中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

海外旅行は「若者」が「SNS」で「個人旅行」。消えゆく団体旅行

旅行比較サイト「スカイスキャナー」と旅行予約サイト「携程」は、共同で、「2018年度出入国ビッグデータ報告」を公開した。団体旅行は全体のわずか3%まで激減し、若者がSNSの情報を使って個人旅行をしていることがより鮮明になった。

 

人気渡航先は安定、欧州も伸びている

2018年、中国人旅行者が最も訪れた海外の都市ランキングは、東京、バンコク、大阪、香港、ロンドン、台北、クアラルンプール、シンガポールプーケット、パリとなった。

この数年、この傾向は変わっていないが、伸び率ではセルビア、トルコ、ポルトガルがそれぞれ前年比、67.7%、16.5%、13.0%伸びており、ヨーロッパ志向が進み始めている。

 

出国者は二級都市の伸び率が高い

出国者数の多い中国都市も、北京、上海、広州、成都、深圳の順で、経済が進んで人口の多い大都市になっていて、傾向は変わっていない。しかし、こちらも、伸び率で見ると、西安重慶昆明杭州などの二級都市が倍増以上の伸びとなっている。

 

海外旅行する中国人は40歳未満が84%

中国の海外旅行の近年の傾向は、若い世代が中心になっているということだ。18歳から29歳までで53%と半分以上を占め、40歳以下で84%を占める。中高年はそもそも旅行に行かない、行くとしても国内旅行ということが多い。

ちなみに日本の出国者数の法務省の統計によると、40歳以下は37%でしかなく、海外旅行の中心は40代と50代になっている。この数字は出国者数なので、海外出張なども含まれているが、それでも日本と中国の海外旅行のイメージは大きく違う。

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▲海外旅行者の世代別割合。30歳未満が半数以上、40歳未満で84%にもなる。海外旅行は圧倒的に若い世代のレジャーになっている。

 

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法務省の統計による2017年の日本人海外渡航者の年代別割合。日本の海外旅行は40代と50代が中心になっていて、中国とは対照的だ。

 

団体旅行はもはや3%

もうひとつ大きな変化が団体旅行の縮小だ。少し前まで、中国人の訪日旅行というと、観光バスで百貨店や量販店に乗り付け、大量の商品を買っていく爆買いツアーのイメージを持たれている方も多いと思う。しかし、それはもはや全体の3%でしかない。多くが、家族、恋人、友人、ひとり旅になっている。

もちろんこのような個人主体の旅行者が、飛行機、ホテルを団体予約するパッケージツアーに参加しているケースもあるので、形態としての団体ツアーはまだあるとは言うものの、いわゆる会社や組織で主催する団体ツアーは激減した。

一方、JTBの旅行統計によると、日本はまだ「会社がらみの団体旅行」が7%、「組織が募集する団体旅行」が8%もある。

中国側の統計は、あくまでもスカイスキャナー、携程のネットサービス利用者のもので、会社や組織が旅行代理店を通じて団体旅行を実施するケースもあるので単純比較はできないが、中国の団体旅行の割合は、ほぼほぼ日本と同程度になったと考えていいのではないだろうか。

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▲中国人海外旅行者の旅行形態。個人旅行が圧倒的で、団体旅行はわずか3%まで激減している(統計の母集団が、ネットサービス利用者であることに注意)。ひとり旅も20%に到達している。

 

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JTBの旅行統計による日本人の海外旅行形態。団体旅行がまだ15%もいる。いわゆる個人旅行は半数程度でしかない。

 

SNSや友人から旅行先を決める中国の若者

旅行先を決めるのに影響した要因を訪ねてみると、SNSと友人の比率が高い。オンラインとリアルの交友の中で、旅行先を選んでいることがわかる。テレビなどの娯楽番組の影響はまだ22%と高いが、広告はもはや5%でしかない。既存のチャネルが大きく後退している。

また、面白いのはインフルエンサーの影響力が9%とまだ小さいことだ。ショッピングなどではインフルエンサーの影響は無視できないどころか、それにより消費動向が動くところまできているが、旅行に関してはまだインフルエンサーの影響力はさほど大きくはない。今後、どうなっていくか、注目しておく必要がありそうだ。

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▲旅行先を決めるのに影響をしたメディア。SNSが強く、娯楽番組、友人と続く。インフルエンサーの影響力がまださほど強くないところが興味深い。今後、海外旅行インフルエンサーも登場してくるかもしれない。

 

