中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

学食で勃発したアリペイvsプリペカード戦争

中国でも決済手数料を取る古い仕組みの電子マネーが学校や病院などに導入されている。しかし、決済手数料不要のQRコード方式スマートフォン決済「アリペイ」「WeChatペイ」への置き換えが始まっている。ある学食で、旧電子マネーへの反乱が起きたと明陽デジタルが報じた。

 

手数料ゼロのアリペイvs手数料5%の旧電子マネー

中国のQRコード方式スマートフォン決済「アリペイ」「WeChatペイ」は、QRコードを利用した決済方式であることばかりが強調されるが、キモは加盟店から決済手数料を取らず、付帯する金融機能などから収益を上げるビジネスモデルであるというところにある。このため、個人商店などでもスマホ決済に対応することができ、街中のどの店でも対応するという環境が生まれ、利用者はメインの決済手段として使うことができるというポジティブな循環が生まれた。

しかし、中国にもオールドエコノミーとも言える決済手数料で利益をあげるビジネスモデルの決済方式がまだ残っている。このような決済方式は、病院や学校、チェーン店など特定の業種に決済システムを提供し、売上の5%程度の決済手数料をもらうことで利益を出している。

そのひとつが、学校の学食向け決済システムで、「完美校園」というプリペイドカードだ。現在、雲南大学、河南工業大学、河南漢方医薬大学、上海立信会計金融学院などの大学、専門学校、高校などに導入されている。

あらかじめプリペイドカードにチャージをしておけば、学食で食事をするときに支払いを電子決済することができる。また、図書館で本を借りるときの学生証代わりにもなる。

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▲完美校園の決済端末。プラスティック製のプリペイドカードから、スマートフォンアプリに進化し、NFC(近接通信)により、かざすだけで決済ができるようになった。しかし、決済手数料5%の問題が、学食側と学生の反発を招くことになった。

 

決済手数料に対して起きた学生たちの反乱

この完美校園がアプリ化され、QRコード決済やNFC(近接通信)決済にも対応したが、いくつかの学校の学食で「反乱」が起きているという。

学生側にしてみると、あらかじめチャージをしておくのが面倒に感じられる。完美校園の決済は学食と学内キヨスクでしか使えない。お金の余裕があまりない学生たちは余分なチャージをしておくことができないので、学食に行くたびに、必要な金額を毎回チャージして、それから支払うというということをしている。これだったら、現金で支払った方がよっぽど早い。

学食の運営会社も問題を感じている。それは5%の決済手数料を取られることだ。それだけ売上が減ることになる。さらに、完美校園からの振込は、月末に一括して行われるため、その間の食材仕入れのための運転資金を準備しておく必要がある。ギリギリのコストでできるだけ安く学生に食事を提供したい学食としては、経営が厳しくなるばかりなのだ。

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▲学生たちの学内SNSの画面。「直接、食事代金をアリペイで送ろう。絶対プリペイドカードは使わない」「うん」「前に、食堂のおばさんが、学食は家賃が高いのに、決済手数料まで取られるので、商売が難しいと言っていたよ」「上級生は出前をとっているって。(完美校園は)ゴミアプリだよ」。

 

アリペイからも手数料を取ろうとする決済代行業者

学生も学食側も当然ながら、アリペイで決済をしたい。アリペイは街中どこでも使えるので、財布代わりに全財産をチャージしておいても問題ない。学食側は決済手数料を引かれることなく、代金をまるまる得ることができる。

しかし、完美校園は、学校と「すべての電子決済を代行する」契約をしている。そのため、学校側が完美校園に対して「アリペイ、WeChatペイにも対応してほしい」と申し入れたところ、完美校園は独自のスマホ決済アカウントを作成し、学生にはそちらに代金を送金する方式を提案してきた。完美校園側が決済を代行し、その後、手数料として5%を差し引いて、学食側に送金する仕組みだ。

これでは学生側の問題は解決されるが、学食側の決済手数料問題は解決されない。学食側がクレームを入れると、完美校園はスマホ決済の取り扱いを中止し、完美校園のプリペイドカードしか使えないようにしてしまった。

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▲学食に貼り出された完美校園の使い方ポスター。その上の「通告」には、QRコードスマホ決済「アリペイ」「WeChatペイ」への対応が停止されたと書かれている。この措置が学生たちの反乱に火をつけた。


ニセ告知で闇決済に走った学食と学生たち

学校名は明らかにされていないが、ある大学で、一部の学生たちがこの完美校園のやり方を問題にした。今時、アリペイが使えないというのも時代遅れだし、ショボいプリペードカードシステムを運営するだけで、食事代の5%を取っていき、学食の経営を圧迫していることにも憤りを感じた。

