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今回は、「まいばすけっと」とフーマNBについてご紹介します。
このメルマガで何度もご紹介している「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)が、再び戦略転換をして成功しています。
「vol.208:サブスク化する小売業「ホールセラー」。フーマの生死をかけた戦いとは」(https://tamakino.hatenablog.com/entry/2023/12/24/080000)では、ウォルマート系のホールセラー「サムズクラブ」と真正面からの競争を挑む姿をお伝えしました。
しかし、やはりウォルマートの世界的なサプライチェーンを背景にしたサムズクラブは強かったようです。「vol.286:高所得者はみなサムズクラブで買い物をする。地方にまで展開し始めたサムズクラブの強さの秘密」(https://tamakino.hatenablog.com/entry/2025/06/22/080000)では、サムズクラブの強さの理由と、フーマのどこが足りなかったのかについてご紹介しました。
サムズクラブに負けたフーマは、それで停滞してしまうのかと思われましたが、そんなことはありませんでした。猛スピードでホールセラー「フーマX会員店」を閉店していき、同時に郊外に出店していたミニ店舗「フーマNB」を強化し、多くの店舗で日商15万元(約300万円)を達成しています。店舗数も、積極展開を進め、年内にも300店舗を突破しそうな勢いです。
中国チェーンストア経営協会が発表している「スーパー販売額ランキング」でも、フーマは3位に入り、中国を代表するスーパーに成長してきました。フーマは、成功と失敗を山ほど繰り返しながら、成長を続けるしぶとい企業だと思います。数々の失敗がちゃんと次の成功の糧になっています。

ところで、現在のフーマの稼ぎ頭になろうとしている「フーマNB」(NB=Neighbourhood Business)は、日本のイオン系の「「まいばすけっと」」と非常によく似た業態です。一言で言えば、スーパーとコンビニの中間的な業態で、徒歩や自転車でやってくるご近所の方の需要に応えようという小売です。中国では「社区超市」(コミュニティースーパー)という呼び方が定着しようとしています。
また、中国のローソンはローソン+という戦略で、スーパーとのハイブリッド業態を模索し始めました。さらには永輝などの大手チェーンスーパーも小型店舗の展開を始めています。
日本でもセブンイレブンがSIPという共同ブロジェクトを始めています。2024年2月に千葉県松戸市に通常のコンビニの2倍の面積を出店し、コンビニとスーパーの中間業態をねらうものです。SIPとは「Seven eleven Ito yokado Partnership」の略だそうです。
つまり、日本でも中国でもほぼ同時期に、スーパーとコンビニの中間形態=コミュニティースーパーを模索する動きが始まっています。この日中での奇妙な符合はとても面白いと思います。
「まいばすけっと」はイオングループが展開するコミュニティースーパーで、2005年から展開を始めて、現在は首都圏で1200店舗を展開しています。そのため、関東圏以外の方にはピンとこないかもしれません。
簡単に言うと、つぶれたコンビニに居抜きで入ったスーパーです。店舗面積はコンビニサイズですが、肉魚野菜という生鮮食料品を置いているのが特徴です。
いちばん使われるシーンは、仕事が終わって自宅のある駅で降りて、その日の夕食の買い物をするというパターンです。最近は駅ビルにも大型スーパーが入っていたりますが、広いためにちょっとした買い物にはかえって不便なところがあります。また、駅から数分歩いたところにしかスーパーがないというところもあります。
誰でもそうですが、仕事終わりの帰宅時には体が疲れていて、スーパーで買い物をするのですら面倒くさくなっています。
そこに「まいばすけっと」は、コンビニ感覚で帰宅路の途中にあるため、さっと寄って、必要な食材だけを買って帰れるのです。また、近所の住宅地の中高年、高齢者にとっても歩いていくことができ、スーパーのように歩き回ることなく買えるということから人気になっています。
また、コミュニティースーパーは、コンビニ並みの密度で出店をし、コンビニのように短時間で買い物ができますが、価格はスーパー並みなのです。コンビニの商品はスーパーと比べて1割程度高く設定されています。しかし、多くの人が、スーパーに行って缶コーヒー1本を買うのであれば、少し高くでも目の前のコンビニで買ってしまいたいと考えます。利便性に対する対価を支払っています。
しかし、スーパー価格の商品をコンビニ並の利便性で買える「まいばすけっと」があったらどうでしょうか。コンビニではなく、「まいばすけっと」で買うようになります。
そのため、最近のコンビニオーナーの不安は、ライバルコンビニが近所に出店することよりも、「まいばすけっと」が出店することだとまで言われるようになっています。実際に、「まいばすけっと」が出店をすると、周辺のコンビニの客数が減少したという調査があります。
ただし、「まいばすけっと」は24時間営業ではありません。朝8時から夜11時(地域に合わせて多少異なる)で、営業時間長めのスーパー感覚です。深夜帯を捨てることにより、人件費を節約し、経営を成り立たせています。
個人的に、なぜ「まいばすけっと」が首都圏に止まっているのかがわかりません。札幌には展開を始めていますが、関西圏や中京圏でも成功しそうです。あるいは、歴史のある地域は、意外と大型の個人商店や地域密着スーパーが頑張っているので、進出が簡単ではないということがあるのかもしれません。
いずれにせよ、このコミュニティースーパーは、日本だけでなく中国でも拡大している最中です。中国の場合、その中心になっているのが「フーマNB」で、例によってフーマNBはさまざまなテクノロジーを駆使して、経営を合理化しています。
そこで、今回は、フーマNBがどのようなテクノロジーを使って拡大しているのか、「まいばすけっと」とどこが異なるのかをご紹介し、さらにローソンの中国での取り組みについてもご紹介します。
日本でも「まいばすけっと」の躍進により、生活圏小売の地殻変動が起きようとしています。フーマNBの試みは、日本の生鮮小売を考える上でも参考になることが多いかと思います。
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