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ライドシェア滴滴出行は、日本で成功することができるか?

中国ライドシェア大手の「滴滴出行」が大阪でサービスを始めている。ただし、ライドシェアではなく、滴滴のプラットフォームを利用したタクシーサービスだ。日本でも滴滴は成功することができるのか。中国人の視点から、界面が報じた。

 

ターゲットは訪日中国人

今年9月から、中国ライドシェア「滴滴出行」(ディーディー)が、ソフトバンク合弁会社を設立し、大阪でサービスを始めている。と言っても、中国のようにライドシェアをするわけではなく、滴滴のアプリとプラットフォームを利用して、第一交通などのタクシー配車を行う。

主に訪日中国人をターゲットにしていて、中国の滴滴アプリがそのまま利用できルため、行き先などもアプリ上で指示できる。日本語のできない中国人にも利用ができる。

滴滴出行の海外サービス展開は、今年4月のメキシコ、5月のオーストラリアに続いて、大阪が3都市目になる。

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▲日本でも、中国版の滴滴アプリがそのまま利用できる。日本語が話せない人でも、行き先などをアプリで指示することができる。

 

公共交通で不便を感じない日本の都市

滴滴出行は、日本で成功することができるだろうか。界面新聞が日本の滴滴を利用した人に取材をすると、答えは否定的だ。

東京で暮らして8年になるある中国人男性は、自分の車を持っていないが、出かけるときは地下鉄か鉄道を使い、タクシーを利用することは少ない。これは在日中国人だけでなく、多くの日本人がそうであると感じていると言う。

なぜなら、日本の公共交通、特に鉄道は発達していて、しかも中国に比べて駅間が短い。どこに行くにも、ほぼ地下鉄と鉄道で不自由を感じないからだ。

 

日本のタクシー料金は中国の7倍弱

一方で、日本のタクシーは料金が高い。これは日本で暮らす中国人の多くがそう感じていると言う。

大阪では、初乗り41.6元(680円)で、2kmを越えると188mごとに4.9元(80円)が追加されていく。これに対して北京では初乗りが13元、3kmを超えると1kmごとに2.3元となる。

10km乗った場合、大阪では197元(約3200円)になるが、北京では29元(約470円)にしかならない。日本と中国の給与水準の差を考慮しても、日本のタクシー料金はかなり高額になる。

日本に住んでいる中国人も高いと感じているが、中国で滴滴ライドシェアやタクシーを使っていて、大阪に旅行できた中国人にとっては、より高く感じることになる。

 

割引クーポンがあれ利用する、なければ利用しない

北京のある女性で、大阪に出張に行き、滴滴をすでに利用したという人がいる。しかし、それは800円の割引クーポンがあったため、利用額は30元少しだったからだ。北京とほぼ同じ感覚だ。しかし、次に乗ったときはクーポンがもはや使えないため、90元以上を支払うことになった。それで高いと感じてしまい、次に日本に行くことがあっても、よほど時間が迫っているとか、駅から遠いということでもなければ使わないつもりだという。

 

日本人が使うようになるのには時間がかかる

趙雄さんは北京生まれだが、大阪の大学に留学をし、卒業後、大阪で初の外国人ドライバーとして働いている。趙雄さんのタクシー会社が、滴滴に加盟したため、中国人を乗せる機会が増えた。しかし、中国人は利用するかもしれないが、日本人が利用するようになるまでは時間がかかると感じている。日本は、高度の秩序がある社会で、ルールも成熟し、人々の消費も理性的。その反面、新しいものを受け入れるスピードは遅いからだ。

趙雄さんは、日本人の利用を促すにはクーポンが効果があると言う。タクシーもクーポンを配布するキャンペーンを行ったときは、如実に乗客が増える。滴滴出行も効果滴なキャンペーンを行うことで、時間はかかるかもしれないが、日本人の間にも浸透していくかもしれないとも感じている。

滴滴出行もキャンペーンを行い、11月9日から12月1日までの金曜日、土曜日は、最初の1回のみ初乗り料金の680円を無料にした。趙雄さんによると、通常時の3倍の乗客があったと言う。

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▲メキシコでサービスを開始している滴滴出行。オーストラリアでもサービスを始めている。旅行をする中国人にとっては、中国版の滴滴アプリがそのまま利用できるため利便性は高い。

 

タクシー配車の仕組みとしては優れている

趙雄さんは、滴滴出行の大阪進出は、日本のタクシー業界をバージョンアップすることにつながると言う。趙雄さんは1日に2万円を稼ぐことを目安にしている。以前は、夕方5時か6時にようやく達成できることが多く、かなりの時間、街を「流す」ことが必要だった。しかし、滴滴出行のサービスが始まってからは、アプリ経由で呼ばれることが増え、街を流す時間が減り、夕方4時頃には目標額に達するようになった。

また、それまでは電話による配車システムがあったが、コールセンター方式は効率が悪く、お客を長時間待たせてしまうこともあった。趙雄さんは、滴滴出行の配車システムの方が効率がよく、お客を待たせることもなくなったと感じている。

