及動画などの転送に利用される。

地上観測衛星は組みになって地上の観測を行うもので、林業、農業、海洋、資源、環境などに寄与をするものだ。

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▲この調整11号には、動画共有サイトの名前がついたビリビリ衛星も搭載されていた。動画を転送するのに使われるという。

 

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▲長征11号に搭載されたビリビリ衛星。ネット民からはアニメが宇宙から転送されると話題になっている。

 

低コスト発射に有利な固体燃料ロケット

長征11号は、小型の固体燃料ロケットであるということに意味がある。固体燃料ロケットは、液体燃料ロケットに比べて積載能力は低いが、機動性があるのが特長だ。液体燃料はロケットに注入したまま放置することはできず、発射予定が決まってから燃料を注入することになるので、準備時間が必要となる。しかし、固体燃料はロケット内に燃料を装填したまま待機ができるので、発射が決まってから1日かあるいはそれ以下の時間で発射が可能になる。

 

海上発射で衛星打ち上げコストは大幅に下がる

また、海上発射を行うことには3つのメリットがあるという。

1つは海上発射であれば、積載能力があがることだ。海上発射であれば、海上のどこからでも発射ができるようになる。赤道近くの低緯度地域に移動して発射をすれば、積載能力があがるのだ。

赤道付近では、地球の自転による遠心力を利用できるので、打ち上げに必要なエネルギーが少なくてすむ。同じ量の燃料を使うのであれば、赤道付近から打ち上げると積載能力が高くなる。

2つ目は、傾斜角の小さな軌道に衛星を投入しやすくなることだ。赤道から外れた高緯度の地域から打ち上げる時も、地球の自転エネルギーを利用して、東に向けて発射することになり、打ち上げ場所の緯度が高ければ高いほど、軌道傾斜角は高くなる。つまり、赤道に対して斜めに横切る軌道になってしまう。

これを修正するためには、打ち上げ後に燃料を使って軌道を変えていくしかなく、その分の燃料消費により積載能力が下がってしまう。

傾斜角の高い軌道は、赤道を斜めに横切る起動が周回するごとにずれながら地球全体をカバーしていく。そのため、地上観測をする場合、ある地点を再び観測できるようになるまでに時間がかかる。傾斜角の低い軌道であれば、観測したい地点の上空を何度も通過するようになり、多くの観測衛星では有利になる。そのため、赤道付近から打ち上げて、傾斜角の小さな軌道に投入したいというニーズが高い。

3つ目は安全性だ。地上打ち上げの場合、打ち上げ失敗による被害を防ぐため、陸地ではなく、海上に向けて発射せざるを得ない。海上から発射をすれば、ロケット落下想定地域のほとんどが海上となるため、安全性が大きく向上する。また、船上のスタッフの安全性を確保するため、ロケットの輸送から打ち上げまでのすべてのプロセスを無人化する技術開発も行われている。

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海上から打ち上げられるようになると、衛星打ち上げに有利な低緯度地域からの打ち上げが可能になり、衛星打ち上げコストを大幅に下げることができる。

 

低コスト海上発射で、商用衛星市場を狙う

つまり、今後の商用衛星の打ち上げは、海上発射が基本となっていく可能性があるということだ。赤道付近の海上から打ち上げることで、燃料が節約でき、傾斜角の低い軌道に投入することができる。長征11号の場合は、小型ロケットでありながら、同時に10機までの衛星を軌道投入することができる。衛星側から見れば、低コストで有利な軌道への投入が可能となる。中国はこの競争力の高い海上発射方式を今後も進めていく計画だ。

 

不正経理、上場廃止、コロナ禍でも、黒字化が見えてきたラッキンコーヒー

モバイルオーダーを先駆けて行ったカフェチェーン「ラッキンコーヒー」が復調している。創業わずか1年8ヶ月で米ナスダック上場をするという奇跡を起こした後、不正経理が発覚し上場廃止、さらにコロナ禍と苦難が続き、多くの人が倒産は秒読み段階だと見ていた。しかし、意外にもコロナ禍の中で売上を維持し、2021年には黒字化が見えている。その鍵は、オンライン流量を重視する考え方にあると燃財経が報じた。

 

コロナ禍でスタバとコスタは打撃。ラッキンは黒字化が見えてきた

中国のカフェチェーンは、スターバックスと瑞幸珈琲(ラッキンコーヒー)がトップの座を競い合い、それを英国のコスタコーヒーが追いかけているという図式になっている。

しかし、このコロナ禍で、スターバックスとコスタコーヒーが大きな打撃を受けたのに対して、ラッキンコーヒーは大きな損失を出していない。いったい何が違うのだろうか。

 

