ECの商品写真を生成AIでつくってしまう販売業者が増加している。実際の商品よりも見栄えがするため売れやすくなるからだ。しかし、消費者にしてみれば、届いた商品が写真と違うということが起きる。タオバオは対策に乗り出したと南方都市報が報じた。
生成AIによる商品写真が起こしている問題
生成AIでリアルな写真が生成できるようになり、多くの販売業者がECでの商品写真として活用するようになっている。
多くの販売業者では、モデルデータを作成し、商品である衣類の写真を撮影し、それをAIに合成させる。自由なポーズが生成でき、さまざまな情景に合成でき、照明なども調整ができる。このようにして商品写真を生成することで、モデルを使った撮影や再撮影などのコストを省くことができるからだ。
しかし、現在、問題になっているのは、商品すらAIに生成させてしまうというものだ。実際の商品と似た衣類を生成はできるものの、細部が違ったり、質感が異なったりすることになる。良心的な販売業者であれば、そのような「偽商品写真」は使わないが、写真で見る限り、実物よりもよく見え、消費者の目を惹きつけやすいことから、そのまま使ってしまう業者もいる。
現在のECでは、特に女性向け衣類の返品率が高く、80%に達する例もある。その高い返品率に背後には、このようなAI商品写真の使用も大きく影響をしている。写真を見て気に入って購入しても、届いてみたら、写真とかなり違うということが起きているのだ。

モデルの盗用も起きている
また、「モデルが盗まれる」という問題も起きている。生成AIでファッションモデルのデータを一からつくるには、それなりの技術がいる。そこで、人間のモデルを1日だけ雇い、3Dデータを取得して、そこからモデルデータを生成してしまう。これなどは、その旨を契約に盛り込んであるのであれば問題はないが、ひどい業者になると、大手ブランドが実写モデルを使って撮影している商品写真を大量に取得し、それを学習させ、自社のモデルデータとして使用してしまう。
名もないホワイトブランド業者は、消費者が大手ブランドと同じモデルを採用していると錯覚をし、ブランドに安心感を抱き、購入をしてくれることをねらっている。


タオバオはAI写真パトロールを始める
このような問題に対して、EC「淘宝網」(タオバオ)は、今年2025年3月、AI商品写真対策に乗り出した。AI生成画像を判定するツールを入れ、同時に消費者のコメントや苦情などに基づき、問題のある商品写真を非表示にするというものだ。改善に応じない販売業者に対しては、商品の出品停止からアカウントの剥奪までの処分をする。

10万枚を削除するも、AI生成写真はなくならない
この対策を始めて2週間で、タオバオは約10万枚の写真を削除した。しかし、消費者からは「まだAI写真が残っている」という苦情が相次いでいる。露骨なAI生成の写真はツールで判定ができるものの、Photoshopなどを使った微細な修正までは検出することが難しく、また、写真の汚れなどを除去するために、多くの業者がPhotoshopによる修正は行う。
少しでも商品をよく見せたいというのは、誠実な業者も悪徳な業者も同じなのだ。あまりに露骨なAI写真は見られなくなったものの、対策は続ける必要があり、根本的な解決策はまだまだ見えない。
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