そして、その学生たちと学食のスタッフは、反撃に出た。隠れアリペイ口座を開設したのだ。

学食の窓口に「学生アルバイト募集。電話番号:xxxx-xxxx」という手書きの掲示が貼り出された。ところがこの募集告知は偽物で、アリペイで支払いたい学生は、告知にある携帯電話番号に代金を送金すれば支払うことができるのだ。この携帯電話は、学食スタッフのもので、決済手数料を引かれずに、まるまる学食の売上となる。

このことは、皮肉なことに、完美校園アプリの中にある学内SNS機能で、多くの学生に伝わった。学生はアリペイの方が便利だし、学食の経営を助けることにもなる。多くの学生が、完美校園を使うのをやめて、隠れ口座を使ってスマホ決済をするようになった。

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▲学食に貼り出された「招学生工」(学生アルバイト募集)の手書き告知。この告知は偽物で、この電話番号にアリペイから送金をすると、学食に直接アリペイでの支払いができる。

 

利用者志向でないサービスは破壊されていく

完美校園の対応は明らかにされていないが、当然、このような事態が起きていることは気がついているだろう。怒って、契約を解除してくるかもしれない。でも、ある程度の違約金を支払っても、契約を解除してしまった方がいいのではないかと学生たちは話し合っている。

QRコード方式スマホ決済は、教科書通りの破壊的イノベーションなのだ。

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「5年後、誰もスマホを使わなくなっている」byジャック・マー

アリババが、アリペイエアーと呼ばれる新しいテクノロジーのデモ映像を公開した。小さなプロジェクターで手の平に映像が投影できるというもので、これと生体認証を組み合わせると、スマートフォンがなくても生活ができるようになる。5年後、誰もスマホを使わなくなっているかもしれないと話題になっていると凍海科技中心が報じた。

 

ホラを次々と実現していく「ホラ吹きジャック・マー」

中国では、アリババ会長ジャック・マーのことを、敬意を込めて「ホラ吹きジャック・マー」と呼ぶことがある。ジャック・マーは「銀行が自ら変わろうとしないのであれば、我々が変えてみせる」「Amazon Goよりも先に無人スーパーを実現する」など数々の「宣言」を口にし、その度にネットワーカーたちから「ホラ吹き」と苦笑された。

しかし、ジャック・マーはその数々のホラを実現していってしまうのだ。今では、ジャック・マーのことを「ホラ吹き」だと言ってバカにする人はいない。ネットワーカーたちが「ジャック・マーがまたホラを吹いた!」と言う時、それはかなりの確からしさで実現されるという期待と敬意が込められている。

そして、最新のジャック・マーのホラが「5年後、誰もスマホを使わなくなっている」という驚くべきもの。にわかに信じがたいが、ジャック・マーの発言だからと、中国のネットワーカーたちはざわついている。

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▲アリペイエアーでは、手のひらに映像が投影される。チップ経由でネットにも接続されているので、ここから電話をしたり、SNSにアクセスすることが可能。

 

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▲自転車に乗っても空中にナビゲーション映像が表示される。

 

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▲アリペイエアーの世界では、コンビニの冷蔵庫を開けると、商品にオーバーラップする形で、商品名や価格などが表示される。この商品を手にとると、決済が行われる。

 

手のひらに映像が投影されるアリペイエアー

スマホを不要にする新しいテクノロジーとは、アリペイエアーと呼ばれるもの。小さなプロジェクターで、空中に映像を表示することができる。つまり、スマホがなくても、手の平の上に映像を表示して、スマホと同じように操作ができると言うものだ。

さらに、指紋や顔認証、静脈といった生体認証でアリペイの支払いができるようになっている。コンビニでは、冷蔵庫のドアを開けて、ペットボトルに手を伸ばすと、そのペットボトルにオーバーラップされる形で、価格や商品情報が表示される。そのペットボトルを手にして、冷蔵庫の外に出すと、自動的にアリペイで支払いが完了する。

ユビキタス社会そのもので、スマートフォンは不要になる。これを5年以内に実現すると言うのだ。


如影计划@阿里巴巴支付宝

▲アリペイエアーのデモ映像。発表されたのは、昨年の4月1日。アリババのエイプリルフールネタだったが、アリババは過去、エイプリルフールネタを実現したことが何度かある。

 

アリペイエアーはエイプリルフールネタだったのか

このアリペイエアーについては、実によくできたデモ映像が公開されている。しかし、この映像が公開されたのは、2017年4月1日、エイプリルフールなのだ。

「なんだ、エイプリルフールネタか!」とがっかりするのは早い。アリババは、過去6年、毎年エイプリールには未来的な技術を発表してきた。網膜認証、指を触れることで送金できる技術、写真やタトゥーなどをパスワードとして使える技術、必要なものを近くの他人にすぐ借りることができるアリペイエブリホウェア、ARグラスなどのデモ動画を公開してきた。

このうち、写真パスワード、アリペイエブリホウェアは、現実にサービスを提供しているのだ。その他のテクノロジーにしても、ニーズが大きくないからサービスインしていないだけで、技術的にはやろうと思えばやれるレベルには到達している。