スタバ、コスタはコロナ禍で大規模縮小

コスタコーヒーは、北京、杭州、青島、南京などの店舗を大量閉店すると発表した。特に青島は40店舗を超え、閉鎖する店舗は全体の10%程度になる。

スターバックスも大きな打撃を受けている。2020Q3の決算は、店舗売上が40%減という史上最悪のものとなった。

さらに、スターバックスとコスタコーヒーの宅配業務を請け負ってい、自社ブランドコーヒーの販売も行う連珈琲(コーヒーボックス)は店舗をすべて閉鎖することを発表した。店舗の再開は未定で、スマホ注文+宅配のみの営業を続けるという。

コーヒーボックスは2014年に創業し、2017年に黒字化を達成した。実は、中国の大手カフェチェーンで、黒字化を達成しているのはスターバックスとこのコーヒーボックスだけだった。それがコロナ禍により一気に経営が厳しくなった。

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▲スタバのデリバリー+独自ブランドのコーヒーというビジネスモデルのコーヒーボックスもコロナ禍により、全店閉鎖を決めた。

 

不正経理は経営層の問題、現場には影響しなかった

一方で、誰もが終わったと見ていたラッキンコーヒーがしぶとく生き残り、通常営業を続けている。コロナ禍による大きな打撃の跡も見受けられない。それどころか、「戦略的に赤字を出す」状態から抜け出し、すでに店舗単位では黒字化を達成するところもあり、2021年にはチェーン全体での黒字化を見込んでいるという。

2019年5月、創業1年8カ月というスピードで、ラッキンコーヒーは米ナスダック市場に上場を果たした。しかし、上場から1年も満たない内に不正経理が発覚をして、強制的に上場廃止をすることになった。それ以来、多くの人が「ラッキンコーヒーはいつ倒産をするのだろうか?」と見るようになっていた。

しかし、ラッキンコーヒーの不正経理問題は、経営層の問題で、現場は何も問題がない。店舗コストを下げることで、その分を品質コストに回す。上質のコーヒーをモバイルオーダーまたはデリバリーで提供するというラッキンコーヒーの創業以来の強みは変わっていない。

実際、ラッキンコーヒーの店舗再開率は90%を超え、4000店舗以上が正常営業をしている。

 

カフェ以外の市場に活路を見出すコスタコーヒー

青島地区を中心に、全店舗の10%を閉店を発表したコスタコーヒーは、閉店はあくまでも質の高いサービスを維持するための措置で、中国市場から撤退することはなく、今後も状況を見ながら店舗拡大の機会を伺っていきたいとしている。

しかし、コスタコーヒーの不調は、コロナ禍以前から始まっていた。コスタコーヒーは「2018年に2500店舗」の目標を掲げていたが、いつの間にか、この目標は「2020年に900店舗」になったが、それも実現は難しく、現在400店舗程度となっていた。それが10%程度の閉店を進めている。スターバックスの4000店舗と比べると、その差は大きい。

コスタコーヒーは経営努力を続けている。2018年にはコカコーラの資本を入れ、2020年に初めてインスタントコーヒー製品の販売を始めた。また、2020年6月には健康・飲食家電製品メーカー「九陽」と提携をし、カプセル型コーヒーマシンを開発し、家庭市場にも参入をした。

2006年にコスタコーヒーが中国市場に参入した時、ライバルはスターバックスで、店舗数の拡大が大きな目標になっていた。しかし、次第に家庭などの店舗以外の市場に拡大をすることが目標となり、このコロナ禍で店舗拡大から市場拡大にはっきりと路線変更をすることになると見られている。

 

店舗体験重視が史上最悪の決算となったスタバ

中国で4000店舗を展開するスターバックスは、2020Q3の決算が史上最悪のものとなった。営業収入は42.2億ドルだったが、昨年同時期の68億ドルと比べると38.12%減となる。利益も6.78億ドルの赤字となり、昨年同時期の13.73億ドルの黒字から大きな減少となった。

理由は言うまでもなく、コロナ禍による営業自粛だ。4月には店舗売上が65%も減少した。6月になって店舗再開が進んでも16%の減少だった。スターバックスは、グローバル市場でも、今後18ヶ月で南北米の400店舗を、今後2年でカナダの200店舗を閉鎖することを発表している。

