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ネット予約すると、3倍の料金になるホテル料金。旅行予約サービスの背後にあるカラクリ

上海Wホテルに宿泊したある男性が、ネット予約をした価格が、標準料金の3倍にもなっていることから、ホテルとの間でトラブルになった。その裏には、旅行予約サービスの仕組みがあったと前瞻網が報じた。

 

スマホの普及で様変わりした異動の自由度

スマートフォンの普及と「アリペイ」「WeChatペイ」の普及で、生活は様変わりするほど便利になった。もはや、高鉄(中国版新幹線)のチケットを購入するのに駅の窓口の長い行列に並ぶ人はごくわずかだ。誰もがスマホで予約をし、決済をする。ホテルを予約するのに、電話帳を見て、電話をしたり、旅行代理店に行き予約をする人も少なくなった。多くの人が、OTA(Online Travel Agent)サービスで予約をし、決済をする。以前は旅行先に行ってしまってから、ホテルを探し回り、なかなか空き部屋が見つからなくてうろうろする人もいたが、今ではそんなことは滅多にない。旅行先であっても、OTAを使ってスマホで探す。

 

高級ホテルに宿泊をしたある男性

しかし、その利便性と引き換えに、消費者は不公平な代償を支払っているかもしれない。

ある男性が子どもを連れて上海旅行を楽しんだ。この男性は美団(メイトワン)を使って、上海の観光地、外灘(ワイタン)にある高級ホテル「Wホテル」を一晩予約をした。価格は9559元(約16.2万円)だが、46平米ある広めのツインで、外灘の夜景が望めるという部屋だった。この男性は、高いがそれだけの価値はあると思い予約をした。

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▲問題の男性が美団を使って予約した時のスナップショット。9559元という高いものだが、観光地「外灘」の夜景が臨める部屋であるため、価格にはいったん納得した。

 

予約時の価格は標準価格の3倍以上であることが発覚

しかし、ホテルに着いてチェックインをすると、渡された宿泊登記簿に部屋の価格が2980元(約5万円)と書かれていた。説明を求めると、それが部屋の標準価格であり、美団でいくらで販売されているかはホテル側では関知できないことなのだと説明された。

それではと、その男性は予約した部屋をキャンセルして、新たに2980元の部屋を予約したいと申し出た。キャンセル料を支払っても、その方が安く上がるからだ。しかし、ホテル側ではすでに満室で空き部屋はないという返答だった。男性は、そんなバカなことはない、今、部屋をキャンセルすれば1つ空くじゃないかとトラブルになった。

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▲問題の男性がチェックイン時に渡された宿泊登記簿。一段目に部屋の価格が2980元と記載されていて、男性とホテルの間でトラブルが起きた。

 

トラベル予約サービスにより異なるホテル価格

ホテルの価格が、需要に合わせて変わるのは周知のことだが、このように予約するルートの違いで価格が変わるというのは誰もが納得できない。実際、美団、携程(シエチャン、Ctrip)、去哪児(チーナール)で、同じ日、同じ部屋の価格を比べてみると、それぞれ9885元、4559元、4609元とかなりの価格差があった。

他ホテルでも、同じ日に同じ部屋がOTAによって、大きな価格差があり、場合によっては3倍もの違いがある。

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▲問題となったWホテルの部屋の公式サイトによる紹介ページ。ダブルベットの部屋で、外灘の風景に面した絶景が楽しめる。

 

価格が異なる旅行予約サービスのカラク

これはOTAの仕組みに原因がある。ホテルによって異なるが、多くの部屋をOTAの代理店に年間などの長期契約で売却をしてしまう。価格は交渉次第だが、ホテル側では確実に部屋が売れるので経営が安定をする。

Wホテルが、問題の男性に「満室で空き室がない」と告げたのは、Wホテル自身が販売できる部屋が満室になっているためで、男性に対して意地悪をしたわけではない。男性の部屋や美団に売却済みであり、ホテル側で再販売することはできないのだ。

OTAは、購入した部屋を販売するが、OTAごとに需要予測などをして価格を決定し、販売をする。需要が強い時は、かなりの高価格になることもある。さらに、OTAでは、価格決定アルゴリズム機械学習などを使って自動化しているのが一般的で、人がほとんど介在していない。そのため、部屋によっては常識外れの高価格になることも起きているようだ。

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▲同じ日の上海Wホテルの同じ部屋の価格を見ると、各OTAで大きく価格が違っている。

 

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▲同じように上海ペニンシュラホテルの価格も、OTAにより価格が大きく違っている。

 

美団は謝罪。利便性と引き換えに失うもの

美団は、前瞻網の取材に応えた。「問題のお客様が予約をされた上海Wホテルの部屋は、協力会社から購入をしたものです。市場の需要に応じて価格は調整しております。価格の件で、該当のお客様に不愉快な体験をさせてしまい、たいへん申し訳なく思います。深くお詫び申し上げます。現在、協力会社と協議をし、お客様に差額の一部を返金する手続きに入っており、お客様の了解を得たいと考えております。さらに、私たち美団は、価格管理業務を見直し、このようなことが起こらないようにし、お客様に便利で快適なサービスを提供していきたいと考えております」。

ホテルを予約するのに、以前のように何本も電話をかけてみる必要はなくなった。しかし、ここまで価格差があると、複数のOTAで検索をして、価格を比較するということはしなければならないようだ。利便性があがると、別の面倒が生まれてくる。