つまり、毎年4月1日にエイプリルフールネタを公開しておきながら、反応を見て、ニーズがあるようなら現実にサービスを始めてしまう。


马云点赞的未来智能餐厅 不用买单 起身就走

▲アリババが実現しているスマートレストラン。テーブルがタッチパネルになっており、メニューが表示される。ここからタッチをして注文をする。こちらはエイプリルフールネタではなく、すでに実現されているもの。

 

一部実現済みのアリペイエアー

アリペイエアーも、一部はすでに実現済みだ。「無感支払い」と呼ばれる顔認証技術がいろいろなところですでに使われている。駐車場では、運転手の顔認証と自動車のナンバーを読み取って、停車するだけで決済が行われ、バーが開閉する。ケンタッキーフライドチキンと共同で杭州市にオープンしたレストランKProでは、顔認証で支払いができ、スマートフォンは不要だ。

アリペイエアーも、プロジェクターをどうするかという問題あるが、実現しようと思えば、実現できるところまではきているのだ。

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▲すでに実現されている無感支払い駐車場。ドライバーの顔認証とナンバー読み取りで、アリペイで決済され、バーが開く。

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未来は、想像よりも近いところにある

でも、こんな未来社会が本当にやってくるのだろうか。未来は、私たちの想像よりもずっと近いところにある。10年前、日本の評論家、識者と呼ばれる人たちは、アップルが発売したiPhoneを見て、「このようなものは、日本では主流にはならない」と口を揃えた。日本人は物理キーで文字入力することを好むし、日本のケータイはiPhoneよりもはるかに高性能、高機能だからという理由だった。しかし、わずか10年で、スマートフォンが生活の中心になり、ビジネスの考え方も180度変わった。

アリババは、3年前、「アリペイスマート都市の未来生活」というコンセプト映像を公開した。日常生活のすべてでスマートフォンを使うようになり、アリペイで決済をするようになるという映像だった。それから3年、今ではコメント欄にこう書かれている。「ここで描かれていることはもう普通のことになったよね」。

5年後、ジャック・マーのホラは、また現実になっているかもしれない。


支付寶錢包中的智慧城市未来生活

▲アリババが3年前に公開した「アリペイ・スマート都市の未来生活」。当時は、未来的だと思われていたが、この世界はすでに実現されている。3年前、中国人でさえ、こんな生活が3年後に実現するとは誰も思っていなかった。

 

 

わずか20年で2回もガラガラポンが起きた成都のスーパー業界

人類史上、これだけ短い時間の間に劇的な変化をしたというのは、中国の小売業以外にないだろう。わずか20年前には、個人商店と公設市場ぐらいしかなかったのに、今や成都市はスーパーの激戦区だ。しかも、20年の間にプレイヤーの総入れ替えが2回も起きている。その成都のスーパー史を媒食記が解説した。

 

15年前は、ガードマンが監視をしていた中国のスーパー

中国の小売業界は、常に荒波の中で変化をし続けている。それまで食品や日用品は、公設市場、個人商店で買うことが多かった中国に、カルフールやウォルマートなどの海外資本の大型スーパーが登場したのが、90年代なかば。それでも2000年代半ば、北京五輪以前は、このようなスーパーで買い物ができるのは、経済的余裕のある一部の市民に限られていた。

この頃は、出入り口にはガードマンが立ち、バッグはコインロッカーに預けてから売り場に入らなければならなかった。自由に商品を手に取れるというスーパーの販売方式が珍しかったために、万引きを警戒していたのだ。

それからわずか15年。今や、無人コンビニ、無人スーパーは珍しくなく、店舗規模も超大型店からキオスク規模までバラエティに富む。わずか15年で、ここまで変化をした国はそうはないのではないだろうか。

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イトーヨーカ堂の成功が成都市の小売業界に火をつけた

成都市の場合、最初のスーパーは国内系だった。1994年に登場した互恵スーパーだ。食品、日用雑貨などを売る店だ。

ところが、成都市の場合、他の都市と異なるのは、1997年にイトーヨーカ堂が進出をしてきたことだ。当初は、高級百貨店として開業し、価格も高く、成都市民にとっては商品も魅力が感じられなかったが、当時成都イトーヨーカー堂の社長だった三枝富博氏は、食品中心の品揃えにするという大きな方針転換をおこなった。三枝氏は、成都市民の家の冷蔵庫やゴミ箱を調査し、どのような食品が求められているかを分析、中国人の食習慣を前提にした品揃えにし、そこに日本的な実演販売、試食販売を組み合わせていった。価格は他の販売店よりも高いものの、イトーヨーカ堂は、高級食品を置いているスーパーとして成功した。三枝氏は、中国の流通を改革した人物として中国国務省から表彰されている。

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成都で最初に登場したと言われる互恵スーパー。当時としては大型店で、自分で商品をピックアップするセルフ方式は目新しいものだった。

 