世界一コンビニ密度が高い台湾は、バラエティでも世界一

台湾は人口比で見ると世界で最もコンビニが多い地域。最も多いセブンイレブンは、一店一特色を進めていて、バラエティに富んだコンビニが生まれていると捜狐が報じた。

 

日本よりも密度が高い台湾のコンビニ事情

台湾のコンビニは、人口比で見ると世界一高密度だ。2211人に1店のコンビニがある。日本フランチャイズチェーン協会の統計によると、日本のコンビニは5万5743店なので、2275人に1店となり、台湾にわずかながら及ばない。

コンビニ全体の売上は3173億台湾ドル(約1兆1500億円)。日本の10兆9646億円と比べると小さく、物価の違いを考慮しても、台湾のコンビニはまだまだ伸び代を残している。

 

台湾で最も多いコンビニはセブンイレブン

台湾のコンビニで、最も多いのは「統一超商」が運営する「セブンイレブン」だ。2016年末の統計では、セブンイレブンが5107店、ファミリーマートが3057店、国内系の「ハイ・ライフ」が1273店、「OKマート」(サークルKのアジアブランド)が873店となっている。

 

スマホがなくてもネット決済できる「アイボン」端末

台湾のコンビニの特徴は、ibon(アイボン)と呼ばれる便利な端末が置かれていることだ。ibonはセブンイレブンのものだが、ファミリーマートは「ファミポート」、ハイ・ライフは「ライフET」、OKマートは「OK GO」と同様のものがある。人々の間では、総称して「アイボン」と呼んでいることが多いようだ。

この端末では、あらゆるチケットが買える。新幹線、長距離バス、映画、イベントなどで、新幹線のように指定席のものは、直接空きを確かめて購入できる。発券されたら、コンビニのレジで支払いをする。この他、光熱費、税金、交通罰金の支払い、銀行AMT、電子マネー、交通カードのチャージ、タクシーを呼ぶなど、さまざまなことができる。

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セブンイレブンにあるibon。列車やバスのチケットも購入できる。発券をしてレジで支払う方式なので、現金でも決済できる。

 

コンビニが便利すぎてキャッシュレスが進まない

現在では、スマホアプリで発券をしておき、それから店舗のibonに行って、QRコードをかざして発券、レジで支払いをするということができるようになっていて、さらに便利になっている。

ポイントは、支払いはコンビニのレジを利用するということだ。支払いは通常のコンビと同じように、クレジットカード、電子マネー、現金いずれでもOK。台湾もキャッシュレス決済を推進しているが、日本と同じように今ひとつ利用率が上がらないのは、このibonがあるためだ。中国がスマホで予約、決済をしてしまうようなことがすべて近所のibonでできる。現金派であっても、ネットの利便性を享受できるため、ことさらキャッシュレスにする強いモチベーションが生まれない。

 

台湾特有の「一店一特色」セブンイレブン

台湾にコンビニが上陸したのは、1979年に開店したセブンイレブンで、日本からわずか5年後のことで、マクドナルドの上陸よりも3年早かった。上陸当初のセブンイレブンマクドナルドは、高級な店と思われ、中高年が店に入る時に、靴を脱いだという笑話もある。

それから40年、台湾のコンビニは、人口比密度世界一だけではなく、バラエティーも世界一になっている。セブンイレブンは、2008年から「一店一特色」を推進しており、その店ならではの商品を販売するだけでなく、コンセプトそのものがバラエティーに富んだ店舗の展開を始めている。

 

複合店のBig 7

昨年暮れにオープンしたのが「Big 7」と呼ばれる店舗だ。台北市台大公館店で、焙煎したてのコーヒーを提供するカフェが併設されている。さらに、読書、お菓子、化粧品など7つの機能が集まったコンビニだ。

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台北市台大公館店、通称Big 7。カフェが併設されている他、書籍、化粧品など7つの機能が備わっているコンビニ。

 

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▲書籍も置かれている。ここで本を買って、カフェで読書するという人が増えている。

 

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▲スイーツのコーナーは、女性を意識したデザインになっている。

 

無人コンビニのXストア

台北市の統一超商本部ビルには、無人コンビニ「Xストア」が2018年初めから開設されている。入り口にあるパネルで顔認証登録をし、セルフレジ決済するというものだ。無人コンビニ技術の実験店舗となっている。

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台北市の本部ビル内にある無人コンビニ「Xストア」。実験店舗ではあるが、台湾では話題になっている。

 

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▲顔認証をして入店し、セルフレジで決済する。

 

