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高鉄の運転士が運転中にトイレに行きたくなったらどうするのか。答えは緊急停車する

時速350kmで走行する中国版新幹線「高鉄」。その運転士が運転中にトイレに行きたくなったらどうするのか。決められた手順で緊急停車をし、安全を確保すると中国鉄路が報じた。

 

高鉄運転士の事前準備

時速350kmで走行する中国版新幹線「高鉄」(ガオティエ)。その運転士は、乗務前に、さまざまな準備をしなければならない。制服に着替え、アルコール検査を行い、制限速度情報の確認、装備の準備、運行区間の天候確認などが必要になる。

▲乗務前には、運行区間の規制、天候などの確認をする。

▲乗務前にはアルコール検査を行う。

 

居眠り防止に30秒に1回の操作

それからホームの所定の位置で待ち、運転士の交代を行う。運転中は、居眠り防止や病変を把握するため、30秒に1回、専用のボタンを押すか、足元のペダルを踏まなければならない。これを怠ると、車両は緊急停止をして安全を確保することになっている。

▲高鉄の運転席は思ったよりも狭い。この中で数時間、孤独に運転に集中しなければならない。

▲居眠りや体調異変などを察知するために、30秒ごとにボタンを押すことが義務づけられている。

 

乗務後もアルコール検査

乗務が終わった後も、再びアルコール検査をしなければならない。

▲乗務終了後もアルコール検査を行う。

 

高鉄運転士になるには最低5年の経験が必要

高鉄を運転するには、専用の免許を取得しなければならない。そのためには、まず、在来線の機関車などの運転を行い経験を積む必要がある。高鉄の運転士になるには、最低でも5年の在来線運転経験が必要になる。

 

休息も仕事のうち

乗務が終わった後は、次の乗務に向けて、休息を取らなければならない。休息も業務のひとつであるため、乗務中と休息中は、スマートフォンを自分のロッカーに入れておく必要がある。乗務員区の中に、休憩スペースがあり、そこで十分に体を休め、次の乗務に備える。

▲休憩室も用意されているが、休憩も業務のひとつであるため、スマートフォンの使用は認められていない。

 

乗務中にトイレに行きたくなった時のマニュアル

多くの運転士は、乗務前には食事と水を最低限しか摂らないようにするが、それでも乗務中にトイレに行きたくなることもある。また、避けられない体調の異変でトイレに行きたくなることもある。

トイレに行きたくなるというのは生理現象であるため、運転士は乗務中にトイレに行くことが認められているが、その手順は複雑だ。まず、走行中にトイレに行くことはできないので、次の駅に臨時停車をする必要がある。

車載CIR(車載電話)を使って、司令室に連絡をし、緊急停車を申請する。理由は「トイレ使用」が認められている。次に、装備品の中の無線端末を使って、安全生産指揮センターに連絡をとり、トイレ停車をすることを報告する。

さらに、運転席にある列車内電話を使って、同乗しているエンジニアに連絡をとり、状況を説明し、運転室にきてもらう依頼をする。エンジニアが運転室にきたら、同乗している列車長に連絡をし、トイレ停車をすることを説明する。

そして、駅に臨時停車をし、エンジニアが運転席にいることを確認し、運転室を出て、車内のトイレを使用する。

▲トイレに行きたくなった場合には、司令室、安全生産指揮センター、同乗しているエンジニア、列車長に連絡をしなければならない。

 

走行中にはトイレには行けない

運転士が走行中に運転席を離れることは認められていない。30秒ごとにボタン、ペダルの操作ができなくなるため、列車は緊急停車をすることになる。そのためにこのような複雑な手順が必要になる。

もし、高鉄に乗っていて、予定にない駅に臨時停車をした場合は、運転士がトイレに行っているのかもしれない。前方車両に乗っていれば、運転士が恥ずかしそうにトイレに駆け込む姿が見られる可能性もある。