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成都のスーパー史にとって大きかったのが、イトーヨーカ堂の成功。高級百貨店としてスタートしたが失敗、すぐに高級食品スーパーに方針転換をし、これが成都市民に受け入れられた。勝因は、徹底した市場調査と素早い決断だった。

 

日仏港台米の外資系スーパーの激戦区に

このイトーヨーカ堂の成功を見て、にわかに成都はスーパーの激戦地になった。2003年にフランスのオーシャン、カルフール、香港のパークンショップ、2006年に米ウォルマート、2012年には台湾の永輝と、ほぼすべてのブランドが成都市に参入した。

そして、激しい価格競争、品質競争をしていくが、これは成都のスーパー史では1.0時代と呼ばれ、その後の激変の序章にしかすぎなかった。

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▲フランス系大型スーパー、カルフール。当初は大量の品揃えで大人気だったが、ECサイト登場後の変化に追従できず、現在は売上不振に苦しんでいる。

 

ECサイトの隆盛で、既存スーパーは一気に経営不振に

スーパー激変のきっかけは、ECサイトの流行だった。中国人がスーパーでいちばんよく買うものは食用油だ。中華料理は油を大量に使うので、大量に買わなければならない。しかし、自分でスーパーに行って油を買い、持って帰るのは、なかなかの大仕事だ。そこで、油はECサイトで買い、宅配してもらう人が増えていった。

もうひとつは、消費者の生活レベルが上がり、安売りセールの効果が薄れていったことだ。安くても質の悪い食品は買わない。多少高くても美味しい食材を求めるようになっていった。

大量に仕入れて安く売る、目玉商品で消費者を引きつけて、ついでにその他の商品を買ってもらい利益を出すという手法が通じなくなった。

このような変化に、国内系スーパーは比較的よく対応していったが、外資系スーパーはどうしても対応が後手に回った。本社の決済を必要とするため、決断に時間がかかるからだ。そこで、外資系スーパーから、経営不振の波が始まった。

2016年には香港系のパークンショップが閉店をする。その他のカルフール、ウォルマートなどは営業を続けているが、経営は非常に厳しい状態になっている。

成都スーパー史2.0時代は、大手外資スーパーの凋落のステージとなった。

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▲香港系のパークンショップは、ECサイトの影響と消費者の嗜好の変化に追従できず、撤退をすることになった。

ECサイトには真似できないコンセプトのスーパーが登場

現在、成都市のスーパー史は3.0時代に突入し、再び出典ラッシュとなり、激しい競争が始まろうとしている。

今、集中しているのは「ECサイトでは買えないもの」を売るスーパーだ。ECサイトがどうやっても売ることが難しい食品、それは生鮮食料品だ。今年2018年初め、アリババ参加の「盒馬鮮生」(フーマー生鮮食料)だ。エビ、蟹などの海鮮を中心に販売するスーパーで、周囲3km以内に30分配送も行う。売り場で調理加工もしてくれ、支払いはスマホ決済、イートインコーナーでそのまま食べることもできる。海鮮の売り場とレストランが合体したような新業態だ。内陸部である成都市で、新鮮な海鮮料理が食べられることはかつてなかったことで、成都市民の間で早くも大人気になっている。

一方で、この時期に伊勢丹成都に参入した。4月8日に開業したばかりで、「食の安心、安全」をコンセプトに、日本食品と中国食品を販売する。イートインコーナーも用意し、その場で食べることもできるようになっている。

この伊勢丹のスーパーもECサイトを強く意識している。専門店街には、ベーカリーのジョアン(その場で焼き上げる)、山本精肉店などECサイトでは購入できない商品を中心にしている。

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▲現在、人気となっている海鮮スーパー「盒馬鮮生」。新鮮な海鮮食材を買うことができ、イートインコーナーですぐに食べることもできる。これもECサイトには真似ができない業態。

 

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伊勢丹の中に出店したベーカリー「ジョアン」。その場でパンを焼き、焼き立てを食べることができる。伊勢丹は、ECサイトにはできないことを中心にしている。

 

小売業の寿命は10年以下。生き残る鍵は決断スピードの速さ

このような状況は、中国の他都市でもおおよそ似たような状況だ。沿岸部では、これにさらに無人コンビニ、無人スーパーも加わって、激しい消費者獲得競争を繰り広げている。

忘れてはならないのは、最初のスーパーが登場してわずか20年の間に、2回もプレイヤーが総入れ替えになるという「洗牌」(麻雀用語でシャッフルの意味。中国では市場の激変を表現するときによく使われる表現)が行われていることだ。つまり、新しいコンセプトで成功をしても、10年は持たないということだ。

重要なのは、市場の変化に追従できる決断スピードの速さだ。それが遅れるスーパーは、振り落とされていく運命にある。

 

海外で苦戦。限界が見えてきた中国スマホ決済「アリペイ」「WeChatペイ」

中国では決済手段の主流となっているQRコードスマホ決済「アリペイ」「WeChatペイ」。しかし、国内での成長が頭打ちになりつつあり、出口を海外に求めているが、その海外での普及率が上がらない。原因は、現地の決済習慣を変えることの難しさだと鉄媒体が報じた。

