中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

個人商店を系列化する社区団購。主要テック企業が資本を投下し、競争が過熱をする理由

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明日、vol. 073が発行になります。

 

今回は、社区団購(シャーチートワンゴウ)をご紹介します。

社区団購は、中国の主要テック企業が勢揃いをして市場シェアを競い合っている、今、中国で最も熱いビジネスです。アリババ、テンセント、京東(ジンドン)、蘇寧(スーニン)、滴滴(ディディ)、美団(メイトワン)、ピンドードーといったよく知られているテック企業が資本参加や直営方式で参入をしています。

本来であれば、もっと早くご紹介すべきビジネスなのですが、中国特有のビジネスであるために、日本のビジネスに参考になるような部分が少ないと感じていたため、ご紹介する時期が遅れてしまいました。しかし、社区団購は、現在はビジネス面が注目されていますが、将来は地域のコミュニティ拠点になる可能性もあり、テック企業もその可能性があるからこそ、現在、大量の資金を費やしてシェアを獲得しようとしているのです。そういう地域コミュニティ拠点は、日本にも必要です。その点で、参考にできる点もあるのではないかと思います。

社区団購がどのようなビジネスであるのか、テック企業はどこに魅力を感じて資金投下をしているのか、将来どのようなインフラとして社会貢献ができるのかをお読みいただくことで、みなさんのビジネスに応用するヒントが得られるのではないかと思います。社区団購はビジネスであるとともに、社会貢献活動でもあるのです。

 

社区団購という名前を耳にしても、多くの方がどのようなビジネスであるか、ピンとこないと思います。そこで、まずは社区団購がどのようなものであるか、その説明から始めます。

社区(シャーチー)というのは中国独特の行政組織で、日本の町内会やマンションの自治会に相当するものです。地域コミュニティという言葉に近いかもしれません。そのため、ネットの掲示板などにも「○○社区」というネーミングがよく使われます。美食について語る掲示板であれば、美食社区と名前がつけられます。

2020年のコロナ禍では、この社区が活躍をしました。大昔は、住人の健康管理、健康状態把握も社区工作員の業務であったため、コロナ禍の外出自粛時期に社区が住民の発熱状況を毎日把握するということを行いました。しかし、社区のスタッフは4名から8名程度で、1000戸から5000戸の管理をしなければならないため、アリババのグループワークツール「釘釘」(ディンディン、DingTalk)を導入した社区も多かったといいます。釘釘には毎日の体温などを入力するカードが用意され、これに記入をすると、社区側では自動的に集計ができるからです。

また、外から中に入る人を通行止めにする自主的ロックダウンをした社区もありました。外出自粛がされているため、買い物に困る住人もいるため、社区スタッフが注文を聞いてまとめ買いをして配送するということも行いました。

多くの人が、社区などという組織は、もはや時代遅れで必要がないと思っていましたが、意外にもコロナ禍のような事態になってみると、ご近所さんのありがたさに気がついたのです。

 

社区団購とは、このような社区でまとめ買いをする仕組みです。もともとは農村や地方都市で始まった仕組みで、発想は日本の生活協同組と似ています。農村や地方都市では、スーパーやコンビニ、商店が少なく、買い物の不便さが大きな課題になっています。

そこで、有志が団長となって、近隣住民からの注文をまとめます。それを社区団購企業に発注をすると、まとめて配送してくれるというものです。そして、購入者は団長のところまで商品を取りに来て、お金を支払うというのが基本スタイルです。

このような団長は、雑貨店や生鮮食料品店などの店主がなるケースが圧倒的に多くなっています。農村にも商店はありますが、数は少なく、最大の問題は品揃えが悪いということです。農村の小規模商店では、動きの悪い商品を仕入れてしまうと、売れずに無駄になってしまうため、確実に売れる商品しか仕入れることができません。しかし、社区団購は先に注文を受けてから仕入れるわけですから、商品が売れ残ることがありません。住人にとっては、都会と同じように豊富な商品メニューの中から好きな商品を買えるようになります。

 

このような社区団購が生まれたのは、スマートフォンの普及があったからです。社区団購では、専用アプリ、WeChatミニプログラムなどで、まるでECのように注文をし、そのままスマホ決済までできるところが大半です。

社区団購プラットフォームは、その注文を受けて、受け取り指定された団長の店舗まで商品を出荷します。商品は団長宛にまとめてトラックで輸送され、配送済みになると購入者のところに個々に通知が行くので、団長のところまで取りに行きます。そして、団長は手数料として商品代金の何%かが、社区団購プラットフォームから振り込まれるという具合です。

このような仕組みの社区団購が、2017年頃から地方都市、農村で大量に生まれました。その中で、シェアを握ったのが、興盛優選、十薈団、同程生活の3社で、いわゆるスタートアップであったため「旧三団」と呼ばれます。

これに対するのが、テック企業が都会向けにサービスを再構成したもので、美団優選(美団)、橙心優選(滴滴)、多多買菜(ピンドードー)の3社が「新三団」と呼ばれます。さらに、新小売スーパーを運営しているアリババ、蘇寧は、それぞれ新小売スーパーのサブブランドとして盒馬優選、蘇寧小店を始めています。つまり、有力な社区団購だけでも8ブランドあるわけで、これが激しいシェア争いをしているのです。

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▲社区団購に参入しているテック企業。テンセントは、既存の社区団購企業に投資をする戦略。

 

旧三団が社区団購ビジネスを始めるのはよく理解できます。地方都市、農村の買い物の不便さを解消するビジネスであるからです。しかし、大手テック企業はどうして社区団購のビジネスに参入するのでしょうか。それは老齢化という中国の人口構成の大きな変化が背景にあります。中国のテック企業はめざましい成長をしてきましたが、それは常に新しいサービスを投入して、好奇心旺盛な若者や現役世代を消費者としてきたからです。社会が変化をしているのに、同じサービスを提供し続けていたら、フェイドアウトしてしまうのは目に見えています。そこで、老齢化に対応するためのビジネスとして社区団購が注目されているのです。

今回は、テック企業が社区団購ビジネスに注目をする理由についてご紹介します。

 

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vol.070:アリババに巨額罰金。独占を防ぐことで、市場は停滞をするのか、それともさらに成長するのか

vol.071:コロナ終息後にも定着した5つのトレンド。ライブコマース、社区団購、リモートワークなど。

vol.072:中国の消費者保護はどうなっているのか。三包とテスラ問題、iPhone問題の関係

 

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