中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

SNS導入で売り上げを10倍にしたくだもの屋。規模が小さいほどテック導入の効果は大きい

町のくだもの屋がSNSとそれに連動する会員管理システムを導入して、売り上げを10倍に増やすことに成功した。妻と二人で運営する小さな商店では、テック導入のコストは安く、効果は大きいと済南同創教育諮詢が報じた。

 

流行するスタートアップ「くだもの屋」

中国でスタートアップ創業といえば、ITサービスというのが常識だが、ITとは別に人気のビジネスがある。それは「くだもの屋」だ。

中国のくだものは単価が低いので、仕入れ代金も多くはいらない。商品が重たいので、遠くのスーパーよりは近くのくだもの屋を使う人が多い。市民の間に広まる健康志向で、くだものを食べる人が増えている。お菓子を食べるくらいならくだものを食べるという人が多く、需要がある。商品が傷みやすいので、新小売スーパーや生鮮ECによる宅配で扱うには難しい面がある。などなど、手軽に起業ができ、うまくはまれば儲かるということから、くだもの屋を起業する若者が増えている。

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▲今、起業を目指す若者の間で、くだもの屋が注目を浴びている。比較的少ない資金で始めるとこができ、テックと組み合わせることで大きな日銭が稼げ、さらにはチェーン店化も可能だからだ。

 

ただのくだもの屋では近隣のライバルに負けてしまう

もちろん、くだもの屋を開いたからといって、自動的にうまくいくわけではない。ITツールをうまく組み合わせていく必要がある。

その中で、わずか30日間で、売上を10倍に伸ばしたくだもの屋がいる。

このくだもの屋の主人、孫さんは、住宅地の中でくだもの屋を開いている。1日の売上は約1000元(約1万5000円)で、可もなく不可もなくというところだ。売上が伸びない原因は明らかだった。周辺にくだもの屋が7軒もあって、しかもそのうちの1軒は大手スーパーの大潤発だった。周辺の住民の多くは、くだものを大潤発で買っていた。大潤発のくだものは品質はそこそこ、価格は少し高い。孫さんのくだもの屋の方が、質が高いくだものを安く買えるのだが、日常の食材と一緒に買えるため、多くの人が大潤発で買ってしまう。

しかし、孫さんは昨年結婚したばかりで、なんとかしなければならなかった。

 

若者に向けて無料宅配を実行

孫さんが近隣の住民の調査をしてみたところ、一般的な地区よりも、若者の割合が多いことに気がついた。ここに商機があると考えた。若者には3つの特徴がある。価格に対して細かくはない。自由な時間は少ない。宅配を好むの3つだ。

そこで、孫さんは1000枚のチラシを印刷してポスティングをした。そのチラシの内容は次のようなものだった。

「この地区にお住いのみなさま。よりよい生活を実現するため、私たちは送料無料でくだものの戸別配送をいたします。また、無料でゴミの引取をおこない、私たちで分別処理をいたします。配送先の住所をおしらせください。また、WeChatの私たちのグループに参加をしてください」

 

SNSに登録させることで、配送の効率を上げた

ゴミの分別回収をするというところが受けた。中国ではゴミの分別回収が始まり、多くの市民の頭を悩ませている。今までやったことがないので、どのように分類をすればいいかがわからないからだ。

もうひとつは、SNS「WeChat」のグループに参加させたことだ。配送は近隣だけなので、さほど大きな手間ではない。最大の問題は、不在の家があることだ。すぐに傷んでしまうくだものをドアの前に置きっぱなしにするわけにはいかない。不在の場合は、商品を持って帰らなければならず、無駄足となる。これが大きな問題になる。

そこで、配送に出る前にWeChatのチャットで在宅かどうかを確認する。返事が返ってきた家から配送をしていく。孫さんは無駄足を踏むことがなく、消費者から見ても、WeChatでのやり取りがあってから配送されるので安心できる。

しかも、グループ全体に「本日は、新鮮なリンゴが入荷しています」などというお勧めメッセージを送ることもできる。

この施策を始めてわずか5日間で、売上は5倍になった。

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▲町のくだもの屋は、以前は夫婦で運営する個人商店が主体だったが、百果園などのチェーン店が増えている。百果園は2800店舗を展開している。一方で、個人商店は競争が厳しくなり減少しつつある。

 

独自にポイント制度を行いリピーターをつかむ

孫さんは、ここで手を緩めなかった。次の施策として、ポイント制度を導入したのだ。1箱のくだものを買うと、ポイントが1点たまる。5点になると、購入代金の5%を割引するようにした。

また、毎回、購入代金の5%は会員カードに溜まる仕組みにし、好きな時に支払い代金に充当できるようにした。

これが、リピーターを増やし、1日の売上は1万元を突破した。施策を始める前から考えると、売上は10倍以上になっている。

 

個人商店だから小さな投資で大きな効果が得られる

孫さんは大掛かりな投資をしたわけではない。WeChatと連動する会員管理アプリを導入しただけのことだ。月数十元で利用できるという安価なものだ。孫さんの店の以前の客数は1日20人程度、それが今では200人程度になったにすぎない。この人数であれば、本格的なシステムを導入しなくても、じゅぶんにやっていくことができる。

お店の多くが無料配送を頼むようになり、店舗に来るお客の数は減った。店番は妻に頼めばじゅうぶんになり、孫さんは1日中配達に回っている。それでじゅうぶん運営していけるのだ。

このような個人商店は、売上規模が小さく、客数も少ない。そのため、簡単なアプリで会員制度を導入することができ、スマホだけで管理をすることができる。それで売上が10倍になるほどの効果が出る。規模が小さいだけに、IT導入の効果は大きい。

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