 

タクシー配車を進化させることになる滴滴プラットフォーム

日本の法規により、個人が自分の車でタクシー行為をするライドシェアは禁じられている。そのため、滴滴出行が大阪進出したと言っても、配車システムを利用して、既存のタクシーを配車するだけのサービスになっている。それでも滴滴出行は、日本のタクシーを効率化し、乗客の利便性を高めることが可能だと考えている。すでに日本交通が「全国タクシー」アプリにより、アプリ配車のサービスを始めていて、滴滴出行と日本交通は、互いに競い合いながら、日本のタクシー業界を進化させていくことになる。

滴滴出行は、現在、京都、福岡、東京などでもサービスを始める計画を進めている。

 

2時間で43億円を売り上げる。トップインフルエンサーの独身の日セール

年々売上記録を更新する独身の日セール。しかし、その陰にはインフルエンサーである網紅の活躍がある。トップインフルエンサーである薇は、わずか2時間のライブ配信で約43億円の売上をあげたと棉棉網が報じた。

 

2時間で43億円を売り上げるトップインフルエンサー

中国のインフルエンサー「網紅」(ワンホン、ネットの人気者の意味)のトップスターである薇(ウェイヤー)は、11月12日の午前2時になってようやく休息を取ることができた。それまで20数日間、まったく休みが取れないほどの忙しさだった。

網紅とは、ネットで影響力のあるインフルエンサーのことだが、その多くがライブ配信で商品紹介をする。その売れ行きが尋常ではない。今年の独身の日セールでは、薇は自分の持つ売上記録を更新した。11月11日の午前0時から始めた2時間のライブ配信では、その中で紹介した商品の売上が2.67億元(約43億円)に達した。この日1日の売上は3億元(約49億円)、ライブ配信は230万人が視聴した。

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ライブ配信中の薇。「1日の配信で、マンションがひとつ買える」と言われるほどの販売力がある。

 

信用できる人から買う。それがインフルエンサーを生んだ

はトップクラスの網紅で、「一晩のライブ配信で、マンションがひとつ買える」と言われるほど、消費者に対する影響力がある。

なぜ、このような影響力を持つことができたのか。それは消費者からの信用だ。中国ではいまだに模造品、低品質商品が流通をしている。以前のような露骨な偽ブランド商品が百貨店でも売られているというようなことはなくなっているが、商品の質を見極めにくいECサイトではいまだに劣悪な商品も流通をしている。このような状況の中で、消費者は自然と「信用できる人から買う」という知恵を身につけてきた。近所では信用ができる店主がいる老舗の商店で買い物をすることができたが、ECサイトでは信用できる店主はいない。特にCtoC型のECサイトタオバオ」では、大量の業者が出店をしていて、その中には不誠実な業者もいる。そこで、薇のような信用できる網紅が紹介する商品を買うのだ。

 

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▲トップインフルエンサーの薇。一晩のライブ配信で、マンションがひとつ買えるほどの収益を上げる。独身の日セールでは、2時間で43億円の商品を売り上げた。このライブでは、スペインとポルトガルの旅行を勧めている。

 

自分が買いたくなる商品だけを紹介する網紅

網紅にとって、消費者からの信用が最も重要な資産であるので、業者側に立って、多少劣悪な商品でも紹介してしまうということをやると、あっという間にその地位から転落をしてしまう。

には2000以上もの業者からオファーがあったが、彼女は商品を吟味し、約300の業者としか契約をしていない。「商品を選ぶとき、ライバル商品の種類、商品の性能価格比、ライブ配信での紹介料なども考慮しますが、いちばん大切にしているのは、自分自身が買いたくなるかどうかです」と言う。

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▲携帯のライブ配信。405万人が視聴している。広告などをタップすると、商品が購入できる。売上代金の数%が薇に入るアフィリエイト方式になっている。

 

企業も網紅の影響力を活用している

このような網紅の販売力に、すでに企業も注目をし、活用もごく当たり前のことになっている。多くの網紅が、アパレル、食品などの企業と高額の契約を結ぶようになっている。

カナダのアパレルブランドJACは、今年の4月から網紅によるライブ配信を始めた。JACの李寧副総経理は言う。「最初は1日に数十件、売上で数万元程度だろうと思って始めました。しかし、やってみたら1日の売上が数十万元にもなったのです」。

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ライブ配信前の打ち合わせ。人任せにせず、すべてを本人が決める。そこをないがしろにすると、あっという間にフォロワーの信頼を失い、転落してしまうからだ。

 

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▲薇のサポートチームもゆっくりと食事をとる暇もない。薇自身はもっと忙しい。

 

網紅の販売力に追いつくことで企業も鍛えられる

ECサイトでの競争が厳しくなる今、企業は網紅のライブ配信経由による販売に活路を見出そうとしている。網紅と巨額の専属契約を結んだとしても、広告費宣伝費よりは低コストで済むからだ。