 

日本でサービスインできなかった日本人向けアリペイ

アリババは、今年の4月から、QRコード方式スマホ決済「アリペイ」サービスを日本で開始すると宣言をしていた。すでに、訪日中国人観光客のためのアリペイサービスは提供されているが、こちらは日本人向けのアリペイだ。当面は、日本国内でのみ使えるサービスだが、時機を見て中国本土のアリペイと連結し、日本、中国、そしてゆくゆくはアリペイ提供国すべてで利用できるようにする計画だった。

しかし、日本の銀行業界との交渉が不調に終わり、投入時期は延期となった。日本の銀行が問題視したのは、決済履歴情報が、中国企業であるアリババに流れてしまうということだった。これはビジネス上も、安全保障上も大きな問題となる。

三菱UFJ銀行三井住友銀行みずほ銀行は、それまで各自開発を進めていたQRコードスマホ決済を、連携して統一したシステムにすることを発表した。アリペイ上陸に危機感を覚えた三行が、アリペイ上陸の前に日本オリジナルの決済方式を普及させ、アリペイがシェアを奪う余地をあらかじめ消しておきたいのだと思われる。

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▲日本でもローソンなどがアリペイに対応している。しかし、日本人は利用することができず、中国人観光客向けだ。

 

アリペイ海外進出の3段方式

アリペイ、WeChatペイは、すでに都市部での普及は完了し、現在は農村部への浸透を進めている。次にやるべきことは海外進出だが、両者とも3つの方式で海外進出することを狙っている。

1)中国人観光客のためのアリペイ:日本でもインバウンド関連の店舗の多くがすでに対応している。

2)技術プラットフォームを提供し、ローカル決済方式として。インドのペイティーエムが有名で、すでに1億人以上の利用者がいて、2020年には5億人の利用者を見込んでいる。

3)日本で企画されていた、現地人のためのアリペイ。

このうち、1と2は好調で、アジア圏を中心に成長しているが、3の「アリペイの輸出」が苦戦をしている。理由は「水が合わない」からだという。

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▲インドのQRコードスマホ決済「ペイティーエム」。すでに1億人が利用していて、現在も急成長中だという。アリペイをベースにインド向けに改良したもの。

 

シンガポールでは使うのは中国人ばかり

シンガポールには、すでにアリペイが進出している。旅行に行った中国人も、現地のシンガポール市民もアリペイが利用できる。街中は、アリペイのロゴで溢れている。商店の多くが対応し、アリペイに対応したことを唄っているタクシーも多く走っている。

ある商店主は、鉄媒体の取材に応えた。「アリペイを使っているのは、やはり中国人旅行客で、現地の人はほとんど使いません」。

現地でアリペイ事業に従事する社員は、鉄媒体の取材に応えた。「現地の銀行は、アリペイを支持していません。銀行発行のデビットカードを支持しています。なぜなら、デビットカードであれば現金が必要な時に、顧客が銀行を訪れてくれるからです」。

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シンガポールでもアリペイが使える店は増えている。しかし、利用するのは多くが中国人旅行者で、現地の市民はクレジットカード、デビットカード、現金を使うという。

 

現地の人の決済習慣を変えることは難しい

また、決済習慣を変えることも難しい。特に東南アジアでは、電子決済に不安を感じている人が多く、現金決済を好む人が多い。ペイパルが以前シンガポールで行った調査では、90%の人がスマホ決済よりも現金決済を好むという結果が出た。結局、現金と近い感覚で利用できる電子決済であるデビットカードが選ばれる結果になっている。

20代のシンガポール市民であるマンディさんは、鉄媒体の取材に応えた。「普段はクレジットカードと現金を使っています。スマホ決済は、QRコードをスキャンしなければならず、便利だとは感じませんでした」。

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▲香港でもアリペイはサービスを始めているが、なかなか利用率は上がらない。街中を「香港でもアリペイは使える」という広告をつけたタクシーが走っているが、効果は上がっていないようだ。

 

クレジットカードの逆襲

もうひとつの壁が、クレジットカードも進化しているということだ。マスターカードは、シンガポール指紋認証可能なプラスティックカードを投入している。あらかじめ銀行で指紋登録をする必要があるが、それをしておけば、カードを使用するときに、右上の矩形部分に指を置いて、カードをタッチすれば、暗証番号などを入力する必要なく決済が可能になる。

さらに、Apple Payも普及をし始めていて、使っている人をよく見かけるようになっているという。

中国の場合、クレジットカードが普及せず、電子決済といえば、デビットカードである銀聯カードの時代が続いた。銀聯カードは、カードリーダーに差し込んで、暗証番号を入力しなければならない。また、加盟店も決して多いとは言えなかった。

