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教育の原点に立ち返る。ジャック・マーがつくったアリババ学校

アリババの経営陣が出資をして開校した雲谷学校の始業式が行われ、ジャック・マーがスピーチをした。大学は将来学生不足となるため、大学進学を心配することなく、素晴らしい自己を育てることを目指すと述べたと小桔灯が報じた。

 

アリババ経営人がつくった雲谷学校

9月初め、杭州市西湖区雲谷にある雲谷学校の始業式が行われた。この学校は、ジャック・マーを始めとするアリババの中心メンバーが出資をして、2017年に開校した。小学校は各学年20人のクラスが3つ、中学校は各学年24人のクラスが2つある。最終的には幼稚園から高校までの15年制の学校を目指している。

合計10億元以上投資された非営利学校で、敷地面積は220ムー(東京ドーム3個分)。原則的にアリババの従業員の子弟のために開設された。

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杭州市にある雲谷学校の完成予定図。数期に分けて工事が行われている。完成すると東京ドーム3個分の面積になる。

 

親が毎日自問自答すべき3つのこと

今年は新型コロナの感染拡大などもあり、始業式にはジャック・マーが登場し、1時間以上にわたる講演を行い、雲谷学校の意義などについて語った。主な内容は4つだが、その中で、将来の大学は学生不足になると語り、話題になっている。

「雲田に学校を開設したのは、利益を求めてではなく、アリババ従業員の子弟の問題を解決するためです。これからの20年で、教育のあり方は大きく変わりますが、そのひとつの理想的な教育モデルを示そうと考えました」

「多くの家庭で、母親はいつも気を揉み、父親は叱ってばかりいます。子どもが小さいうちは、母親が主に子どもの教育を考え、子どもが大きくなると父親が主に子どもの教育を考えるでしょう。親は毎日、次の3つのことを自問自答しなければなりません。ひとつは「今日、自分の子どもを他人の子供と比べるようなことはしなかったか」。2つ目が「成績ばかりを気にしていないか」。最後に「子どもの言うことに耳を傾けず、尊重していない態度を取らなかったか」です。このような問題を解決するために、雲谷学校はあります」。

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▲雲谷学校の授業を視察するジャック・マー。理想の学校を作ることは、ジャック・マー個人の夢のひとつだった。

 

大学は将来学生不足になる

「親は、子どもが大学に進学できるのか、質の高い大学に入れるのかということを心配します。そのために、小中高の成績が気になってしまうのです。しかし、心配することはありません。中国は出生率が下がり続けているので、将来、大学は学生を探すのが難しくなります。なので、大学に入ることを目標にした教育を与えるのではなく、教育の原点に立ち返って、最も素晴らしい自己を養成することを目指すべきです。これが将来成功するためのかけがえのない基礎になってくれます」。

 

教育は投資であって、投機ではない

「少年班(課外活動。中国では芸術教育、スポーツ教育などの課外活動が盛んで、多くの子どもが過密スケジュールになり、疲弊していることから社会問題にもなっている)には反対します。子どもの教育は投資ですが、投機ではありません。子どもの成績が悪いからと落胆することはありません。目の前の成績よりも、20年後にどのような人になってほしいかを考え、そこから子どもにどのような教育を与えるべきかを考えればいいのです」。

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▲外国人教師も多く招聘され、英語教育にも力を入れている。国際人を育てるのが雲谷学校の目標。アリババ従業員の子弟が多く通っている。

 

引退して教師に戻った「元教師」

ネットでは、少子化により、大学の学生不足が起こるので、大学進学を心配することはないというジャックマーの主張には異論も上がっている。少子化で大学生の数も減ることは必然だが、質の悪い大学が淘汰をされるだけで、優れた大学に学生が集中することは変わらない。むしろ、競争は厳しくなるのではないかという意見もある。

雲谷学校では、ジャック・マーらしく、英語教育とICT教育が行われ、外国人講師も招聘している。ジャック・マーは元教師だった。アリババを引退するとき、引退後の生活をどうするのかと問われて、「また、教師に戻ります」と答えた。その言葉通りに、ジャック・マーは教育事業を行っている。