中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

アップルが進める脱中国化。最大の課題は熟練工の不足

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今回は、アップルのEMS企業として有名な鴻海精密工業(フォクスコン)についてご紹介します。

 

初期のiPhoneには、背面に「Designed by Apple in California, Assembled in China」(カリフォルニアのアップルにより設計、中国で組立て)という文字が刻印されていました。この刻印を見て、個人投資家となっていた雷軍(レイ・ジュン)が「こんな素晴らしいスマートフォンを中国でもつくれるのだ」と感動して、小米(シャオミ)の創業を決意したのは有名な話です。

現在でも、iPhoneは中国を中心に生産されていますが、製造工場は他国にも広がっています。そのため、アップルはこの刻印をやめ、公式サイトなどでは「Designed by Apple in California, Made by People Everywhere」(世界中の人々によって製造)という言葉を使うようになっています。

 

アップルは、毎年、部品供給や組立てを行う企業(サプライヤーリスト)を公開しています(https://www.apple.com/jp/supplier-responsibility/)。このアップルのサプライヤーになることは、製造企業にとって、これ以上ない名誉なことです。生産品の品質が高いことがアップルに認められたということだからです。

アップルはサプライヤーに対して、工場の設備、環境対策、労働問題などを高い水準で求めています。どのようなことをサプライヤーに求めているかも、「サプライヤー行動規範とサプライヤー責任基準」という文書で公開されています。つまり、アップルのサプライヤーであるということは、高い品質の製品をつくり、環境にも配慮し、従業員の人権や健康を守る先進的な企業であるということになるのです。

ご迷惑がかかることになるので、業種、時期などは伏せますが、アップルのサプライヤーになった日本の地方中堅企業の経営者の方にお話を聞いたことがあります。ある日突然、アップルから連絡があり取引をしたいと言われてびっくりしたそうです。その企業は、業界の中では名が知られている中堅企業でしたが、世界的に名が知られているとは思っていなかったので、よくアップルが見つけてきたなと驚き、そして、またとないチャンスだと感じたそうです。

話を進めると、アップルのチームがやってきて、1週間以上にわたって工場の内部をすべて調査をしていきます。アップルのサプライヤーになるためにはアップルが定める基準をクリアしなければならず、その調査だというのです。

その結果、いくつかの小さな問題点が発見されましたが、アップルは解決策も提示をして、同意をしてくれるのであれば、サプライヤー認定が可能だという話になりました。そして、肝心の部品の納入価格の交渉に入ります。

その経営者が驚いたのは、アップルはいきなり「利益ゼロ」の納入価格をずばりと提示してきたことでした。あてずっぽうではなく、業界の相場やその企業の業務プロセスを分析した上で出してきた価格だと感じたそうです。

利益ゼロでは契約することができませんが、アップルは、工場内のプロセス改善提案をいくつかしてきて、それをやり切れば、コストが下がって利益が出る価格になります。

経営者は同意をしました。アップルの提案を実行するのは簡単ではない苦労が伴いますが、アップルと取引ができ、なおかつ工場の業務プロセスは最先端のものとなり、決して大きいとは言えないものの利益が出て、しかも大量注文であるために、企業としても成長ができるからです。一方で、アップルは同類の部品を業界最安値水準で調達することができるのです。

アップルは、単に価格だけを比べて最安値の部品を市場から調達するというのではなく、信頼できる品質を出せるサプライヤーを選び、そこの業務プロセスを改善させることでコストを下げさせ、安値で部品を調達するということを行なっています。

 

さらに、アップルは製造装置の自社開発もしています。最先端の製造装置を大量に開発することでコストを下げ、これをサプライヤーに貸し出し、高品質の製品を低コストで製造します。

アップルは、同じ部品について複数のサプライヤーに製造させています。これは、万が一の場合、供給が滞って生産ができなくなることを避けるためのリスクヘッジですが、サプライヤーにしてみれば、常に他社と競争状態にあり、手を抜けない仕事となります。しかも、製造装置は自社のものではなくアップルの所有物ですから、最悪の場合、製造装置を引き上げられてしまうということも頭をよぎります。

サプライヤーにとってアップルの仕事は非常に厳しい仕事になります。しかし、その報酬として、技術レベルがあがり、何よりアップルが品質を認めたということですから、他のビジネスはしやすくなります。ですので、製造業としてはなんとしてもアップルの仕事は取りたいですし、手離したくない仕事なのです。

 

中国のフォクスコンは、アップルのEMS(Electronics Manufacturing Service)企業=受託製造企業として有名で、過去、その労働条件の悪さがたびたび話題になりました。しかし、アップルの信頼を得て、アップル製品の多くを組み立てしているということは間違いありません。

今回は、フォクスコンが、どのようにして成長し、アップルの製造を受け持つようになっていったのかをご紹介します。そして、最近話題にのぼる「脱中国化」=中国以外での製造の現状がどのようになっているのかをご紹介します。

 

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今月発行したのは、以下のメルマガです。

vol.157:中国のユニコーン企業の現状。第1世代ユニコーンはどれだけ生き残っているか

 

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