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ゴミがお金になる。中国各地にスマートゴミ箱が登場

リサイクル可能なゴミを捨てるとお金がもらえるスマートゴミ箱が中国各地に設置され、すでに9000箇所にもなっている。このゴミ箱を運営しているのは「小黄狗」。利益よりも公益に重心を置いたスタートアップだと北京日報が報じた。

 

各地に登場したリサイクルのためのスマートゴミ箱

昨年2018年夏頃から、中国各地にスマートゴミ箱が登場している。「布類」「プラスティック」「紙類」「ペットボトル」「金属」の5つのゴミ箱が設置されているもので、すべてリサイクルをされるため、捨てたゴミの重さに応じて、お金がもらえる。

利用するには、専用アプリをスマートフォンにインストールする必要がある。ゴミ箱にあるQRコードを専用アプリからスキャン。それから捨てるゴミの種類を選ぶと、ゴミ箱の口が自動的に開く。あとは捨てるだけだ。重さに応じて、アプリにお金が貯まっていく。1kgあたり、布は0.2元、プラスティックは0.8元、紙類は0.7元、ペットボトルは0.04元、金属類は0.6元になる。現在では、WeChatペイで受け取ることも可能になっている。

各ゴミ箱には、ゴミの種類を確認するセンサーが内蔵されているため、誤ったゴミを捨てた場合は、投入量にカウントされない。

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▲小黄狗が運営するスマートゴミ箱。「布類」「プラスティック」「紙類」「ペットボトル」「金属」の5種類を捨てることができ、重量に応じてお金がもらえる。

 

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▲専用アプリで捨てるゴミの種類を選ぶと、そのゴミ箱の口が自動的に開く。ゴミの重量は自動的に測定され、その量に応じて、スマホに送金される。

すでに9000箇所に設置をしたスタートアップ「小黄狗」

このリサイクル用のスマートゴミ箱を運営しているのは、2017年8月に東莞市で創業したスタートアップ「小黄狗」(シャオホワンゴウ)。全国1万箇所にスマートゴミ箱を設置することを目標に創業されたが、すでに33都市9000箇所を突破し、目標達成が見えている。

スマートフォンを利用しているため、利用者がどのゴミ箱を利用をしているのかがわかる。さらに、ゴミ箱には、監視カメラ、温度センサー(火災などの発見)、自動消毒機能などが備わっている。

ゴミ箱の設置だけでなく、回収作業も行っており、各地センターに集積し、分別をした後、リサイクル業者に売却することで利益を上げている。

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▲小黄狗の集積倉庫。黄色がイメージカラーで、子犬がマスコットになっている。ゴミ回収であっても、不衛生にならないように配慮しているという。

 

公益性のあるビジネスは各方面の協力が得られやすい

このスタートアップの特長は、公益性が高いことだ。そのため、各地方政府も好意的で、公共の場所に設置する場合でも、融通を利かせてくれる。また、マンション住民からも好評で、住民側から設置をしてほしいという要望も上がってきている。このため、設置箇所が順調に増え、ビジネスが軌道に乗った。投資資金も順調に集まり、急すぎる成長ではなく、健康的な成長をしている。

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▲地方政府の官僚もたびたび視察にやってくる。公益性のあるビジネスであるため、地方政府や地域住民の協力が得やすい。

 

わずかなインセンティブでも分別の習慣が浸透

地方政府では、ゴミの回収が頭の痛い問題になっていた。ゴミを回収しても、資源になるゴミと燃やすゴミを分別する作業にコストがかかっていた。市民に分別をしてもらう分別回収をどこでも行っているが、それも、なかなか守られていないのが現状だ。

それが、わずかとは言え「お金がもらえる」となると、誰もがきちんと分別をするようになる。地方政府は燃やすゴミなどのリサイクルできないゴミだけを回収すればよくなった。小黄狗と協働することで、分別回収が実現できたのだ。

 

セールで買った衣類と梱包ダンボールが大量のゴミとなっている

マンション住民も歓迎をしている。今、問題になっているゴミは、衣類と段ボールだ。中国でもファストファッションが浸透しているが、質が高くないものもあるため、ワンシーズンの使い捨てに近くなっている。季節の変わり目に大量の衣類ゴミが出る。また、独身の日などのECサイトのセール時には大量の段ボールゴミが出る。布と段ボールは、総量も多いが、一時期に集中して出るというのが大きな問題になっている。

このようなゴミは、ゴミ置場に山積みされることになるが、回収が追いつかない。放火なのか自然発火なのかはわからないが、火災が起きている例もある。また、雨に濡れると臭いが発生するなどで、苦情も多かった。この問題が回収もこまめにしてくれるスマートゴミ箱で解決された。

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▲小黄狗本社で開催された親子で参加するワークショップ。「地球魔法師」というタイトルで環境について考えさせる内容だ。

 

公益活動にも熱心な小黄狗

地方政府は、このスマートゴミ箱を使うことで、分別の習慣が定着することを期待している。小黄狗は現在、ガラス製品のリサイクルに対応できてなく、行政が行っているが、ガラス回収ボックスを小黄狗のスマートゴミ箱の横に設置する地方政府も出てきた。

小黄狗は、ビジネスだけではなく、公益活動にも熱心で、小学校と協力して、会社や工場見学、ワークショップの活動も盛んに行っている。

いわゆるソーシャルアントレプレナーのひとつだが、今まで中国のスタートアップと言えば、「どれだけ爆発的に稼げるか」ばかりが投資家から注目されていた。それが「世の中にためになること」をやることで、投資資金がそれなりに集まっている。中国のスタートアップ投資の潮目が変わるきっかけになるかもしれない。

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▲小黄狗は地域活動にも熱心。小学生たちを招いて、仕分け場の見学や、エコロジーに関するワークショップを開いている。