中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

ECが続々と取り入れるゲーミフィケーション消費とは何か?

各ECがミニゲームを続々と導入している。大きな特徴は、リアルと接続していることだ。例えば、ECを利用するとゲーム内のポイントなどが取得でき、それにより果樹を育てるゲーム。果樹が育つと、本物の果物が宅配されてくる。このようなゲームフィケーションが、消費者のリピート率を高める効果があることから、各ECがさまざまなコンテンツを導入していると人人都是産品経理が報じた。

 

バーチャルなきを育てると本物の森になる

中国のEC「淘宝」(タオバオ)「天猫」(Tmall)を始めとして、「拼多多」(ピンドードー)、「京東」(ジンドン)、「蘇寧」(スーニン)などの主要ECがゲーミフィケーションを続々と導入している。

先鞭をつけたのは2016年8月に始まったスマホ決済「アリペイ」の「アント森林」だ。これは、行動を変えることによって排出する二酸化炭素量を減らし、森林を増やす目的のもの。アント森林では、歩数計機能と連動していて、歩いた距離に応じてポイントが貯まる。また、地下鉄に乗る、シェアリング自転車を利用する、アリペイで各種チケットを購入するなどの行動をすると、それで排出削減できる二酸化炭素量に応じてポイントが貯まっていく。

このポイントを使うと、スマホ内の仮想的な木に水をやることができ、一定の大きさに育つと、アリペイの運営元であるアントフィナンシャルが実際に確保している土地に、現物の植樹がされるというもの。

アリペイを利用すればするほど、早く木を育てることができ、たくさんの木を植林できるというものだ。アリペイの利用を促すことができ、同時に利用者は環境に貢献をすることができる。アント森林はすでに2億人の人が利用している。

また、2017年8月には、アリペイは「アント庄園」をリリースした。これは鶏を育てて卵を生ませるゲームで、鶏の餌を手に入れるにはアリペイを利用する、アンケートに答えるが必要。うまく育てると、鶏が卵を生み、生んだ分の卵は、実際に農村の子どもたちに寄付される。すでに4億人が使っていて、150億個の卵を寄付した。

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▲アリペイの中から利用できる「アント森林」。地下鉄に乗るなど環境に優しい行動をとると、木が育っていく。

 

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▲アント森林では、バーチャルで気が育つと、本物の木が植樹される。砂漠化を防ぎ、農村に雇用を生み出す社会貢献ができるようになっている。

 

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▲アント荘園では鶏を育て卵を生ませる。卵が生まれると、本物の卵が貧困地区の子どもたちに寄付される。

 

バーチャルな果樹を育てると、本物の果物が宅配

ソーシャルEC「拼多多」は、2018年4月に「多多果園」をリリースした。これは、指定された商品を購入すると、仮想の果物が育っていくというもので、果樹が育つと実際の果物が自宅に届けられる。

さらに、京東、蘇寧易購なども同様の仕組みを導入していて、各ECは同様の仕組みを5種類前後は導入している。

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▲拼多多では、買い物をすると果樹が育てられ、実がなると、本物の果物が宅配されてくる。

 

ポイント付与よりも効果があるゲーミフィケーション

このようなゲーミフィケーションの仕組みが導入されている理由は、ECのリピート率をあげることに効果があるからだ。リピート率は「もう一度利用する」ことだが、中国のECでは「ユーザー粘性」という言葉がよく使われ、複数回リピートすることを重要視する。囲い込みに成功したお得意様になってもらうことで、ユーザー粘性を高めることがアクティブユーザー数の増加につながり、売上の増加につながる。

ゲーミフィケーションは、このユーザー粘性を高める仕組みとして有効だ。従来は、ログインなどをするたびにポイントを付与する方法で、ユーザー粘性を高めようとしていた。例えば、「毎日1回ログイン時に1ポイント付与」などの方法だ。

確かにポイント付与も効果はあるが、長続きをしない。単なるポイント付与だと、ユーザーが途中で飽きてしまう。それを避けるにはポイント付与率を上げていくしかなく、コストが上昇していくことになる。

また、ポイント付与の場合は、有効期限があったり、決済時にポイントを使用する操作をしなければならない、また他のセールやクーポンとの併用ができる/できないなど煩わしいことが多く、「ワンタップで購入できる」というECの心地のいいユーザー体験を損なってしまうことも多い。

これを考えると、「ユーザーが貯めて、育てて、現物の商品を寄付/もらえる」というゲーム性を備えた特典の方が、長続きをし、ユーザー粘性を上げる効果があるのだ。

また、当然ながら、ユーザーの流出に対しても一定の効果がある。

このような理由から、各ECがゲーミフィケーションを取り入れている。

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ゲーミフィケーションはECにとって、リピート率を上げる効果があることがわかり、各ECは続々とゲーミフィケーションコンテンツを投入し、ちょっとしたブームになっている。

 

EC間でゲーミフィケーションの競争が始まっている

ゲーミフィケーションの多くは、植物や動物を育てるというものが多い。その結果、まとまったポイントに交換できる、実際の商品が受け取れる、寄付をして公益活動に貢献できるなどできる。どのようなものを育てて、どのような特典が受け入れられるかは、各ECのデザイン次第で、「面白い」「可愛い」「楽しい」などの観点で、ユーザーは参加するゲーミフィケーションを選んでいる。

どのような人気ゲーミフィケーションをリリースできるか。各ECで競争が始まっている。