複合店も続々

また、複合店も広がっている。他の業種と複合したコンビニだ。台北市中山区にはスポーツジムと複合した「7イレブン×BEING fit」が登場した。1階がコンビニ、2階がスポーツジムというものだ。

台北市信義区には、ベーカリーとの複合店が登場している。焼きたてのパンが買えるだけでなく、店内のカフェで食べることもできる。

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台北市中山区の7イレブン×BEING fit。1階がコンビニ。2階がスポーツジム。

 

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▲2階が本格的なスポーツジムになっている。

 

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台北市信義区のベーカリーとの複合店。外観は、コンビニというよりブティックに見える豪華さだ。

 

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▲焼きたてのパンをイートインコーナーで食べることができる。

 

ブランドとのコラボも

また、ブランドとコラボする店舗もある。2016年に台南にティファニーとコラボした店舗がオープンしている。ティファニーのカラーである「ティファニーブルー」を使った店舗で、観光客が訪れて、店の前や中で記念写真を撮っていくという。

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▲台南のティファニーとコラボした店舗。外観がティファニーの模様で彩られている。

 

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▲インテリアもティファニーブルーで統一されている。

 

コンセプト店舗も

特定のコンセプトで統一した店舗も増えている。台中市后里区には若い女性をターゲットにした店舗がある。全体をピンクで統一し、菓子類を充実させた店舗で、リボンがアイコンのように使われており、公式な提携関係はないものの、利用者からは「キティーちゃんの店」として人気になっている。

台中市清水区の億承店は、レゴをコンセプトにしている。外観もレゴをあしらったデザインで、店内にはレゴで作った作品が展示されている。

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▲台中の后糖店。外観もピンクに塗られ、中ではスイーツを楽しむことができる。

 

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インスタ映えしそうなスポットも用意されている。

 

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▲スイーツを楽しめるイートインコーナーも女性から人気だ。

 

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▲台中にはレゴをコンセプトにした店舗がある。

 

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▲イートインコーナーもレゴが使われている。

 

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▲店内にはレゴの作品が展示されている。

 

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▲トイレの表示までレゴで作られている。


コンビニ巡りを楽しむ人も

この他、特徴のある外観の店舗も多数生まれている。その多くが、撮影スポットになっていて、台湾のセブンイレブン各店を回って、ブログにアップするマニアも生まれているほどだ。

台湾にとって、コンビニは日用品が買えるだけの場所ではなくなっている。新しいものはコンビニから広がる。そういう場所になっている。

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台北と台中の間にある苗栗県の竜躍店。カラーをテーマにした店舗。

 

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新竹市の騰達店。桜と鉄道をテーマにした店舗。春には桜が咲いて、観光スポットになる。

 

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▲中庭にもイートインコーナーが用意されている。

 

 

 

宿題はロボットにお任せの小中学生たち。保護者は困惑

文字を自分の筆跡で書いてくれるロボットが、小中学生の間で広まっている。書き取りの宿題をロボットにやらせるためだ。保護者たちは困惑をしているが、宿題のあり方を議論する保護者もいると捜狐が報じた。

 

書き取りをしてくれる宿題ロボットが1万3000円

中国は2月に旧正月を祝う春節があり、この期間は小中学校も冬休みとなる。しかし、その間に大量の宿題が出される。

黒竜江省ハルピン市の張さんは、2月13日に小学校3年生の娘の宿題に奇妙な点を感じた。国語の教科書の本文を書き取りするというかなり手間のかかる宿題であるのに、わずか2日で仕上げてしまったのだ。しかも、ものすごくきれいな字で書いてあり、誤字脱字もなく、間違いを直した跡すらなかった。字の間隔もきちんと揃っており、張さんは、なんて一生懸命宿題に励んだのだろうかと感激をした。

翌日、張さんが娘の部屋の掃除をしていると、見慣れない箱を見つけた。そこには「書き取り神器」と書いてあり、説明には「どんな筆跡も真似て書くロボットです」と書いてある。

娘を問い詰めると、旧正月に親戚などからもらったお年玉で、ネットのECサイトで800元(約1万3000円)で買ったという。しかも、冬休みの宿題に間に合わないので、30元を追加して、お急ぎお届け便の指定までしていた。

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▲宿題ロボットにペンをセットし、ノートを置くと、そこに文字を書いてくれる。行間、行幅などはPCから調整をする。

 

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ECサイトで販売されているさまざまな宿題ロボット。ほとんどが使用者の筆跡まで再現するという高性能ぶりだ。

