台湾の小籠包の名店「鼎泰豊」が北京地区から撤退することになった。業績不振が理由だと見られている。消費マインドの冷え込みは大都市で特に深刻で、客単価の高い店から消えていく倒産ドミノが進んでいると界面新聞が報じた。
小籠包の名店「鼎泰豊」が北京から撤退
台湾台北市に本店がある小籠包の名店「鼎泰豊」(ディンタイフォン、https://www.dintaifung.com.tw/jp/)が、中国華北地区から撤退をする。展開している14店は今年2024年10月までに順次営業を停止していく。
撤退の理由は、営業許可証の期限である20年が迫ってきたことだ。更新をすることもできるが、鼎泰豊は更新をせず撤退の道を選んだ。
他では味わえない独特の小籠包
鼎泰豊は、台北市で誕生した小籠包の名店だ。皮が薄く、口に入れると火傷をするような熱いスープが飛び出してくる小籠包は、他では味わうことができない。皮を薄くしても破れない調理技術を持っており、これが他の店にはどうやっても真似ができないからだ。
台北市には12店舗を展開し、どの店もいつもすぐには入れない。店頭で整理券をもらい、しばらく周辺で買い物でもしてからいくというのが定番になっている。専用アプリが用意されており、各店の待ち時間と整理券がどこまで進んだかをリアルタイムで知ることができるようになっている。
中国では高級感を打ち出し人気店に
中国では上海に2001年に、2004年に北京に上陸をし、台湾よりも高級感を打ち出し、手頃な価格で高級中華が楽しめる店として人気となった。さらに、日本、米国、香港、シンガポールなどにも展開し、1993年にはニューヨークタイムズから「世界Top10レストラン」に選ばれたこともある。中国での客単価は150元(約3000円)と、高級店ではないがカジュアルレストランとしては高めの設定になっていた。
客単価の高い店から消えていく
撤退の理由はあくまでも営業許可証の期限がきたということだが、現在の中国の経済状況から業績が深刻な状態になっていたのだと思われる。現在、多くの消費者が「一食30元で済ませたい」と考えるようになっている中で、客単価150元の店は客数が少なくなるのも当然だ。
しかも、この消費マインドの冷え込みは、北京、上海、広州、深圳という大都市で深刻になっている。むしろ、二線都市などの地方中核都市で個人消費が戻りつつある。その理由は疑いなく不動産バブルの崩壊だ。これまで中国人は、中流以上であれば不動産を買うのが半ば常識になっていた。家賃が取れて、数年後には値上がりをするため、数年で100%以上の利回りが得られる超優良の投資物件だったからだ。平均以上の給料がもらえていれば、複数のマンションを購入する。住宅ローンは重荷になるが、厳しくなったら物件をひとつ処分してしまえばいい。住宅ローンが清算され、手元に大きなお金が残る。それで、海外旅行に行ったり車を買い替えていたりと消費生活を満喫していた。
ところが、今は不動産価格が下がり続けている。それどころか、買い手がいないために売却そのものができない。高給を得ているのに、複数の住宅ローンに苦しめられ、資産売却もできずに手詰まりになってしまう「新型貧困」と呼ばれる人たちも出てきている。
多くの人がそうならないように、消費を抑えに抑えこんでいる。大都市での個人消費が全国平均と比べて落ち込んでいるのは、これが原因だ。
飲食店の倒産ドミノが止まらない
大都市のミシュランの星をとるような高級レストランの閉店が続き、「客単価の高い店から閉店していく」倒産ドミノが始まっている。その波が、気軽に高級中華を楽しめる鼎泰豊にまでやってきている。なお、上海、広州などの河南地区の鼎泰豊18店舗は、運営が異なるため営業を続ける。もちろん、台湾の鼎泰豊にはまったく影響はない。しかし、北京からまたひとつ名店と呼ばれる料理店が消えていくことになった。