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ECやアプリなどの運営で重視される「ユーザー粘性」=DAU/MAU。なぜ、粘性が重要視されるのか

中国のECやサービス、アプリなどでもDAUとMAUは必ず測定される。しかし、その数値の上がり下がりに一喜一憂するのではなく、多くの運営がユーザー粘性=DAU/MAUの指標を重視する。なぜ、ユーザー粘性が大切なのか。それは取るべき対策が見えやすくなるからだと人人都是産品経理が報じた。

 

ネットサービスの重要な指標、MAUとDAU

ウェブやアプリのサービスの利用度を測るために使われるMAUやDAU。

MAUはMonthly Active Userで、月間のアクティブユーザー数。DAUはDaily Active Userで日間のアクティブユーザー数のことだ。このMAU、DAUの特徴はユニークユーザー数であるということだ。同じユーザーが1日に5回利用しても、DAUは1と数える。アクセス、利用という行為の回数を数えるのではなく、利用をした利用者の数を数えることで、利用者の動向を知ることができる。例えば、利用者の積極度やリピート度、流出の危険性などを知ることができる。

 

最も重要な指標は、DAUとMAUの比

一般に、DAUは生活サービスなど毎日使ってもらいたいサービスの指標として使われ、MAUはECや旅行サイトなどある程度の期間の間に使ってもらいたいサービスの指標として使われることが多い。そのため、サービスによっては、WAU=Weekly Active Userを計測することもある。

しかし、このような使い方は、せっかく測定をしておきながら、もったいない使い方をしている。重要なのは、DAU/MAUという指標なのだ。

これは何を意味するかというと、ユーザーの粘性を表している。粘性が高いということはたびたび利用する人が多いということで、粘性が低いということは利用頻度が少ないということだ。

例えば、30人のDAUがあって、全員が毎日アクセスをしているとすると、DAU/MAUは1.0になる。一方、30人が月に1回しかアクセスをしない(30人が異なる日にアクセスしたと仮定)すると、平均のDAU/MAUは1/30=0.03となる。この数値を見ることで、ユーザーがどの程度サービスを積極的に利用をしているかがわかる。また、DAU/MAUの変化を見れば、ユーザーの流出の危険性についても予測ができるようになる。粘性が下がっているということは、利用頻度が減っているということで、ユーザーがサービスに失望をしているということになるからだ。

▲DAU、WAU、MAUはひとつの数値だけを見ても意味がない。比にすることで取るべき対策が取りやすくなる。英語圏ではDAU/MAU Ratio、日本では粘着率やアクティブ率と呼ばれることが多い。

 

DAU/MAU指標の動きで対策がわかる

さらに、このDAU/MAU=粘性の利点は、運営が取るべき対応策も示唆してくれる点だ。

▲主なサービスのユーザー粘性の平均値と50パーセンタイル、90パーセンタイルの値。「Product Benchmarks Report」(MixPanel)より引用。

 

1:DAU/MAU↑、DAU↑

粘性が上がって、DAUも増加をしているということは、利用は活発になっているが、MAUは変わらないということになる。会員数は増えていないが、利用は活発になっている状態。これはサービスの改善やプロモーションにより、既存利用者の中でアクティブではなかった人の掘り起こしに成功をしたということだ。しかし、逆に言えば、新規利用者を獲得できていないということになる。獲得できていれば、MAUも上昇するため、DAU/MAUは安定的な推移をするはずだからだ。

DAUが伸びた原因がサービスの改善である場合、それを未知の利用者にも向けて発信をし、新規利用者の獲得に力を入れる必要がある。

 

2:DAU/MAU↑、MAU↓

粘性が上がって、MAUが減少しているということは、流出が始まっているということだ。粘性が上がったように見えるだけで、アクティブではなかった利用者の離脱が始まっている。どのような不満があって利用しなくなっているかを分析し、その不満を解消する対策を急いでする必要がある。

 

3:DAU/MAU↓、DAU↓

粘性が下がって、DAUが減少しているのは、サービスにとって最も危険な状態。サービスの核心的な部分に対する評価が下がり、広範囲の利用者の離脱が始まっている状況。多くの場合、ライバルが出現したか、ライバルの大規模アップデートにより、利用者の乗り換えが始まっている。利用者がどこに流出しているのかをを特定し、欠けている部分を補う必要がある。

 

4:DAU/MAU↓、MAU↑

粘性が下がって、MAUが増加をしているということは、新規利用者が大量に流入したきたことを示している。しかし、新規利用者のほとんどは「どんなサービスであるか1回試しに使ってみる」という人が多い。特に新規利用のクーポン配布などをした直後に見られる現象で、クーポンを利用した後に離脱されてしまう可能性はじゅうぶんにある。そのため、新規利用者をリピートさせる対策を講じる必要がある。

 

重要指標は「比」で使うことで対策に直結をする

ネットサービスを運営する場合、さまざまな解析ツールが豊富にあり、大量の数値指標がリアルタイムで得られるようになっている。しかし、ひとつの数値だけに注目をし、そのあがり下がりに一喜一憂しているだけでは、正しい対応が取れない。例えば、店舗を運営する場合、来店客数だけの注目をしてあげることを考えてしまうと、意味のない粗品進呈などのプロモーションを行なって、運営費がかかるだけで売上はほとんど上がらないということになりかねない。

この場合も、購入客数/来店客数のコンバージョン率、売上/購入客数の平均客単価などを見て、効果的な対策をする必要がある。

一般に、数値だけを見てもあまり意味はなく、xx/xxという比率(Ratio)の形の数値指標をつくることで、取るべき対策が見えるようになってくる。つまり「MAUとDAU。どっちを使うのがいいの?」という問いは意味がなく、両方使い、DAU/MAU=顧客粘性という指標にすることで意味が出てくる。