 

使用者の字の癖まで再現する高性能ぶり

張さんは、それでもまだ気がついていなかった。こんなおもちゃのようなもので、書き取りの宿題ができるということが信じられなかったのだ。娘は、困惑する張さんに実演をして見せた。

専用のアンドロイドスマホアプリをダウンロードして、そこに指定された文字をいくつか指で書くか、紙に書いた字をカメラで読み取る。これだけで、その人の筆跡が分析される。

あとは、パソコンから付属ソフトウェアに、書く文章のワード書類を読みこます。教科書のテキストデータはネットから拾ったという。その後、ソフトウェアで、文字の大きさ、間隔などを調整して、ロボットをスタートさせると、1分間に30文字から40文字の速度で文字を書いていってくれる。

その間、娘はおやつを食べながら、ゲームに勤しんでいたという。

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▲PCの設定画面。文字間、行間など細かく指定できる。字体も選べるものが多い。

 

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▲素晴らしいことに、表組みもできるようになっている。

 

利用者からのFAQは「先生にばれませんか?」

このような宿題ロボットは、ECサイトで多数販売されていて、価格は400元(約6600円)から1200元(約1万9000円)ぐらいまでさまざまだ。

この宿題ロボットを販売しているある業者によると、最も問い合わせが多いのが中学生であるという。しかも、「先生にばれませんか?」という質問が多いという。このロボットは筆跡を真似るので、一見手書きと区別がつかないが、同じ文字が何回も登場すると、それは寸分違わず同じ筆跡になる。そこがわかっている教師は簡単にロボットを使ったことを見抜いてしまう。そう説明しているという。

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▲実際に宿題ロボットで書いた文章。手書きにしか見えないが、同じ文字が同じ筆跡であるため、先生にはばれてしまう危険性があるという。

 

保護者の間で起きる賛否両論

この宿題ロボットは、小学生と中学生の間でかなり売れており、ヒット商品になっている。保護者たちは困惑をし、議論が起きている。最も多いのは、このようなものは販売規制すべきだという意見だが、宿題ロボットを擁護する声もある。それは、この時代になってまで、手で大量の文字を書かせるという宿題のあり方がどうなのかという問題だ。もっと、思考させたり、体験させたり、表現させたりする宿題を出すべきなのではないかという意見もある。小学生でもこの宿題ロボットを使いこなす生徒も多く、その能力を賞賛する保護者もいる。

しかし、やはり多くの保護者が、このような商品は好ましくないと考えているようで、各ECサイトに販売を自粛するように求めている。現在のところ、それに応じたECサイトはまだないようだ。

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▲最も売れている熊仔科技の宿題ロボット。字だけでなく、絵も描いてくれる。

 

 

2019年のスマホ決済。公共交通と病院での普及が課題

中国支払清算協会のスマホ決済・ネット決済応用工作委員会は、「2018年スマホ決済利用者調査研究報告」を公開した。これによると、2018年はスマホ決済が地方や中高年まで広がったが、公共交通や病院への普及がまだ課題になっていると雷峰網が報じた。

 

2018年は、地方と中高年にスマホ決済が広がり始めた

中国の「アリペイ」「WeChatペイ」のスマホ決済は、都市部では主流の決済方式であるところまで普及をしている。調査会社Ipos Chinaの統計によると、一級都市の利用者割合は90.4%、二級都市で93.5%、三級都市で92.4%とほぼ普及を完了している。しかし、地方都市や農村ではまだまだで、中国全体の利用者比率は76.9%(2017年)となる。

しかし、2018年は地方都市や農村、また中高年にも広がった。

地域別のスマホ決済利用者割合の2017年と2018年の比較を見ると、地方都市以下での増加が著しい。また、世代別を見ても、31歳以上で伸びている。今まで都市部で急速に普及をしたスマホ決済が、地方や中高年にも急速に普及をしたのが2018年だった。ただし、農村の伸び率はそれでも大きくはなく、今後の課題となっている。

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スマホ決済利用者数の伸び率の変化。直轄市省都などの大都市では普及が完了し、伸び率が低下し始めている。一方、地方都市以下で、伸び率が上昇しているが、まだまだ十分ではない。

 

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スマホ決済利用者数の年齢別の伸び率の変化。30歳以下ではすでに普及が進み、伸び率は低下した。一方で、中高年以上で伸び率が上昇している。

 

