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農民が作った人間タケコプター。民間航空局は「違法だが、処罰はしない」

湖北省の農民が自力で開発したタケコプターのような人間ドローンが話題になっている。一部で試験飛行は違法行為だという声が上がっているが、民間航空局は「違法だが処罰の対象にはしない」と応えたと北京青年報が報じた。

 

53歳の農民が手作り開発した人間ドローン

このタケコプターのような人間ドローンを開発したのは、湖北省江夏区大舒村の舒満勝さん。舒満勝さんは53歳で、牛の酪農が本業だ。

このタケコプター的なドローンは、背中に背負う形で、お尻を乗せる椅子もついている。4つの翼を8つのモーターで動かし、総重量は35kg。人を乗せて10数分飛行することができる。

舒満勝さんによると、開発は3日で終わったが、その後、数十回にわたる試験飛行を経て、改良を加えていったという。最後には、自分の息子や娘も飛行したという。

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▲飛行試験を行う舒満勝さん。無許可であるため、厳密には違法行為にあたるが、民間航空局は寛大な対応をしている。

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▲飛行中の舒満勝さん。まさにタケコプター。舒満勝さんがドラえもんを知っているかどうかは定かではない。

 

前作はUFOドローン、最新作は人間タケコプター

舒満勝さんは、子どもの頃から機械いじりが好きで、高校を卒業後、酪農をしながら、機械工学などを独学した。

2008年ごろから、さまざまな飛行機やドローンの開発を始め、費やした金額は100万元(約1500万円)に近いという。2018年には、人が乗れる大型ドローンを開発し、試験飛行に成功している。このUFOドローンの製作には2ヶ月かかり、15万元(約230万円)を費やしている。12月に武漢東湖新技術開発区で、公開夜間飛行を飛行を行い、80秒間の飛行に成功させた。しかし、この開発でも数度墜落をして、肋骨を何本か骨折しているという。

そして、今年はタケコプター型ドローンを開発した。材料費はわずか1万元程度で済んだという。

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▲舒満勝さんが2018年に開発をしたUFOドローン。UFOで町おこしをしようとしている。


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▲舒満勝さんが2018年に開発したUFOドローン。人間が乗ることができる。

 

高度が高くなると、リモコンが届かなくなる

飛行をするときは、自動、半自動、手動の3つのモードがある。上昇速度は毎秒10mで、100mの高度まで上昇できるが、安全を考慮して、現在は高度10mに制限をしているという。舒満勝さんは北京青年報の取材に応えた。「コストを抑えるために、安価なリモコン機器を採用しています。高度が高くなると、リモコンが制御を失ってしまう恐れがあるのです」。

この人間ドローンは、周囲の人に人気だ。舒満勝さんが試験飛行するのを見て、娘が乗りたいと言い出し、娘も試験飛行をした。その様子を見て、娘の友人も乗りたいと言い出したが、舒満勝さんは万が一のことを考えて断ったという。

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▲人間ドローン。意外にプロペラは大きい。人のお尻を乗せる椅子のようなものも備えられている。

 

無許可飛行は違法?民間航空局は「違法だけど処罰はしない」

舒満勝さんの試験飛行に対しては、疑問を呈する声もある。それは民間航空局に無許可で人が乗れる飛行物体を飛行させるのは、違法なのではないかという声だ。

北京青年報は、民間航空局湖北省管理局に取材をした。すると、「中華人民共和国民用航空法」と「民用航空器適航管理条例」によると、違法になるという。具体的にいうと、4つの条件を満たしていなければならない。

1)航空機が民間航空局の審査を受けて、合格していなければならない。

2)航空機の国籍などを登録して、関係部門の管理を受けなければならない。

3)操縦者が要求される資格を持っている必要がある。

4)飛行する空域を、人民解放軍と空域管理部門に申請して許可を得なければならない。

民間航空局では、舒満勝さんの試験飛行は、この4つの条件をまるで満たしていないので、違法行為にあたるという。

「しかし」と取材に対応した民間航空局の担当者は言う。「地上の建築物や人に損害を与えないようにじゅうぶんに注意をして飛行を行い、かつ、損害を与える結果にならなければ、民間航空局は処罰の対象にはしない」と言う。ただし、あくまでも法に触れる行為であるということは自覚してほしいと強調した。

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▲試験飛行を終えた舒満勝さん。高度100mまで上昇する能力があるが、安全を確保するために、高度10mまでの飛行に制限をしている。

 

夢は航空工学の学校設立

舒満勝さんは、この人間ドローンを事業化するつもりはないという。しかし、航空工学の学校を作り、人材養成をしたいのだという。舒満勝さんもそうだが、学びたい人がすべて大学に進学できるわけではない。そういう学ぶ機会を得られなかった人たちに、自分が持っている知識と技術を分け与えたいという。

舒満勝さんは言う。「この夢は簡単には実現できません。でも、自分の理想を放棄せずに、努力を続ければ、いつか実現できるはずです」。