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世界のドローン市場をリードするDJI。開発したものは業界のスタンダードとなり、真似はされるが、完全にコピーすることはできない

世界の民生用ドローン市場で圧倒的な存在感を示すDJI。創業者の汪滔は、子どもの頃からヘリコプターに夢中で、大学でもヘリコプターの研究をし、DJIの創業につながった。DJIの強みは「開発したものが業界のスタンダードになる」技術開発力にあると書童Plusが報じた。

 

ドローン世界市場でトップシェアのDJI

現在、中国で最も勢いのある企業は、北京の字節跳動(バイトダンス)と大疆(DJI)の2社だ。共通しているのは、核心技術を持っているということと、海外市場で成功をしているということだ。バイトダンスはTikTokで成功し、DJIはドローンで成功をしている。

DJIの創業者は、汪滔(ワン・タオ)氏。汪滔氏は、1980年杭州市で生まれた。子どもの頃にヘリコプターが登場する漫画を読み、模型飛行機に夢中になった。進学した香港科技大学では、遠隔操縦で動くヘリコプターの研究をした。大学院でもヘリコプターの研究を続け、試作品を完成させた2006年11月、深圳市の蓮花山にある民家を事務所兼作業場として、深圳市大疆創新有限公司を設立した。

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▲DJIの創業者、汪滔。子どもの頃からヘリコプターに夢中になり、大学時代はヘリコプターの遠隔操縦の研究をした。それがそのままDJIの創業につながっている。

 

6年間の暗黒時代を経て、ファントムがヒット

しかし、6年間、製品を完成させることはできなかった。汪滔氏の熱意と従業員の熱意に大きな差があり、従業員たちは、勤務時間を無視して、夜中まで電話をしてくる汪滔氏についていけなくなった。技術が盗まれて、安易な製品を勝手に発売される事件も起きている。

しかし、2013年1月、ようやく最初の製品である「大疆精霊」(ファントム)の販売にこぎつけた。価格性能比が圧倒的であったために、ヒット商品となり、中国市場の70%、世界市場の80%を占めるようになった。

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▲DJI ファントム4のプロモーション映像。自動追尾機能、自動障害物回避機能など、ドローンは自動デバイス化が進んでいる。その先端を走っているのがDJIだ。

 

DJIが特許を出願するとライバル企業が倒産する

2013年にファントムを発売した年の売上は8.2億元(約140億円)で、小さなスタートアップとしてはじゅうぶんな成功だったが、製品ライナップを増やすとそれが売れ、倍々ゲームに近い成長をしている。

2018年以降、DJIは売上を公開していないが、2020年の売上は1660億元(約2.9兆円)前後だと推定されている。

この成功の理由になっているのが、DJIの核心技術だ。2020年5月までに、DJIは1万2900件の特許出願を行っており、PCT国際特許出願も4260件となっている。DJIは新たな技術を開発するとすぐに特許を出願する戦略で、俗にDJIが特許を出願するとライバル企業が倒産するとまで言われ、技術力を前面に打ち出して、市場を拡大してきた。

ドローンは、以前はラジコンヘリの亜種のように扱われてきたが、DJIのドローンは発想が根本から違っている。自動追尾や自動障害物回避などは当たり前のことになっている。ファントム4のプロモーション映像では、「私たちが開発したものは業界のスタンダードになり、真似はされますが、完璧にコピーすることはできません」とナレーションで語られている。また、映像内では「ドローン」という言葉が使われいない。「タップするだけで自律飛行するフライングカメラ」として紹介されている。

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▲DJIの売上の推移。毎年倍々ゲームに近い成長をしている。2018年以降は売上が非公開になっている。

 

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▲革新技術を持っているDJIには投資が相次いでいる。特に最初の製品であるファントムの発売以降殺到している。

 

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▲ドローン関連の特許数の取得シェア。DJIが圧倒的に多くなり、ドローン技術を学ぶのであれば大学に残るより、DJIに入社した方が学べるとまで言われている。