不満は「安全性」、不安は「個人情報流出

利用者の不満に対する回答では、「安全性に不安」が高く、しかも2018年になって伸びている。送金が手軽にできることから、電話で送金するように誘導する特殊詐欺が増えており、そこに不安を感じている人が多い。

また、「スマホの速度が遅い」「利用できない場所がある」という不満は相変わらず高いが、2018年では減少して、次第に解決しつつあるようだ。

一方で、「利用限度額が小さい」という不満が目立って伸びており、さまざまな局面でスマホ決済が利用されていることがうかがえる。

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スマホ決済に対する不満。「スマホの速度が遅い」「利用できない場所がある」は減少。一方で「利用限度額が小さい」という不満が大きく増えている。

 

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スマホ決済に対する不安。やはり個人情報の流出を多くの人が心配をしている。個人情報が流出すると、特殊詐欺や理財商品の勧誘などに利用されるからだ。

 

公共料金、チケット、旅費への利用はまだまだこれから

どのような支払いにスマホ決済を使っているかを尋ねると、1位にきたのは理財商品だった。この多くはアリペイの「余額宝」、WeChatペイの「零銭通」などスマホ決済付属の理財商品だ。資金を入れておくだけで自動的に債権をまとめ買いしてくれ、利息がつくというサービスだ。

生活関連の日常消費にスマホ決済を使っているのは当然としても、公共料金や映画のチケット、出張旅費などの利用率はさほど高くない。これは、スマホ決済にまだ対応をしてないケースがあるためで、2019年はこのような場所でスマホ決済が進むことが望まれている。

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スマホ決済を利用している対象。理財商品、生活支出は当然としても、その他の「公共料金」「チケット」「旅費」などはまだまだ利用が限定的だ。

 

公共交通では交通カード、NFCQRコードが三分

地下鉄、バスなどの公共交通でどのような決済方式を使っているかを尋ねたところ、QRコード決済が最も多くなったが、交通カードもまだまだ23.1%いる。これは地域によって、まだスマホ決済に対応していない公共交通があるからだ。

交通カードは持っていかなければならない、忘れたり、落としたりする可能性がある。現金をチャージしなければならない。そういう煩わしさが残っている。スマホであれば、持っていくのは当然、忘れてもすぐに気がつく、ロックがかかっているので悪用される心配がない、チャージをすることも不要。そういった理由から、多くの人がスマホ決済の方が利便性が高いと感じている。

ただし、タッチするだけでいいNFC方式と事前にQRコードを表示しなければならないQRコード方式はほぼ同じ割合で、スマホ決済を二分している。これは、NFCチップが搭載されていない古いスマホがまだまだ使われているからだ。多くの都市で、NFCQRの二本立て対応を進めている。

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▲地下鉄、バスなどの公共交通に乗るときに使う決済方式。交通カード、QRNFCがほぼ均衡している。

 

高速道路では、ナンバー読み取り決済が伸びている

また、高速道路もまだまだスマホ決済が浸透してなく、半数以上がETCを使っている。最も便利なのは、ナンバー読み取りで、徐行して通過するだけで自動的に高速料金が支払われる。ただし、まだまだ対応している料金所がじゅうぶんではない。

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▲高速道路での決済方式。まだ対応している料金所が多くないため、ETCが圧倒的。一方で、ナンバーを読み取り、自動でスマホ決済する方式が増えてきている。

 

病院のスマホ決済が今後の課題になる

スマホ決済に対応してほしい場所を尋ねたところ、「公共交通」「病院」「高速道路」が上位にきた。病院もスマホ決済に対応していないところが多い。病院は、以前から独自の決済システム(電子マネー+診察券)を導入しているところが多く、スマホ決済を導入すると、独自決済システムとの二系統になってしまうことから、意外にスマホ決済が進んでいない。

現在、公共交通に関しては地方都市も続々とスマホ決済への対応が始まっていて、高速道路も料金所の改修が始まっている。2019年は、このような場所でのスマホ決済が進む年になると期待されている。

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スマホ決済を利用できるようにしてほしい場所。公共交通の対応は急速に進んでいるが、病院以下はまだ対応が進んでいない地域が多い。

 

海上のドローン。無人航行ミサイル艇は、群狼航行でミサイルを発射する

2018年に珠海で開催された中国国際航空宇宙航空博覧会で展示された無人ミサイル艇「瞭望者II」が話題になっている。無人での自律航行、遠隔での手動航行が可能で、画像解析により目標物を特定して、ミサイルを発射する海のドローンだと雷神之錘が報じた。

 