そこへ登場したQRコードスマホ決済は、極めて便利なツールに見えた。QRコードをスキャンし、スマホ指紋認証で決済が完了する。加盟店もほぼ100%ちかい。

しかし、海外では、クレジットカードが普及をしていて、クレジットカードも指紋認証に対応したり、Apple Payに対応するなど、利便性を高めている。そういう地域では、アリペイの優位性がさほど大きくなくなってしまうのだ。

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マスターカードなどが投入している指紋認証付きのカード。登録した指をセンサー部分に置いて、決済処理をする。

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指紋認証つきカードの模式図。右上の黒い部分が指紋センサーになっている。

 

苦戦する中国スマホ決済の海外展開

現在、アリペイは38の国と地域でサービスを提供し、加盟店は数十万店。WeChatペイは25の国と地域で、25万店程度。サービス提供国の数は多いが、加盟店数はあまりにも少ない。

国際カードブランドであるVISAとマスターは、加盟店数が世界でそれぞれ3850万店。中国スマホ決済の海外普及はこれからだとは言え、あまりにも遠い数字だ。

すでに中国スマホ決済の中国国内普及には頭打ち感が出てきている。都市部では90%、農村部ではこれからだが、消費力の小さな農村部に普及をしても、成長率は鈍ることになる。

出口は海外市場しかないのだが、思わぬところで、中国スマホ決済の苦戦ぶりが見えてきている。このハードルを超えることができるだろうか。アリババ、テンセントの企業としての真価が問われることになる。

 

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宅配企業「順豊」が無人飛行機の運行免許を取得。宅配は無人配送へ

宅配企業「順豊」が中国で初めて無人飛行機の運行免許を取得した。順豊は、2012年から構想していた航空機による物流全国ネットを構築して、全国どこでも36時間以内配送を実現することになると人民日報が報じた。

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大型貨物機+無人飛行機+ドローンによる配送ネットワーク

順豊が取得した運行免許は、自社開発の無人飛行機AT200のもの。この無人飛行機は、最大航行距離2000km、10立方米、1.5トンの荷物を積載して、時速260kmで飛行できる。

順豊は2012年から飛行機による宅配便ネットワーク構築を進めてきた。すでに41機の貨物専用機を保有している。また、各種ドローンも開発、積載量数kgから数十kg、最大飛行距離数十kmから100km程度までの複数のドローンを開発済みだ。

順豊の構想は3段階物流だ。すでに保有している有人貨物機で基幹ネットワークを構築し、配送拠点から末端拠点まではAT200などの無人飛行機で運ぶ。末端拠点から各戸まではドローンで配送するというものだ。

これで全国どこでも36時間以内の配送を実現する。

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▲飛行場から、末端拠点を結ぶ無人飛行機AT200。最大航行距離2000km、10立方米、1.5トンの荷物を積載して、時速260kmで飛行できる。

 

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▲順豊は、すでに貨物専用機を41機保有している。これで基幹路線を結び、支線部分を無人飛行機、そこから各戸への配送をドローンで行う計画だ。



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▲順豊が開発したドローン。末端拠点から各戸までの配送を受け持つ。積載量に応じた複数の機種をすでに開発済み。

 

人民日報が指摘する3つの問題

このAT200は、1000m程度の低空を飛行する。人民日報は、1000mの空中資源を利用するため、無人飛行機やドローンの利用は有望だとしながらも、3つの乗り越えなければならない壁があると指摘する。

一つは安全性の問題だ。無人飛行機やドローンによる事故率を合理的な範囲に収めるには、まだ無人操縦の安全技術は不十分なのではないかという。2つ目は、輸送量を安定させられるかどうかだ。航空機輸送は天候の影響を受けやすい。風、雨、雪、霧、黄砂といった自然現象により、飛行ができないことも多い。このような天候不順が続いた場合でも、安定して輸送できる手段を講じておく必要がある。

3つ目が、政策要因だと人民日報は指摘する。無人機輸送については、中国政府はまだ模索をしている段階で、今後も推進していくかどうかはまだわからない。政策が別の方向に動くこともないとは言えない。

しかし、中国は広すぎるため、全国短時間配送を実現するには、何らかの方法で飛行機を利用する以外にない。中国版新幹線の高速鉄道を利用するアイディアも提唱されているが、輸送量と輸送時間に難がある。一方で、飛行機の操縦は有人であっても、遠隔操縦であっても簡単ではなく、操縦士の育成には時間とコストがかかる。そうなると、やはり、無人飛行機、自律航行する貨物機が必要になってくる。

大手ECサイト「京東」も、全国各地にドローン飛行場を作り、順豊と同じようにドローン配送を計画している。

中国の宅配輸送は、いずれにしても無人機、ドローンを利用する方向に進んでいくことになる。

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▲順豊は、SFエクスプレスという名称で、日本でもサービスを提供している。コーポレートカラーの黒い車が都内を走っている。

 