スターバックスは店舗のでコーヒー体験を重視するカフェチェーンだ。中国では、スマホ決済、モバイルオーダー、デリバリーと中国で起きている小売業の変化に対応をしていったが、そのタイミングは遅かった。その間に、ラッキンコーヒーなどの新世代のカフェチェーンの台頭を許してしまった。店舗体験を重視する伝統的な理念が、新サービスへの対応を鈍らせていて、これがコロナ禍で大きな打撃を受ける要因になったと見られている。多くの人が、スターバックスのコーヒーは店舗に行って飲むものと認識していることが仇になった。

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▲上海のスターバックスリザーブロースタリー。スタバは店舗体験を重視するため、モバイルオーダーやデリバリーに対する対応が遅れ、コロナ禍により史上最悪の決算となった。

 

モバイルオーダー、デリバリーが順調なラッキンコーヒー

コスタコーヒー、スターバックスの不調と対照的に、「いつ倒産するのか?」と言われていたラッキンコーヒーがコロナ禍により再生のきっかけをつかんでいる。

燃財経は、実際にラッキンコーヒーの店舗を取材した。北京市朝陽区の建外SOHO15号ビルにある店舗で、2フロアーもあるこの近辺では最も大型の店舗だ。月曜日の午後だったが、テーブルは満席で客数は15人ほど、常に7、8人がコーヒーの受け取りカウンターにいる。だいたい3分から5分に1人は新しい客が入ってきて、女性が多い。この他にもデリバリースタッフが常にコーヒーをピックアップにきている。

さらに朝陽区建国門外大街の中環世貿センターの店舗に移動した。ここは小型店舗でテーブルが3つしかない。ここでもテーブルには合計6人がいて、3人ほどがカウンターに並んでいた。スタッフによると、不正経理問題が発覚した直後は客数が減少したものの、その影響は限定的で、すぐに通常の客数に戻ったという。

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▲ラッキンコーヒーでは、コロナ禍でも、モバイルオーダーしたコーヒーの受取客が絶えなかった。

 

固定ファンを獲得していたラッキンコーヒー

ラッキンコーヒーでも、店舗の閉鎖は行っている。しかし、上場するまで「どこにいても徒歩5分圏内にラッキンコーヒーがある」状況を作り出すため、大量出店をしていて、ラッキンコーヒーの店舗同士のカニバリズムも起こり始めていた。そのような重複店舗の整理を進めていて、現在でも5197店舗を展開し、店舗数だけでは中国最大のカフェチェーンであることには変わりない。

不正経理問題が起きたのは、株価を不正に上げようとしたもので、企業としての信頼やイメージは悪化をしたが、事業そのものは影響を受けていない。店舗コストを下げて、上質のコーヒーを提供するという創業以来のコンセプトは確実に固定ファンを獲得していた。

 

ラッキンを応援するコアファンも多く生まれていた

北京市バリスタ養成学校「斯葵邇コーヒーラボ」の創業者、張宏氏によると、ラッキンコーヒーは大量のラッキンコーヒーファンを生み出し、その人たちの中では、毎日ラッキンコーヒーを飲むのが習慣になっていた。そのコアファンの間では、コロナ禍で「ラッキンコーヒーが飲めなくなる」ことを心配していたほどだという。

このようなコアファンが、コロナ禍でもデリバリーなどを積極的に注文をしたため、ラッキンコーヒーの注文数はコロナ禍でかえって伸びた地区もある。WeChatのラッキンコーヒー店舗ごとのグループも9000を超え、このような人たちが、ラッキンコーヒーを支えるために、友人の分まで注文をすることで、コロナ禍の売上を落とさずにすんだ。ラッキンコーヒーの会員の仕組みでは、注文すればするほど優待を受けられる仕組みになっているため、これも「友人の分まで注文する」行動を促していると思われる。

WeChatでこのような店舗グループに参加をしただけで、最初の1杯が38%の価格で注文できるクーポンがもらえる。ラッキンコーヒーでは、毎日3.5万杯のコーヒーを販売しているが、このWeChatグループの消費者は利用額が30%上がり、リピート率も28%上がるという。このWeChatグループ利用者は毎月60万人以上、現在でも増え続けている。

 

オンライン流量を重視するラッキンコーヒー

ラッキンコーヒーでは、コロナ禍になって、60種類もメニューを増やした。このような積極施策が、今までラッキンコーヒーを利用してこなかった新しい顧客の確保につながっている。

