故宮に象徴される清朝風の景観を残した北京が近代的な景観に生まれ変わったのは、不動産業「SOHO中国」と建築家、ザハ・ハディッド氏の功績が大きい。そのザハ・ハディッド氏の遺作となる麗沢SOHOがオープンし、北京最後の大規模再開発が完成しようとしていると上層建築TOPが報じた。
北京の景観を変えたSOHO中国とザハ・ハディッド
北京市のランドマークと言えば、天安門などの歴史建築や、ユニークな外観の中央電視台本部や通称「鳥の巣」(国家体育場)が有名だが、それが変わり始めている。それを変えているのは、不動産業の「SOHO中国」と建築家、ザハ・ハディッド氏だ。
販売から賃貸に転換して成功したSOHO中国
SOHO中国は1995年に創業された不動産企業。当初は、オフィスビルを建設して分譲販売するという事業を行なっていたが、中国の経済が発展をすると中国の不動産価格が急騰をするようになった。これにより「麺よりも小麦粉の方が高い」(販売価格よりも原材料費が高くなる)状況となり、経営が圧迫された。たとえば、北京のランドマークになっている「三里屯SOHO」は1平米あたり7500元、現在北京のランドーマークとなっている「望京SOHO」でも1万元程度という安さで販売されている。
これにより、SOHO中国はオフィスビルを建設してそのまま所有し、賃貸をするという賃貸業に転換をした。当初は資金回収に時間がかかるようになったため、苦しい時期もあったが、都市のランドマークになるような魅力のある建築を行うことで、入居率を高めていった。高い入居率を維持することで、近隣相場に合わせて賃貸料を改定できるようになり、不動産価格があがっても利益が圧縮をされず、経営が安定をするようになった。
建築家ザハ・ハディット氏を起用
SOHO中国は、このような戦略で、北京と上海にランドマーク級のユニークな建築を次々と建てている。
この時に、SOHO中国が起用したのが建築家、ザハ・ハディット氏だった。銀河SOHOの設計に携わって以来、SOHO中国の多くの建築物の設計に関わっている。
東二環にある銀河SOHOは、中国の美しい建築10選に選ばれたこともある。中国の庭園のある屋敷のイメージを模したもので、美しい流線からなる4つの球場の建物が連結をされている。
北京最後の大規模再開発「麗沢ビジネス地区」
その後、ハディットとSOHO中国は、望京SOHOを手掛け、さらに3つ目の作品として「麗沢SOHO」が2019年にオープンをしている。この麗沢SOHOがザハ・ハディット氏の最後の作品となった。
麗沢ビジネス地区は、北京市の西南、第2環状線と第3環状線の間にある地区で、北京市の都心での大規模再開発地区としては最後のものになると言われている。金融系の規制が緩和された金融特区になっている。
現在、70%程度の建築物が完成をして、ファーウェイ中国本部、アマゾン中国、中央デジタル研究員、銀河証券など724の企業が入居し、将来は22万人がここで働くことになる。すべての完成は2030年の予定だ。
ザハ・ハディットの遺作「麗沢SOHO」
この地区のランドマークとなっているのが、ザハ・ハディット氏の遺作となる麗沢SOHOで、2019年11月にオープンをした。地下4階、地上45階、17万平米の建物になる。地下鉄14号線「麗沢商務区」駅が隣接をし、16号線も延伸される予定だ。
麗沢SOHOは、曲線の女王と呼ばれるザハ・ハディット氏の超現実主義的デザインを実現するために1.83万トンの鉄骨建材が使われている。これはパリのエッフェル塔の2.5基分になるという。
建物全体は螺旋状に45度のひねりが加えられている。建物内部の吹き抜けはビルの天井までの吹き抜けになっていて、高さは約200m。世界で最も高い吹き抜け中庭になっている。また、13階、24階、35階、45階には、2つの棟をつなぐ空中廊下になっており、北京市内が展望できる。
北京の大規模再開発が完了をする
麗沢SOHOは、成熟した北京の象徴となるランドマークとなる。北京市としては最後の大型再開発。ザハ・ハディット氏としては最後の作品。改革開放から続いた北京市の大改造はほぼ完成をした。北京の新しい時代が始まる。