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「緑の波」で交通渋滞を解消。西安市で移動時間を23%減少させたハイセンスのスマート交通信号機

コロナ禍が落ち着き、再び都市は交通渋滞に悩まされるようになっている。その対策として広がっているのが「緑の波」運用だ。渋滞発生地点の交通信号を緑に変え、交通の目詰まりを解消するというものだ。この分野で交通信号機シェアトップのハイセンスが成果を上げていると斉魯風口が報じた。

 

交通信号機の品質で評価をされているハイセンス

中国の交通信号機のトップシェアを取っている企業は海信網絡科技(ハイシン、Hisense TransTech、https://www.hisense-transtech.com.cn)だ。省都級31都市の18都市、その他の1線から3線都市88都市の33都市で採用されている。大都市カバー率は37.5%になる。交通信号機の設置シェアでは16.6%となり、業界トップとなっている。

交通信号は厳しい気候環境の中で24時間7日間動作をしなければならない。そのため、どの都市でも安定性と低故障率を重視をする。95都市の交通警察に安定運用可能な交通信号機ブランドを選んでもらったところ、80都市がハイセンスの名前を挙げた。

ハイセンスのスマート交通事業部のシニア研究員、韓鋒氏によると、ハイセンスではすべての交通信号機を出荷前に、すべての機能を2回動作させてテストを行なっているという。さらに、第三者機関に試験を依頼し、それでようやく1台の信号機が出荷できる。

スマート交通事業部の陳暁明副総経理によると、ハイセンスの交通信号機の年間故障率は1%以下だという。

▲トンネル出入り口で、どのくらいの速度低下が起こるかを調査するハイセンスのエンジニア。ハイセンスのスマート交通信号は、実際の交通状況に合わせた明滅時間の運用が可能になっている。

 

渋滞を解消する「緑の波」を生み出すスマート交差点

近年、交通信号機メーカーの間で、競争のキーワードになっているのが「スマート交差点」だ。スマート交差点とは、1つの交差点の信号制御をスマート化するだけではなく、交通信号機の制御をネットワーク化し、交差点と交差点のネットワークを構築し、信号制御を点ではなく面で行うことを指している。

その象徴的な運用方法が「緑の波」(グリーンウェーブ)だ。交通監視カメラなどから渋滞が始まるポイントを検出すると、その集団の前の道路の交通信号を走行速度に合わせて緑に変えていく。水道管の目詰まりの兆候を検出したら、水の流れをよくして目詰まりを起こさないようにする仕組みだ。

 

緑の波で渋滞を解消した西安市

高徳地図の統計によると、2021年に交通渋滞が大幅減少した都市のランキングは、西安昆明、蘭州、銀川、貴陽になっている。このうち、西安市がハイセンスのスマート交通信号機を導入している。

西安市では1341カ所の交通信号機をネットワーク化し、114カ所のグリーウェーブ帯を設定した。ここで渋滞の兆候が起きた場合は、信号制御のタイミングを変えて、交通の流れをよくして、渋滞が他所に波及をする前に解消をしてしまう。

これにより、市内道路の平均移動時間は23%短縮された。

昆明、蘭州、銀川、貴陽でもハイセンスのスマート交通ソリューションを導入し、同様の効果を上げている。

西安市の交通警察では、渋滞が起き始めると、その前方の交通信号を次々と緑に変えていく「緑の波」運用で、交通渋滞を大きく軽減した。

 

競争が激しくなっている交通渋滞解消ビジネス

この交通渋滞解消の領域では、競争が厳しくなっている。アリババの城市大脳(シティーブレイン)を始めとして、百度バイドゥ)、華為(ファーウェイ)、騰訊(テンセント)、滴滴(ディディ)などのテック企業が同様のソリューションを開発し、目覚ましい成果をあげているからだ。

2020年の統計によると、全国で1万4860件のスマート交通公共プロジェクトがあり、5136社の企業が参加をしている。その中で、ハイセンスは交通信号システムの品質を基礎に、スマート交通に挑戦をしている。

▲ハイセンスのスマート交差点のシステム概要図。最終的には信号の明滅時間を制御するだけだが、さまざまなデータがクラウドに集められ、リアルタイムで分析されて決定される。