しかし、難しさもある。ひとつは、企業の色がついた網紅の人気はあっという間に下降すること。また、ライブ配信で販売するものは在庫がなければならない。翌日、翌々日に配送されて、すぐ手に入ると思うと消費者は購入してくれるが、予約販売で配送は1週間後などの先になるというと如実に売上が伸び悩む。網紅のライブ配信を見て、「同じものを着てみたい。同じものを使ってみたい」という欲求が購入欲を刺激している。

網紅のライブ配信は、あまりに商品が売れすぎるので、それだけの商品を事前に生産して在庫を確保しておくことも難しい。かといって、過剰在庫になっている不人気商品を網紅に売らせようとすると、網紅の影響力自体が低下してしまう。

ある業界関係者は言う。「網紅は、ワンシーズン分の服飾品をすべて売り切ってしまうほどの影響力を持っています。しかし、企業側にも高い開発能力、生産能力がないと、この速度についていくことができません」。

企業による網紅の活用は、今後も広がっていくことは間違いない。しかし、企業側もその爆発力に対応できるだけの体制を作る必要がある。特に、女性向け商品である服飾、化粧品などでは、網紅経由の販売ルートがますます大きくなっていくと見られている。

 

若者の流行では終わらない。プラットフォーム化するTik Tok

ダンス系のショートムービーを共有するSNS「Tik Tok」が昨年と今年で大ブレイクをした。中国ではすでに1日1.5億人が利用するアプリになっている。その内容から「若者の流行」と捉えられることが多いが、すでに広い世代が利用するSNSになっていて、企業アカウントの登録も相次いでいると企業認証助手が報じた。

 

広い世代が利用する中国版Tik Tok「抖音」

Tik Tokについては、よく「若者の一時的な流行。すぐ終わる」とか「大人が入り込むようになると、ダサくなるので、流行が終わる」などと言われる。しかし、本家の「抖音」(ドウイン。中国版Tik Tok。この国際版がTik Tok)は、一時的な流行どころかプラットフォーム化をしつつあり、子どもからお年寄りまで利用する全世代的なSNSになりつつある。すでに毎日1.5億人のユニークユーザーが利用するモンスターアプリになっている。

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▲もちろんダンス、手振りダンスの王道ムービーもまだまだ多い。

 

ダンスだけではないTik Tok

中国のTik Tokで、人気のあるムービーももちろんダンスだ。ホットダンス、手振りダンスが人気なのは、日本と同じで、中心になっているのもやはり若い女性たち。そこは変わらない。

しかし、それ以外の人気ムービーがさまざまな分野に及んでいる。人気があるのが食べ物系だ。美味しそうな食べ物、懐かしい食べ物、珍しい食べ物などを紹介するもの。さらに、料理の作り方を解説するムービー、レストランを紹介するムービーなどにも人気がある。

ゲーム関係のムービーも人気がある。素晴らしいプレイ、テクニック解説、面白プレイなどだ。

ペットムービーも人気がある。ペットの日常を紹介するもの、また便利なペットグッズの紹介などもある。このほか、旅行、化粧のテクニック解説などにも人気がある。

このように共有されるムービーのジャンルは多岐にわたっていて、しかも、それぞれのジャンルごとにインフルエンサーとも呼べる人気の配信者がいる状況だ。この状況を見て、企業アカウントも急増している。

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▲ペット映像は、もはや定番映像になっている。

 

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▲化粧の仕方の解説ビデオ。

 

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▲旅行の攻略法と称した名所ガイド映像。

 

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▲有名料理店の紹介ビデオも多い。道順なども紹介されるので、自分で行くときの参考になる。

 

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▲料理の仕方もショートムービで行われる。要点だけを紹介するので、理解しやすい。

 

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▲美味しいものの紹介ムービーも人気が高い。

 

見たい部分をいきなり見ることができるショートムービー

中国版Tik Tokは、すでに「若者の間での一時的な流行」を抜け出して、国民的なプラットフォームになりつつある。「ショートムービー版のユーチューブ」のような感覚になってきているのだ。

その理由は、15秒程度のショートムービーであるという点が大きい。例えば、ペットの動画を見るとき、ユーチューブではタイトルバックをつけ、配信者の挨拶があり、ペットが登場するところから始まる。しかし、見たいのはペットの可愛い姿だけなのだ。そこに行くまでの1分や2分を我慢して見続けなければならない。しかし、Tik Tokでは、いきなり誰もが見たいペットの可愛い姿が見られる。

旅行ガイド的なムービーでも同じだ。ユーチューブであれば、配信者の挨拶から始まって、観光スポットまで歩いていく姿が延々映される。しかし、見たいのは観光スポットの映像だけなのだ。

もちろん、ゆっくりと時間をかけて紹介するユーチューブには、それなりの魅力はある。しかし、一度15秒のショートムービーを見てしまうと、1分以上のムービーはいかにも退屈に感じられるようになる。ショートムービーというところに目をつけたことで、Tik Tokはムービー共有のプラットフォームになろうとしている。

