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美団が直営店方式で社区団購に参入。フランチャイズ方式と直営店方式はどちらが優れているのか

独立系社区団購が成長し、そこに主要テック企業も参入し、競争が激化している社区団購。そこに美団が直営店方式で社区団購に参入した。社区団購の強みは、店主と消費者がご近所の顔なじみであるため、手厚いサービスが提供できること。社区団購にはフランチャイズ方式と直営店方式のいずれが適しているのか、議論が始まっていると億邦動力網が報じた。

 

近所の個人商店を活用する社区団購

社区団購(シャーチートワンゴウ)の競争が激化し、美団(メイトワン)が直営店方式で参入し、フランチャイズ方式と直営店方式の争いが始まっている。

社区というのは中国独特の町内会組織。ここでは「ご近所」「近隣」程度の意味だ。住宅地の中にも野菜や果物、肉などの生鮮食料品を売る家族経営の個人商店=パパママショップがある。社区団購プラットフォームは、このような個人商店とフランチャイズ契約をし、ご近所の生鮮食料品などの注文を取りまとめてもらい、配送をする。翌日、購入をした消費者が近所の店まで受け取りにくるというのが基本だ。日本のコンビニ受け取りECに近い形態だ。

 

ご近所店ならでのは手厚いサービスが強みとなる

社区団購のそもそもは、低温物流が整備されていない地方都市や農村で始まった。地方都市や農村では、野菜や果物などの生鮮食料品を宅配をすることが難しい。そこで、地域にある個人商店の冷蔵庫、冷凍庫を借りて、取りにきてもらうというのがそもそもの発想だった。

しかし、個人商店の店主もご近所の住人であるということが大きな強みになった。消費者と顔なじみであるために、配達もしてくれる。スマホ注文が苦手な高齢者には代わりに注文を代行するなど、ご近所ならではサービスが提供できた。この手厚いサービスにより、次第に大都市の住宅地に広がり始めている。

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▲旧三団の同程生活、十薈団、興盛優選。フランチャイズ方式で、個人商店をミニコンビニ+配送拠点として活用している。

 

旧三団にテック企業が続々参入

この世界には「旧三団」と「新三団」という言葉がある。旧三団は地方都市から始まった独立系の社区団購。興盛優選、十薈団、同程生活の3つ。新三団とは、テック企業が参入した新しい社区団購で、美団(美団優選)、滴滴(橙心優選)、拼多多(多多買菜)だ。さらに、テンセントは興盛優選に出資をし、アリババ、蘇寧は以前から展開をしていた新小売スーパー「盒馬鮮生」、「蘇寧小店」で、社区団購サービスを提供するなど、旧来の独立系と新参入のテック企業系が激しい競争をしている。

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▲テック企業が続々と参入している社区団購。利益は薄く小さいが、消費者が固定されているため、永続的に利用されるロングテールビジネスをねらっている。

 

直営店方式で参入した美団

このうち、独特の手法をとっているのが美団だ。美団は、昨2020年7月に「美団買菜」として直営店方式の社区団購店舗を開こうとして、コストが見合わず計画は進んでいなかった。

しかし、美団は昨2020年12月に「美団優選」として再スタート。さらに、杭州市に直営店を開く計画で、1月現在、杭州市のスタッフを募集している。つまり、美団は、直営店方式にこだわっているため、初動が遅れたところがある。

 

フランチャイズ方式で急拡大する滴滴

一方、個人商店を活用するフランチャイズ方式で急拡大をしているのが、滴滴の橙心優選(チェンシン)だ。昨2020年9月にスタートし、わずか3ヶ月で20都市に展開をし、今年2021年末までには10万店、3年後には100万店を展開する計画だ。

個人商店主から、橙心優選は大きく注目されている。江西省で橙心優選のフランチャイズ店になった張磊さんは、2013年に輸入果物の店舗を開いた。国内果物の粗利は20%程度であったのに、輸入果物は50%から場合によっては60%にもなるからだ。しかし、フードデリバリー、新小売スーパーなどの生鮮食料品の到家サービスが登場すると、経営が厳しくなり、昨2020年12月に橙心優選の加盟店となった。

橙心優選が要求しているのは、店舗面積が20平米以上で、近所の商圏の戸数が1000戸以上とそれだけだった。

店舗のリフォーム費用は1万元から3万元になるが、これは橙心優選が立替をしてくれる。毎月の収益から控除されて返していく仕組みだ。また、現在のところ、橙心優選は利益を度外視して拡大を図っているため、加盟店はロイヤリティーを支払う必要もなく、確実に儲かる状態になっているという。

ただし、その先行者ボーナス期は半年から1年で終わるはずなので、その間にしっかりと地域に密着をして、固定客をつかむことができるかどうかが、生き残りの鍵になるという。

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▲滴滴の橙心優選。資金力を活かして、小型スーパー並みの品揃えをし、当面は利益を度外視した積極策で、急速に店舗数を拡大している。

 

深まる直営vsフランチャイズの議論

このようなフランチャイズ方式に対して、美団は直営店方式で社区団購に参入しようとしている。ひとつのお手本になっているが、アリババの新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)ではないかと言われている。現在フーマフレッシュは214店舗を展開し、利益率は25%を超えている。社区団購の旧三団の利益率は20%程度と言われているため、直営店方式の方が成功確率が高いと判断しているのかもしれない。

この直営店方式、フランチャイズ方式が議論を呼んでいる。直営店方式であれば、均質でレベルの高いサービスが提供できる。運営効率も高いために利益率も高くしやすい。しかし、一方で、「個人商店主がご近所と顔なじみ」という強みを活かしたきめ細かいサービスは提供しづらい。

新小売スーパーのように、顔の見えない多くの消費者を顧客とするモデルでは、直営店方式によって高いレベルの均質なサービスを提供した方がうまくいくが、社区団購のような顔の見える顧客に対するモデルでは、地域住人をスタッフに巻き込んだ方がうまくいくのではないか。そういう議論がされている。

もちろん、その答えは誰にもわからない。すべては結果が答えを出してくれる。その意味からも、直営店方式の美団とフランチャイズ方式の滴滴の社区団購の競争が注目されている。