ラッキンコーヒーが、伝統的なカフェチェーンと異なるのは、売上よりもオンライン流量に注目をしていることだ。アプリ、WeChatミニプログラム、WeChatグループなどのオンラインの顧客チャンネルのアクティブユーザー数を重視し、クーポンなどを活用して、流量をあげる工夫に注力をしている。実体店舗の客数は、結局は周辺環境の人出の多さにより左右されてしまい、客数をあげる工夫をしても限定的な効果しかない。しかし、オンラインの客数=流量は施策次第でいくらでもあげることができる。流量を上げることで、そのうちの一定割合がコーヒーをモバイルオーダー、デリバリー注文することで売上を確保するという考え方だ。

この路面の客数よりも、オンラインの客数を重視するという考え方が、コロナ禍の影響を受けずに済むことになった。経営スキャンダルを起こしたラッキンコーヒーだが、コロナ禍を生き延びただけでなく、復活のきっかけにさえしようとしている。

 

 

EVを買って行動範囲が狭くなり、後悔をしている。ある滴滴出行運転手の本音

ガソリン車から新エネルギー車へのシフトを進めている中国だが、新エネルギー車の売上目標が達成できない状態が続いている。実際にEVに乗っているドライバーに本音を聞くと、やはり問題は充電だった。充電の煩わしさから行動範囲が確実に狭くなるという。EVを買った人は多くが後悔していると皆電が報じた。

 

目標を大きく下回っている新エネルギー車販売割合

中国乗用車市場情報聯席会(CPCA)の統計によると、2020年上半期の乗用車販売台数は約770万台。2月は元々春節休みで販売店が長期に休むため、販売量が少なかったが、今年2020年は新型コロナの感染拡大が広がり、歴史的な落ち込みとなった。その後、復調はしているものの、昨年と比べると、もうひとつ販売量が戻り切れていない。

このうちの新エネルギー車の販売割合は約3.8%。取得税の減免やナンバー取得の優遇などの措置があるが、まだまだ多くが商用利用であると見られている。中国工信部は、2018年に2020年の新エネルギー車の販売目標を全体の10%としていたが、目標達成はほぼ不可能になった。昨2019年も目標は8%だったが、実際は4.6%だった。消費者が問題を感じているのは充電問題だ。

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▲中国の乗用車販売台数(単位は千台)。2月、3月はコロナ禍の影響による落ち込みだったが、その後も昨年に比べると厳しい状態が続いている。完全に復調できたとは言い難い。中国乗用車市場情報聯席会(CPCA)の統計より作成。

 

EVを買って後悔している消費者の実際

皆電では、EV(電気自動車)に乗る滴滴出行のある運転手に取材をした。滴滴出行の運転手で生活をする39歳の啊全さんだ。啊全さんは広州汽車トヨタのEV「iA5」に乗り、ライドシェアの仕事をしている。

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滴滴出行の運転手をする啊全さん。EVは業務上はまったく問題ないが、私用の乗用車としては乗る回数がめっきり少なくなり、後悔しているという。

 

ーーなぜiA5を選んだのですか?

以前は、2017年式のレビンハイブリッドに乗っていました。この仕事をするときに、ハイブリッド車はライドシェアに利用できない規制があることを知って、EVを選ぶしかありませんでした。広州汽車トヨタの車は乗りやすいですし、信頼できるので、販売店で相談するとiA5を勧められました。試乗してみるといい感触だったので、購入を決めました。

 

ーーなぜ滴滴出行の運転手になったのですか?

以前は銀行のカードリーダーを販売する仕事をしていました。でも、給料は多くなく、子どもが生まれてお金がかかるようになり、仕事のかたわらウーバーの運転手をやりました。その後、滴滴の方が収入が多いことがわかり、滴滴の運転手をするようになりました。今は、販売の仕事をやめ、滴滴専業になっています。

運転手の取り分は75%前後です。乗車賃が10元であれば、7元余りが私の収入になります。

 

EVでも問題ない滴滴出行の業務

ーー1日にどのくらい働きますか?

1日で15回から20回お客を乗せます。滴滴の勤務時間は自分の自由ですが、だいたい朝9時半には仕事を始めて、12時から2時間ほど休憩をします。それで、夜はだいたい7時か8時ぐらいまで働きます。乗客が多い時はそれ以降も働きます。深夜2時まで働いたこともあります。

 

ーー1日に何kmぐらい走りますか?

300km前後です。iA5は満充電で510km走れることになっているので、仕事中は充電なしで走行できます。

 

ーー充電はどうしていますか?