 

独特のリコメンド手法を持つバイトダンス

もうひとつは、バイトダンス社の高いリコメンド技術がTik Tokのプラットフォーム化に大きく寄与している。

バイトダンスは、今ではTik Tokの運営元として有名になったが、実は「今日頭条」というニュースアプリがヒットしていて、いまだにこちらのビジネスの方が大きい。Tik Tokの中国での1日のアクティブユーザー数は1.5億人であるのに対して、「今日頭条」は3億人もある。

「今日頭条」は見た目は一般的なニュースアプリと変わらないが、リコメンド技術の精度レベルが違う。ニュースを開封する、読む、スクロールするといった動作を分析して、高い精度でその人が知りたがっているニュースをリコメンドしてくれる。しかも、不思議なのは、こういうリコメンドシステムを採用すると、同じジャンルのニュースばかりが表示されるようになって、退屈さを感じ始めるものだが、なぜか毛色の違ったジャンルのニュースがときおり入ってきて、新鮮さを失わない。

具体的にどのようなアルゴリズムでリコメンドをしているのかは公開されていないが、ただニュースアプリを使ってニュースを読んでいるだけで、必要なニュースが集まってくるようになる。これはもう手放せなくなる。あるいは他のニュースアプリが必要なくなる。1日3億ユーザーを確保している理由はここにある。

 

Tik Tokの中では、毎日新しいことが起こっている

このリコメンド技術は、Tik Tokにも当然採用されている。あるムービーを見たら、類似ムービーが延々リコメンドされるという単純なものではない。違ったテイストのムービーもリコメンドされ、1日ごとに見るムービーが違っていく。これが新鮮さを失わせないことにつながっており、ユーザーはTik Tokのムービー世界の奥深さを感じてしまう。

Tik Tokが若い女性のダンス映像から火がついたことは間違いない。しかし、本家のTik Tokは、リコメンド技術を使って、ダンス以外のムービーへと巧妙に誘導をしてきた。Tik Tokの世界では、毎日流行が変わっていくかのように錯覚をして、新鮮さを失わない。これが1日1.5億人の数字につながり、気がついてみたら、さまざまなジャンルのムービーが共有されるようになり、プラットフォーム化しているのだ。

バイトダンスは、明らかにこういったシナリオを描いて、戦略的に運営をしている。

 

ミニプログラム、企業アカウントで収穫ステージに入ったTik Tok

中国版Tik Tokは、ミニプログラム(アプリ内アプリ)に対応し、企業アカウントも急増している。「若者の流行」から「国民的プラットフォーム」にシフトすることで、広告と合わせて、収益を取りにきている。「若者の流行」としてカルチャー面で取り上げられる機会は少なくなっていくだろうが、ビジネスとしては次のステージに進むことになる。

バイトダンスが、海外のTik Tokをどう運営しようとしているのかはわからない。しかし、中国で成功したプラットフォーム化を日本でも試してみるというのは妥当な見方ではないだろうか。もはや、Tik Tokは「若者のブーム」ではなく、国民的なプラットフォームとしての地位を固めている。

 

AppleのFaceIDを突破したベトナムBkavのBPhoneが中国でも話題に

アジア各国の技術力が上がってきている。ベトナムのBkavは、AppleのFaceIDを突破するビデオを公開して、一躍中国や西側でも知られるようになった。そのBkavが発売しているBPhoneは、熱狂的なベトナムユーザーを生み出し、中国では「ベトナムのシャオミー」と呼ばれるようになっていると新浪財経頭条が報じた。

 

グローバル化、中国化が進むベトナムの国産スマホBPhone

ベトナムで、ベトナムの企業Bkavが開発したスマートフォンBPhoneが人気になっている。今、アジア圏では、インドを含め、どこの国でも国産のスマートフォンは消えゆく運命にあり、アップル、サムスンなどのグローバル展開をするブランド、そしてファーウェイなどの中国ブランドに席巻されている。

情報面での安全保障を確保するために、アジア各国は国産の通信機器産業の育成に力を入れているが、消費者が性能のいいグローバルブランド、性能と価格のバランスのいい中国ブランドを選ぶため、国産ブランドの育成はなかなか進んでいかない。その中で、BPhoneはベトナムのユーザーから熱い支持を受け、中国でも「ベトナムの小米(シャオミー)」と呼ばれ、注目をされ始めている。

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ベトナムのBkavが開発したBphone 3。約5万円の価格がする高級機で、ベトナムに熱狂的なファンを生み出している。

 

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▲金額ベースのシェア。ベトナムもアジア各国と同じように、グローバルブランドと中国ブランドで2分されている。特に中国ブランドの浸透が著しい。国産ブランドは風前の灯火になっている。

 

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▲台数ベースのシェアでは、サムスンが強く、シャオミーとファーウェイが伸びている。

 

