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スマホ決済、2018年おマヌケな事件ベスト10

テクノロジーはどこまでも進化をしていくが、人間の愚かさは太古より変わっていない。スマホ決済という素晴らしいテクノロジーを手に入れても、それを使う人間は愚かなことを繰り返している。2018年に起きた、そんな愚かな事件を移動支付網がまとめた。

 

自動改札機にスマホを置き忘れ

2018年12月16日、上海のある女性が13号線の真北路駅から地下鉄に乗車した。すでに上海の地下鉄はスマホ決済で乗車できるようになっていて、自動改札にQRコードをかざせば乗車できる。しかし、この女性は急いでいたせいか、自動改札でスマホをかざしたまま、自動改札機の上にスマホを置き忘れてしまった。地下鉄の車内で自分のiPhoneがないことに気がついた。幸いなことに、地下鉄職員が置き忘れたiPhoneに気がつき、無事、本人の手に戻ったという。

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▲自動改札機のスキャナー部分は、斜めになっているタイプが多いが、ときおり水平になっているタイプもある。QRコード決済の場合、多少の読み取り時間が必要なため、タッチするというよりも乗せる感覚になる。

 

シャワー料金をスマホ決済にしてみたら…

12月2日、長沙理工大学の学生寮の温水システムがリニューアルされた。今まで、温水シャワーを使うには、プリペイドカードを使う必要があった。これがスマホ化された。専用のアプリをスマホに入れておき、シャワー室でQRコードをスキャンすると、温水シャワーが使えるようになる。事前にチャージする必要はなく、スマホ決済から利用料が決済されるため、利便性が高まるという話だった。

しかし、スキャンする装置がシャワー室内にあるため、スマホが濡れて故障したり、置く場所がなく、硬い床にスマホを落としてしまうことを心配し、学生からの評判は散々で、プリペイドカードに戻してほしいという声が相次いでいる。

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学生寮などに設置されている有料温水シャワーの支払い機。シャワー室内に設置されたため、防水でないスマホが壊れる、置く場所がないなどと不評だった。

 

対応していない店にWeChatペイ強盗

10月24日、香港の深水埗のコンビニに、マスクで顔を覆った男が入ってきた。その男は、女性スタッフに向かって「オレのWeChatペイに1万5000香港ドルを送金しろ」と大声をあげた。しかし、そのコンビニは、WeChatペイに対応していなかったため、女性スタッフは「できません」と答えた。男は服の前を開け、「爆弾を爆発させるぞ」と脅したが、女性スタッフは冷静に警察に通報し、その男は捕まった。

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▲香港では、地元の人は「アリペイ」「WeChatペイ」をあまり使っていない。しかし、大陸からの出張客、観光客のために、スマホ決済に対応する店舗が増え始めている。

 

パオズの支払いに230万円

5月、河南省鄭州の包子店の店主が、月末に帳簿を整理していると、ある客が14万元以上(約230万円)を支払っていることを発見した。包子で14万元というのはいかにもおかしい。店主は、この客は、金額を入れるところに自分の6桁のパスコードを入力してしまったのではないかと推測した。

この問題は、ネットで議論になった。入力を間違えやすいつくりになっていて、しかも間違ったまま送金できてしまうのは、アリペイ側にも問題があるのではないかというものだ。アリペイは8月14日から、1回の支払額上限を10万元に制限するようにした。

 

拾ったスマホが偶然自分と同じパスコード

4月、浙江省温嶺市のある女性が通勤途中にスマートフォンを拾った。悪気はなく、自分のパスコードを入力してみると、ロック解除ができてしまった。偶然にも、自分と同じパスコードが使われていたのだ。悪い心が頭をもたげ、この女性は自分のアカウントに3回にわたって、合計8275.5元(約13万6000円)を送金してしまった。結局、逮捕されたが、一部には同情の声が上がっている。

 

今時、大量の現金を持ち歩く不審な男

3月、ある男性が大きな荷物を抱えて列車に乗っていた。その様子が不審なことから、警察官が気づいて、荷物を調べたところ、中身は144万元(約2300万円)もの現金だった。この無現金社会になっている中国で、144万元もの現金を持ち歩いているのはいかにも怪しい。警察は、偽札を作る犯罪集団の一味ではないかと拘束をして取り調べをした。

しかし、調べてみると、その男性は地方から出てきて、苦労をして商売で稼いだ金を持って田舎に帰るところだった。身分も間違いなく、商売も真っ当なものだった。警察は、謝罪をし、多額の現金を持ち歩くのは不用心だと忠告をして釈放した。

 

混雑するバスの中でスマホリレー

2月6日、杭州市である男性がバスに乗ろうとした。通常は前から乗って、スマホQRコード決済をして乗るが、そのバスはあまりにも混雑しているため、下車専用である後方ドアから乗り込んだ。しかし、あまりの混雑で、前の支払機のところに行くことができない。その男は別の乗客にスマホを渡し、リレー形式で次々と手渡ししてもらい、支払機のそばの乗客に渡った時に、大声でロック解除のパスコードを叫んだ。それでも問題なく、支払いをしてもらい、逆のリレーをしてもらい、本人のところにスマホが戻ってきた。

 

送金額を間違える客とごまかそうとする店主

1月、重慶市九龍坡の女性が、露店で食材を買った時に、37.5元支払うところを誤って、375元送金してしまった。女性はすぐに気がつき、店主に多すぎる分を返してほしいと訴えたが、店主はあくまでも37.5元しか受け取っていないと言い張った。口論になり、警察官が呼ばれる騒ぎとなった。女性は、店主のスマホ決済の記録を確認すれば375元を受け取っていることがわかるはずだと主張した。

しかし、警察官が店主のスマホ決済の履歴を調べてみると、最後に37.5元の入金記録がある。女性の勘違いではないのかという話になったが、女性のスマホ決済の履歴は375元を送金したことになっている。混乱した警察官が、店主のスマホ決済の履歴をよくよく調べてみると、その店主は女性から375元を受け取った後、警察官がくるまでの間に、友人に37.5元を送金させて、ごまかそうとしていたことが発覚した。

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▲客側がQRコードをスキャンする決済方法では、金額も客が入力するため、金額を間違えることがときどきある。普通は、支払い記録を見せて、過不足分を調整するだけのことだ。

 

テクノロジーは進化しても、人間の愚かさはそのまま

考えてみれば、現金でもスマホ決済でも対面決済ではこのようなトラブルが起きる可能性はある。現金で起こりがちなのは、1万円札を支払ったのに、店舗側が5000円札だと勘違いするパターンだ。そのため、チェーン店などでは、高額紙幣を受け取った場合は、すぐにレジに入れず、釣銭を渡してからレジにしまうなどの手順上の工夫をしているところもある。

QRコード決済では、客側がQRコードをスキャンして、支払い金額を自分で入力する方法があり、ここではトラブルが起きやすい。テクノロジーだけが進化するのではなく、人間も誤りを起こさない手順を工夫して、進化していく必要がある。