自宅に充電設備がなく、借りている駐車場にも充電設備がないので、近所の充電ステーションを利用しています。夕食を食べる前に充電をして、食べ終わったら帰るという具合です。それで、翌日の走行に問題はありません。

よく言われるように、充電設備が壊れていたり、ガソリン車が占有していて充電できないということもありました。でも、充電ステーションそのものがだいぶ増えてきたので、そのようなことはあまり起こらなくなりました。

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▲仕事が終わると、夕食を食べている間に近所の充電ステーションで充電をする。数が増えてきたので、以前のような設備故障やガソリン車による占有の問題はだいぶ少なくなったそうだ。

 

家族はEVに反対、行動範囲は狭くなった

ーーEVを買うことに、ご家族は賛成されましたか?

妻は反対でした。EVの発火事故がよく報道されていたからです。でも、滴滴の仕事をするにはEVでなければならないからと説得しました。

週末にはこの車で、家族を連れて遊びに行きます。EVは静かで乗り心地もいいので、それから妻も何も言わなくなりました。発火事故が怖いからEVを買わないというのは、浮気されるのが怖いから結婚しないと言っているようなものだと妻に冗談を言っています。

 

ーー週末に乗る車としてのEVはいかがですか?

車で遊びに出る回数は確実に減ります。最大の問題は充電です。ハイブリッド車の時は、高速のサービスエリアで、コーヒーを飲んだりトイレを行ったりするついでにガソリンを入れることができました。でも、今は充電を待たなければなりません。観光地やホテルに行っても、充電設備のある駐車場はどこにあるのかを事前に調べておかなければなりません。それが煩わしくて、週末は次第に近所で遊ぶようになりました。

個人用の車としてはEVを買って後悔しています。以前のハイブリッド車の時はいろいろなところに行きましたが、EVにしてから自分の行動範囲が確実に狭くなっています。また、EVは販売台数が少ないので、修理やメンテナンスでも部品が取り寄せとなり時間がかかります。以前、後ろから追突されたことがありましたが、部品の取り寄せに時間がかかり16日間も乗れませんでした。

 

ーー次もEVを買いますか?

買いません。充電時間が短くなって、充電ステーションがガソリンスタンド並みに普及をしてから買うようにします。また、EVの多くは5人乗りですが、私の家族3人と、それぞれの両親、合わせて7人乗れる車が欲しいと思っています。そうなると、現実的な価格帯ではガソリン車しかありません。手ごろな価格であればハイブリッド車は考えるかもしれませんが、EVはしばらくは買わないと思います。

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▲家族で遊びに出かける啊全さん一家。EVにしてから遠出の回数は減り、自宅の近所ですごす時間が増えた。事前に充電設備の場所を確かめておかなければならないのが煩わしいからだ。

 

現実には多くの無理がある2035年のガソリン車販売禁止

EVの満充電走行距離も500km以上のものが一般的になり、利用する上で、ガソリン車と比べても何の問題もないと言われるようになっている。しかし、それは計画的に利用する場合の話だ。週末に遊びに行く時のように、無計画に「とにかく○○の方に行ってみようか」という使い方では、どこでもすぐにガソリンが補給できるガソリン車やハイブリッド車の方が向いている。EVは配送車、営業車という計画的に利用するのには向いている。そのため、未だに企業用として売れ、個人用の販売量が増えていかない。

中国は2035年に、ガソリン車の販売を禁止し、その時までに新エネルギー車の割合を50%にまでするという政策を発表している。しかし、数字的にも無理があるし、一般の消費者はまだまだEVの購入には及び腰だ。新エネルギー車にはEVだけでなく、ハイブリッド、プラグインハイブリッドも含まれている。このままでは、個人はハイブリッド車を選ばざるを得なくなっていく。

さらに、若い世代を中心に車離れも起こり始めている。郊外に住んで、週末に遠出をするライフスタイルから、都心に住んで周辺ですごすライフスタイルになりつつある。中国の乗用車がどの方向に進んでいくのか、先行きは不透明なままだ。

 

世界でトップシェアでも、中国市場では1%以下のサムスン。中国市場で売れない理由

現在、スマートフォンの世界シェアでトップなのはサムスン。しかし、中国市場ではわずか0.8%と風前の灯になっている。なぜ、サムスンは中国市場で売れないのか。それはサムスンが中国市場を軽視してきた結果だと騰訊網が報じた。

 

世界でトップシェアのサムスン、中国では1%以下

混沌とするスマートフォン市場。ファーウェイは米中貿易摩擦により、チップセットのグループ内調達が難しくなり、しばらくの間はパフォーマンスを落とさざるを得なくなっている。アップルは、懸案だったローエンド市場の獲得に対する対応に手をこまねいていて、シェアを伸ばし切れない。