ミサイル発射実験にも成功した無人ミサイル艇

2018年の珠海で開催された中国国際航空宇宙航空博覧会で無人ミサイル艇「瞭望者II」が公開された。無人で航行することが可能で、4連装のミサイル発射装置を備える。ミサイル発射実験も、イスラエルに続いて成功している。

この無人ミサイル艇は、珠海雲洲智能科技有限公司と関連する軍関係企業が共同で開発したもの。すでに海外からの引き合いも多く、瞭望者IIの公開1ヶ月で、雲洲智能科技には4億元(約66億円)以上の投資資金が集まり、Cラウンドの投資を完了した。

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▲展示された瞭望者II。上部に取り付けられているレーダーとセンサーの情報により、自律航行、目標物の画像解析を行う。

 

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▲瞭望者IIの上部の写真。左下に4連装のミサイル発射装置が見える。目標物を画像解析で特定し、ミサイルを自動誘導で発射する。

 

画像解析により目標物を特定し、ミサイルを発射する

瞭望者IIは、全長7.5m、幅2.7m、排水量3.7トン、最高航行速度45ノット。22ノットでの航続距離は310カイリ。自動航行、遠隔による手動航行が可能で、画像解析により目標物を特定し、4連装ミサイルを発射することができる。最大射程距離は5km。


中国首艘导弹无人艇试射现场视频曝光

▲ミサイル発射実験の様子。目標物を自動的に特定する。

 

任務は国境海域の巡視と偵察

この瞭望者IIの主な用途は、国境海域の巡視、偵察だが、集団航行も可能で、複数のミサイル艇が同じ隊形を維持しながら航行することもできる。博覧会では、56艘の瞭望者IIが航空母艦のような隊形を維持しながら航行する映像も展示された。このような「群狼航行」では、1艘あたりの攻撃力は弱くても、ひとつの目標に対して集中砲火を浴びせることが可能になり、上陸作戦の支援などにも利用できるという。どのような組織に採用されているかは公表されていない。

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▲群狼航行をする56艘の瞭望者II。空母のような形の陣形を維持したまま、自律航行をする。

 

 

キャッシュレス決済が遅れているベトナムで、普及をするmomo

FT Confidential Researchは、東南アジア各国のキャッシュレス決済アンケートを行い、その結果を公開した。現金派が最も少ないのはマレーシア、最も現金派が多いのがベトナムだった。しかし、ベトナムではmomoやZaloPayの銀行口座不要のキャッシュレス決済ツールが普及し始めている。

 

キャッシュレスに遅れをとるベトナム。それでも現金派は半分以下

東南アジア諸国は意外にキャッシュレス決済が普及をしている。FT Confidential Researchが各国の都市居住者の「日常消費にもっぱら現金を使っている人」の割合を調べたところ、最低はマレーシアの18%、最高はベトナムの46%となった。ベトナム政府は2020年までに都市での現金使用率を50%以下にする目標を立てていて、その目標は達成できそうだが、東南アジア各国にキャッシュレス決済で遅れをとっていることが明らかになった。


GIỚI THIỆU CÔNG TY MOMO

▲momoのプロモーションビデオ。公共料金などの支払いにも対応している。リーダー、レジなどの装置、銀行口座などが一切不要であることが普及のカギとなった。

 

スマホは普及、しかし銀行口座が普及しない

その大きな理由が、銀行口座の保有率が59%と、周辺国に比べて著しく低いことだ。ベトナム政府も2020年に70%達成を目標にしているが、その目標を達成したとしても周辺諸国よりも低い状況だ。

一方、都市の若者層を中心にスマートフォンの普及は進んでいる。都市部で70%、農村部でも50%程度にはなっている。

この状況の中で、ベトナム政府も「銀行口座がなくても利用できるスマホ決済」を後押ししており、現在急速にスマホ決済が拡大している。

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▲momoは送金先を相手の携帯電話番号で指定するというシンプルな方式だ。

 

ベトナムスマホ決済は、momoとZaloPayが2強

その中でも、もっとも急成長しているスマホ決済がmomoだ。2007年に創業し、2013年にはゴールドマンサックスから575万ドル、2017年にはゴールドマンサックスやスタンダードチャータード銀行などから2800万ドルの資金調達をし、すでに利用者数が1000万人を突破している。

momoは、NFCリーダーなどの装置を必要としない。携帯電話番号を入力して、送金先を指定するというシンプルな方式だ。水道光熱費などもmomoで支払えなど普及している。

momoに続くのが、SNSアプリZaloの決済機能ZaloPayだ。SNSに決済機能がくっついた形のもので、中国のWeChatペイや日本のLINE Payと似たスタイル。利用者は1億人を突破(ベトナムの人口は9000万人程度)しているというが、これはSNS利用者のことで、ペイメント機能の利用者がどのくらいかは不明だが、キャッシュレス決済利用者の約3割程度が利用していると見られる。

