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AIの普及により、試験問題は思考力を試す問題に。AIにより思考力を育む教育に

共通入試「高考」では、計算力や暗記力を試す問題が減り、思考力を試す問題が増えている。AIの普及により、計算や暗記に頼る課題は、生徒が生成AIで解いて丸写しをしてしまうため、思考力を育む教育へと変わり始めていると芥末堆看教育が報じた。

 

AIが苦手な思考問題が共通入試に登場

2025年の全国共通入試「高考」で出題された数学の問題が話題になっている。なぜなら、思考力を試す問題で、AIが間違った解答を出しがちな問題だからだ。課題をAIに解かせて好成績を取ってきた学生には苦手な問題になる。

その問題とは次のようなものだ。

セーリング競技では、選手は風力計を使って風速の大きさと方向を測定する。これは「視風風速」と呼ばれ、図の(3、3)から(0、2)へのベクトルとなる。しかし、視風風速は、船速と実際の風速を合成したもので、船速はわかっている。これが(2、0)から(3、3)のベトクルとなる。ここから、実際の風速を求め、それが風速等級のどれにあたるかを答えなさい。

問題図から風速のベクトルを求めると(-4、-4)となり、風速を計算すると、4√2となり、これは5.66m/sとなるため、4等級の和風となるというものだ。

現在の生成AIはこの程度の問題は簡単に解いてしまうが、つい最近までは混乱することが多かった。図の2つのベクトルがどのような関係にあるのかを理解するのは、人間にとっても間違いやすいが、以前の生成AIでは混乱することが多かった。

▲高考で出題された問題。ベクトルの考え方がわかっていないと、混乱をして正解できない。現在の生成AIはこの程度であれば正解をすることができる。

 

AIにスキャンさせても解けない、間違える問題

このような思考力を試す問題は「逆刷題」と呼ばれるようになっている。刷るとはスキャンするという意味で、スキャンして生成AIに解かそうとしてもうまくいかない、それに対抗する問題という意味だ。

このような逆刷題が重要な試験で頻出するようになり、教科書も思考力を試す学習が急速に増えてきている。従来のような機械的な計算と知識を試すような問題は、生成AIが得意であり、多くの生徒が自分で手を動かさず、生成AIに解かして、その答えを丸写しして提出するようになっているからだ。

試験は、知識を試すから能力を試すに、解答を出すから問題を解決するに移行をし始めている。

▲現在の教室では電子黒板、タブレットなどが必須になっている。思考力を育むには、アニメーションやインタラクションが必要になっているからだ。

タブレットの自習教材も重要になっている。自分のペースで学ぶことができ、わからないところは何度でも繰り返すことができる。

 

深圳市の小学校の試験で出された問題

深圳市南山区は、深圳のテック企業に勤める人の子弟が多く、教育レベルが高いことで知られる。その小学校で定期試験に出された問題も話題になっている。

ひとつは「長城謡」という歌の中に「四万万」という言葉が出てくるが、この言葉の解釈として間違っているものを選ぶ問題。選択肢は「A:4億の意味」「B:一種の近似数」「C:十万が4つ」「D:一千万を40回分数えたもの」で、誤っているのはCとなる。

もうひとつは、神事に使われる縄で数量を表す方法で、縄で結び目をつくって数を表すが、右から始めて、5になると、一本左の結び目に移す。つまり、いちばん右が1の位になる5進数になっている。これで提示された縄の数を読むというもの。

1の位が2つ、5の位が3つなので、合計2+5×3=17となり、答えはBとなる。

この2つの問題も現在の生成AIは正解をするが、少し前まではやはり苦手な問題だった。

▲深圳市の小学校で出された定期試験の問題。人間であればさほど難しくない問題だが、生成AIは苦手としている。下の縄の問題は、今でもいくつかの生成AIは誤った回答を出力する。

 

AIの導入により、思考力を育む教育へ

全面的に思考力を育てる教育に移行をする上で、重要視されているのが、タブレットや電子黒板というデバイスだ。思考力を育てるには、従来のテキストと画像の教科書はもはや向いているとは言えず、アニメーションや動画による理解が求められるからだ。

さらには、指で触って、アニメーション中の要素を自分で操作できることが望ましい。2025年には、授業カリキュラムと大学入試制度の改革が行われ、その中で機械的な訓練から思考する能力を育てる教育にシフトすることが明確にされている。AIの普及により、教育が変わり始めている。

▲学校で生成AIを使うことは普通になっている。多くの生徒がわからないことは、まず生成AIに尋ねてみる。

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