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中国を中心にしたアジアのテック最新事情

監視カメラ都市ランキング。予想通りに中国の都市が上位に。第1位は重慶市

英国のテックメディアCompariTechは、世界120都市の監視カメラの設置状況を調査し、人口と比較、千人あたりの監視カメラ台数のランキングを作成し、公表した。

これによると、上位10都市のうち、8都市を中国が占め、第1位は重慶だった。中国以外で10位以内にランクインをしたのは、ロンドンとアトランタのみだった。

 

監視カメラの数と治安のよさは相関しない結果に

CompariTechの調査によると、人口あたりの監視カメラ数ランキングは、大方の予想通り、中国の都市が上位を占める結果となった。

ただし注意が必要なのは、この調査の対象となったのは閉鎖回路TV(CCTV)の数で、その用途までは調査をしていないことだ。どの都市でも、最も多いのは渋滞や事故を監視する交通監視カメラだ。また、街頭に設置されたカメラにしても、市民を監視する目的のものもあれば、犯罪を監視する防犯カメラもある。

CompariTechでは、NUMBEOが掲載している都市別の犯罪指数との照合を行った。その結果、監視カメラ数と犯罪指数の間に負の相関は認められなかった。つまり、監視カメラが多いからといって治安がいいとは言えなかったのだ。

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▲人口あたりの監視カメラ数の都市別ランキング。渋滞を監視する交通カメラや気象監視カメラなども含まれているが、それでも中国の都市の監視カメラ数は多い。

各都市で監視カメラを大幅増設する計画が進んでいる

中国全体では現在2億台の監視カメラがあると言われている。しかも、各都市でこの監視カメラを大幅に増やす計画が進んでいて、2020年には6.26億個に達する。こうなると、市民2人に1台の監視カメラがある計算になる。

深圳市では、現在、192.9万個の監視カメラが稼働しているが、今後数年で1668万台と大幅増設する計画だ。

CompariTechの編集者ポール・ビショッフ氏は、香港で発行されているサウスチャイナ・モーニング・ポスト紙の取材に応えた。「中国では広い地域で、市民の行動の自由が制限されています。それには、監視カメラと顔識別のテクノロジーが重要な役割を果たしています。中国だけでなく、世界中の都市で急速に監視カメラが設置されています。監視カメラ自体が簡単に設置、運用できるだけでなく、ウェブカメラなどより簡単で、顔識別などの画像解析ができるようになっているからです」。

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▲天網システムは、高精細監視カメラの映像から、リアルタイムで顔認識をし、身分証データベースと照合、個人の氏名や身分証番号を表示するというもの。従来の監視カメラでは解像度が不足しているため、空港や駅などの公共施設から高精細監視カメラの導入が始まっている。

 


【多维新闻】中国“天网”监控放大招:准确识别行人年龄、性别、穿着

▲天網プロジェクトを報じる報道番組。監視カメラの映像がリアルタイムで画像解析され、自動車のナンバー、個人の顔から氏名、身分証番号などが表示される。すでに駅や空港といった公共施設で運用されている。

 

監視カメラに対する市民感情は複雑

重慶のある女性は、複雑な気持ちだと言う。「確かに重慶に監視カメラが多いというのは気持ちのいいことではありません。でも、路上でスマホを盗まれたら誰が犯人を見つけてくれるのでしょう。それを考えると、監視カメラにも利点はあると感じています」。

深圳のある男性は、監視カメラは必要だと言う。「交通違反が監視カメラにより摘発されるので、今ではみな安全運転をするようになりました。公共の場所に監視カメラがあることによって、犯罪が少なくあり、安心して外出できるようになりました」。

中国の市民は、不安な気持ちを持ちつつも、監視カメラのメリットに注目し、受け入れている人が多いようだ。

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▲人口あたりの監視カメラ数を世界地図にマッピングしたもの。中国を中心としたアジア圏が頭抜けて監視カメラの数が多い。

 

監視カメラに使われるAIテクノロジー

中国監視カメラはネットワークも進んでいて、撮影した監視カメラ映像の画像解析技術も進んでいる。このネットワーク化は天網プロジェクトと呼ばれ、一定条件下で撮影された顔画像を数秒で個人特定し、身分証番号などを表示するところまできている。

また、カメラの性能も進化し、多焦点広角カメラの導入も始まっている。撮影後に、焦点を変えることができるカメラで、1枚の写真を解析することで、近くの人から遠くの人までの顔識別などが可能になる。

難しいのは、監視カメラは、防犯カメラでもあり、市民監視カメラでもあることだ。防犯カメラとして使われるのであれば、社会にとって有益になる。監視カメラは「悪いことをする人」を補足するためのもので、この「悪いこと」の定義が「犯罪」であるか「政府に都合の悪い活動」なのかによって、防犯カメラか市民監視カメラかが決まる。重要なのは、運用とその用途なのだ。