中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

自動車に関心を示し始めたZ世代

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明日、vol. 049が発行になります。

 

中国の自動車販売が復調をしています。世界的に同じ傾向が生まれていますが、コロナ禍により、公共交通を避けたいという気分が生まれ、個人や家族単位で移動ができる自動車に関心が集まっているからです。

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▲中国の自動車(乗用車)販売台数。新型コロナが感染拡大をした2月、3月は大きな落ち込みを見せたが、4月以降は例年並みに復調をしている。しかし、上回ることはできず、弱含みの副長になっている。中国乗用車市場情報聯席会(CPCA)の統計より作成。単位は千台。

 

もう一つの理由が新エネルギー車の売行きがようやく軌道に乗り始めたことです。新エネルギー車とは電気自動車(EV)とハイブリッド車、水素などの次世代エネルギー車の総称です。

といっても、軌道の高度は低く、これからいくつもの促進策を必要としていますが、最悪の状況は脱した感があります。中国工信部の目標によると、2019年は全体の8%、2020年は全体の10%の販売目標を設定していますが、2019年は4.6%で2020年も現状では4%を切っている状態です。とても目標を達することはできません。

販売量を見てみると、2017年、2018年は順調に増加をし、2019年前半はいよいよ新エネルギー車が本格的に売れ始める勢いが見えました。しかし、2019年後半で、前年割れどころか前々年割れすら起こしてしまったのです。

その理由は発火事故が連続したことでした。事故を起こした時にバッテリーから発火をするだけでなく、駐車場にただ停めていただけで発火をしたという事故も報道されました。数としては、スマートフォン発火事故よりも少ない程度ですが、不安は大きく、買い控えが起きてしまったのです。

それが改善され、さらに満充電での航続距離も500kmクラスのEVが揃ってくるにつれ、新エネルギー車の販売に弾みがつき始めました。今年の前半は、コロナ禍によりディーラーにいくのも避けられたため、前々年割れという苦しい状況でしたが、夏頃から記録を更新するほどの売れ行きになっています。

ただし、これはあくまでも新エネルギー車のうちの乗用車のみで、さらに、販売目標は大きく下回っています。それでも、ようやく陽の目が見える段階まできました。

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▲毎年、販売量が増加していかなければならない新エネルギー車は、2019年後半に失速をした。しかし、今年になって、ようやく成長軌道に乗る兆しが見え始めている。中国汽車工業協会(CAAM)の統計より作成。単位は万台。

 

乗用車全体でも、昨年をわずかに下回っているものの、前年とほぼ同じ水準まで戻っています。

一時期は「若者のクルマ離れ」が深刻で、なおかつ新エネルギー車は売れないという二重苦により重苦しい空気が流れていましたが、例年並みの水準には復調をしています。

 

「若者のクルマ離れ」は、2つの要因で起きています。ひとつは若者の人口そのものが減少をしていることです。中国の人口ピラミッドはきわめていびつな形になっています。2015年まで行われていた子どもの数を制限する一人っ子政策が大きく影響をしています。

最も世代人口が多いのは30代前半で、全体の4.6%(男性)ですが、10代以下はどの世代も3.1%になっています。つまり、世代人口が7割以下になってしまうのです。当然、今後、製品の販売量は放っておいたら30%減にならざるを得ません。

逆に言うと、最も世代人口の多い30代前半、それについで多い40代後半から50代前半が中国経済の成長を牽引していました。このような人口の多い世代が、20代には車を買い、家を買い、子どもを産み、旅行にいくということで経済が成長する人口ボーナス効果が大きかったのです。

それが20代前半から下は世代人口が大きく減ります。これにより、若者をターゲットにした製品の売れ行きが苦しくなっています。10代、20代前半をターゲットにしたファストファッションがわかりやすい例で、Forever 21は昨年中国から撤退をしました。ZARAH&Mも業績が苦しくなっています。人気に陰りが見えたということもあるかもしれませんが、お客さんである若者の人数が減っていることも大きな要因です。