大型郊外店から都心小型店へ。中国ウォルマートの戦略が変わった

中国市場で、都市郊外に大型店舗を展開していたウォルマートが、都心に小型店を出す戦略転換を始めた。ECサイト無人コンビニの台頭、人々の都心回帰などで、大型郊外店の経営が苦しくなっているからだ。カルフールや国内系「永輝」も同様の戦略をとっていると好奇心日報が報じた。

 

大型郊外店を展開したウォルマートとカルフール

中国のスーパー分野は、ウォルマートとカルフールがリードしている。ウォルマートは1996年に深圳に1号店を開いて以来、現在21の省と4の直轄市に408店舗を展開し、売上は767億元に達する。カルフールも1996年に上海と新鮮に開店をし、21の省と4の直轄市に236店舗を展開し、売上は286億元に達する。

いずれも日本で言えば、郊外の大型店だ。大きな駐車場を備え、週末にまとめ買いをしてもらうことを狙っていた。売り場面積は15000平方米前後で、400台前後の駐車場を備えるという店舗が一般的だった。しかし、ウォルマートは、中国での店舗戦略を大きく変更する。

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都心の若い世代を狙う小型店

ウォルマートは深圳市に、ウォルマート恵選店の営業を始めた。恵選店とは「いいもの選びました」という意味合いで、店舗面積は1200平米と小さく、商品点数も8000点程度。しかし、そのうちの7000店ほどの商品は、ECサイト「京東」と提携して、店舗から2km以内の地域に、最短29分で配送する。

恵選店のメインターゲットは、都市部の若い夫婦や単身者だ。入り口から入ると、野菜、果物がまず目に入り、次に半調理品、冷凍食品と続く。一食分の食材を買うことを想定している。

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▲ウォルマート恵選店。ウォルマートのブランドは、中国人にとってはすでに馴染みがある。しかし、今までは郊外店が多かったので、車で行くという感覚だった。恵選店は徒歩圏内にあるウォルマートになる。

 

都市の拡大は、外から上へ

中国の都市は、1990年代から、地下鉄と都市高速道路が延伸され、都市は外に向かって、拡大していった。それでも農村から大量の人口が流れ込み、都市の成長は止まることがなかった。この時代には、郊外の大型スーパーに自動車で買い物に行くというのが人々の憧れになった。

しかし、2008年の北京五輪を境に状況は変わり始めた。地方の中規模都市が発展を始め、農村人口を受け入れる器が分散をし、大都市は拡大ではなく、居住環境を高める方向に発展し始めた。建築物はより高層化され、周辺には緑地が整備され流ようになった。

現在、若い世代の理想的な生活スタイルは、都心の企業に勤め、徒歩圏内にあるマンションに暮らすというものだ。このような生活スタイルを支えたのが、コンビニとECサイトだった。買い物は帰宅途中にコンビニで食材を買い、生活用品はECサイトで宅配してもらう。

ウォルマート恵選店は、このようなニーズに応えようというものだ。

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▲ウォルマート恵選店の店内。小型店といっても、日本の感覚からすれば大きめのスーパーになる。

 

過去に何度も挑戦した都心小型店

当然、電子タグによる自動精算、WeChatペイによるセルフレジが導入されていて、レジの行列に並ぶ必要はない。さらに、行政サービス、生花の予約、クリーニング、衣服の補修、スペアキー作成など、多くの生活サービスも用意されている。

ウォルマートは、年内に広州市と東莞市に5店舗の恵選店を回転する計画だ。

しかし、この戦略がうまくいくかどうかは不透明だ。恵選店のモデルになっているのは、米国で展開した小型店ウォルマートエクスプレスだが、経営不信により閉店している。中国でも2009年に3店舗の小型店舗を開業したが、2012年に閉店をしている。その後、ゲートコミュニティマンション内に小型店を展開したが、これも売上は上がっていない。

従来の小型店舗は、コンビニに対抗するため、低価格商品を中心にしていた。この考え方を改め、都心部に住む中流以上の消費者を取り込むため、質の高い商品を取り揃えた小型店を昨年武漢市と昆明市にテスト展開してみたところ好評だった。それを受けて、恵選店の展開を始めた。

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▲ウォルマート恵選店のセルフレジ。この他、行政サービスやクリーニングなど生活関連のサービスが整っている。

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スーパーとコンビニの間を埋める

その背景にあるのは、百貨店や大型スーパーの不振だ。人々の生活が都心回帰を初めていること、コンビニや無人コンビニなどが急速に増えていることから、伝統的な小売業の経営環境が急速に悪化している。ウォルマートは、中国市場での生き残りをかけて、恵選店戦略を初めている。

カルフールも、2014年からゲートコミュニティマンション内に小型店カルフールイージーを展開している。上海市無錫市に39店舗を展開している。売り場面積は400平米、商品点数は4000程度だ。国内系スーパー「永輝」も19の省市に580店舗を展開しているが、300平米程度の小型店「永輝生活」をすでに170店舗展開している。2020年までに1000店舗に増やす計画だ。

