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スマホMAUが初めて減少。ネイティブアプリの時代は終わり、ミニプログラムの時代へ

QuestMobileが公開した「QuestMobile中国モバイルインターネット2019半期大報告」によると、中国モバイルネットのMAUが初めて減少に転じた。各モバイルサービスは、これに対応して、ネイティブアプリからミニプログラムへの移行を始めている。

 

モバイルネットのMAUが初めて減少

2019年半ばから、中国のモバイルネット環境の潮目が明らかに変わった。月間アクティブユーザー数(MAU)が初めて減少に転じたのだ。2019年3月の11.38億人をピークに、4月は11.36億人、5月は11.34億人と減少し、6月は11.36億人と持ち直したが、頭打ち感が出ていることは明かだ。

一方で、興味深いのが、一人平均のモバイルネット利用時間は伸び続けている。アクセスする人の数が減っているのに、利用時間は伸びているということは、よく使う人とあまり使わない人の二極化が始まっているということだ。

これは各アプリ、サービス関係者にとって、大きな衝撃を与えている。なぜなら、どのサービスでもMAUの大きさに依存したネット広告による収入が大きいからだ。全体のMAUが減少に転じたということは、広告収入も低下していくことになる。

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▲モバイルネット全体のMAUは、2019年4月に初めて減少に転じた。やや持ち直しているものの、頭打ち感が出ていることは明かだ。

 

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▲一方で、1人平均のスマホ利用時間は伸びている。つまり、ヘビーに使う人と、あまり使わない人の二極化が起きているということだ。

 

下沈市場と呼ばれる地方を狙うサービス

このMAU減少問題に対応する方法は2つある。ひとつは「市場を沈める」と呼ばれる方法だ。従来のネットサービスは、都市で暮らす人を主なターゲットにしていた。スマートフォンの普及率が高いからだ。しかし、都市でのネット利用が頭打ち感が出るのと同時に、地方都市や農村部でのスマホ普及率が急速に上がってきている。このような地方都市、農村の市場は「下沈市場」と呼ばれる。

このスマホ利用者が急激に伸びている下沈市場を積極的に狙っていくことで、減少する流量を補おうという考え方だ。

具体的には、激安まとめ買いECの「拼多多」(ピンドードー)、身近な話題に焦点を絞ったニュースサービス「趣頭条」などがある。いずれも下沈市場の人たちが好みそうな内容になっている。

 

アプリの時代は終わり、ミニプログラムの時代へ

もうひとつの考え方が、ミニプログラムを利用したプラットフォーム化だ。ミニプログラムとは、アプリ内アプリのこと。例えば、決済アプリ「アリペイ」では、アリペイの中からタクシー配車のミニプログラムを検索すると、タクシーが呼べる画面が表示され、そのままタクシーを呼ぶことができる。原則、そのタクシーサービスへのアカウント登録などは不要で、気軽に使って、決済もアリペイで自動的に行われるというものだ。

ミニプログラムはダウンロードする必要もなく、アカウント登録もする必要がない。ウェブページと同じように、呼び出せばすぐ使える。このようなミニプログラムを利用することで、各サービスは、減少する流量を補おうとしている。

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▲WeChatのミニプログラム。検索をして探すこともできるが、履歴から選んだり、ブックマークから選んだりすることが多い。また、便利なのは「付近のミニプログラム」。位置情報からカフェなど近隣で使えるミニプログラムが検索できる。カフェのミニプログラムを見つけて、モバイルオーダーし、そのまま店舗に向かうというようなことができる。

 

WeChatはミニプログラム効果でMAU増加

ミニプログラムの仕組みを最初に始めたSNS「WeChat」では、ミニプログラム効果が現れている。

WeChat(SNSスマホ決済)本体部分の一人平均使用時間は減少をしている。しかし、ミニプログラムの使用時間は大きく伸びている。月に平均して、4.9種類のミニプログラムを42.6回利用している。

この効果により、WeChat全体のMAUも増加させることに成功している。

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▲すでにアプリよりもミニプログラムの方が多く使われている。しかも、アプリ使用時間は減少をしているのに、ミニプログラム使用時間は伸びている。



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▲全体的なMAUが頭打ちになる中、WeChatのMAUは、ミニプログラム効果により、伸びている。

 

生活系のアリペイ、SNS系のWeChat、ゲーム系の百度

どのようなミニプログラムに対応しているかは、プラットフォームアプリによりさまざまだ。このようなプラットフォームアプリは、日本でも中国でも「スーパーアプリ」という名前が定着しつつある。

このようなスーパーアプリの代表格は、「WeChat」、「アリペイ」、「百度」(バイドゥ)の3つが代表格だが、ミニアプリの内容はそれぞれだ。

それぞれの利用者上位30件のミニプログラムの種別を分類してみると、その違いがはっきりする。

SNSスマホ決済の機能を持つ「WeChat」では、生活サービス(支払い、出前、予約など)が中心だが、SNSに関連する動画ストリーミングや写真レタッチなどのミニプログラムも使われている。

スマホ決済「アリペイ」では、生活サービス、EC、交通が上位にくる。

検索サービス「百度」では、ゲームが上位にくるのが特徴的だ。

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▲WeChatのミニプログラムのジャンル。生活サービスも多いが、SNSであるということから、動画共有やレタッチなどSNSに必要なミニプログラムも多いことが特徴だ。

 

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▲アリペイのミニプログラムのジャンル。生活サービス、EC、交通というアリペイ決済と組み合わされたものが多い。

 

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百度のミニプログラムのジャンル。ゲームが多いのが特徴。

 

「装着」というハードルがないミニプログラム

このようなミニプログラムは、今のところ、既存アプリの置き換えであることが多い。例えば、グルメ検索アプリが内容はほとんどそのままでミニプログラム化され、各プラットフォームに対応するというケースだ。

利用者から見れば、アプリはダウンロードしなければならない、アカウント登録をしなければならないため、同じものがミニプログラムであるのであれば、こちらの方が利便性が高くなる。そのため、アプリ利用者がミニプログラムに移行する現象が起きている。

サービスの提供側からすると、チャンネルはアプリでもミニプログラムでもかまわない。むしろ、アプリの場合は、ダウンロードをしてもらい、アカウントを登録してもらうというハードルを超えなければならないが、ミニプログラムであれば気軽に使ってもらうことができ、利用者を拡大する好機となっている。

 

アプリよりもミニプログラムを利用する人が圧倒的に多くなっている

各スーパーアプリのMAU上位5件のミニプログラムについて、ミニプログラムMAUとアプリMAUを比較すると、WeChatでは、圧倒的にミニプログラム利用者が多い。アリペイでもその傾向が進んでいる。

一方で、百度ではまだミニプログラム利用者が増えていない。ミニプログラムの利用者拡大はこれからになる。

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▲WeChat(左)、アリペイ(中)、百度(右)のMAU上位5位のミニプログラムの、アプリMAU(黄色)とミニプログラムMAU(灰色)の比較。WeChat、アリペイでは、圧倒的にアプリよりもミニプログラムが使われるようになっている。「QuestMobile中国モバイルインターネット2019半期大報告」より引用。

 

潮目が変わったスマホサービスの構造

いずれにせよ、モバイルインターネットの全体MAUは減少あるいは頭打ちになっているため、各プラットフォームアプリは、ミニプログラムの対応を進め、スーパーアプリ化することを急いでいる。

最終的には、スマホには数個のスーパーアプリだけを入れ、そのアプリの中から、さまざまなミニプログラムにアクセスをするという世界になっていくと考えられている。

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