AppleのFaceIDを突破する技術力

Bkavがその名前を国際社会に轟かせたのは、昨年、iPhoneの顔認証技術Face IDを突破する手法を開発したからだ。Face IDは平面的な顔映像の画像解析だけではなく、赤外線を使い、顔の凹凸をも測定をするため、そのハッキングは難しいと言われていた。

しかし、Bkavは3Dプリンターを使い、顔の形を製造し、そこに目と口の写真を貼り付け、さらに立体的なシリコン製のゴムで鼻を作ることで、Face IDを突破した。登録している本人の顔を綿密に測定をして、マスクを作る必要があるが、製造原価的には150ドル程度で可能だという。

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▲BkavはAppleのFaceIDを突破したことで、国際的に名前が知られるようになった。3Dプリンター立体マスクを作るという方法だ。


How Bkav tricked iPhone X's Face ID with a mask

AppleのFaceIDを突破した実証ビデオ。この動画で、Bkavの技術力が国際的に知られるようになった。

 

価格は平均月収の2倍。それでもファンが生まれる

このBkavが、BPhone 3 Proを発売した。2015年にベトナムで初めての国産スマートフォン初代BPhoneを発売し、2017年にはBPhone 2、そしてこの10月にBPhone 3 となった。

性能的には中国ブランドの高級機と遜色はなく、ベトナム国産のスマートフォンとして、初代からずっと買い続けている根強いファンがいる。価格は、BPhone 3が6990万ドン(約3万2700円)、高機能版のBPhone 3 Proが9990万ドン(約4万8700円)で、Proはベトナムの一般的な市民の平均月収の2倍であるため、販売数は大きくはないが、着実にファンを掴みつつある。Bkavは、低価格路線ではなく、高級機路線を取っていることもベトナムユーザーから受け入れられている。

ベトナムスマートフォン状況は、実質的にグローバルブランドと中国ブランドが2分をしている。国産ブランドは風前の灯で、シェアを落とし続けている。その中で、BPhoneがベトナム人にとって、唯一の国産機になりつつあることも人気の理由のひとつのようだ。

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▲左がBkav CEO。右はBPhoneを最初に購入したユーザー。ベトナムにとっては高価格のスマートフォンであるにも関わらず、ファンが生まれている。


Bphone 3 - Điện thoại Chất. Smartphone cao cấp made in Vietnam.

▲BPhoneの公式ビデオ。ベゼルレス、防水など、高級機としての基本的な性能は備えている。

 

世界の工場になりつつあるベトナム

ベトナムのIT産業は成長のきっかけをつかんでいる。アップルのワイヤレスイヤホンAirPodsの生産をしている中国のGoerTekは、AirPodsの生産工場をベトナムに移転する計画を発表した。また、スマートフォンで復活を狙うノキアは、ハノイにすでに工場を稼働させている。インテルベトナムに10億ドル以上の投資をして、プロセッサーの生産を始めている。

簡単に言えば、中国の人件費が上昇してきたために、ベトナムが「世界の工場」として注目をされているのだ。これにより、ベトナムの技術力も大きく上昇し、Bkavのような尖った企業が現れ始めている。BPhoneがサムスンやファーウェイのシェアをすぐに脅かすことは難しいが、ベトナムで一定のシェアを握り、アジア各国へ浸透していくということはじゅうぶんにあり得る。


Bkav SmartHome - Tiêu chuẩn nhà hiện đại !.mp4

D21 地球の歩き方 ベトナム 2018~2019

D21 地球の歩き方 ベトナム 2018~2019

 

 

中国で流行する外売サービスは、海外でも展開できるか?

中国のカフェ市場をリードするスターバックスが、近年、スマホ決済、外売サービス(出前)などの中国スタイルに対応を始めている。それだけでなく、米国で外売サービスを始めたいと言う発言まで飛び出した。人件費の安い中国ならともかく、外売サービスは海外でも可能なのだろうか。好奇心日報が論じた。

 

中国スタイルを米国でも展開したいbyスターバックス

中国のスターバックスが、中国で普及している外売(出前)を米国でも始めるかもしれない。上海のスターバックスを視察していたケビン・ジョンソンCEOが、ニュース専門放送局CNBCの記者に「中国のイノベーションは世界のどこよりも速い。中国で流行している新しいサービススタイルーー特に外売を米国市場でも展開したい」と語った。

今年9月、中国スターバックスは、アリババの盒馬鮮生(フーマフレッシュ)、餓了么(ウーラマ)と共同して、北京、上海で出前サービスの試験運用を始めた。現在は、17都市1000店以上のスターバックスで出前サービスを始めている。年末までに、30都市、2000店に増やす予定で、中国スターバックスの7割の店で出前サービスが行われることになる。

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スターバックスは、中国で独自の出前サービスを始めた。大きな市場である中国で生き残るため、中国スタイルを取り入れ始めている。


