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成長するオタク市場の「三坑アパレル」。JK制服、漢服、ロリータが人気の中心

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明日、vol. 085が発行になります。

 

今回は、JKの制服についてご紹介します。

というと、びっくりされる方も多いかと思いますが、真面目なビジネスの話です。

このメルマガを書く時には、各種資料を集めていますが、その中で役に立つのが証券会社の業界レポートです。証券会社のアナリストが、さまざまな業界について調査を行い、その結果をまとめてレポートとして個人投資家に向けて配布をしています。もちろん、それを読んで、新たな投資をしてもらうのが目的ですが、投資家に配布するレポートなので、客観性が高いのです。

中国に限らず、世界中の企業がさまざまなレポートを公開していますが、企業によるレポートはその背後に自社ビジネスの拡大という意図があります。ですから、自動車会社は「自動車はこんなに危険だ」というレポートは作りません。作ったとしても、その後に必ず「弊社はこんなに安全に対する取り組みをしている」という内容を追加します。企業による調査研究レポートは、その背後にある意図を割り引いて読む必要があります。

 

一方で、証券会社のレポートは客観性が高いと感じています。特定の業界を過度に有望に見せて投資を促したとしても、その投資が失敗に終われば、投資家はその証券会社を使わなくなってしまうからです。そのため、どこの証券会社のレポートも、ひたすら客観的な情報を積み重ね、投資判断はあくまでもご本人でお願いしますという態度で制作されています。さらに、その業界にどのようなプレイヤーがいるのか、投資関係、提携関係などの業界地図など、基礎知識は丁寧に解説をしてくれるので、中国ビジネスを知るには非常に優れた資料であることが多いのです。ぜひ、みなさんも活用してください。

ただし、当然ながらレポートは中国語で、一部、英語翻訳されたレポートがある程度です。また、レポートを読むには、証券会社の無料会員登録をする必要がありますが、厄介なことに、登録時にSMS(ショートメッセージ)によるセキュリティコード認証があるのです。携帯電話の番号を入力すると、SMSに4桁のコードが送られてくるので、それを入力することで、登録が完了するというものです。このコード認証が中国の携帯電話番号にしか対応していないところが多いのです。そういう面倒はありますが、購読ができるのであれば、かなり役に立つ資料となります。

 

そういう証券会社のレポートを読んでいたところ、「JK制服研究」というレポートを発見しました。開いてみたところ、基礎知識編として、細かい制服の解説がありました。セーラー服の札幌襟、関東襟、関西襟、名古屋襟の違いなど、かなりマニアックな情報が解説されているので驚きました。

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▲「業界報告:紡績服飾。JK制服:サブカルを読み解き、Z世代の志向を把握し、細分市場に好機を見出す」(天風証券)より。JK制服に関する基礎知識もまとめられている。あくまでも証券会社の業界レポート。

 

しかし、レポートの主眼はそこではなく、いわゆる二次元アパレルが産業として成長をしてきて、投資対象になってきているというものでした。しかも、複数の証券会社、調査会社がJK制服に関する研究レポートを公開しています。

中国の伝統服を現代風にアレンジした「漢服」は、すでに存在感のある産業に成長しています。コスプレやパーティー服、室内着だけでなく、ここ1、2年は、アレンジをした漢服を着ている人も街中で見かけるようになっています。もちろん、割合としてはごくわずかですが、漢服姿で平然と買い物をしたり、お茶を飲んだりしています。

JK制服もこの漢服と同じ規模の産業に成長してきているというのが、レポートの趣旨です。

 

複数のレポートを読んで、以前から疑問に感じていたことが氷解しました。それは2、3年前から制服っぽいファンションの女性を街中で見かけることが増えていたからです。制服然としているわけではありません。チェック柄でプリーツのあるミニスカートを履いている女性を見かけるようになっていたのです。上は、カッターシャツだったり、中にはヨットパーカーのようなものを着ていたりといろいろです。

スカートは確かに制服風ですが、上は違います。なので、制服からの影響ではなく、単なるスカートの流行なのかと思っていました。しかし、レポートを読むと、どうやらそれもJK制服の影響だったようです。

そう考えると、漢服よりも広がりは大きいと考えることができ、当然ながら、それを支える産業も大きくなっているはずです。

どのような産業構造になっているか。それが各種レポートで解説されています。なお、中国でも「JK制服」(ジェーケージーフー)という言葉が定着しています。JKが日本の女子高生の略語であることも認識されています。

 

このような漢服、JK制服そしてロリータファッションのアパレル産業は「二次元アパレル」「三坑アパレル」などと呼ばれます。二次元はアニメのことで、三坑は「3つのハマりもの」という意味です。坑は穴のことで、日本語の「沼」に近い感覚の言葉です。

中国のオタクたちの間では、1つのことにハマっている人は、まだまだニワカで、最低3つのことにハマっていないとオタクとは呼べないという空気感があります。三坑とはさまざまなことにハマっていることを表現した言葉で、「三坑少女」という言葉は流行語になりました(男性の場合は、三坑青年となりますが、この使い方はあまり多くは見かけません)。

一般的な三坑の内容は、今であれば、盲盒(マンフー、ブラインドボックス)やフィギュア、アニメ関連グッズ、アイドルグッズなどが入ってきます。盲盒は、箱に入ったシリーズもののミニフィギュアで、開けて見るまでシリーズフィギュアのどれが入っているかわからないようになっています。つまり、コンプリートすることが楽しみであり、箱買いという現象も起きています。

しかし、このようなグッズ類は、100元以内の買いやすい価格になっているものがほとんどです。ところが、三坑アパレルは服ですから、200元以上から1000元ぐらいの価格帯になります。私のような中年男性から見れば、札幌襟も関東襟も似たようなもので見分けがつきませんが、三坑少女にとっては大違いです。TPOに合わせて使い分けるため、次から次へと購入します。

つまり、三坑グッズとしては、単価が高く、産業規模が大きくなりやすく、スタートアップ企業もうまくハマれば成長速度が早い。この辺りが、証券会社(つまりは投資家)が注目をしている理由です。

今回は、JK制服を中心に、三坑アパレル産業につていご紹介します。

 

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