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▲ZaloPayは、SNS「Zalo」に付属した決済ツールなので、相手をSNSの中から選択をする。

 

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NFC決済は、サムスンペイが一部普及をしているが、リーダーが必要であるため普及は限定的。

 

銀行口座不要が普及の原動力になった

このようなキャッシュレス決済が普及をしている理由のひとつが「銀行口座不要」というものだ。銀行もスマホを利用してオンラインバンキングを進めて、利用者の利便性を向上させているが、オンラインバンキングには月額利用料が必要など、利用者からは歓迎されていない。

しかし、ベトナム政府は、最終的にこのようなキャッシュレス決済も、銀行口座と紐づけることを義務付ける方針を打ち出しているため、momoもZaloPayも銀行との提携を進めている。ベトナム政府は、単にキャッシュレス決済を普及させるだけでなく、個人ローンや信用スコアなど包括的なフィンテックサービスを成長させるため、銀行口座の普及率を上げることが重点政策だと考えているようだ。

そのためには、銀行側が変わる必要がある。手軽に銀行口座を持てるようにし、モバイルバンキングの手数料を無料に近くする必要がある。ベトナム政府は、2019年第3四半期までに、銀行口座の改革案を提出するよう、ベトナム国家銀行に求めている。この内容次第で、立ち遅れていたベトナムのキャッシュレス決済が急速に普及する可能性がある。

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▲momoは、ポイント還元、割引などのキャンペーンをたびたび行っていて、銀行口座不要ということから、最も普及をしている。

 

スマホ決済、2018年おマヌケな事件ベスト10

テクノロジーはどこまでも進化をしていくが、人間の愚かさは太古より変わっていない。スマホ決済という素晴らしいテクノロジーを手に入れても、それを使う人間は愚かなことを繰り返している。2018年に起きた、そんな愚かな事件を移動支付網がまとめた。

 

自動改札機にスマホを置き忘れ

2018年12月16日、上海のある女性が13号線の真北路駅から地下鉄に乗車した。すでに上海の地下鉄はスマホ決済で乗車できるようになっていて、自動改札にQRコードをかざせば乗車できる。しかし、この女性は急いでいたせいか、自動改札でスマホをかざしたまま、自動改札機の上にスマホを置き忘れてしまった。地下鉄の車内で自分のiPhoneがないことに気がついた。幸いなことに、地下鉄職員が置き忘れたiPhoneに気がつき、無事、本人の手に戻ったという。

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▲自動改札機のスキャナー部分は、斜めになっているタイプが多いが、ときおり水平になっているタイプもある。QRコード決済の場合、多少の読み取り時間が必要なため、タッチするというよりも乗せる感覚になる。

 

シャワー料金をスマホ決済にしてみたら…

12月2日、長沙理工大学の学生寮の温水システムがリニューアルされた。今まで、温水シャワーを使うには、プリペイドカードを使う必要があった。これがスマホ化された。専用のアプリをスマホに入れておき、シャワー室でQRコードをスキャンすると、温水シャワーが使えるようになる。事前にチャージする必要はなく、スマホ決済から利用料が決済されるため、利便性が高まるという話だった。

しかし、スキャンする装置がシャワー室内にあるため、スマホが濡れて故障したり、置く場所がなく、硬い床にスマホを落としてしまうことを心配し、学生からの評判は散々で、プリペイドカードに戻してほしいという声が相次いでいる。

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学生寮などに設置されている有料温水シャワーの支払い機。シャワー室内に設置されたため、防水でないスマホが壊れる、置く場所がないなどと不評だった。

 

対応していない店にWeChatペイ強盗

10月24日、香港の深水埗のコンビニに、マスクで顔を覆った男が入ってきた。その男は、女性スタッフに向かって「オレのWeChatペイに1万5000香港ドルを送金しろ」と大声をあげた。しかし、そのコンビニは、WeChatペイに対応していなかったため、女性スタッフは「できません」と答えた。男は服の前を開け、「爆弾を爆発させるぞ」と脅したが、女性スタッフは冷静に警察に通報し、その男は捕まった。

