中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

アップルウォッチの次に売れているのは、子ども用ウォッチ「小天才」

中国で子ども用スマートウォッチがヒットしている。歩歩高傘下の小天才科技のスマートウォッチは、GPSラッキング、保護者とのテレビ通話、アリペイのお小遣い管理機能など、保護者が欲しい機能を搭載し、2018年には2167万台を売り上げたと芯扒客が報じた。

 

アップルウォッチの次に売れているimooスマートウォッチ

調査会社Counterpointが公開したグローバルのスマートウォッチのシェアランキングを見ると、アップルが1位にくるのは当然として、3位にサムスン、4位にfitbit、5位にAMAZFITがくる。fitbit、AMAZFITは馴染みがない方もいるかもしれないが、スマートウォッチブランドとしてはそれなりの知名度があり、日本でもかなりの人が使っている。

しかし、2位のimoo(アイモー)は知らない人がほとんどではないだろうか。imooは、子ども用スマートウォッチブランドで、広東小天才科技が製造し、中国国内では「小天才」として子ども用スマートウォッチとして販売されている。この国際版をimooブランドとして、歩歩高教育電子がアジア圏で販売をしている。いずれの企業も、中国の電子機器メーカー「歩歩高」(ブーブーガオ)傘下の企業だ。

歩歩高(ブーブーガオ)は、ファミコンの無許可互換機「小覇王」を開発した段永平が1995年に創業した電子機器メーカー。当初は、電子辞書などを開発していたが、現在ではOPPOvivoなどのスマホブランドを傘下に持っている。imooもそのひとつだ。

f:id:tamakino:20190819121330p:plain

▲Counterpointが公開した2017年、2018年の世界市場シェア。2位にimooが食い込んでいる。そのほとんどは中国内での売上だ。

 

キッズ市場が重要視される中国

OPPOvivoというと、性能は悪くないのに低価格のスマホとして知られているが、imooの子ども用スマートウォッチは決して安くない。中心価格帯は1万円前後と、fitbitやAMAZFITと変わらない。それでもグローバルで、アップルに次ぐシェアを占めているのは、「子ども用」というところにポイントがある。

中国では子ども用スマートウォッチが売れている。2018年の子ども用スマートウォッチの出荷台数は、2167万台で、前年から16.6%も伸びている。中国では半ば冗談として、価値のある消費者とは「女の子>男の子>若い女性>高齢者>犬>男性」と言われるほどで、キッズ市場が大きな存在になっている。

一人っ子政策はすでに集結しているが、まだまだ一人っ子の家庭が多く、一人の子どもに2人の両親と4人の祖父母がいるため、6つのポケットがあるからだ。


小天才兒童電話手表Z5 視訊通話4G全網通

▲小天才Z5のプロモーションビデオ。テレビ通話、GPSラッキング、アリペイのお小遣い管理機能などが紹介されている。

 

GPSを搭載して、子どもの見守りグッズとしての需要が強い

子ども用スマートウォッチは、GPSを搭載して、見守りグッズとしての需要が強く、教育電子機器に強い歩歩高を始めとして、セキュリティ企業「360」、小米(シャオミー)、ファーウェイなどの企業が開発をしている他、大量のスタートアップが登場して、50近いブランドが子ども用スマートウォッチを発売している。

 

保護者のスマホとテレビ電話ができる

その中でも圧倒的に売れているのが、小天才だ。

小天才のフラグシップモデル「Z6」は、デザインはともかく、機能面では大人でも欲しくなるほどだ。まず、4GのSIMを内蔵しているため、腕時計でテレビ通話ができる。800万画素のカメラ、裏側には500万画素のカメラが搭載されているため、映像も鮮明だ。子どもの安全を考えて、通話ができるのは保護者のスマートフォンのみだが、保護者のスマホ側には、映像とともに、GPSによる地図が表示される。また、カメラは保護者のスマホ側からフロントとバックサイドを同時撮影できるので、子どもの顔を見ながら、子どものいる周囲を見ることもできる。

f:id:tamakino:20190819121334p:plain

▲画面部分が立てられる構造になっていて、カメラはインサイドとアウトサイドの2つある。保護者のスマートフォンとテレビ通話をするときは、子どもの顔だけでなく、周囲の状況も同時に映し出される。

 

GPSラッキングもリアルタイムで把握

子どもがどこを移動したかのトラッキングデータも、保護者のスマホでリアルタイムで確かめることができる。さらに、自宅、学校など場所を設定しておくと、子どもがその場所に到着すると、保護者のスマホにプッシュ通知が飛ぶ。さらに、子どもの移動範囲を地図上で設定しておき、その地域から外に出るとプッシュ通知を送るという機能もある。

また、定位はGPSだけでなく、全国4000箇所のショッピングモール、鉄道駅、空港などのビーコンやWiFiステーションを利用した定位にも対応をしている。子どもがどこにいるのかが保護者のスマホですぐにわかるのだ。

f:id:tamakino:20190819121339p:plain

GPSラッキングはリアルタイムで把握でき、駅や空港、モールなどの巨大施設では施設内の位置トラッキングにも対応している。海外でのトラッキングにも対応している。

 

受けているキャッシュレスお小遣い機能

また、保護者から歓迎されているのが、アリペイの決済機能があることだ。スマートウォッチにQRコードが表示され、これをスキャンしてもらうことで支払いができる。もちろん、1日に使える限度額、1ヶ月に使える限度額などが設定でき、どこで何を買ったのかという支払い履歴が保護者のスマホに送信される。つまり、お小遣いの管理ができるのだ。

f:id:tamakino:20190819121343p:plain

▲保護者が喜んだ、アリペイの管理機能。QRコードを表示して、保護者のアリペイ口座からキャッシュレス決済ができる。購入履歴はリアルタイムで保護者に通知、また、限度額などを設定することも可能。

 

音声で操作、学習機能も搭載

さらに、百度バイドゥ)が開発した音声AIアシスタント「小度」が搭載されているので、音声で天気予報を聞いたり、「世界でいちばん高い山はなに?」などと聞いて学習をすることもできる。

さらに辞書や英語学習、計算ドリルといった学習アプリも搭載されているだけでなく、音楽再生アプリ、ラジオストリーミングアプリなども搭載されている。友人同士とチャットや通話が可能な子ども用SNSもあるが、いずれのアプリも、保護者のスマートフォンからいつでも使用禁止にできるようになっている。

f:id:tamakino:20190819121348p:plain

▲歩歩高傘下の企業らしく、新華字典を収録するなど、学習関係アプリも充実している。

 

スマホはまだ早い子どもたちにスマートウォッチ

小天才は、5歳から14歳までの利用を想定している。保護者としては、子どもの安全を考えて、GPSを搭載し、通話ができるデバイスをもたせたいが、スマートフォンを持たせることには躊躇する保護者も多い。10歳以下では、操作や管理が難しく、10歳以上ではゲームやSNSなどを使うことに対する不安がある。また、中国では個人情報を抜くフィッシングサイトや詐欺サイトなども多く、そのようなものに子どもが巻き込まれることを心配する保護者も多い。

そういう保護者たちが、スマートウォッチあるいはウォッチフォンと呼ばれる「小天才」を選んでいる。大人向けスマートウォッチは、IT感度の高い人や運動好きな人などごく一部の間でしか使われていないのが現状だ。一方で、子ども用スマートウォッチはすべての子どもに使ってもらえる。大きな市場として、今後も成長が期待されている。