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フーマフレッシュが再び成長軌道に。地方に進出することで業績をあげている

アリババの体制変更に伴い、傘下のフーマフレッシュは停滞を余儀なくされていたが、再び成長軌道に入った。地方都市への進出を積極的に行ったことが要因だと創業邦が報じた。

 

ホールセラーとの競争を経て、見つけた地方市場

アリババの新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)が再び成長軌道に乗り始めている。ユーザー価値を高めることをミッションに、品質のいい商品を安く提供することにこだわったフーマは、必然的にPB(プライベートブランド)品の割合を高める方向に進んだ。しかし、それがサプライヤーの反発を招き、店頭のSKU(Stock Keeping Unit、商品種類数)は低下の一途をたどった。

一般的なスーパーでは5000SKU程度が必要で、コンビニは3000SKU程度、フーマはこの3000SKUをも割り込む事態となった。

これにより、PB商品を中心とし、SKUは小さいものの大量購入を促すホールセラー「サムズクラブ」「コストコ」と業態が接近し、特にサムズクラブと激しい価格競争を展開することになった。

▲大都市でOMOスーパーとして人気を博したフーマは、地方展開をすることで業績をあげている。

 

9ヶ月連続黒字を達成

昨年2024年末、フーマの厳筱磊CEOは、全従業員に電子メールで内部にある通知を行った。それは、2024年3月に厳筱磊CEOがCEOに就任して以来、初めて経営情報を詳しく説明したものになった。

それによると、9ヶ月連続で黒字となり、二桁成長をし、2024年中に顧客数が50%増になったという華々しいものだった。3月から6月の間は、スーパーにとって閑散期になる。通常はこの期間は赤字であり、夏と年末の売上で補うというのが一般的だ。それが9ヶ月連続で黒字というのは、フーマが確固たる地位を築いたことを意味している。

 

地方都市に展開をして成功したフーマ

さらに、新規出店も進んだ。2023年には60店舗、2024年には70店舗の新規出店を行い、初めて進出する都市も21都市に達した。この21都市は、中山、珠海、義烏、紹興などの三線、四線都市が中心で、これまで大都会型スーパーだったフーマが、地方展開を始め、それが一定の成果をあげていることになる。

現在420店舗になっているが、2025年は、過去2年以上のペースで新規出店を進めていくとしている。

▲地方都市に進出をしたフーマには、来店客が大勢訪れる。初出店の都市が多く、都市型スーパーがやってきたことを多くの消費者が歓迎をしている。

 

サムズクラブも地方展開を模索

ライバルのサムズクラブも地方都市展開を始めている。両社の武器となっているのが即時配送だ。フーマは以前から3km以内30分配送を行っており、サムズクラブも5km以内1時間配送を始め、これを武器として地方都市への展開を進めている。地方都市住人にとっては、オンラインで注文して短時間で生鮮食料品を配達してくれるサービスは多くなく、人気が高まっている。

 

代理購入ビジネスからマーケティングデータを取得する

ただし、問題は採算性だ。地方都市は購買力が小さく、人口密度も低い。そこに即時配送というコストのかかる手法を持ち込むと、採算割れの不安がある。

そこで両社が注目したのが代理購入だ。代理購入は、近所にサムズクラブやフーマがない人のために、注文を受けて、購入をし、配達までするというビジネスで、サムズクラブやフーマとは関係のない人が勝手に行っている。いわば転売屋に近いビジネスで、本来であればサムズクラブやフーマにとっては排除すべきグレービジネスだ。

しかし、代理購入業者同士の競争もあり、代理購入業者は販売価格そのままで代理購入から配達まで行ってくれる。手数料ゼロで配達をしてくれるのだ。

代理購入業者は、注文主に会員になってもらい、大量の会員カードを保有している。これで購入をすると、ポイント還元がされる。また、会員のみのセールもある。このようなポイントや値引きが、代理購入業者の利益となるため、手数料をゼロにできている。

代理購入業者は、サムズクラブやフーマが出店をしていない都市の住人から注文を集め、店舗がある都市に出かけて購入をし、戻って配達をする。やっていることはグレーなビジネスだが、サムズクラブやフーマにとっては未進出の都市住人に対してプロモーションをしてくれているようなものだ。両社ともに、この代理購入ビジネスの販売データを精査して、進出すべき都市を決定しているという。

▲サムズクラブの代理購入ビジネス。サムズクラブがない都市住人から注文を受けて、買い出しをし、配達までする。手数料0でも利益が出る仕組みを確立している。ホールセラーは、この代理購入ビジネスのデータを活用して、進出する都市を決めている。

 

大都市は不況でも、地方都市は好調な中国

今、中国では大都市では住宅価格下落の影響により、かつてない不況感が漂っているが、住宅投資をあまりしてこなかった、あるいはするだけの収入がなかった地方都市の経済は好調だ。

サムズクラブやフーマは、本来なら排除すべき代理購入業者たちを黙認するだけでなく、優遇することさえ行った。代理購入業者の動向を調査し、どこの地方都市であれば出店をしても採算が取れるかを判断するためだ。

フーマは、この地方都市経済の強さをうまく活用した。地方都市に展開をすることで業績をあげ続けている。

▲社会消費品小売総額(個人消費)の前年比伸び率の推移。北京、上海といった大都市は歴史的な悪い記録を更新している。しかし、全国平均は3.0%増と悪くない。地方都市が伸びているからだ。