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電源不要で使えるスマートドアロック。取っ手を回して発電

指紋などで解錠できるスマートドアロックが売れているが、バッテリー切れになると解錠できなくなるという大きな問題があった。この問題を解決したドアロックが発売された。ドアを開ける時に取っ手を回すことで発電されるというもだとCNMOが報じた。

 

普及するスマートドアロック。しかし問題も多い。

中国で、指紋認証スマホで解錠できるスマートドアロックが普及をし始めている。デスマン、Tmall、網易家居が共同で公表した「2018中国スマートロック消費白書」によると、現在、約3500のスマートロックブランドが存在し、世帯普及率は10%に達している。

しかし、問題も多い。ひとつは電源供給の問題だ。ドアの備品に電源供給をするのは難しいので、多くのスマートドアロックが電池式になっている。しかし、電池が消耗してしまうと、解錠、施錠ができなくなってしまうのだ。そこでモバイルバッテリーから給電できるようにしている製品もあるが、仕事に行くのならともかく、近所に買い物に行く時にモバイルバッテリーを持っていく人は少ない。

もうひとつの問題が、安全性だ。通称「スモールブラックボックス」と呼ばれる高周波の電磁波を放射する装置を当てるだけで、スマートドアロックが初期化または破壊され、鍵が開いてしまうことが知られている。現在では、多くの製品で対策されてるようになっているが、旧モデルや安価な製品では対策がされていないものも出回っている。

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▲スマートドアロックの中には、スモールブラックボックスと呼ばれる装置から高圧電流を飛ばすことで、解錠または故障してしまうものが多く、問題になっていた。現在は、回路を保護することで対策をされているが、未対策の製品もまだ多い。

 

取っ手を回すと発電。電源不要のドアロック

このような問題をクリアしたスマートドアロック「nokelock X1」が、深圳物聯鎖科技から発表された。

注目すべきは、バッテリー内蔵で電池が不要ということだ。では、バッテリー残量がなくなった場合はどうするのか。バッテリーが減らないように工夫をされているのだ。

日常、ドアを開け閉めする時に、取っ手の部分を回して開閉する。この取っ手を回すことによって、発電され、充電される。深圳物聯鎖科技によると、通常のドアロックの使い方であれば、永久にバッテリー切れにならないように設計されているという。

バッテリー残量が低下したまま、長期間不在にすると、バッテリー残量がゼロになってしまうこともないわけではない。その場合は、取っ手を5、6回回すだけで、1回分の電力を発生させ、復活させることができる。

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▲展示会で展示されたnokelock X1。ドアを開ける時に取っ手を回す。これで発電され、バッテリーに充電されるため、電源は不要で、電池交換も不要。

 

▲nokelock X1のプロモーションビデオ。電源不要、電池交換不要がセールスポイントになっている。

 

指紋、スマホNFCカードの3つに対応

解錠、施錠方法は、指紋、スマートフォンNFCカード(身分証を含む)の3種類。スマホからは、ネット経由、Bluetooth経由、NFC接触の3種類の方法で施錠、解錠ができ、アプリからは鍵の状態をどこからでも確かめることができる。NFCカードにも対応しているのは、ホテルや企業などでの使用を想定しているためだ。

スモールブラックボックス対策もされていて、価格も599元(約9300円)と一般的なスマートドアロック製品の1/3程度。

同時に商用版のnokelock X2(699元、約1万1000円)も発表され、ハイアール、フォクスコン、建設銀行、武漢大学、南寧市営住宅などの宿舎での採用がすでに決まっている。

鍵が不要になる、電源の心配がない、安全対策も施されている、そして安い。スマートドアロックの第2世代とも言える製品が登場したことで、スマートロック普及の弾みになると期待されている。

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▲深圳物聯鎖科技は2015年に創業した企業で、自転車用のスマートロックで成長した企業。16カ国で1000万個以上を売り上げ、2019年にドアロック市場に参入した。写真は北京の発表会で製品を紹介する創業者の欧陽紅軍CEO。nokelockとはno key lockという意味があるそうだ。

 

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▲欧陽紅軍CEOは、発表会で、毎年3億本もの電池がスマートドアロックのために消費されていると訴えた。