香港経由で中国に密輸をするというルートは以前から変わっていないが、現在は密輸品の対象が冷凍品に集中している。品質維持がしやすく、足がつきづらいからだ。中国公安と香港警察の合同チームは、大々的な壊滅作戦を行ったと新華毎日電訊が報じた。
不審な漁船から密輸が発覚
2023年4月13日の夜、広東省の江門海域で、航行ルートが不審な漁船が公安の注意を引いた。江門公安は密輸船の疑いがあると、すぐに出動し、闇に紛れて陸地で漁船の接岸を待ち受け、検査を行った。そこから、牛のセンマイなどの冷凍品18.9トンが見つかった。いずれも違法に密輸されたものだった。
現場で取り調べを行うと、岸には2台のトラックが待ち受けている手筈になっていたと言う。そこで付近を捜索すると、江門海宴鎮で2台のトラックを発見した。そこでも密輸冷凍品3.6トンが押収された。さらに、トラックに乗っていた3人を取り調べると、もう1台のトラックがいることが判明、緊急手配をかけ、貴州省赤水の高速サービスエリアで逮捕をした。
密輸組織の頂上作戦が実施される
さらに、取り調べから、密輸組織の全貌をつかみ、2023年9月に、広東、四川、重慶などの公安と香港警察の合同チームが組織され、一大摘発作戦が行われた。首謀者を含む関係者218人を逮捕し、国内の冷凍庫21カ所を破壊、船舶26隻、冷凍品1300トンを押収し、この密輸品を購入していた食品加工会社14社を捜査し、行政処分を行った。
公安部は、この事件を契機に大々的な密輸撲滅特別作戦を展開、現在までに1087件を摘発し、5846名を逮捕、638隻の船舶、冷凍品3.5万トン、タバコ1.7億本、海産物3366トン、酒類5.4万本などを押収した。
香港経由で中国に密輸。利益はコンテナ1個で2000万円
このような密輸事件は、香港を中継にして、分業化が進んでいる。調達、物流、流通という3つのチームがあり、現場の人間は他のチームの名前も知らない。首謀者のみが全貌を知っており、すべてスマートフォンで指示が送られる。
調達チームは貿易会社を装い、世界各国で買付を行う。これを香港に輸入にする。香港は関税がなく自由貿易港であるため、適切な手続きを取れば、ほとんどのものが自由に輸入できる。そのため、海外の供給者はそれが密輸だとは思わない。適正に香港に輸出したのだと思っている。
香港に到着した密輸品は、そのまま荷揚げすると、さまざまな検査を受け、輸入手続きを取らなければならなくなるため、これを回避するために、スピードボートなどに積み替えられる。物流チームが、これを香港と広東省の間の海に運ぶ。
闇に紛れて、密輸品は船から船へと積み替えられる。流通チームは船で密輸品を受け取って、広東省のさまざま場所に荷揚げをし、トラックに積替え、各地の冷凍倉庫に運ぶ。
一般に、1つのコンテナに25トンの貨物を積むことができる。牛のセンマイの場合、国内での価格は1トンで7万元から9万元程度だが、海外で買い付けると4万元程度で済む。正規業社はこれを輸入し、適切な検査を受け、各地に販売するため、コストがかかるため、7万元から9万元の価格になってしまうが、密輸の場合は、そのような検査はまったくしないため、まるまる儲けとなる。1トンで4万元の利益が出て、コンテナ1つでは100万元(約2000万円)の利益がでる。
密輸は冷凍品に集中
密輸される貨物は、牛肉、豚肉、鶏の足といった冷凍可能な食材が最も多くなっている。特に、国内で輸入禁止になっている食材、輸入が制限されている食材が多い。高く売れるからだ。特に香港は、原則として輸入を制限しない方針を持っているため、中国で輸入が認められなくても、香港は認めているケースが多々ある。
そのため、海外の輸出業者は正規に香港に輸出したと認識し、国内では香港から個人輸入や特別ルートで輸入したと説明すれば多くの人が納得をする。
しかし、密輸品は検疫そのものをしていないだけでなく、冷凍保存もいい加減だ。特にトラック輸送では、冷凍車はしばしば警察に止められ、抜き打ちの検分を受けることがあるため、通常のトラックに簡単な保温設備を入れただけで輸送されることが多い。このため、途中で自然解凍されてしまっているケースも多い。
公安部では、引き続き、密輸撲滅特別作戦を展開し、頂上作戦で首謀者の逮捕を目指していく方針だ。