中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

なぜ中国人はスマホの保護フィルムが好きなのか

中国人の多くは、スマートフォンを購入すると、保護フィルムを貼るという。夜市などには、保護フィルムをきれいに貼ってくれる露店がよく出ている。なぜ、中国人は保護フィルムが好きなのか。初十百科が報じた。

 

スマホの保護フィルムが大好きな中国人

スマートフォンをそのまま使うか、保護フィルムを貼るかは、人によって異なっている。現在のスマートフォンの画面には強化ガラスが使われていて、落としてもなかなか割れないし、傷もつきにくい。万が一、ヒビが入った場合でも、街中にガラス交換をしてくれるショップが増えている。そのため、年々、保護フィルムを貼らずに使っている人が増えているような気がする。

しかし、中国人は今でも、ほとんどの人が保護フィルムを貼るのだという。

 

初期のスマホは給料1ヶ月分で一括購入

中国で、一気にスマートフォンが普及したのは、2010年、iPhone4が発売された時だ。iPhone4自体もよく売れたし、この頃から中国国内メーカーのスマホも、品質が急激によくなっていった。

しかし、この当時、中国には「機種代0円」のような料金プランはなく、最初にスマホを一括購入しなければならなかった。当時のスマホの価格は、「1ヶ月分の給料とほぼ同じ」という感覚で、ものすごく高価なものだった。

そのため、壊したくない、大事に使いたいということから、保護フィルムを貼る習慣が根付いたという。

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▲よく見かける露店のフィルム貼り職人。画面のホコリを除去して、職人技できれいに貼ってくれる。

 

素人は気泡が入って失敗するため、職人が登場

もうひとつの理由は、保護フィルムを貼る商売が湧き出てきたことだ。保護フィルムをきれいに貼るのは簡単ではない。うっかりすると、ゴミを挟み込んだり、気泡ができてしまうことがある。

また、スマートフォンが普及をし始めた時期には、いわゆる山塞と呼ばれる弱小メーカーが製造したアンドロイドスマホが大量に市場に流れ込んだ。価格が安かったためだ。しかし、弱小メーカーが発売しているスマホなので、サイズが合う保護フィルムが発売されていないことが多い。そこで、大きめの保護フィルムをカッティングして貼るという商売が成立したのだ。

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▲フィルム貼りの道具は、タオバオで500元ちょっと(約8500円)で販売されている。これを購入して、露店を出すという人がたくさんいる。

 

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▲最近では、貼るときに空気を抜いて、気泡が入らないようにする道具が普及している。これ1台あれば、フィルム貼り職人の商売がすぐ開店できる。


黄砂と食用油スマホの画面を汚す

この保護フィルムの習慣は、広く定着をした。その理由のひとつは黄砂だ。春になると黄砂が降ってきて、あらゆるものが埃っぽくなる。黄砂は砂粒なので、スマホ画面についたまま放っておくと、細かな傷が入ってしまうのだ。

もうひとつが中華料理だ。中華料理では油を大量に使う。食事中でもスマホをいじってしまうのは中国人も変わらない。画面に、指紋や油汚れがついてしまう。

これが保護フィルムを貼ることで、きれいな布で拭うだけできれいになる。そんなことから保護フィルムを貼る人が多いのだという。

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▲中国は春になると、黄砂が降ってくる。画面はすぐにホコリだらけになる。多くの人が保護フィルムを貼るのは、これが理由。

 

買い替え期間短縮とともに消えゆくフィルム職人

しかし、最近ではこの保護フィルムの習慣も減りつつある。中国人はスマホを頻繁に買い換える。だいたいバッテリーがへたってくると、バッテリーを交換するのではなく、新しいスマホを買ってしまう。そのため、買い替えまでの期間が短くなっていて、1年から2年程度で買い換える。それだけ、スマホの価格が下がり、経済的な余裕が生まれているということだ。

2年以内であれば、保護フィルムを貼ってまで大事にすることもない。そういった考え方から、裸のまま使っている人も増えている。

中国の街中の風物詩とも言えた「手機美容」の看板を出した露店も、次第に見ることができなくなっていくのかもしれない。

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▲保護フィルムを4分で貼ってくれる自動機械も登場して話題になっている。どんなサイズのスマホにもきれいに貼ってくれるそうだ。