中国スタイルを取り入れるスターバックス

スターバックスのような中国市場に進出をしているグローバル企業は、中国でもグローバルスタイルを取ることが多かった。ところが、スターバックスの場合、国内からラッキンコーヒーというITを駆使したセルフカフェが急追し、昨年、中国市場に参入して以来初めての減収となった。

その危機感もあり、スターバックスは中国市場に適合する施策を進めている。そのひとつが、中国の都市部では当たり前のことになった出前サービスに対応をすることだ。

ただし、スターバックスは通常の外売サービスのプラットフォームには乗せず、独自の出前部隊を構築している。業界リーダーの意地とブランド力の維持を考慮しなければならないからだ。外売企業「ウーラマ」と提携してスターバックス専門チームを作っている。また、フーマフレッシュには店舗を出店し、「外送星厨」という名前で出前を行なっている。専用の配達パック、出前用のカップ、包装なども用意をしている。

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スターバックスが運営する高級業態「リザーブ・ロースタリー」は、現在シアトルと上海にオープンしている。焙煎工場が併設されているので、格段に美味しいコーヒーが提供される。

 

店舗の3倍の売上がある外売

この中国発のサービス「外売」を、米国市場でも展開することは可能だろうか。好奇心日報はその可能性を検討している。

飲食店の外売での売上はすでに3050億元(約5兆円)に達し、店舗売上の3倍程度になっていて、今後、その差は開く一方だと考えられている。飲食店の店舗売上は頭打ちであるのに対し、外売が今後も成長していくからだ。

 

人件費の低さと都市密度の高さが外売サービスを成立させている

米国での展開が難しいひとつの理由は人件費だ。外売サービスに従事する配達員はすでに800万人を超えていて、平均年収は3-4万元(約66万円)(ただし、フルタイムで働いている人は少数派)。これは工場労働者の収入よりも低い。

この他に、都市密度の問題があると、好奇心日報は指摘をしている。中国に人口100万人以上の都市は156都市あるが、米国には9都市しかない。人口1000万人の都市は中国には15都市あるが、米国には2都市しかない。この都市の規模があるために、中国では外売サービスが成立する。

外売の配達員は、一度にひとつの配達をするわけではない。通常、2件から4件の注文を一度にこなし、プラットフォームのアルゴリズムも、最短経路になるように配達員に注文を割り振り、効率を上げている。これも都市の人口が多いから可能になっている。

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▲人口が大きいこともあるが、中国の都市規模の大きさは他国を圧倒する。これが効率的なサービスが中国から生まれる要因になっている。なお、都市人口は一般的に市街部の人口で比較するので、東京も1000万人に届いていない。

 

店舗数を増やすことで外売の効率を上げ、市場をリードする

スターバックスは、独自の出前部隊を作っている。そのため、店舗数を一定数以上にしないと、出前の配達距離が長くなり、効率を上げることができない。そのため、スターバックスは今後4年で100の都市に新たに出店し、さらに大都市の店舗数も増やし、最終的に5000店舗規模にする計画を進めている。この時には、スターバックスにとって中国は米国を超え、世界最大の市場になる。店舗数を増やすことで、顧客との接点を増やすだけでなく、外売の配送拠点としても配送効率を上げられるようになる。独自の出前部隊を持っても、勝算はじゅうぶんにある。

 

都市密度は高い方がいいのか、低い方がいいのか

しかし、人口密度が中国ほど高くない米国ではどうか。米国にはすでにグラブハブが外売に相当する出前サービスを東部の都市、ロサンゼルス、サンフランシスコなどで展開している。

しかし、中国外売大手の美団(メイトワン)とグラブハブのデータを比較すると、中国のような低コストの配送はできていない。

人件費は中国が1時間あたり22元、米国が50元と2倍強であるのに対し、1件あたりの配送費用は中国美団が5.22元であるのに対し、米国グラフハブが38.6元と7倍にもなっている。これは、中国の都市の人口密度が高いために、効率的な配送が可能になっていることによる。

ケビン・ジョンソンCEOの「外売を米国市場でも」という発言は、まだ具体的な計画ではなく、多分に中国消費者に対するリップサービスの面もあるが、外売を中国以外の国で展開するには大きな壁がある。それは賃金の問題だけではなく、中国政府が、都市の人口密度を上げ、人口を都市に集中させる政策をとっていることにもある。

都市への人口集中を分散させ、国土の均衡ある発展を促すという考え方もあるが、中国は明らかに都市に集中をさせ、都市の効率を大幅に上げるという方向に進んでいる。都市密度は高い方が経済面では有利になる。一方で、高すぎれば生活環境としては不利になる。すでに世界の人口の半分は都市人口であると言われ、都市人口の比率は上昇している。高密度の都市のデザインを考える時期にきている。

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▲出前サービスの中国「美団」と米GrabHubの比較。1件あたりの手数料売上は美団が5.22元と圧倒的に安い。それだけ効率的な配送が可能で、低価格が実現できていることになる。

 

