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ウェアラブルAIデバイスは、グラスではなくイヤホンかもしれない。バイトダンスが発売したAIイヤホン

バイトダンスがAI機能が利用できるAIスマートイヤホン「Ola Friend」を発売した。音声でAIが利用できるイヤホンだ。バイトダンスではAIグラスの販売も予定しており、AIのウェアラブルバイスの時代が始まりそうだと量子位が報じた。

 

AIは最終的にウェラブルデバイスになっていく

生成AIの広がりとともに、AIと人間の接点をどのように持たせるのかという模索が始まっている。一般的にはスマートフォンタブレットで生成AIを使うというものだが、使う時にはスマホを取り出して、ロック解除をし、生成AIアプリを起動しなければならない。これでは双方向にはならない。人間が使いたい時だけ使う一方通行にしかならない。

AIの方から人間に伝え、リマインドする、例えば「今、出発すれば予定どおりに目的地に到着します」などを実現するには、スマートウォッチなどのウェラブル端末が適している。その他、AIスマートグラス、AIスマートイヤホンなども考えられる。

▲バイトダンスが発売したAIイヤホン「Ola Friend」。1199元(約2万6000円)と高価格帯のワイヤレスイヤホンと同じ程度の値段。

 

グラスは濃密すぎる、ウォッチは希薄すぎる

グラス、イヤホン、ウォッチの3つのいずれがAIデバイスとして適しているか。それはAIとの関わり方の濃度次第だ。AIと密接に関わりたい場合は、視野に常時情報が表示されるグラスが適している。しかし、グラスを装着すると、AIを必要としない時でも情報が表示され、煩わしさを感じることになる。小売店という環境の中でスタッフが顧客の情報を知りたい、警護をする環境の中で警備員が施設や人に関する情報を知りたいという、特化した状況での使用が適している。

一方、ウォッチはバイブレーションでアラートすることが主体となるため、AIを常時必要としないが、まれに必要なことがあるという状況での使用が適している。

▲Ola Friendは利用者の声を認識することができるため、他人が話をしている環境でも音声で利用することができる。

 

関わり方がちょうどいいイヤホン

一方、関わり方が適度なのがイヤホンだ。イヤホンに指で触れる、あるいはウェイクアップワードを口にするということで簡単に起動することができる。AI側から伝えたいことがある場合は、短いアラート音の後に情報を伝えることができる。

例えば、徒歩ルートを検索した後、適切なタイミングで「次の横断歩道を渡ってください」「次の路地を左に曲がります」などと音声で伝えてくれることが可能になる。同じことは、スマホ、グラス、ウォッチでもできるが、スマホとウォッチはバイブレーションで伝えたい情報があることを伝え、人にディスプレイを見てもらう必要がある。グラスの場合は、視覚的にルートを伝える必要がある。

それぞれのデバイスごとに一長一短があり、どれが最適かを決めることは難しいが、音声コミュニケーションを主体にしたAIスマートイヤホンという選択肢にも注目が集まり始めている。

 

バイトダンスが発売したAIイヤホン「Ola Friend」

字節跳動(バイトダンス)は10月10日に、AIスマートイヤホン「Ola Friend」を発売した。価格は1199元(約2万6000円)と、やや高めのワイヤレスイヤホンの価格帯だ。

バイトダンスは、対話型生成AIアプリ「豆包」(ドウバオ)をリリースしていて、人気となっている。一方、今年2024年5月から、深圳のスマートイヤホン開発企業「OlaDance」と提携し、Ola Friendの開発プロジェクトがスタートした。9月にはOlaDanceを完全買収し、10月にOla Friendをバイトダンスの製品として販売をすることになった。

▲バイトダンスの生成AI「豆包」と連動して、AI機能を提供する。

 

ノイズの多い環境でも利用者の声を聞き分ける

一見、スマホに豆包を入れ、通常のワイヤレスイヤホンを使えば同じことができそうだが、Ola Friendは2つの工夫がされている。

ひとつは利用者の声質を学習するということだ。声を聞き分けることができるため、ノイズの多い環境で話をしても言葉を聞き取ることができる。ノイズは人の話し声であってもかまわない。パーティーで多くの人の話し声がする環境の中でも、自分の声だけを聞き分けてくれるのだ。

 

機能を5つに絞ることで使いやすさを実現

もうひとつは、機能を限定することで、使いやすくしたことだ。生成AIの機能が音声でフルで使えるとなると、操作が複雑になってしまう。そこで、5つの機能に限定をすることで、操作上のわずらわしさを排除している。この機能は、今後のアップデートで追加されていくことになる。

 

機能1:質問に答えてくれる

対話型生成AIの基本機能である質問に答えてくれるというものだ。文脈を短期記憶するため、回答からさらに深掘り質問をしていくことができる。

▲わからないことがあったら音声で尋ねることができる。背後で豆包が動いているので、深掘り質問をして議論をすることもできる。

 

機能2:パーソナルDJ

バイトダンスの音楽ストリーミングサービス「汽水音楽」を利用して、音楽を流してくれる。好みの音楽を学習して、パーソナルなプレイリストを再生してくれる。途中で「もっとスローな曲を」「ジョギングに適した曲を」と伝えて、曲を変えていくことも可能だ。

▲音楽を聴くことができ、音声でプレイリストを変えていくことができる。

 

機能3:旅行ガイド

観光地や美術館に行ったときに、観光名所や展示品について、その文化的な背景などを教えてくれる。

▲旅行に行った時に、位置情報を見て、適切な観光案内をしてくれる。

 

機能4:英会話の練習

英会話の練習相手になってくれる。ただ英語の会話をするだけでなく、自分の英語の文法的な誤りや発音に関してもアドバイスしてくれる。

▲いつでもどこでも英会話のトレーニングができる。

 

機能5:話し相手

Ola Friendには、人間の話し言葉から感情を読み取る機能が備えられている。落ち込んでいる時は慰めてくれたり、励ましたりしてくれる話し相手になってくれる。

▲寂しい時は話し相手になってくれる。声から心理状態を認識し、適切な話をしてくれるという。

 

グラスとイヤホン、どちらが最適解か

バイトダンスでは、AIスマートグラスの開発も進めていると報道されている。今は、AIデバイスとしてグラスが適切なのか、イヤホンが適切なのかを試す段階だ。あるいは、まだ私たちが想像もしていない新しいタイプのデバイスが登場をするかもしれない。いずれにしても、AIデバイスの最終形は、スマートフォンなどではなく、ウェアラブルな何かになるはずだ。