日本のコンビニの多くは売り場面積が100平米から150平米程度だ。つまり、ウォルマート、カルフール、永輝生活の小型店は、大型郊外スーパーとコンビニの間を埋めるものになる。

生活小売は、スーパーとコンビニ、地元店の3つ巴の激しい戦いとなっている。

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▲国内系スーパーの小型店「永輝生活」。売り場面積300平米と大型コンビニ程度の感覚だ。イートインコーナーなどもあり、コンビニと真っ向からぶつかる。

 

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カルフールEasy。カルフールは古くから中国市場に参入し、中国名も「家楽福」(読みは原音のカルフールに近くなる)という漢字を使い、店舗も中国人に馴染みのあるオーソドックスなデザインを採用していた。小型店Easyでは、一転して高級感、先端感のあるデザインを採用した。

 

創業100年のパナソニックが、中国市場で品質問題危機

中国でパナソニックが製造したテレビ1.5万台のリコールが実施された。パナソニックは世界中でリコールが続いており、中国でのブランドイメージは低下の一途をたどっていると証券日報が報じた。

 

中国で1.5万台のテレビをリコール

中国国家品質検査総局は、中国松下電器(中国パナソニック)の製造したテレビ1.5万台をリコール指定したと発表した。台座部分の樹脂材料の強度が不足していて、自重により台座部分が変形をし、テレビが傾き、転倒の危険性があるため。

中国パナソニックは、該当するテレビを回収し、台座部分を補強する修理を無料で行う。該当するテレビを使っている消費者に、使用をすぐに中止して、サポート窓口まで連絡をするよう呼びかけている。

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▲中国でリコール対象となったパナソニックスマートテレビ。台座部分の強度に問題があり、最悪転倒する。

 

中国人も心配する最近のパナソニック

危険度も高くなく、中国ではよくあるリコール措置で、珍しくもなんともない話なのだが、メディアでは大きな話題となった。なぜなら、世界中でパナソニックのリコールが続いているからだ。パナソニックは、今年創業100年を迎えるが、その記念すべき年に、パナソニックはどうしてしまったのか?と嘆きの声があがっている。

中国市場で、パナソニックは、日本製品の品質の高さを象徴する企業だった。そのため、中高年には日本の家電製品のファンが多い。しかし、品質問題が起き、中国市場での存在感が急速に低下している。

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連続するリコール、中国市場でのシェアも低下

最近、パナソニックはノートPC「レッツノート」のバッテリー発火問題で、116万台をリコールした。これは2014年、2016年に続いて4回目のリコールとなる。

今年2月には、日本で97万台の電子レンジをリコールした。部品の品質に問題があり、2人の日本人が金属片が混入した食品を食べて口を怪我した。

中国市場でも、すでにパナソニック製品に対する信頼感は失われている。以前は、品質の高い家電と言えば「日本のパナソニック」という時期があったが、すでに冷蔵庫、エアコン市場ではシェアトップ10から外れ、洗濯機市場でも苦戦をしている。全方面で負け戦を展開している状態だ。

 

コスト削減が品質低下を招いているのか?

ある業界に詳しい人物は、中国経営網の取材に応えた。「経営が苦しくなると、品質の低い部品と原材料を使うことが、パナソニックのコスト削減方法のひとつになってしまっているのです」。

またある消費者は、体験を証券日報の取材で語った。「購入したノートPCがリコールになったので、サポート窓口に連絡をしましたが、担当者が不在という理由で連絡をもらえません。いまだに連絡をもらえていません。パナソニックは消費者の基本的権利や生命財産の安全を軽視していると感じました」。

中国家庭用電器商業協会の張剣峰服秘書長は、証券日報の取材に応えた。「企業が主体的にリコールをすることは悪いことではありませんが、パナソニックの場合、頻度と影響台数が多すぎます。製品の品質そのものに問題があると言わざるを得ません。パナソニックは、近年品質とサポートの質を上げる努力をしていますが、その効果はまだ出ているとは言えないでしょう」。

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▲中国での温水便座の広告。「百年松下」をセールスポイントにしているが、中国の消費者は不安を感じている。


撤退、縮小を憶測するメディア。否定する中国パナソニック

パナソニックは、現在経営改革を行っており、企業向け製品=BtoB製品へ軸足を移そうとしている。そのため、家電の生産、販売、サポートの仕組みを低コストのものに再構築中だ。その最中に、このような問題が起きている。

中国のメディアの中には、パナソニックは中国市場から撤退または大幅縮小をするのではないかと観測する向きもあるが、中国パナソニックは強く否定をしている。

昨年4月、パナソニックは中国パナソニックのトップである総経理に初めて中国人を任命した。中国はパナソニックにとって、すでに米国に次ぐ大きな市場になっていて、2020年に中国市場で200億元の販売目標を立てている。

中国にまだ一定数いる日本家電の愛好者は、パナソニックが復活することを望んでいる。100年企業のパナソニックは正念場を迎えている。