漢服が日常に広がっている。数年前は一部のオタク愛好者のものだったが、一般の人に広がり、日常の外出着としても用いられるようになっている。低価格漢服も登場し、2021年には100億元市場になったと見られると南方週末が報じた。
一部の愛好品だった漢服が100億元市場に
若者の間で中国の伝統衣装「漢服」が大きな産業になってきている。中国の漢服市場は、2016年は3.5億元であったものが、2020年には63.6億元、愛好者は516.3万人となり、2021年には100億元(約1950億円)を突破したと見られ、漢服愛好者も700万人に達したと見られている。ショートムービー「抖音」(ドウイン)で漢服関連のムービーの再生回数は680億回を超えた。
外出着、旅行用としても用いられる漢服
感服の愛好者の64.8%は女性で、20-29歳の若者が中心になっている。若い世代の間では、「JK制服」「ロリータ」「漢服」がオタクの三大コスプレ服とされ、これ以外の服は「地球人の服」と呼ばれる。
しかし、すでに漢服はこのコスプレ服を超え、日常の服になりつつある。当初は、歴史物のドラマやゲームのコスプレとして始まったが、次第にパーティーなどで着る人が出始め、現在では外出着、部屋着としても着られるようになっている。愛好者に漢服の用途を尋ねると、圧倒的に多いのは日常のお出かけと旅行だ。
JK制服とロリータ服はこのような日常化までは至ってなく、漢服が大きな産業になった要因はここにある。
若い世代が再発見をした中国伝統衣装
また、漢服は中国人のアイデンティティにもなっているようだ。新中国の建国以来、封建主義が否定をされ、伝統文化の多くを否定する文化大革命が起きた。これにより、伝統文化の断絶が起きている。20年前、漢服というものを見たことがない人は多かった。当時から、漢服をパーティーなどで着る人はいたが、日本の和服と勘違いされることも多かったという。
現在では、漢服が中国の伝統衣装であることはよく知られるようになり、中国人はアイデンティティを取り戻している。ビリビリである動画が200万回以上再生される人気となった。それは「漢服と世界文化の出会い。中国の女性が海外で漢服を着る」というもので、漢服を着た中国女性が、海外でそれぞれの民族衣装を着た人たちと挨拶を交わすという内容のものだ。
若い世代が、ドラマやコミック、ゲームのキャラクターの真似をするコスプレから始まって、中国は伝統衣装を取り戻すことになった。
山寨漢服も市民権を得るようになっている
しかし、そうなると別の問題が出てきている。山寨(シャンジャイ=偽物)問題だ。漢服には本物、偽物というものはないが、正式な漢服は製造に手作業の部分が多く、高価になる。そこで、漢服を現代風にアレンジをして、製造工程も簡素化し、低価格で提供する業者が大量に登場をしている。
また、漢服は時代によっても様式が異なり、時代考証の知識も必要になるが、そこをないがしろにして「漢服風」の衣装を製造する業者も多い。このような正式ではない漢服は山寨漢服として、一部のうるさ方のファンたちからは批判の対象になっている。山寨漢服を販売する業者に対して、販売をしないように苦情を伝えたり、SNSで山寨漢服を着る投稿主に批判のコメントをつけたりするようになっている。このような過激な人たちは山寨警察とも呼ばれるようになっている。
しかし、アンケート調査では、愛好者の間で「山寨漢服を認めるかどうか」の回答は割れており、山寨漢服を支持する人たちもほぼ同数いる。漢服が一般化をすればするほど、このような山寨警察の声は埋もれるようになっている。
漢服をきた女性を街中で見かけるのはもはや珍しいことではなくなっている。伝統衣装を超えて、日常服としての定着が始まっている。