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▲香港では、地元の人は「アリペイ」「WeChatペイ」をあまり使っていない。しかし、大陸からの出張客、観光客のために、スマホ決済に対応する店舗が増え始めている。

 

パオズの支払いに230万円

5月、河南省鄭州の包子店の店主が、月末に帳簿を整理していると、ある客が14万元以上(約230万円)を支払っていることを発見した。包子で14万元というのはいかにもおかしい。店主は、この客は、金額を入れるところに自分の6桁のパスコードを入力してしまったのではないかと推測した。

この問題は、ネットで議論になった。入力を間違えやすいつくりになっていて、しかも間違ったまま送金できてしまうのは、アリペイ側にも問題があるのではないかというものだ。アリペイは8月14日から、1回の支払額上限を10万元に制限するようにした。

 

拾ったスマホが偶然自分と同じパスコード

4月、浙江省温嶺市のある女性が通勤途中にスマートフォンを拾った。悪気はなく、自分のパスコードを入力してみると、ロック解除ができてしまった。偶然にも、自分と同じパスコードが使われていたのだ。悪い心が頭をもたげ、この女性は自分のアカウントに3回にわたって、合計8275.5元(約13万6000円)を送金してしまった。結局、逮捕されたが、一部には同情の声が上がっている。

 

今時、大量の現金を持ち歩く不審な男

3月、ある男性が大きな荷物を抱えて列車に乗っていた。その様子が不審なことから、警察官が気づいて、荷物を調べたところ、中身は144万元(約2300万円)もの現金だった。この無現金社会になっている中国で、144万元もの現金を持ち歩いているのはいかにも怪しい。警察は、偽札を作る犯罪集団の一味ではないかと拘束をして取り調べをした。

しかし、調べてみると、その男性は地方から出てきて、苦労をして商売で稼いだ金を持って田舎に帰るところだった。身分も間違いなく、商売も真っ当なものだった。警察は、謝罪をし、多額の現金を持ち歩くのは不用心だと忠告をして釈放した。

 

混雑するバスの中でスマホリレー

2月6日、杭州市である男性がバスに乗ろうとした。通常は前から乗って、スマホQRコード決済をして乗るが、そのバスはあまりにも混雑しているため、下車専用である後方ドアから乗り込んだ。しかし、あまりの混雑で、前の支払機のところに行くことができない。その男は別の乗客にスマホを渡し、リレー形式で次々と手渡ししてもらい、支払機のそばの乗客に渡った時に、大声でロック解除のパスコードを叫んだ。それでも問題なく、支払いをしてもらい、逆のリレーをしてもらい、本人のところにスマホが戻ってきた。

 

送金額を間違える客とごまかそうとする店主

1月、重慶市九龍坡の女性が、露店で食材を買った時に、37.5元支払うところを誤って、375元送金してしまった。女性はすぐに気がつき、店主に多すぎる分を返してほしいと訴えたが、店主はあくまでも37.5元しか受け取っていないと言い張った。口論になり、警察官が呼ばれる騒ぎとなった。女性は、店主のスマホ決済の記録を確認すれば375元を受け取っていることがわかるはずだと主張した。

しかし、警察官が店主のスマホ決済の履歴を調べてみると、最後に37.5元の入金記録がある。女性の勘違いではないのかという話になったが、女性のスマホ決済の履歴は375元を送金したことになっている。混乱した警察官が、店主のスマホ決済の履歴をよくよく調べてみると、その店主は女性から375元を受け取った後、警察官がくるまでの間に、友人に37.5元を送金させて、ごまかそうとしていたことが発覚した。

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▲客側がQRコードをスキャンする決済方法では、金額も客が入力するため、金額を間違えることがときどきある。普通は、支払い記録を見せて、過不足分を調整するだけのことだ。

 

テクノロジーは進化しても、人間の愚かさはそのまま

考えてみれば、現金でもスマホ決済でも対面決済ではこのようなトラブルが起きる可能性はある。現金で起こりがちなのは、1万円札を支払ったのに、店舗側が5000円札だと勘違いするパターンだ。そのため、チェーン店などでは、高額紙幣を受け取った場合は、すぐにレジに入れず、釣銭を渡してからレジにしまうなどの手順上の工夫をしているところもある。

QRコード決済では、客側がQRコードをスキャンして、支払い金額を自分で入力する方法があり、ここではトラブルが起きやすい。テクノロジーだけが進化するのではなく、人間も誤りを起こさない手順を工夫して、進化していく必要がある。