その状況下で、漁夫の利を得るかのようにシェアを伸ばしているのがサムスンだ。Counterpointの統計によると、ワールドワイド市場でのサムスンは、1位の座を安定して確保している。2020Q2ではファーウェイに追いつかれたが、これはコロナ禍により世界的にスマホの需要が低迷する中で、中国ではいち早く需要が回復したことによる。今後、ファーウェイはシェアを落とさざるを得ないため、再びサムスンが安定の1位となる見込みだ。

しかし、サムスンは以前は中国市場でも20%以上のシェアを取り、最も売れている携帯電話だったが、現在は1%以下にまで落ち込んでいる。なぜ、サムスンは中国市場で、ここまで売れないのだろうか。

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▲Counterpointの調査によるスマートフォン世界シェアの推移。サムスンは圧倒的に強い。

 

フィーチャーフォン時代に人気機種だったサムスン

サムスンが中国市場で最も高いシェアを取っていたのは2013年。この時、中国の国産メーカーは「中華酷聯」時代と言われていた。中興(ZTE)、華為(ファーウェイ)、酷派(クールパッド)、聯想レノボ)が強かった時代だ。

この頃は、まだスマホがさほど普及していないフィーチャーフォンが主力の時代。フィーチャーフォンはほぼ電話だけの機能しかないので、品質の差があまり気にならなかった。電話させきちんとできれば、安い方がいいというのが一般的な考え方だった。また、携帯電話そのものも構造が単純であったため、数人のチームで携帯電話を製造し、電気街で売る「山寨機」も多くの人が利用していた。

当時の中国人にとって、中国メーカーの携帯電話は「性能はそこそこ、安い」というイメージで、海外メーカーの携帯電話が高級機=ハイエンドだった。サムスンモトローラソニー、HTCなどに人気が集まっていた。その中で、サムスンはハイエンドからローエンドまで多彩な機種を中国市場にも投入していて、中国でも人気が高まっていた。

 

スマホ時代になると小米、ファーウェイが台頭

しかし、フィーチャーフォンからスマホに主役が移ると、サムスンの地位が危うくなってきた。小米(シャオミ)やファーウェイなどの中国メーカーが、スマホを投入してきたからだ。サムスンもハイエンドのGALAXYシリーズ、ローエンドのAシリーズを投入してきたが、いずれも苦戦をした。

中国のスマホ市場の転換点となったのは、間違いなくシャオミの登場だ。価格は従来の中国携帯電話と同じく安く、一方でスマホとしての性能は高かった。ただし、シャオミはスタートアップ企業であったため、大量生産ができなかった。そのため、シャオミに刺激をされた消費者が、シャオミを買うことができず、他メーカーのスマホを買い求めるという現象が起きた。ここで、「シャオミからのおこぼれ」をうまく拾って、シェアを伸ばしたのがファーウェイだ。特に2014年のmate7は評価が高く、よく売れ、ミドルレンジ市場でのサムスンの居場所を奪ってしまった。

サムスンのGALAXYはシャオミとじゅうぶん対抗できる製品だったが、価格の点でシャオミとの競争力は弱かった。シャオミも製造体制を整え、大量に供給ができるようになると、ミドルレンジ市場でのサムスンの居場所を奪っていった。

 

ハイエンド市場ではiPhoneが圧倒的に強い

GALAXYは性能が高く、本来はハイエンド市場向けの製品だ。しかし、ここにはiPhoneという強敵がいる。iPhoneは、グローバルシェアでは3位だが、ハイエンド市場に偏っているため、ハイエンド市場でのシェアは圧倒的だ。中国でも2011年のiPhone4がよく売れ、以降、中国のハイエンド市場はiPhone一色となっている。ここでもサムスンの居場所はなくなっていった。

唯一、売れていたのが大画面を売りにし、タブレットスマホの中間を狙ったnoteシリーズだったが、これも2014年に大画面のiPhone6 Plusが投入されると、居場所を失っていった。

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サムスンGalaxy Note7は、連続して発火事故を起こし、回収をする事態となった。

 

発火事故で中国市場対応を誤ったサムスン

さらに決定的になったのが、2016年のNote7の発火事故だった。中国市場に対しては、明らかに対応を誤った。

8月24日に最初の発火事故が明らかになり、その後も発火事故が続いたため、9月1日に韓国市場での全面回収を発表した。しかし、中国市場ではそのまま販売を続けた。9月2日には、海外市場での全面回収を発表したが、この時も中国市場での回収は発表されなかった。

