ITシステム開発企業「盛安徳軟件」の名物女性エンジニアが退職の日を迎えた。管理職へのオファーは何度もあったが、それを拒否して、30年間現場に居続けた女性エンジニアだ。中国でも女性ITエンジニアの比率は低いことから、女性エンジニアにとって王世瑩さんは、ひとつのお手本になっていると盛安徳軟件が報じた。
30年最前線にいた女性エンジニアが引退
エンジニア35歳引退説が言われる中国のテック業界で、30年間、ソフトウェア開発のITエンジニアを務めてきた女性エンジニアが定年退職を迎えたことが話題になっている。
定年退職を迎えたのは、盛安徳軟件(シャインテックソフトウェア)の王世瑩(ワン・シーイン)さん。30年間、ソフトウェア開発の最前線で働いてきて、この14年は決済ソフトウェアGovolution社の仕事に専念をしてきた。王世瑩さんは退職の挨拶でエンジニアの楽しさを語った。「プログラミングをする感覚が好きなんです。問題に直面した時は悩みますけど、その問題を解決した感覚が好きなんです」。
▲退職の日、同僚や部下がささやかな宴席を設けてくれた。管理職にならず、最後の日まで最前線でコードを書く仕事をしていた。
▲王世瑩さんの退職の日。仕事と家庭を両立させてきた王世瑩さんには、同僚や部下の尊敬が集まっている。
仕事は忙しても仕事だけの人生ではなかった
この14年間、Govolution社向けの開発はJavaで行われた。王世瑩さんのキャリアは、まさにJavaの進化史と重なっている。そのため、常に勉強が必要な仕事だった。
仕事は忙しく、帰宅時間が深夜の2時、3時になるのはよくあることだった。ある時、帰宅時間が朝8時になってしまい、ようやく自宅に着く寸前になって、同僚から電話がかかってきて、緊急対応で会社に戻ったこともある。
しかし、仕事が人生のすべてだったわけではない。彼女の息子は、清華大学に入学し、現在は米国留学をしている。
▲30年間、最前線で働いてきた王世瑩さんも仕事が終われば、一人の女性であり、一人のお母さん。ITエンジニアは子育てに有利だと感じているという。
ITエンジニアは子育てに有利
王世瑩さんは言う。「ITエンジニアは、子育てがしやすいと思います。なぜなら、ITエンジニアはみな真面目だからです。私が自宅で仕事をしたり、勉強をする姿が、自然に子どもが自分で学ぶ姿勢を作りました。子どもはおもちゃよりも先に私のパソコンを使い始めました。夕食後に勉強をしている私の姿が、一つのシグナルとなって、夕食後は勉強をするようになり、本を読む習慣がつき、本が好きになりました。本を読む、学ぶ習慣は1日で身につくものではありません。まず、親がその習慣を続ける必要があります」。
王世瑩さんの好きな言葉は、Every little step adds up to a giant leap.だという。
まだ少ないITエンジニアの女性割合
「2020-2021中国開発者調査報告」(CSDN)によると、ITエンジニアの男女比は30歳以下でも10%と、中国の女性エンジニア比率は決して多いわけではない。40歳以上の女性エンジニアの割合は、3%と珍しい存在だ。
その女性エンジニアが定年退職まで現場で頑張り続け、ITエンジニアとして退職をした。女性でもITエンジニアとして頑張れる、歳をとってもITエンジニアとして頑張れる。エンジニアの間で大きな話題になっている。
▲「2020-2021中国開発者調査報告」(CSDN)によるITエンジニアの基本情報。女性エンジニアの割合は30歳以下の若い世代でもまだ10%程度だ。
▲ITエンジニアの収入分布でも男女の差がまだある。ただし、女性エンジニアは若い世代での比率が高いため、それも影響している。