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長征11号が海上発射に成功。商用衛星の低コスト打ち上げ時代が始まる

長征11号の黄海からの海上発射が成功した。海上発射であれば、衛星打ち上げに有利な低緯度地域から打ち上げができることになり、衛星の打ち上げコストが大幅に削減できる。長征11号の成功により、商用衛星の低コスト打ち上げ時代が始まると新華網が報じた。

 

長征11号の海上発射に成功

9月15日9時23分、長征11号ロケットの黄海からの海上発射に成功した。この長征11号は1ロケットで10機の衛星を打ち上げられるもので、そのうちの吉林1号衛星を高度535kmの太陽同期軌道に投入することにも成功した。

この長征11号ロケットは、中国航天科技集団所属の中国運載ロケット技術研究院が開発した固体燃料ロケットで、全長20.8m、最大直径2m、重量58トンという小型ロケット。主な用途は、衛星を地球低軌道または太陽同期軌道に投入することだ。

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海上で打ち上げられる長征11号。安全性も考え、船舶も無人化する技術も開発される。

 

最大10機の衛星を軌道投入可能

ロケット技術研究員の金鑫副総指揮によると、今回の長征11号の目的は2つあるという。ひとつは、ゼロ発射ウィンドウの技術を確立することだ。衛星を目的の軌道に投入する場合、その放出タイミングはわずか数秒に限定される。異なる10の軌道に投入する10の衛星を異なるゼロ発射ウィンドウのタイミングに次々と正確に放出をしていく必要がある。

もうひとつは海上発射の技術を確立することだ。商業衛星は将来海上発射が常態化をすることになる可能性が高い。低コストで衛星を打ち上げられるようになるからだ。

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▲今回の海上発射は、技術開発実験の目的もあるため、黄海の陸から近い場所で行われた。そのため、見物人も多く訪れた。

 

ビリビリ衛星も軌道投入される

今回の衛星群「吉林1号」は、吉林長光衛星公司が開発したもので、03C動画衛星3機と03B地上観測衛星6機が含まれている。この動画衛星のうちの1機はビリビリ動画衛星で、科学普及動画などの転送に利用される。

地上観測衛星は組みになって地上の観測を行うもので、林業、農業、海洋、資源、環境などに寄与をするものだ。

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▲この調整11号には、動画共有サイトの名前がついたビリビリ衛星も搭載されていた。動画を転送するのに使われるという。

 

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▲長征11号に搭載されたビリビリ衛星。ネット民からはアニメが宇宙から転送されると話題になっている。

 

低コスト発射に有利な固体燃料ロケット

長征11号は、小型の固体燃料ロケットであるということに意味がある。固体燃料ロケットは、液体燃料ロケットに比べて積載能力は低いが、機動性があるのが特長だ。液体燃料はロケットに注入したまま放置することはできず、発射予定が決まってから燃料を注入することになるので、準備時間が必要となる。しかし、固体燃料はロケット内に燃料を装填したまま待機ができるので、発射が決まってから1日かあるいはそれ以下の時間で発射が可能になる。

 

海上発射で衛星打ち上げコストは大幅に下がる

また、海上発射を行うことには3つのメリットがあるという。

1つは海上発射であれば、積載能力があがることだ。海上発射であれば、海上のどこからでも発射ができるようになる。赤道近くの低緯度地域に移動して発射をすれば、積載能力があがるのだ。

赤道付近では、地球の自転による遠心力を利用できるので、打ち上げに必要なエネルギーが少なくてすむ。同じ量の燃料を使うのであれば、赤道付近から打ち上げると積載能力が高くなる。

2つ目は、傾斜角の小さな軌道に衛星を投入しやすくなることだ。赤道から外れた高緯度の地域から打ち上げる時も、地球の自転エネルギーを利用して、東に向けて発射することになり、打ち上げ場所の緯度が高ければ高いほど、軌道傾斜角は高くなる。つまり、赤道に対して斜めに横切る軌道になってしまう。

これを修正するためには、打ち上げ後に燃料を使って軌道を変えていくしかなく、その分の燃料消費により積載能力が下がってしまう。

傾斜角の高い軌道は、赤道を斜めに横切る起動が周回するごとにずれながら地球全体をカバーしていく。そのため、地上観測をする場合、ある地点を再び観測できるようになるまでに時間がかかる。傾斜角の低い軌道であれば、観測したい地点の上空を何度も通過するようになり、多くの観測衛星では有利になる。そのため、赤道付近から打ち上げて、傾斜角の小さな軌道に投入したいというニーズが高い。

3つ目は安全性だ。地上打ち上げの場合、打ち上げ失敗による被害を防ぐため、陸地ではなく、海上に向けて発射せざるを得ない。海上から発射をすれば、ロケット落下想定地域のほとんどが海上となるため、安全性が大きく向上する。また、船上のスタッフの安全性を確保するため、ロケットの輸送から打ち上げまでのすべてのプロセスを無人化する技術開発も行われている。

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海上から打ち上げられるようになると、衛星打ち上げに有利な低緯度地域からの打ち上げが可能になり、衛星打ち上げコストを大幅に下げることができる。

 

低コスト海上発射で、商用衛星市場を狙う

つまり、今後の商用衛星の打ち上げは、海上発射が基本となっていく可能性があるということだ。赤道付近の海上から打ち上げることで、燃料が節約でき、傾斜角の低い軌道に投入することができる。長征11号の場合は、小型ロケットでありながら、同時に10機までの衛星を軌道投入することができる。衛星側から見れば、低コストで有利な軌道への投入が可能となる。中国はこの競争力の高い海上発射方式を今後も進めていく計画だ。