結局、発火事故は70件以上も起こっていることが明らかになり、多くの航空会社がNote7の飛行機内への持ち込みを禁止する事態になった。それでも、中国市場では回収をせず、そのまま販売を続けていたのだ。9月14日に、中国国家質量監督検験検疫局がサムスン中国と会談し、ようやく中国市場での回収が発表された。

その直後の9月18日に、中国国内でも発火事故が起きてしまう。

ところが、サムスン中国は、この事件に対して、「製品に問題はなく、外部からの加熱による事故」と発表した。これに中国のネット民が不満を述べると、韓国のネット民が反論するコメントをつけ、ネットは炎上状態となった。

さらに香港でも発火事故が起き、10月になって米国の販売店がNote7の販売を自主的に停止するに至り、サムスンはようやくNote7の全面販売停止に踏み切った。

なぜ、グローバル市場と中国市場で、サムスンの対応が異なっていたのかはよくわからない。それがサムスンの戦略上の問題なのか、サムスン中国の問題なのかはともかく、サムスンが中国市場を軽視していることは明らかであり、しかも発火をする危険性のある製品を販売し続けていたという事実が中国の消費者の記憶に刻まれた。

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発火事故を起こしたNote7。世界市場からは回収をしたが、なぜか中国市場では販売を続けていた。これにより、中国の消費者からの信用を失ってしまった。

 

なぜか中国市場を軽視するサムスン

それ以降も、サムスンは中国市場を軽視し続けている。例えば、新製品の予約販売を行うときに、サムスンは予約金として代金の一部を徴収する。購入をキャンセルした場合は返金がされるが、消費者としては面倒このうえない。

サムスンは、ローエンド、ミドルエンド、ハイエンドと市場のすべてのレイヤーで、中国メーカーやアップルに押され、居場所を失おうとしているところに、Note7発火事件で消費者の信頼を失った。それ以降も、中国市場軽視の姿勢を変えようとしない。

かつて20%以上のシェアを占めていたサムスンの現在のシェアは0.8%であり、多くの統計で「その他」に含まれてしまう状態になっている。しかし、それは、サムスンがそうなるように中国市場で行動をしてきた結果なのだ。

 

「無接触」をキーワードに再び投資家の視線を集める「無人タピオカミルクティー」

再び無人ビジネスに投資が集まり始めている。2017年にブームとなった無人コンビは結局フェードアウトしてしまったが、新型コロナの感染拡大により、無接触というキーワードが注目をされていると鉛筆道が報じた。

 

再び注目を集める無人スタンド「茶里小怪獣」

ロボットが作るタピオカミルティースタンドに投資が集まり始めている。このようなドリンクスタンドは、2017年に無人コンビニ、無人スーパー、無人カラオケなどの「無人」ブームの際に、無人コーヒー、無人ジューススタンドなどが登場した。自動販売機よりはやや規模が大きく、飲料を作る過程が見えるというのがポイントで、多くの投資資金を集めた。

しかし、無人コンビニを始めとする無人ビジネスは結局フェイドアウトしてしまった。ところが、2018年8月に創業した「茶里小怪獣」がタピオカミルクティー無人スタンドを開発し、ニューヨーク、パリ、香港などにオフィスを持つ投資会社「Invus」(インバス)が2300万元(約3.6億円)のエンジェル投資を行ったことが話題になり、同様の無人タピオカミルクティースタンドが現れ始めている。茶里小怪獣は、投資資金を得て、スタンドの改造を行い、11月にも新しいバージョン3.0を公開する予定だ。

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▲茶里小怪獣の店舗。ロボットアームが製造するところが見られるようになっている。その面白さと、きちんと作っていることがわかること、無接触であることなどから歓迎をしている消費者も多い。

 

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▲茶里小怪獣のタピオカミルクティー。人が作るよりも分量などは正確。

 

ロボットアームの製造プロセスも魅力のひとつ

茶里小怪獣は無人スタンドといっても、でき上がっているタピオカミルクティーを売る自動販売機ではない。ロボットアームが動き、1からタピオカミルクティーを作っていく。その動きも、茶里小怪獣の魅力のひとつになっている。

茶里小怪獣は、高紫梁と王司嘉の2人が起業した。高紫梁はマーケティング業界の出身。王司嘉はエンジニアで、上海冀晟自動設備で、150人のチームを率い、ロボットアームによる自動化システムを開発していた。

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▲すべてのプロセスはロボットアームが行う。人が手を触れないため、無接触というキーワードが話題になっている。

 

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▲ミルクも必要になってからパックを開ける。このようなプロセスがすべて見えることが安心感につながっている。