歩くだけで認証が行われる「人認証」改札。試験運用が始まる

地下鉄の改札は、NFCカードやスマホQRコードNFCなどに対応していて、最近では顔認証に対応する地下鉄改札も登場してきている。しかし、南寧市地下鉄ではさらに一歩進んで、歩く姿で認証をする「人認証」の試験運用が始まっていると南方網が報じた。

 

歩く姿で認証する「人認証」

地下鉄の改札技術がまた進化をしそうだ。多くの都市の地下鉄では、NFC交通カードを10年以上前から採用しているが、ここ数年で、QRコード決済、NFCスマホ決済に対応し、さらには顔認証に対応する都市も登場している。ところが、今度は「人認証」が登場した。

人認証は、顔、姿、歩き方などで個人を特定し、改札を通るだけで決済をするというもの。立ち止まる必要がなく、乗客はただ素通りするだけでよく、改札の混雑を緩和すると期待されている。

広西チワン族自治区の南寧市地下鉄の1号線、仏子嶺駅ですでに試験運用も始まっている。

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▲南寧市地下鉄、仏子嶺駅で試験運用が始まっている「人認証」改札。顔、体型、歩く姿などで個人認証をする。処理時間は0.5秒程度だが、改札の前から認証が始まるので、立ち止まることなく改札を通過できる。

 

試験運用が始まっている「人認証」

開発をしたのは広西省の咪付(ミーフー)。すでに南寧市地下鉄で、ブルートゥースを使い、スマホで改札の出入りができるシステムを開発している。今回開発した「人認証」では、顔、姿、歩き方を人工知能が判別して、個人を特定する。

あらかじめ、姿と歩き方を登録する必要があるのが面倒だが、それさえ済んでしまえば、0.5秒で個人認識ができ、改札を立ち止まらずに通過できるようになる。

化粧や服装には影響されず、また、太ったり痩せたりしても認識ができるという。現在、仏子嶺駅の試験運用の成績は好調で、大きな問題は起きていない。また、利用する人が増えれば増えるほど学習が進むので、正確になり、判別時間も短くなっていくという。

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▲咪付が開発した人認証改札。鉄道の改札だけでなく、企業ビルや銀行、ホテルなどの出入管理などへの応用も期待されている。

 

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▲一般の改札は、QRコードNFCなどに対応しているが、タッチをするため、立ち止まらなければならない。顔認証でもやはり定位置で立ち止まる必要がある。

応用範囲は広い「人認証」

咪付の黄紫丞首席情報官によると、この人認識技術の応用範囲は広く、地下鉄の改札で技術を成熟させ、次は空港、新幹線、高速道路、駐車場などに広げていきたいという。

また、交通関連だけでなく、企業ビルの出退勤管理や金融機関、ホテルへの応用も考えられ始めている。将来的には、同時に多数の人間の認識も可能になるため、公共の場での治安管理などへの応用も考えられている。

中国の個人認証は、QRコードというシンプルな技術から始まったが、その後、NFC、顔認証と猛スピードで進化をしている。人認識も、すでに試験運用が始まり、試験結果が芳しければ、全駅に導入されるのもそう遠い日ではない。数年後、「改札」という概念がなくなっているかもしれない。

 

独身の日セールの荷物が受け取れない!宅配便業者は大混乱

独身の日セールでは、13億個以上の宅配便が1日で発送される。この荷物を各戸に配達するだけでも大仕事だ。そこで、支柱に代理受取所ができている。日本のコンビニ受取りと似た仕組みだが、案の定、たいへんな混乱ぶりになっていると中国新聞網が報じた。

 

代理受取所を作り、宅配効率を上げる

今年の独身の日セールも、数々の記録を更新する盛況ぶりだった。国家郵政局の発表によると、11月11日だけで全国の宅配便受付は13.52億件に達し、昨年よりも25.12%増加した。宅配企業が期間中処理した宅配便件数も1日平均4.16億件となり、これも昨年よりも25.68%増加した。13.52億件は日本の宅配便件数の約4ヶ月分にあたる。それが1日で発生するのだ。

大きな問題は、戸別配送だ。13.52億個の荷物を各家庭に届けなければならない。そのすべてが受取人が在宅で、すんなり受け取れるとは限らない。大量の再配達が発生をすれば、人手で行っている戸別配送はパンクしてしまう。

そこで、スマート宅配ボックスと代理受取所が普及をした。スマート宅配ボックスは、地下鉄の駅構内や大規模マンション内などにある宅配ボックススマートフォンで解錠して自分の荷物を受け取る。代理受取所は、店舗や場合によっては道端に開設された受取所で、スタッフが管理をして、そこに受け取りに行く。日本のコンビニ受取に近い。さらに、最近では不在でも自宅のドア前に勝手に置かれていくことも増えているという。

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▲学校内に設けられた代理受取所。管理者がいて、受取人はここに荷物を取りに行く。

 

