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中国式自動販売機は、事前にスマホから在庫確認可能。無人販売機で成長する「在楼下」

無人コンビニはコロナ禍という大きな逆風があり、成長する道をふさがれてしまったが、スマートロッカー方式の無人販売機を展開する在楼下が勢力を拡大している。事前にスマホから在庫が確認でき、購入と決済を済ませ、ロッカーの前では受け取るだけという手軽さが受けていると新零售商業評論が報じた。

 

早すぎた無人コンビニ

2017年に無人コンビニ「繽果盒子」(BingoBox、ビンゴボックス)が登場して、投資家により無人コンビニへの投資が相次ぎ、無数のスタートアップ企業が登場したが、2018年にはすでに淘汰整理が始まっている。

当時の無人コンビニは、店舗を訪れて、QRコードを使って解錠して中に入り、セルフレジでスマホ決済をして外に出るというものだった。しかし、すぐに消費者から飽きられた。

その理由の最大のものが、商品点数の少なさだ。出店のしやすさを考慮して、店舗面積を小さくしたため、並べられる商品に限りがある。コンビニというよりは、大きめのキヨスク程度だった。また、消費者が自由に商品に触れられるため、商品を毀損してしまうことがある。防犯カメラの設置により、万引きなどは把握ができるものの、柔らかいケーキを握って潰してしまうなどまではわからない。対策をしていない無人コンビニでは、商品ロス率が40%に達した例もあるという。

さらに、有人コンビニ、スーパーとほぼ同じ商品を販売するため、差別化が難しく、価格競争に走るしかなかった。これにより、利益が出づらいビジネスになってしまった。

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無人コンビニで話題になったビンゴボックスは今でも38都市に出店をしている。改善すべき点は多々あったものの、コロナ禍が大きな逆風になってしまった。

 

24時間化をキーワードに空港や駅に出店

無人コンビニ業界のリーダーであったビンゴボックスは、現在でも38都市で店舗を展開している。

中国では2018年頃から、増大する旅客需要に対応するため、駅や空港の24時間化を始めた。それに伴い、24時間営業が可能な無人コンビニが駅や空港に出店を始め、新たな居場所を発見した。しかし、それも2020年初めの新型コロナの感染拡大で、交通の24時間化が止まり、無人コンビニに対する需要も低下をしてしまった。

街中の無人コンビニは、一見無接触であり、新型コロナの感染に不安を持っている人から歓迎されそうだが、複数の客が密閉された空間の中で買い物をしなければならないという点が不安視され、ビジネスを拡大することができなかった。

 

無人コンビニは無人ロッカー方式へ

その中で登場してきたのが、無人スマートロッカー方式で飲料やスナックを販売する「在楼下」(ザイローシャー)だ。無人コンビニというよりは、宅配ボックスの形状に近く、大型の自動販売機の感覚だ。

コロナ禍以降、店舗は「近ければ近いほど価値がある」と考えられるようになった。そのため、在楼下の典型的な設置場所は、マンションの敷地内だ。また、学校、病院、オフィスビルなど、人通りというよりも、人の一定時間以上の滞留がある場所に置かれる。

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▲在楼下のロッカー式販売機。大型の自動販売機で、マンションやオフィスビルの隙間スペースに置かれる。

 

スマホから在庫を確認できる大型自動販売

この在楼下が自動販売機と大きく異なるのが、モバイルオーダーを基本にしていることだ。WeChatミニプログラムやアプリを開くと、位置情報から最も近いスマートロッカーの場所が設定され、そこで販売されている商品の一覧が表示される。必要なものをECと同じようにカートに入れ、決済をする。それから、ロッカーの場所に行き、ミニプログラムを使ってロッカーを開けて商品を取り出すという方式だ。

当然、売り切れて在庫がなくなっている商品は、購入することができないので、行ってみてから売り切れだったということがない。マンションの敷地内に置かれている場合、部屋の中でスマホから購入し、それから下に降りて商品を取り出せばいい。社名の在楼下とは「階下」の意味だ。

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▲在楼下のミニプログラムを開くと、位置情報から近くのロッカーの位置が表示される。ロッカーの場所をタップすると、販売されている商品と在庫が確認できる。

 

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▲ロッカーの在庫が表示され、売切れのものは表示されない。購入をして決済までミニプログラムで行ってしまう。受け取りはロッカーに行き、QRコードをスキャンするだけでロッカーが開く。

 

場所に合わせて商品内容を変えられる仕組み

自動販売機なので、状況に合わせて商品内容を変えることができる強みがある。飲料、スナック食品などが基本だが、マンションではゴミ袋や避妊具など、住宅地ではレトルト食品、ビールなど、地下鉄ではマスク、生花などが販売されている。

さらに、場所によってはフードデリバリーと提携し、配達を在楼下のロッカーにしてもらい、利用者はそこに取りにいくという宅配ロッカーサービスも始めた。デリバリー側には省力化になり、消費者には受取りの煩わしさが軽減され、在楼下にとってはついで買いを期待することができる。

自動販売機の人口あたりの台数は、日本がいちばん多く25人に1台、米国が50人に1台だと言われている。しかし、中国の場合、2200人に1台しか普及をしていない。それを考えると、消費者から最も近い場所にある販売ポイントとして、今後、大きく伸びていく可能性がある。

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▲省スペースであるために、どこにでも置ける。さらに、その場所に応じて、商品内容を工夫することができる。飲料とスナックが基本だが、マスク、生花、ゴミ袋、避妊具などがその場所の状況に応じて販売される。また、フードデリバリーの受け取りにも使えるサービスも始まった。