一方、ユニクロは好調を維持しています。ユニクロはもはや若者向けファッションではなく、中高年も利用する全世代型カジュアルウェアになっているからです。

若者に特化したビジネスでは、すでに世代人口減による影響が現れ始めています。自動車も若者だけのものではありませんが、若い世代が占める比率が高いため、世代人口減による影響が現れ始めていると言われています。

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▲中国の人口ピラミッド。消費の黄金世代でもすでに30代前半になり、それ以下の世代人口は3割前後減少をする。

 

人口が減るだけでなく、若者が自動車そのものへの関心を失い始めています。大きな要因はスマホです。スマホを使いたいので、運転をすることができない。むしろ、公共交通機関を使いたい。自動車でしか移動できない場合でも、スマホからタクシー配車、ライドシェアが進んでいる中国では、スマホで簡単に車を呼ぶことができる。自分では所有せず、運転せず、バス、地下鉄、網約車(タクシー配車とライドシェア、ネットで予約する車の意味)を使いこなせばいい。

また、95后(95年以降生まれ=20代以下)はZ世代と呼ばれます。米国のマーケティングで、80年代生まれがX世代、80年代後半から90年代前半生まれがY世代、95年代後半以降生まれがZ世代と呼ばれ、それぞれ世代がそれぞれの特徴を持っているとされるものです。

 

中国では、80后とZ世代が特に注目をされ、それまでの伝統的な中国人とは異なる価値観を持っているとされています。詳しくは「vol.011:人口ボーナス消失とZ世代。経済縮小が始まる」で解説しています。この世代の最大の特徴は、社会課題に大きな関心がある世代だということです。貧困や地球温暖化、人権といった地球規模の課題に大きな関心を持ち、個人により程度の差はあるものの、それを解消する行動をしようとします。

そういうZ世代から見ると、ガソリン車はもはやあり得ないツールなのです。ガソリン車よりはEVなどの新エネルギー車、新エネルギー車よりは自動運転車、MaaS(マース)に価値を見出します。

おそらく理想は、テンセントが深センで2027年に完成を予定しているネットシティのようなものでしょう。自動車と地下鉄は、地上と地下の階層を利用し、人は2階以上の階層を徒歩または自転車で移動します。オフィス、住居、商業施設がコンパクトに配置をされ、日々の生活は徒歩だけで完結するという新しいコンセプトの人口都市です。

 

このようなZ世代ですから、自動車を所有することには関心がありません。ところが「中国Z世代自動車購入傾向調査」(OPPO、J.D.POWER)によると、車を購入する計画を立てているZ世代は69.9%にものぼりました。もちろん、「2-3年以内に購入する計画を立てている」という回答は、現実的な計画があるというよりも「いつか買えたらいいな」という希望の表れにすぎないかもしれません。それを割り引いて考えても、Z世代は車の購入に関心を持っていると言っていい結果です。

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▲Z世代に自動車の購入計画を尋ねた結果。実際に購入するかはともかく、計画をしているZ世代は7割以上にのぼる。車に対する関心が高くなっていることがうかがわれる。

 

これはいったいどういうことでしょうか?なぜ、車になんか興味のないはずのZ世代がここまで車に関心を持つようになったのでしょうか。

答えを先に言ってしまうと、自動車メーカー側が、Z世代を中心をした若者の嗜好を分析し、それに合わせた製品作りをしてきた成果です。中年のおじさんが「車ってのはだな、こういうもので」と説教しながら、数十年前の流行を押し付けるということが自動車好きの間では起こりがちですが、それでは「若者の車離れ」を加速させるだけです。どのような車であれば受け入れてもらえるのか、それを自動車メーカーは模索をしています。

これは自動車だけではありません。あらゆる製品、商品がその努力をしなければならないのです。そこで、今回は自動車を例に、どのようなZ世代向け努力がされているかをご紹介します。考え方は、他の製品、商品にも応用できるはずです。

 

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