勝手に代理受取所扱いにされるトラブルが続出

しかし、中国の「宅配暫定条例」によると、宅配物は受取人の自宅、または代理受取人が、対面で受け取らなければならないことになっている。宅配ボックスや代理受取所を利用する場合は、事前に受取人の承諾が必要になっている。このため、さまざまなトラブルが起き始めている。

王さんは、日頃からECサイトで買い物をするのが好きだったが、11月6日、家でスマホを使って、配送状況を確かめたところ、まだ届いていない荷物がすでに受け取りになっていることを発見した。自分のマンションの近くにある洗車場が代理受取所になっていて、そこに配送済みということになっていた。その洗車場に配達されたのはこれが初めてではなかった。事前の連絡もない。「私はその日ずっと家にいたのです。もし、私がスマホで確認しなければ、私の荷物が洗車場にあることに気がつかなかったと思います」。

王さんが宅配会社に問い合わせをすると、今後荷物はすべてその洗車場に配達されると通告された。「でも、その洗車場まで歩いて取りに行かなければなりませんし、洗車場には3段の棚があり、そこ荷物は放置され、管理する人もいません。誰でも勝手に持っていける状態になっていて、もし荷物がなくなったら、責任は誰が取ってくれるのでしょうか?」と、王さんは怒っている。

しかも、その洗車場は午後8時に閉まってしまい、それ以降は荷物が受け取れないのだ。

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▲独身の日セール期間中は、街中にも臨時の代理受取所ができる。荷物の扱いは雑。管理者がこの場を離れることもあり、荷物が紛失、破損したというトラブルは相当数起きているものと推測される。

 

商品をキャンセルしても、荷物が送られてくる

北京の潘家園に住む孟さんは、別のトラブルに遭遇している。11月11日の独身の日セールの売り上げは毎年増え続けているが、ひとつの要因は、どの業者も返品やキャンセルを無料で受け付けるようになっていることがある。

例えば、洋服を買う場合、サイズがよくわからない場合は、大中小すべてを注文して、サイズが合うもの以外は返品する。

また、セールには大量のクーポンが配布され、その多くが「1000元を買い物をしたら、200元割引」など、一定額以上利用すると割引が適用されるパターンが多い。このため、必要のないものまで購入し、クーポン適用額にした上で割引を利用し、不要なものはキャンセルしてしまうというやり方も広がり始めている。

孟さんもこうしていくつかの商品を発送前にキャンセルしたが、その荷物が近所の代理受取所に連絡なしで届けられてしまった。不要な商品なのに、わざわざ受け取りに行って、それから返品の手続きをしなければならなくなってしまった。

代理受取所やドアの前に放置をして、荷物が紛失したというトラブルも起きている。

 

荷物の数は、宅配配達員の能力の限界を超えている

しかし、宅配会社は宅配会社で、言い分はある。ある宅配企業が匿名で北京青年報の取材に応えた。「今は多くのマンションが、外部の人間は入れないようになっています。また、駐車場も整備されてなかったり、満車だったりすることがあり、配達員はマンション前に配送者を停車して、受取人に連絡をして、取りに来てもらわなけれなりません。電話をしても、昼間は仕事中で、電話に出ない方が多いのです」。

円通宅配の配達員が北京青年報の取材に応えた。「11月11日の独身の日直後は、配達する荷物が大量に増加します。私たちも大幅に残業をして配達をしている状況です。電話をしても連絡が取れない場合は、近くの代理受取所に配達をしないと、仕事が回っていかないのです」。

しかし、この配達員は、北京青年報の記者に小声で、普段でも、エレベーターのない6階以上の配達だと、連絡なしで代理受取所に配送してしまうこともあると語った。

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▲地方ではこんな雑貨屋が代理受取所になる。店の営業時間が終わってしまうと、受け取れなくなる。

 

電話連絡も宅配配達員には大きな負担になっている

宅配ボックスや代理受取所に配達する場合でも、事前に連絡をすればいいのではないかと思う方が多いはずだ。しかし、宅配配達員は普段はだいたい100個程度の荷物を配達し、独身の日セール期間はそれが3倍の300個程度になる。電話をするのに1分かかるとすると、300個では300分=5時間を電話に費やさなければならなくなるのだ。

独身の日セールはいろいろな面で限界にきている。大量のクーポン配布で、25%が返品されるという見方もある。事前に宅配ボックスや代理受取所を指定する場合は、宅配料金を割り引く制度も始まっているが、ECサイトでは送料無料が基本になっているので、わざわざ代理受取所を指定してくれる購入者はごくわずかだ。

10年目を迎えた独身の日セール。すでに「事前にこっそりと値上げをして、それを割引いて値下げ率が大きいように見せているだけで、実質的には大して安くない」と冷ややかな目で見る人たちも現れ始めている。

華やかな記録更新の報道とともに、否定的な報道も増え始めている。独身の日セールは変わらなければならない時期にきている。

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▲最も安心できるのは、街中にあるスマート宅配ボックスなのだが、期限をすぎると料金が発生するため、避ける消費者も多い。