EVシフトが進む中国で、電動の遊覧船が登場した。2022年4月30日に、電動遊覧船「長江三峡1」が就航した。全長は100m、客席部は4階建て、設計積載人数は1300人で、現時点で世界大容量のバッテリーを積載した電動遊覧船となると科技真探社が報じた。
観光クルーズに使われる電動遊覧船
「長江三峡1」を開発をしたのは三峡集団傘下の長江電力。2018年に長江電力は、船舶電動化工作チームを設立し、大型電動船舶の動力と制御システムの研究開発を始めた。2019年には、長江電力と宜昌交運集団が協働で電動遊覧船の製造を始め、2021年12月に完成をした。
その後、長江の宜昌港を母港とし、家具などの内装工事を進めながら、電気系統の試験や船舶傾斜試験、試験航行などが行われていた。
用途は観光船で、長江ナイトクルーズや三峡クルーズなどに使われる。
航続距離約100km。世界最長を大きく更新
長江三峡1は、寧徳時代のリン酸鉄リチウム電池(LFP電池)を採用し、15の独立したバッテリーユニットに分けられている。バッテリー容量は7.5MWhで、これは100台以上のEVに相当し、航続距離は約100kmとなる。
これまで世界最大容量の電動船は、デンマークのフェリー「Ellen」だが、航続距離40km、バッテリー容量4.3MWhと、長江三峡1はこれを大きく上回っている。
脱炭素化が自然景観系の観光地の大きなテーマに
長江三峡1は、三峡ダムの水力発電で生まれた電力を利用して充電をする。これにより、クリーンな動力源を確保している。長江三峡1は毎年14トンの一酸化炭素、17トンの窒素酸化物、0.4トンの微小粒子を減少させ、530トンの化石燃料を節約する。
エンジン騒音に関しても大きく軽減され、観光客は雑音のないクルーズを楽しめるようになる。
中国の自然景勝地の観光地では、かなり早くから一般車乗り入れ禁止、EVバスによる利用が進んでいる。観光地を脱炭素化することで、入場料を徴収することができるようになり、それによりさらに整備を進めて、観光地の魅力を高めるという好循環が生まれている。
電動遊覧船もそのような観光地の魅力を高め、持続的な観光地にするための切り札として期待をされている。