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海外留学生の8割近くが帰国就職を希望。国内企業の体制に問題も

人材プラットフォーム猟聘の猟聘海外ビッグデータ研究院は「2018年海外留学生帰国情勢報告」を公開した。これによると、中国は留学生の帰国熱が高まっているが、それを受け入れる国内の体制がまだ不十分であることが明らかになったと猟聘人材官が報じた。

 

帰国熱が高まる留学生

改革開放が始まって40年。海外留学生の数は増え続けている。2017年、海外に出国した留学生の数は約61万人。一方で、帰国をした留学生は48万人。帰国率は約79%になり、最高を記録した。海外留学生の帰国が大きな流れになっている。

その理由のひとつは、海外で中国人留学生の就職が厳しくなっていることだ。多くの国で、自国の大学生を優先する政策がとられ、海外からの留学生は仕事を見つけるのが難しくなっている。一方で、中国国内の産業は発展をし、優秀な人材を欲しがっている。海外から拒否され、国内からは求められる。これが留学生の帰国熱につながっている。

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▲中国の経済が発展したことを見て、帰国して就職したいと考える留学生が増えている。

 

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▲米国などで、留学生よりも自国学生を優先して採用する傾向が強まり、留学先での就職が難しくなっている。これが留学生の帰国熱につながっている。

 

難しい面が多い留学生の就職活動

しかし、留学生の帰国後の就職がうまくいっているというわけではない。留学生は留学先の国から中国に対して就職活動をしなければならない。また、中国を数年間離れているため、中国の国内事情に疎くなっている。今の中国は1年離れているだけで様変わりをする。特に産業の事情は大きく変わるので、古い情報を元に就職活動をして失敗をしてしまう留学生も多い。

また、企業側も留学生の就職活動に対応ができていないケースが見られるという。書類選考の後、多くの企業では面接を行うが、留学生の場合、距離の問題から面接に参加することは難しい。そこで、グローバル企業ではテレビ電話を使った面接を行うことが多いが、そのような体制をとっている国内企業は多くない。また、電話連絡なども時差を考慮せずに、中国の昼間にしか担当者と連絡がつかないケースもある。

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▲何を強みと感じるかを留学生に聞いた。語学、コミュニケーション能力、国際的な視野が上位になった。

 

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▲何を強みと感じるかを留学生に聞いた。語学、コミュニケーション能力、国際的な視野が上位になった。

 

受け入れる国内企業の態勢が取れていない

それ以前に問題になっているのが、海外から電子メールを使って履歴書データを送信しても、無視される現象が起きている。また、留学中に資格を取得しても、中国ではそれがよく知られていないため評価基準にならないこともあるという。担当者の無知によるものだが、このため、留学生の就職活動は効率が悪く、苦労をしているケースが多いという。

猟聘によると、現在海外留学中の中国人に対するアンケートでも、「卒業後帰国して就職するか?」という問いに、77.02%の学生が「帰国して就職する」と答えており、留学生の数がいまだに増え続けているので、2019年も多くの留学生が帰国就職を希望すると見られる。

中国の企業にとって、留学経験のある学生は貴重な戦力になる。特に海外展開を考えている企業にとっては必須の人材になっている。いち早く、海外留学生の就職活動に対応する「テレビ電話面接」「海外資格の評価」などの対応を取る必要があると猟聘は提言している。

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▲海外からの就職活動で困った点。履歴書を電子メールで送っても無視されるというのが半数以上ある。中国企業は留学生の就職活動にじゅうぶんには対応できていないようだ。