 

人件費よりも、スタッフ採用コストを下げることがメリット

2人が無人タピオカミルクティースタンドに狙いを定めたのは、タピオカミルクティー店のスタッフ採用コストだった。

多くの店舗は50平米ほどの広さで、12人のスタッフで、1日400杯を売るというのが標準になる。問題は、スタッフの定着率の悪さだった。年の離職率は128%にも登る。勤続3ヶ月がベテランと呼ばれる世界だ。

もし、客席もある大型店を100店舗展開すると、1店舗に50人ぐらいのスタッフが必要になるので、チェーン全体で5000人のスタッフが必要になる。これで離職率が128%のままであると、年に6400人を補充しなければならない。毎日20人弱を採用しなければならないのだ。

これでは人事担当者は激務になってしまうし、何より企業文化を構築する暇がない。それでは企業は長続きしない。

茶里小怪獣は、この問題を解決するために、ロボットアームによる無人店舗という答えにたどり着いた。

 

人よりもロボットの方が品質の高い製品を作れる

高紫梁は、チェーン店の人材採用のコストを不要にするだけでなく、飲料の品質にもロボットアームは貢献できるという。「タピオカミルクティーを作るプロセスは複雑です。お茶を淹れる、タピオカを煮る、ミルクを入れる、氷を入れるなどの作業プロセスがあります。これを人間が行うと、忙しい時には砂糖を多く入れてしまったり、お茶の抽出時間が長くなったりしてしまいます。それを防ぐには、マニュアルによる厳格な標準化と、それを守らせる教育が必要になります」。

しかし、タピオカミルクティースタンドでは、スタッフは作業の質が上がってきたところで辞めてしまう。ロボットであれば、いつでも同じ作業を行ってくれる。

 

損益分岐点は1日106杯

2018年8月、茶里小怪獣の試験営業を始めた。既存のロボットアームがタピオカミルクティーを作る。店舗は透明なアクリルに囲まれ、ロボットアームが制作をする過程がすべて見えるようにした。1杯18元で販売した。

2019年1月には、新開発のロボットシステムが完成をした。7種類の飲料を作ることができる。

このロボットシステムを使った第1号店を上海に開店した。ロボットアームの製造費用は35万元、店舗の広さは8平米、1日で500杯を作ることができ、損益分岐点は106杯だった。

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▲上海1号店は、物珍しさもあって、行列ができるほどの賑わいとなった。

 

有人スタンドの半分以下の期間で投資を回収できる

この無人スタンドには数々の利点がある。一般的なドリンクスタンドは最低でも20平米から40平米は必要で、上下水道設備を必要とする。しかし、茶里小怪獣は8平米で、上下水道設備を必要としない。そのため、出店場所の選択肢が大幅に増える。ショッピングモールの空きスペース、公園の中など、場所さえあれば出店できるため、家賃は大幅に下げられる。

もうひとつの利点は、投資の回収期間が短いことだ。一般的なタピオカ損益分岐点が1日約250杯で、大規模チェーン店では多少低くなり、個人営業店では高くなる。しかし、茶里小怪獣は人件費と家賃が大きく減るために、損益分岐点は100杯前後となる。つまり、投資の回収に必要な期間は半分以下になる。

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▲茶里小怪獣3.0の予想図。1杯を60秒で作れるというスピードアップが図られている。

 

「無接触」をキーワードして、再び投資熱が高くなる

2020年5月に、茶里小怪獣のロボットアームの第2世代が投入された。第1世代のロボットには砂糖の量を調整する機能がなかった。加糖か無糖かを選ぶしかなかった。しかし、第2世代では少なめ、半分を選べるようになった。製造できる品目も25品目に増えた。

現在、11月の第3世代投入に向けての開発が進んでいる。目標はタピオカミルクティー1杯を60秒で作ることだ。

再び、無人○○の投資ブームが起きる気配が生まれようとしているが、以前のブームとは質が違っている。以前は「無人なので人件費が節約でき、商品を安く販売できる」というものだったが、実際は商品の搬入、監視システム、顧客リモート対応などにコストがかかり、有人コンビニと比べて、コストが大きく圧縮できるというわけではなかった。そのため、ブームが弾けてしまった。

しかし、今回は、消費者側が「無接触で作った飲料を、無接触で受け取れる」という「無接触」が焦点になっている。以前のブームは、経営側のメリットが主導したものだったが、今回は消費者側のニーズが主導をしている。

そのようなことから、しばらくはこの「無人、無接触」ビジネスに投資がされることが続きそうだ。