バイトダンスが開発したSNS「Lemmon8」が米国でじわじわとダウンロードランキングをあげている。このInstagramとPinterestを合わせたようなSNSは、バイトダンスがTikTok禁止に備えて準備をしたものだと人人都是産品経理が報じた。
小紅書そっくりのSNS「Lemmon8」
米国のiOSアップストアランキングで「Lemmon8」がじわじわと順位をあげている。現在、全体のランキングで30位前後にまで順位をあげている。米国ではInstagramとPinterestを合わせたようなSNSとして認知されるようになってきた。
しかし、中国人はこのLemmon8を見たら、あることに気がつくだろう。見た目から内容、操作方法まで、中国で人気のSNS「小紅書」(シャオホンシュー、RED)にそっくりだからだ。
バイトダンスが海外向けに開発
小紅書も中国以外の海外での配信は行っている。しかし、運営拠点を海外に置かないため、中国語のコンテンツがそのまま表示される。海外在住の中国人にとってはありがたいが、現地市民にとっては利用価値がない。現地国対応のコンテンツも増え始めてはいるが、圧倒的に量が多い中国語コンテンツに埋もれてしまっている状態だ。
一方、Lemon8は、現地に運営拠点を置き、積極的に現地語のコンテンツを集め発信している。そのため、現地国の人にとっては、これが中国生まれのアプリであるということには気がつかないほどだ。つまり、ショートムービー「抖音」(ドウイン)が、そのまま海外でも配信するのではなく、「TikTok」として、現地運営拠点を置き、現地国のコンテンツを配信していったことにより成功したのと同じ手法だ。
そして、このLemon8は、中国のバイトダンスが開発をし、シンガポールに拠点を置くTikTokが運営しているのだ。
musical.lyから生まれたTikTok
抖音、TikTokがmusical.lyというアプリを下敷きにしていることはよく知られている。musical.lyは、上海で起業した朱駿と陽陸の2人が2014年4月にリリースしたアプリだ。朱駿はある日、サンフランシスコのケーブルカーに乗っていた時に、大きな発見をした。若者の半分はiPodで音楽を聴き、若者の半分はiPhoneで動画を見ていた。音楽と動画を組み合わせれば100%になる。これをひとつのアプリで組み合わせることはできないか。
そこで、音楽と自分の自撮りビデオを合わせられる仕組みを用意した。自分が主演するミュージックビデオがつくれるというものだ。これが、中国ではなく米国で人気となった。
バイトダンスはこれを見て、後追いをし、2016年9月に抖音をリリースした。著作権関連で問題になることを予想したバイトダンスは、2017年11月にmusical.lyを買収した。
TikTokリスクを回避するための第2のアプリ
この時、朱駿とその部下である陳穎がバイトダンスに移籍をした。陳穎は、2020年3月にShareeというSNSアプリを開発した。最初から海外市場向けを意識したもので、ShareとRecommendをするアプリという意味だ。
この頃から米国ではTikTokに対する風当たりが強くなり、米国企業に売却しなければ配信禁止になるという事態が生じた。TikTokが米国で禁止になれば、バイトダンスの海外戦略は大きく狂うことになる。そこで、このShareeがTikTokの次の海外市場攻略プロダクトとして選ばれた。
2021年9月、ShareeはLemon8に改名された。当初、「レモネード」という名前が提案されたが、そのままでは食品系のアプリだと誤解されかねないため、音の響きはそのままにLemon Eightとされ、8の字は「∞」を縦にしたものだとされた。
運営はTikTokに移管され、日本、タイ、インドネシア、シンガポール、マレーシアなどに展開され、2024年から米国と英国での展開を本格化している。
最初から運営はシンガポールで
TikTokが米国で禁止になるかどうか、状況はまだ流動的だが、バイトダンスは中国国内で成功したアプリの海外版を開発し、シンガポールを拠点にするTikTokに運営を委託することで海外展開をするという仕組みを構築した。TikTokが禁止をされてもLemon8が人気となり、Lemon8が禁止されても次のアプリを供給するという体制ができている。