中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

新学期に用意された各キャリアの学割プラン。1年で5000円+で利用可能

中国の大学生は慎ましやかに暮らしている。1月の生活費は約2.6万円で、この中からスマホ代金を支払わなければならない。そのため、各キャリアとも学割プランを用意している。1年で300元というのが相場で、さまざまなボーナスをつけるのが主流になっていると捜卡之家が報じた。

 

慎ましやかに暮らす中国の大学生

中国の大学生は慎ましやかだ。「大学生消費研究報告」(iiMedia Research)によると、中国の大学生は4183万人いて、1ヶ月の生活費の中央値は1516元(約2万6000円)となった。住むのはキャンパス内にある学生寮、食事は美味しくはないけど激安の学食であるため、これでもじゅうぶん生活がしていける。何より、学業の負担が大きく、遊びに行く暇など滅多にない。

また、最近では考え方が変わりつつあるものの、裕福な家庭の子弟であっても学生寮に入り、他の学生と同じ生活を送るという伝統がある。それが中国の学生生活だと認識されている。

 

大学生には負担となるスマホ

一方で、大学生はほぼ全員がスマートフォンを持っている。学生寮の相部屋でイヤフォンをしながら、TikTokや動画を見たり、音楽を聞いたりするのが唯一の娯楽であり、また大学内でもスマホを使って本人確認をすることが多く、必須のツールになっているからだ。

しかし、この慎ましやかな生活費で、どうやってスマホ代を支払っているのだろうか。

 

中国のスマホ料金は、日本のMVNOとほぼ同レベル

中国のスマホ利用料は非常に安い。三大キャリアのひとつである中国電信のサイトを見ると、基本プラン「大流量59」が月15GB+200分無料通話で月59元(約1000円)、「大流量99」が月20GB+300分無料通話で月99元(約1700円)と、日本のMVNOや格安プランとほぼ同じレベルだ。ただし、ショートメッセージ(SMS)は発信の際に課金をされるため、多くの人がSNS「WeChat」を使ってやりとりをしている。

また、スマホ本体は自分で購入して用意する必要があるが、中古でもいい、機種にもこだわらないと割り切れば100元程度から手に入れることができる。

この価格は、現在の中国人にとっても安く感じられる。しかし、慎ましやかな学生にとってはなかなかの負担だ。特に大学生は機種にはこだわりを持つため、通信量は安く済ませたい。

 

国電信の「新青年プラン」

そこで各キャリアとも「キャンパスSIM」という学生専用プランを用意している。中国電信の「新青年プラン」は16歳以上の学生が利用でき、年300元(約5200円)または2年500元(約8600円)で、内容は以下のようになっている。

1)200分無料通話

2)SMS10通無料

3)20GBの5G通信

4)30GBの指定アプリ通信(抖音、快手、優酷、愛奇芸、網易雲音楽、百度など)

また、面白いのは、毎月、公式サイトにアクセスして取得する必要はあるが、10GBの5G通信が毎月ボーナスとしてもらえる。さらに、ブラインドボックスボーナスも用意されていて、「2GB通信」「5GB通信」「100分無料通話」「100通SMS」「ビリビリなどの1ヶ月無料利用」「美団フードデリバリーの10元クーポン」「ラジオサービスシマラヤの1ヶ月無料利用」のいずれかがあたる。

f:id:tamakino:20211013100132j:plain

▲中国電信の「新青年プラン」。ブラインドボックスボーナスなど、お得なトッピングをつけている。

 

聯通の「5G速度キャンパスSIM」

聯通でも、一年300元、2年500元の16歳以上の学生プラン「5G速度キャンパスSIM」を出している。

1)200分無料通話

2)SMS10通無料

3)20GBの5G通信

4)20GBの特定アプリ通信

で、ボーナスなどはなく、シンプルな構成となっている。

f:id:tamakino:20211013100128j:plain

▲聯通の「5G速度キャンパスSIM」。1年300元でシンプルなプラン内容となっている。

 

中国移動の「躍動地帯キャンパスSIM」

中国移動は一年300元の「躍動地帯キャンパスSIM」を出している。

1)200分無料通話

2)SMS10通無料

3)20GBの5G通信(市内限定)

4)10GBの5G通信(全国)

中国移動は、これに地域ごとのトッピングがある。広東省では、月29元を追加で支払うと、30GBの5G通信、40GBの指定アプリによる5G通信、80分の無料通話などがついてくる。

f:id:tamakino:20211013100130j:plain

▲中国移動の「躍動地帯キャンパスSIM」。都市ごとにそれぞれのボーナスが用意されている。

 

SIMと機種の分離が格安競争を生み出している

三大キャリアの中では、中国電信が最も学生プランに力を入れている。中国電信のプランは、1年となっているが13ヶ月である点も大きなポイントだ。

キャリアにとって、学生利用者を確保することは、将来の顧客を獲得することであり、学生プランは重要だ。しかし、スマホとSIMは完全分離をして販売されているため、キャリアを変えたければ、SIMカードを入れ替えるだけになっている。また、2018年から携帯電話の番号を変えずにキャリア乗り換えができるようになっているため、キャリア間の移動は激しい。多くの人がお得な年払いプランを利用し、期限が切れる頃に、最もお得な次のプランを選ぶようになっている。乗り換え手続きもすべてネットで完結するようになっている。

このような政策により、価格競争が行われ、携帯電話の利用料は大幅に下がった。一方で、キャリアは価格以外、差別化をすることが難しくなっている。そのため、人生初のスマホ体験となる学生を取り込むことが、どのキャリアにとっても重要になっている。